物の大きさや距離を測れる軍用双眼鏡

アスキー 10月14日(金)17時00分配信
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どうせ買うならやはり軍用

 子どものころに星が好きになり、天体望遠鏡を買ってもらったことがあります。望遠鏡はザックリ分けて2種類あって、ひとつは筒の先端にあるレンズで光を集める屈折望遠鏡、もうひとつは先端がオープンになっていて、筒底にある凹面鏡で光を集める反射望遠鏡です。ウチのは反射望遠鏡で、直径15cmぐらいでした。

 月のクレーターや土星の輪、木星の衛星、なにもないように見えるところにある無数の星々などなど、無限に広がる大宇宙のいろいろな物を見ましたが、倍率が高いゆえに、星座や流星の観察には向いていません。そういうときには双眼鏡が便利です。

 双眼鏡も屈折望遠鏡と同じく対物レンズで集めた光を接眼レンズで拡大していますが、レンズを使っただけでは上下が逆さまに見えてしまいます。星を見るには逆さまでもあまり問題はありませんが、双眼鏡はスポーツ観戦やバードウォッチング、コンサートなど地上の物を見ることが多く、逆さまでは困ってしまいます。で、その補正に使われているのがプリズム。

 ポロプリズムという方式では、2つの直角プリズムを使って像を正しい向きに修正しています。大きな本体に接眼レンズが付いた形をしていて、双眼鏡といったらこの形を思い浮かべる人も多いのではないかと思います。左右の対物レンズの間の距離が接眼レンズよりも広くなっているのが一般的で、構造上どうしても大柄になってしまいますが、光の損失が少なく、比較的安価に高倍率の物を作れます。

 もうひとつは、ダハプリズムと補助プリズムという2つのプリズムを使ったダハプリズム式。対物レンズと接眼レンズが一直線に配置されていて、細い筒が2本くっ付いたような形をしています。こちらの方式では内部で複雑な反射をさせるため、使っているプリズムの形ももっと複雑になります。プリズムへの入射角の問題で一部の光が透過してしまうので、そのぶん暗くなってしまいますが、軽量コンパクトに作れるのがメリット。持ち歩きやすいということで、最近はこちらのタイプが多いそうです。

 双眼鏡は昔持っていたのですが、どこにしまい込んだのやら、いつの間にか紛失してしまいました。流星群を見たりキャンプで使ったりしたいし、1個は欲しいなと思っていたところ、気になっていたモデルが安く出ているのを発見。早速ポチってみました。もちろん米軍払い下げ品です。

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双眼鏡を買いました。ダハプリズム式です

対象物の大きさや距離がわかります

 購入したのは米軍のM24双眼鏡。見てのとおり、対物レンズと接眼レンズが一直線になっているダハプリズム式です。米軍の双眼鏡にはもうひとつポロプリズムのM22というのがあって、そっちもかなり魅力的なのですが、ちょっと大きいのとお値段的に1.5倍ぐらいするので断念。M24もそこそこお高いのですが、たまたま新品の半額で中古品を見つけたので即ゲットした次第です。

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米軍のM24ビノキュラー。新品の半額ぐらいでした

 双眼鏡にはよく7×28のような数値が書かれています。これはその双眼鏡の主要諸元で、7×28はM24のもの。7は倍率を表わし、28は対物レンズの直径をミリで示しています。

 M24のメーカーはいくつかあって、ウチのやつはL-3 Communications製。ロッキード・マーティンから分離してできた会社です。そのほか、現在は富士フイルム<4901>に吸収されたフジノンや、ノースロップ・グラマンの物もあります。

 米軍払い下げ品ではおなじみのNSN(National Stock Number)は1240-01-499-3547。DLAなどで始まるコントラクトナンバーは見当たりませんでした。コントラクトナンバーは発注元の部門や予算年度、契約番号が記されています。記載がない場合もありますが、もしかしたら支給品ではなく、基地内で販売されていた個人購入品なのかもしれません。いずれにしてもMIL SPECには準拠しています。

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L-3 Communications製。NSNは1240-01-499-3547

