文系女子大生のKidsVentureレポート/工作のほうがプログラミングより難しい?

アスキー 11月09日(水)09時00分配信
kids2

“カルガモ”のような動きをするロボットを作る!

 4年後の小学校での必修化という話題もあり、子供のプログラミング教室やセミナーが話題ですよね。ところが、実際に子供たちがどんなふうにプログラミングを学んでいるかってあまり紹介されていないと思いませんか?

 そこで、プログラミング経験のまったくない文系女子大生の私、天音ほのかが、さくらインターネット<3778>株式会社・ビットスター株式会社・株式会社ナチュラルスタイル・株式会社jig.jpの4社が合同で運営する非営利団体・KidsVenture(キッズベンチャー)主催の教室におじゃまし、子供たちに限りなく近い視点でレポートしていきます!

 子供向けのプログラミング教室では、PCやタブレットの中でのプログラミングやマイコンボードと組み合わせた電子工作をやっているところが多いそうです。前回お届けしたレポートもまさに、全員がハンダゴテ初体験でIchigoJam製作という特徴はあったものの、BASICでゲームのプログラムを作るという内容でした。

 それに対して、今回は、ボール紙製のロボットキット“paprika” を製作するところまでいきます。最終目標は、目の前にあるモノを自動追尾するロボットで、先頭のモノをロボットが追いかけ、そのロボットを次のロボットが追いかけ、それをまた次のロボットが……というようにして、参加者全員のロボットが連なって“カルガモ”のような動きをすることだそうです。聞いただけでもなんだかワクワクしますよね!

 また、今回の記事後半では、KidsVenture代表講師である松田優一さん(株式会社ナチュラルスタイル代表)と、代表の高橋隆行さん(さくらインターネット<3778>株式会社執行役員セールスマーケティング本部長)へのインタビューを掲載しています。なぜ、KidsVentureをやることになったのか? その経緯やプログラミング教室をやることの難しさ、楽しさについてお聞きしたのでぜひお読みください。


paprikaの中にpaprikaが入ってる!

 では、早速、ボール紙ロボット・paprika制作レポートをお届けしていきたいと思いますが、その前に、全体のスケジュールを紹介しておきたいと思います。今回のセミナーは、8月24日・25日の2日間にわたり、東京西新宿にあるさくらインターネットのセミナールームで行われた「KidsVenture 夏休みスペシャル」です。以下のような時間割になってました。

kv2

 次に、IchigoJam・BASIC・paprikaなど、今回、子供たちがとりくんでいるコンピューターやプログラミング言語についておさらいしておきましょう。

kids2
ロボット製作を指導する対馬健太さん

 前回お伝えしたIchigoJamを使ったゲームプログラミングの後、15分の休憩をはさんで、いよいよロボットの製作に入ります。事務局長 対馬健太さん(さくらインターネット<3778> 技術本部)が、「それでは、paprikaの製作をはじめます」という軽い挨拶とともに、ロボット製作の説明をはじめました。その間、他の講師によって両面テープ・ハサミ・プラスドライバー・ニッパー・ペンチといったロボット製作で用いる道具一式とpaprikaの箱が配られます。

パプリカ箱
paprikaの箱

 箱を開けてみると、paprikaの組み立て部品一式が入っていて「paprikaの中にpaprikaが入ってる!」と子供達は大はしゃぎ。paprikaの顔がデザインされたボール紙製の箱の中から、同じ顔をしたボール紙製のpaprikaが出てきたからですね(笑)。子供たちのテンションは、午後になってもまだまだ持続しているようです。

kv2
paprikaの中身説明図

 その中から、タミヤ製の「ツインモーターギヤーボックス」と「トラック&ホイールセット」を取り出すと、「残りの時間は、paprikaの足の一部になるギヤーボックスという部分を組み立てるところまで進めます。進みが早ければこっちのキャタピラを作るところまで進めちゃいますよ。paprikaの本体は明日組み立てるから、とりあえず今日は横に置いておいてください」と、対馬さんが後半の流れを説明。

 paprikaは、ブルドーザーや戦車のようなキャタピラが足になっているんですね。そして、その上にIchigoJamとMapleSyrupからなる心臓部とロボットの上体が乗っているという構造をしていて、今日のところは、明日にそなえてまず足回りを準備しておきましょうというわけです。

