すべて「AI」任せにするのは怖いことだ

アスキー 10月18日(火)09時00分配信

 CEATEC JAPAN 2016の初日となる2016年10月4日、主催団体のひとつである一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)の会長を務める富士通<6702>の山本正已代表取締役会長による基調講演のテーマは「IoTがもたらす豊かな未来に向けて」だった。

 今年で17回目を迎えるCEATEC JAPAN 2016は、昨年までの「IT・エレクトロニクスの総合展示会」から、「CPS/IoT Exhibition」へと展示内容を大きく変更。「つながる社会、共創する未来」をテーマに開催。過去最低だった昨年を上回る648社/団体が出展した。

 展示会場や基調講演や137にのぼる各種カンファレンスも、CPSやIoTのほか、AI(人工知能)、ロボット、次世代ネットワークなどの最新技術トレンドを捉えたものになった。

IoTは暮らしを変えはじめた

 山本会長は基調講演の冒頭にIoTの現状について説明。「IoTはすでに様々な領域で利用されており、ビジネスや暮らしを変え始めている」と発言。具体的な事例として、インドネシアでのスマホの位置情報を利用した渋滞対策や、日本の植物工場における安定的な栽培の実現例のほか、アイルランドでの医療分野においてはスマホで測定したバイタルデータをリハビリに用いている例などを紹介。

 さらに2035年には、取り巻く技術が進化することで生活が大きく変化。自動翻訳機能は単に言葉を翻訳するだけでなく、それぞれの国の文化などを考慮して自然なやりとりができるようになるほか、会議ではAIがファシリテータを務めて、専門家や関連データを駆使。結論を導くようになると予測した。

 また、健康に関しては、体内に入ったナノロボットとAIが連動。個人の健康をリアルタイムで管理して、適切なアドバイスができるようになるという。その結果、健康寿命が伸び、AIやロボットの普及によって増えた余暇を楽しんだり、退職後にも社会参加できるように、継続的なキャリア教育を受けられる環境がテクノロジーによってサポートされる時代が訪れることを示した。

 「こうした社会は、テクノロジーロードマップから見ても十分実現が可能である」とし、「IoTは豊かな社会をもたらす力がある」とした。実は、この2035年の世界の姿は、同年創立100周年を迎える富士通<6702>の社員16万人を対象に行なったジャムセッションによって導き出した未来の姿だという。

 だがその一方で、IoTが持つ課題があることにも言及する。

 センシング精度の向上や、電力供給の課題、リアルタイム処理の高度化、ネットワークの高速化などを、IoTの今後の課題として指摘。これらの課題を解決するために昼夜の温度差を利用した環境発電の導入や、エッジコンピューティングの活用、2020年に国際規格が決定すると見られる5Gの採用が必須であることなどを示した。

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日本における5Gへの取り組み

 5Gについては「4Gの1000倍の容量を持つ5Gは、東京オリンピックをにらんで世界に先駆けて実用化し、日本が世界的な標準化をリードする必要がある」と述べた。

AIの進展には課題

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AIの発展には課題がある

 そうしたなかで、富士通<6702>の山本会長が懸念を見せたのがAIの進展における課題だ。

 「AIはディープラーニングの進展によって写真の犬と猫を区別することはできるようになったが、その思考のプロセスがブラックボックス化されている。なぜ猫と判断したのか、なぜ犬と判断しなかったのか、というプロセスは公開されておらず第三者による検証ができない」とする。

 さらに「こうしたブラックボックス化した技術を、医療分野や自動運転といった、人の命が関わる領域においてすべてを委ねることは怖い」との考え方を示した。確かに、医療分野や自動運転において、すべてをAIに任せることができるのかといったことはこれからのAIの活用において極めて重要な議論になってくるだろう。「AIの限界や特性を踏まえた上で、人間の能力をうまく補完する使い方が必要」だと指摘した。

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ブロックチェーンは第二のインターネット?

 一方で大きな期待を寄せたのが、ブロックチェーンの技術である。「取引データを含むすべてを、参加者同士が共有する仕組みであり、改ざんが難しく、災害時にも強い仕組みである。ブロックのなかにはアプリケーションのスクリプトを組むことができ、様々なサービスを提供する基盤にもなりうる」とする。また「ブロックチェーンはIoTとの親和性が高い。IoTの活用範囲を広げるものになると考えている」とし、「将来のICTの世界を大きく変えるのがブロックチェーンであり、第二のインターネットになるとの見方も出ている」とも述べた。

 米IDCの調査によると、IoT市場は、2020年には、全世界で約1兆4000億ドルの規模に達するという。

 「どの調査をみても、IoT市場は高い成長が予測されている。だが現時点では、既存ビジネスの合理化という利用に留まっている。新たなサービスの創造や、より広範囲な分野における最適化といったところまでは至っていない。人を中心に考えることが大切であり、人を支え、人のポテンシャルを最大限に発揮できるものでなくてはいけない」などとした。

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IoTの市場規模は大きな伸びが期待される

 そして「日本はこれまでにも技術によって、社会変革をリードしてきた経験がある。かつての蒸気エンジンや電気の発明は産業革命を引き起こし、豊かな社会を実現した。IoTはこれに勝るとも劣らないものであり、そのIoT時代にも日本が世界をリードしてくべきである」と力強く語り、講演を締めくくった。

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センサー事業で優位に立つ日本

 日本の電機通信産業は、IoTの入口となるセンサーで高い世界シェアを持つ。いまは50%を超える世界シェアを持つが、今後、新興国などの台頭があっても2020年には4割以上のシェアを維持するものと予測されている。電機通信業界が成長軌道へと回復していくためにも、IoTの成長の「波」に乗っていくこと大切である。

アスキー
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    最終更新: 10月18日(火)09時00分

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