 軍用双眼鏡が普通の双眼鏡と違うのは、覗くと目盛りが見えるところ。これはレティクルと呼ばれるもので、目盛りの単位はミル。聞き慣れない単位ですが、角度を表わしています。M24の場合、目盛りの1は10ミルとなっています。

 ミルという名称はもともと1ミリラジアンから取られた名前だそうです。懐かしい言葉ですね、ラジアン。実生活で使うことなんて一度もなかった単位ですが、まさかこの歳になって再会するとは。

 半径「r」の円があったとして、半径と同じ長さのヒモを円周に貼付けると、そのヒモの両端によって作られる角度はrの大きさに関わらず一定になります。このときの角度が1ラジアンです。

 円周は2πrなので、1ラジアンを角度に変換するにはrを2πrで割ったものに、360をかければオーケー。1ラジアンは360度/2πで約57.3度になります。1ミリラジアンはその1/1000なので約0.0573度。そして円周をミリラジアンで表わすと、360度/0.0573度なので約6283ミリラジアンになります。

 この6283を切りのいい6400にして、360度/6400としたのが1ミル。角度でいえば0.05625度になっています。

 ややこしいですね。自分でも書いていてこんがらがってきてしまいます。

 学校で習った当時も、こんな中途半端な数字がなんで役に立つのか不思議でしたし、正直いまでも不思議なんですが、実生活でちょっとだけ便利なところがあります。それは1km先にある1mの物を見たときの角度が、ほぼ1ミルであるということ。つまり、対象物の大きさが何ミルかを計測すれば、対象物までの距離がわかっているときはその大きさがわかり、大きさがわかっているときは距離がわかるということになります。

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覗くとレティクルが見えます。目盛りの単位はミル

 計測の式は、

 になります。

 写真の場合、電柱までの距離は約290mでした。高さは42ミルほど。これを式にあてはめると、0.29×42で12.18mとなります。だいたい12mですね。逆に電柱の高さが約12mとしたら、12/42で0.286。約286mという感じです。

 もちろん距離や大きさには誤差がありますし、そもそも目盛りも正確に読み取れるわけではないので、だいたいの目安といったところです。でもちょっと面白い機能ですよね。

 ちなみに現在ではNATO各国でミルを使っていますが、第二次世界大戦時のドイツではシュトリヒと呼ばれていました。ガルパンおじさんなら聞き慣れた単位ですよね(´ー`)

コンパクトで完全防水

 レンズは緑色に見えます。反射を低減させるマルチコーティングの色だと思いますが、けっこうピカピカに光って見えるような気も。内部には対レーザーのフィルターが入っていて、視界が少しピングがかって見えるのはそのせいだそうです。

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緑色に見える対物レンズ。綺麗です
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レンズを保護するカバーはプラスチック製。接眼レンズカバーは少し割れていますが支障はありません
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眼鏡をかけていても使えるように、接眼レンズについているアイピースはくるりと裏返してたたむことができます

 戦闘服のポケットに入れられるようにということで、長さ13センチ、幅11センチほどと非常にコンパクトにできています。全面がラバーコーティングされていて、滑って落とす心配もありません。

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iPhone 6sより少し短いコンパクトさ
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ラバーコーティングは滑り止め&耐衝撃に役立っています

 ピントを合わせる機構はIF(Individual Focus)と呼ばれる方式で、左右それぞれの接眼レンズ部分を回して調整します。バードウォッチングなど素早い調節が必要なシチュエーションでは使い勝手が悪いですが、軍用ではさほど素早さを求められないのと、防水性能を高くできるためこの方式が使われているようです。

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左右独立してピントを合わせるIF方式

 内部にはガスが封入してあって、完全防水になっています。これなら雨漏りがするウチのハンヴィーの中に置いておいても大丈夫。さすが軍用だけあってデザイン的にもハンヴィーに似合うし、ミリタリーキャンプにも最適です。ていうか、実用というよりも、ハンヴィーのインテリア的な感じ?

アスキー
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    最終更新: 10月14日(金)17時00分

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