六角シャフト
六角シャフト
イモネジ
イモネジ

 「モーターは1秒に50回くらい回転します。そのまま車輪をつけるとものすごいスピードが出ちゃうから、ゆっくり動かすために、今日はCタイプの低速仕様ギアを組み立てていきます。はじめは六角シャフトの取り付けということで、イモネジという部品を使います。普通のネジはT字型になってるけど、イモネジには上の部分がついてなくて、ネジのところだけなんだよね、見つかったかな?」(対馬)といったように、部品のひとつひとつを確認しながら丁寧に組み立てていきます。

kv2
kv2

 ギヤーボックス部分は細かい作業が多いため、多くの子供たちが、自主的に対馬さんに聞きに行っていました。ちなみに、ひととおりの作業を終えた子供たちに感想を聞いて回ったところ、「(1日目の作業で)一番難しかった」という声が多かったです。

 一見、ハードルの高いように見えるハンダゴテによるIchigoJamの組み立てやプログラミングですが、それよりも、ギヤーボックス製作の方が難しい……これは、実際に、体験してみないと分からないことですね。

 モーターのついたギヤーボックス(車のエンジン部分にあたる)の準備ができたら、それを車のシャーシ(車体の土台となる板=車台)に見立てたユニバーサルプレートに固定。今度は、ギヤーボックスと同じくタミヤ製の「トラック&ホイールセット」から、ホイール各種と丸シャフト・ポリキャップを取り出し、シャーシにホイールを取り付け、ポリキャップで固定します。このあたりは、まさにオモチャを組み立てている感覚です。

 次に、「トラック&ホイールセット 」の残りの部品とpaprikaの部品を組み合わせます。キャタピラの部品をつなげ、同じ大きさの輪をふたつ作り、これらをホイール部分に取り付けたあとに、マジックテープと電池ボックスを取り付ければpaprikaの足回りは完成!

kv2
黙々と作業しています

 ここで、17時になりイベント1日目が終了。18人の参加者全員がモーター部分の製作を終え、ほとんどの子供たちは、シャーシにキャタピラを取り付けるところまで進めることができました!


2日目突入!目標どおりの“カルガモ”ロボットはできるのか?

 paprikaの足回りの制作を終えた人から順に本体の工作に移行していきます。簡単な挨拶のあと早速製作開始!

kv2
paprika組み立て説明書

 次に、ロボットの上体にあたる部分を組み立て、MapleSyrup(こどもモーターボード=IchigoJamでモーターを制御する基板)を取り付けます。paprikaセット同梱の説明書は、写真入りでかなり分かりやすい内容になっていると思います。ところが、見ての通り工程が多く少しややこしい。

 そのために、このボール紙工作で予定よりも長く時間を使ってしまい、全体のスケジュールにも大きな影響が出ることになってしまいました。

 ハンダ付けやプログラミングより、1日目後半のギヤボックス組み立てのほうが難しかったという子供たちの感想と同じで、ちょっと意外じゃないですか? 子供たちがいちばん得意なはずのボール紙工作ですよね。もっとも、子供たちの声を聴くと、このpaprikaの組み立てが「いちばん楽しかった」という声も多かったです。

kv2
kv2
480
kv2

 予定では、午前中にpaprikaの組み立て・MapleSyrupのドッキングを済ませ、昼食をはさんだ午後からは、「制御プログラミングについての解説」という座学になる予定でした。ところが、13時の時点でpaprikaの組み立てを終えている子供は少なく、まだ組み立て中だったりMapleSyrupの取り付け中という子がほとんど。

 先に作り終えた子供は、学習本『IchigoJamでプログラミング』に掲載されているゲームプログラム「なわとびさっちゃん」を作ったり、paprikaの説明書を読み、一足先にpaprikaを動かすプログラムを書いていたりしました。

 やはり、上が6年生で下が3年生ともなるとどうしても作業時間に開きが出てきてしまいます。この記事の後半に掲載したインタビューでも、松田さんが「教室をやる上での難しいところ」だと語っていましたが……。

kv2
kv2

 とはいえ、スタッフの助けもあって14時30分頃には、なんとか参加者全員がpaprikaの完成にこぎつけました! 

kv2
paprika動作説明書

 松田さんの解説を聞きつつ手元の説明書を確認し、paprikaを動かしていきます。まずは、前後左右へ動かしてみて異常がないかチェック。

 

 paprika動作説明書にあるとおり、IchigJamのBASICで、「OUT33」と書けば前へ動く、「OUT18」では後へ動く、「OUT0」で止まるようになっています。1日目にBASICでプログラムを書いたみんなにはもう簡単ですよね!

 
kv2

  動いたはいいものの「OUT0」で止める命令を書いてる最中に直進し続け、テーブルから落ちそうになったpaprikaを「やばい落ちちゃう!!」と笑いながら手で止めている場面も。

 
kv2
kv2

 同じように、BASICのプログラム上で「OUT《数字》」と書けば、前後の移動・停止のほかに、左右に旋回(速く/遅く)、そして、「PWM3,《数字》」で左腕、「PWM4,《数字》」で右腕を動かすことができます。腕を動かす数字は、左腕が50で前に90度、145で真下、240で後90度となっています(左右で前後をあらわす数字が逆になるので注意)。前後左右に足を動かしながら、腕まで動くって楽しそう。

 基本的な動作確認を終えたら、いよいよカルガモ歩きのプログラミングに入ります!

センサーつける
ロボットの前に距離センサーを貼りつける

 さて、カルガモ歩きのプログラムで重要な役割をはたすのが、ロボットの前側の左右に取り付けて、IchigoJamに接続する2つの距離センサーです。これによって、前にある物体についていったり、近付きすぎてぶつかったりしないようにするのです。松田さんは、以下の3つのコードを順番に試しながら、カルガモのプログラムを説明していきました。

 実は、残り時間が少なくなってしまい、スクリーンに映し出されたコードを”写経”(そのまま真似て入力)するだけにはなってしまいました。とはいえ、打ち間違えてしまい動かない……なんてパターンもあるのかな? と思いきや、皆あっさりとクリア。心なしかタイピングのスピードも上がってきているようです。子供たちは、のみ込みが早い!

kids2

 コードを書き終えると、おもちゃの車が配ばられました。これを引っぱり、各自でカルガモ歩きにチャレンジするのです。

キッズ
キッズ
キッズ
キッズ

 目の前にあるモノを認識し自動追尾するプログラムのため、自分の引く車ではなく他の子のそれについて行ってしまったり、地面がカーペットなこともあり毛を巻き込みキャタピラが外れてしまったりとてんやわんやでしたが、そのたびに講師の方がフォローして動かしていきます。

 

 なかには、paprikaに武器のようなものを装着させ、戦わせている子もいました。男の子らしい遊び方ですね!

 
kids2
代表講師の松田優一さん(右)と副代表の安中剛さん(左)

 終了時間間際になり、松田さんと安中さんがスクリーンの前に立つと「最後に、参加記念の修了証書を配るので、いちど席についてください」と指示。自分の写真入りの修了証書がひとりひとりに配布され、記念撮影をしてイベントは終了。

 
キッズ
kv2
時間外にセンサーの調節をする松田さん

 というわけで、今回のpaprika制作では、残念ながら最終目標である参加者全員のロボットをつなげてカルガモ歩きをさせることはできませんでした……。といっても、ほとんどの子供たちが各自でおもちゃの車について動かすことには成功。時間内に動かせなかった子も、イベントが終わってから講師の方にセンサーが反応するように手直ししてもらって、最終的には全員が動かせるようになってから帰って行きました。

 

生徒2人に1人という手厚いケアの意味を考えてみた

 2日間にわたって行われた今回のKidsVenture夏休みスペシャル。通常のIchigoJamの製作+プログラミング教室は、参加費2000円程度で行っているのに対して、今回の教室は1万8000円と高めの設定だな……と思いましたが、使用した教材の価格が同額なので実質無料ともいえます。それなのにここまで手厚くフォローしてくれるのか……!と思いました。逆にいえば、とても充実したセミナーだったけど、これだけの内容をやるには、お金も手間もかかるということを実感しました。

 また、私は、プログラムのあのアルファベット文字の羅列を見ただけで「難しそう……」と、苦手意識から反射的に避けてしまいます。それに対して、A・B・Cも知らない子供たちは、純粋な好奇心だけでチャレンジしているのが印象的。その意味では、好奇心満点の小さいうちからプログラミングを体験するのは1つの方法ではないかと思いました。

 しかし、小さいうちに体験してみたら難しくて全然できなかった…というのでは元も子もないですよね。そこで重要になってくるのが、またやりたくなるような“成功体験”にしてあげることです。KidsVentureの子供2人に1人が対応するというような手厚いケアは、このあたりを考えると重要なことなんだと思いました。

 子供たちは予想外のところでつまづいたりします。スケジュールに影響がでるほど時間はかかったけど、paprikaの組み立てが一番楽しかったという声が多かったのも印象的でした。もっとも、これは関係者としては、paprikaロボットの製作までチャレンジして良かったと感じる言葉だったのではないでしょうか。

橋本さん

 ということで、2日間にわたって行われた「KidsVenture夏休みスペシャル」は終了。参加した皆さん、お疲れ様でした!


代表講師と代表に聞く KidsVentureは、なぜ“キッズ”なのに“ベンチャー”なのか?

 KidsVentureは、どんな人たちがどんな経緯で始めることになったのか? 子供向けのプログラミングスクールで“ベンチャー”という言葉をかかげる理由は? この日も子供たちにIchigoJamやpaprikaの指導をされていた代表講師の松田優一さん(株式会社ナチュラルスタイル 代表)、代表の高橋隆行さん(さくらインターネット<3778>株式会社 執行役員 セールスマーケティング本部長)のおふた方に、お話をうかがった。

キッズ
(左)さくらインターネット<3778>株式会社執行役員セールスマーケティング本部長・高橋隆行氏、(右)株式会社ナチュラルスタイル代表・松田優一氏

いまの若者はコンピューターの中身を知らない。だから電子工作に触れるのがいいんじゃないか?

―― KidsVentureは、4つの会社が一緒にやっているということですけど、どういう関係なんですか?

松田 さくらインターネット<3778>、ビットスター、ナチュラルスタイル、jig.jpの4社ですが、当初は、2つの別な動きだったものが組み合わさったものです。僕のほうは、福井で2年半前からPCN(プログラミング・クラブ・ネットワーク)という活動をやっています。もともとは、私の長男が10歳になったときにやってみたのを「自分の子供だけにやっているのはもったいない」と、jig.jpの福野さんに相談したらすごく興味があると言われたんです。

―― 福野社長も福井だから。

松田 福野さんも子供のプログラミングについて地元でちょっとやっていた。それで、一緒にはじめたのがPCNという活動です。

(※福野さんの活動については「子供パソコン“IchigoJam”はどうやって生まれたか?」を参照のこと)

―― それって、最初からIchigoJamを使って?

松田 いや、まだなかったので、JavaScriptで独自のカリキュラムを準備している真っ最中に、IchigoJamを福野さんが作って持ってきたんですよ。「これで子供たちにプログラミングを伝えるのがいいんじゃないか」って、ポンと渡された。それで、電源を入れてみると昔なかしいBASICが起動するじゃないですか? 「ひょっとしたらこれでいいのかも?」と思い、自分の息子にその日やらせてみたらケラケラ笑いながら楽しんでいるんです。ということで、IchigoJamでどんどんやり出すことになったのが、2014年の夏です。

―― なるほどもう1つの高橋さんのほうは、どんなふうに始まったんですか?

高橋 2015年1月にIchigoJamをはじめて見たんですが、これいいなと思いました。ただ、その時はKidsVentureみたいな子供向けのものをやる気はありませんでした。ところが、それから2~3カ月して、北海道のビットスターの若狭さんから「今後、子供のプログラミングに関してなにかやりたい」と相談されました。

―― そのときにIchigoJamを選んだ理由というのは?

高橋 いまの若者ってハードウェアについて知らないですよね。スマートフォンの中身は知らないわけです。それで、電子工作がいいのではと考えていたときに、ちょうどIchigoJamがあった。私はもともとプログラミングはそれほど詳しくないのですが、ハードウェアとプログラミングは繋がっているということを教えたらいいのではないかと。

―― たしかに、今の若い人たちはアプリとか表面しか知らないので、中身はブラックボックスになっていると思います。

高橋 じゃあ、さっそくIchigoJam作っている福野さんのところに行こうとなった。jig.jpは、さくらインターネット<3778>のユーザーでもあるので取引があって、福野さんが福井高専で、さくらの社長が舞鶴高専で、高専同士で仲が良かったのもあります。それで、5月に福井に行った時に松田さんを紹介されて、じゃあこういう活動を一緒に広げて行こうということで始まったのがKidsVentureです。

―― なるほど松田さんや福野さんが福井でやられていた活動と、北海道の若狭さんからの呼びかけと高橋さんのお考えが、IchigoJamでうまく組み合わさったわけだ。


ここから10代で起業する子が出てきたら感涙もの

キッズ

―― KidsVentureという名前を聞いたときに、なぜ“子供”で“ベンチャー”なんだと思ったんですよ。

高橋 それは、ベンチャースピリッツを持つ若者を増やしていきたいということです。子供が10代で起業してもいいわけです。うちの田中(さくらインターネット<3778>の田中邦裕社長)が10代で起業しています※1

―― なんと見本があるんですね。

高橋 ただよく考えてみると、起業だけがすべてじゃないのではないか? ベンチャースピリッツ、熱意あふれる若者を輩出していきたいということです。

―― 子供向けのプログラミング教室って、理由として将来仕事に困らないようにとかなんじゃないですか? あるいは、子供を億万長者にしたいとか英才教育的なのもあるかもしれませんが。

松田 実際、子供を連れてくるお母さんたちは、子供が将来仕事に困らないようにという考えの方が多いです。

―― 子供のほうはどうなんですかね?

松田 子供は、とにかくロボットが好きとかゲームが好きという理由で来る子が多いです(笑)。

高橋 遊びが学びになるのです。それがいいんだと思っています。

―― プログラミング教室って、実際にやってみるとコードが学べるという本来の目的もさることながら、工夫してやり遂げるとか、仲間と出会ってアイデアを語りあえるようになったりとかいいですよね。それが、なんのことはないベンチャースピリットということかもしれません。

kv2
IoTモジュール

高橋 そうですね。ただ、KidsVentureは、塾とかではないので継続学習することは提供できません。なので、ゲームではなくて「次はこれできないのかな」っていう時にロボットだったり、さくらインターネット<3778>が提供している「IoTモジュール」ってIchigoJamと組み合わせても使えるので、サーバーにアクセスするものもできる。そこで、ネットワークの勉強ができるようになったりとステップアップができるということをしていきたいです。

―― そうやってステップアップして行った先に、本当に起業する子供が出てきたら面白いですね。

高橋 それはもう感涙しそうです。


このままじゃ日本の子供たちがヤバイかもしれない

高橋 こういうIchigoJamやRaspberry Piのようなデバイスで、センサーが使えたり、SIMモジュールで通信ができるようになってくると、いよいよ起業する子が出てくる可能性もあると思っていて、そういう世界になってくるとすごく楽しみだなと思います。

―― なるほど、いまだとそちらですね。

高橋 なんというか、創造性ですよね。起業しなくてもそういう発想があると視野が広くなると思いますし、知らないよりは知ってた方がいいです。

―― IchigoJamのソフトをパッケージの形にして売っているのは、起業のプチ体験っぽいところがありますね。あれは、KidsVentureではなくて松田さんのPCNのほうですか?

キッズ

松田 そうです。福井にMASAHARUくんっていう今年中学1年になった子がいます。彼は、小学6年生のときにIchigoJamのゲームを100本ほど作りました。そして、パッケージになったゲームはPCNで販売していて、彼のところに売り上げがいくんです。

―― あ、その子知ってます。今年、3~5月にお台場の日本科学未来館でやった「GAME ON」展でIchigoJamを展示させてもらったときに、サンプルコードないかってことで福野さんに相談して展示したんですよ。凧揚げのゲームです。

松田 そうです彼です(笑)。

―― 誰かが、買って使ってくれるというのは人生の中でも得難い経験になりますよね。誰かのためになれるところがプログラミングの素晴らしいところでもあります。ところで、日本はIT人材が足りと言われますけど、そのあたりはどうですか?

松田 僕は、割りとそのあたりの危機感もあってやっています。

―― 福野さんは、むかしよりいまのほうがプログラミングをはじめるチャンスが少ないとおっしゃっていました。

松田 このままじゃ日本の子供たちがヤバイかもしれないというのは感じます。10年後、20年後、まったく社会に通用しない状態になっていたらすごく可哀想じゃないですか? やっぱり、このあたりは親の責任なので、最低限の素養みたいなのは身につけておきたい。

―― それが、日本全体だといよいよ困りますよね。

凧上げ
GAME ONで展示されたMASAHARUくん作・凧揚げゲームとIchigoJam

ちゃんと講師を増やして地域に根付かせて定期的に開催するには

―― KidsVentureって、東京のほかに札幌、大阪、福岡などでも開催されていますけど、これから目指されるところというのは?

高橋 実は、IchigoJamをロボットにするpaprikaを使うのは今回が1回目なんです。いままでは、ゲームを作るところまでのコースしかやっていなかった。このロボットを作るのを定例化できるのか否かっていうのは今後の課題です。

―― 松田さんのほうはどうですか?

松田 IchigoJamの教室って、1回目を受けた子どもたちっていうのはもう数千人単位になってきています。KidsVentureでも、ここでハマった子どもたちが次のステージに行くためにもっと踏み込んだゲームを作ってもいいですね。あるいは、準備された講座じゃなくて僕はこれが作りたいんだけど教えて欲しいみたいな能動的な子供もいるので、そういった子供には家庭教師的な講座を用意するといいと思います。とはいえ、今の段階では次のステップをどうしていくかです。

―― やっぱり次の段階が課題なんだ。今回のロボットの最終目標はどこだったんですか?

松田 今回の最終目標はカルガモロボットっていう前にいる何かを追いかけるロボットです。18台が連なって動くという。先頭におもちゃのトラックを置いてそれを引っ張って、みんなが2日間かけて作ったロボットがぞろぞろ付いてくるっていうのがやりたいんですよ※2。近付きすぎたら止まって、ぶつからないようにっていう。

―― すごくコンピューター的なことが体験できるからいい内容ですねぇ。しかし、KidsVentureは、アシスタントの方をたくさん、講師とあわせて子供2人に1人というようなある意味とても贅沢な体制ですよね。いままで実際にやってきてそこまで必要ということでしょうけど。

高橋 そうですね。ちゃんと講師を増やしていってそこの地域に根付かせて定期的に開催するっていうことも大きな課題だと思っています。

―― 北海道や福井だけでなく地域に浸透させることも目的なんですね。

松田 僕は、ふだんは福井にいるので全国に出かけるのはスケジュール調整も大変なんですよ。なので、これはPCNの活動ですが、全国の300校に流す動画というものをはじめています。

―― なるほど。KidsVentureって、IchigoJamという素材があってそれ自身も進化している。実際にデジタルの現場で活躍されているベンチャーが寄ってたかって取り組んでいるところも面白くて、子供のプログラミングというのは、こう教えるんだという先入観なしに、まさにベンチャー的にいろいろ試みていくのが大切な気がしました。


編集注

  1. さくらインターネット<3778>社長・田中邦裕氏は18歳で起業。詳しくは同社HPまで
  2. 完成前にインタビューを行ったため、当日完成しなかったことをまだ知らないふたり
アスキー
もっと見る もっと見る

【あわせて読む】

    最終更新: 11月09日(水)09時00分

    【関連ニュース】

    【コメント】

    • ※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

    【あなたにおススメ】