人工知能を持ち歩く時代に生き残る仕事っていったいなんだろう?

アスキー 11月21日(月)09時00分配信

「よくわかる人工知能」著者でAIプログラマーの清水さんは、この後生き残る職業として「一番生存率が高いと思っているのはAI先生」と考えているそう。一体全体、AI先生とはどういう職業なのか?「人工知能は教育をどう変えるか?」対談 第2回をお送りします。

→第1回「人工知能は教育をどう変える? 2020年に向けた日本の「学び方」と漆紫穂子校長が気づいたこと」はこちらからどうぞ

人工知能は教育をどう変えるか?「よくわかる人工知能」発売記念セミナー開催
気鋭の教育者として知られる品川女子学院の漆紫穂子校長(左)。右は「よくわかる人工知能」著者の清水亮氏。「よくわかる人工知能」発売記念セミナーにて。

清水 感動させるとかは、ものによってはできるけど、人生経験がないというのが、どんな場面でも足かせになると思います。たとえば、人工知能が「わかるよ、わかるよ」といくら言ったところで、「わかるわけないだろ」って思っちゃうじゃないですか。

 たとえば誰かの相談を聞いたときに、「いや、俺も辛いことあってさ」「わかるわかる、私もさ」みたいなことがあるんだったらまだしも、「いや、おまえ、昨日製造されたじゃないか」とかね。お前の人生に辛いことなかっただろう、って。

漆 でも、面と向かったらそうだけど、メールや電話で相手がAIって知らなかったら、いけるんじゃないですか。

清水 完全にそれは「チューリング・テスト」(アラン・チューリングが1950年に考案した、機械に知性があるかどうかを計るテスト)ですね。出会い系のさくらみたいなもんじゃないですか、それって。まさに嘘をつかなきゃいけないわけですよ。相手に「人間ですよ」って言いながら、機械がやってました、って。

 「女の子ですよ」って言いながら、おっさんがやってました、というアルバイトと同じですよね。そういうのは、闇の世界では残るかもしれないけど、表立ってそういうことできないから、カウンセラーとかは残る気がします。僕、一番生存率高いと思ってるのは、やっぱりAI先生ですよ。

漆 AIが残る。先生がいなくなる?

清水 AIに先生をする人。AIトレーナー。

漆 AIにトレーニングをする人。

清水 AI教育者は、かなり長い間、いい感じで生きられるでしょうね。僕はもう、そういう仕事をしようとしてますし。AIをこうやって使ったら、世の中楽しくやっていけるとか、そのうちたぶん、AIの悩みを聞くっていうのも出てきますよ。さすがになんでもわかるものを、すぐ消そうとか言えないですから。

 「なんだかこのAIおかしくなっちゃったな、心を病んじゃったな」みたいな、消すかどうか判断してくれる?みたいな相談を受けて、AIに聞くんですよ。「どうしたの?」「最近、なんか電源が不安定で」みたいに。それで、「それは気のせいだよ。電源はみんな同じように動いてる。君が電源不安定だって思うのは幻想だから」「いや、でもほんと、最近人の悩みばっかり聞いて、嫌になっちゃったんですよね、僕、いつまで信号機をちかちかさせてればいいんですかね」みたいな、そういうAIの悩みを聞く仕事は、今のは擬人化して言ってますけど、そういうのはありそうだな。

漆 ひとつひとつ違うっていうのが面白いですよね。個性があるっていうのが。多様性があって、お友達同士に刺激されるって感じですよね。

清水 そうです。AI学校をまずつくって、AIを育てて、AI教育者になるんですよ。品女では来年ぐらいからAI学科をつくって、AI 1年生をどんどん入れていくってどうですか。

漆 相手がAIだと怒らないと思う。教員だと「ちゃんと言ったのに生徒が動かない」とか、夫婦間でもよくありますよね、「言ったのに(なぜやってくれないの)」って。だけどAIだったら、相手をプログラミングするとき、きちんと指令を出してない自分が悪いってことになるじゃないですか。だからそういう点では、自分を振り返るいい機会になるのかなと思いました。

清水 でも、AIはプログラミングとは違いますからね。

漆 あ、そうか!勝手に自分が思ってもない方向にいっちゃうんだ。じゃ、やっぱり腹立ちますね。

清水 腹立つと思います(笑)。実際僕もやってて思いますよ。「そっちじゃねぇよ!何度言えばわかるんだ、お前!」みたいな感じですから、すでに怒っちゃってますからダメです。

漆 (笑)

清水 教育がサイボーグ化の入口だという、恐ろしい話をすると、服を着るとか、トイレと食事は分けなさいとか、今泣いちゃダメだ、ということを自然に教わるわけですね。そういう教育そのものが、人間が獣ではなくなっていく瞬間なんじゃないかなと思ってるんです。生まれながらに泣くタイミングをわかってる人はいませんから。生まれながらに服を自分で着る生き物もいませんし。

 さっきの漆先生の話でいうと、今までの教育は、こういう数学的問題解決力とか、国語能力、社会適合能力、表現力、外国語運用能力とか、そういったことを教えてきたわけですけど、大体のものが人工知能に置き換わる時代が来ます。

人工知能によって知能指数や偏差値の価値がなくなる時代
そのとき生き残る仕事とは?

清水  一番ショックなのは、今まで頭の良さ、知能指数とか偏差値とかの価値がなくなるってことです。たとえば、東ロボくんという人工知能は、東大受験目指してるんですけど、今、偏差値57です。

 大半の日本人はAIに負けてる、偏差値というレベルでは。しかもこれは深層学習使ってないんですね。深層学習を使ったら、そのうち東大に本当に入っちゃうでしょう。そうすると東大生の価値もなくなるわけです。だから東大生ばかりが研究してる東ロボくんは、進路変更したんでしょうね。自分たちの価値がなくなっちゃうことを自分たちで証明しちゃうことになるので。

 ここがAIの面白いところで。IQで測るとおそらく2万5000ぐらいはすぐいくでしょう。IQを測るのは簡単ですからね。IQテストに最適化したAIが、本当にIQ250の人間と同じぐらい賢いか、というのは話は別としても、数値としてはそこまでいくと。

 そうすると、これだけIQが高いものをポケットに入れて持ち運べるようになったときに、どういう仕事が残るのかという話でいくと、まず消える仕事は「語学力」とか「デザインセンス」とか、このへんのことは、ほぼ全部なくなるでしょう。ただ僕は基本的に、いろんなところで言ってるんですけど、別にAI関係なく仕事には2種類あると思っていて。ある一定時間我慢して、我慢したことに対してお金をもらうという仕事と、何をやってもいいからとにかく楽しんで、そのうえお金までもらえるという仕事があります。

人工知能は教育をどう変えるか?「よくわかる人工知能」発売記念セミナー開催
人工知能の一般化によって、人が支援を受けることができるようになる職業。すなわち、相対的に価値が低下する職業。先日、Googleが日英翻訳などにニューラルネットを組み合わせたことで劇的に自然な翻訳が可能になったことからも明らかなように、外国語の理解能力というのは、「読み書き」という観点では2016年現在ほど重要な能力ではなくなっていく可能性が高い。

漆 清水さんがやってるみたいなのですね。

清水 そうそう。僕は後者のほうが人は幸せだと思うんです。少なくとも僕は幸せだし。ただ僕みたいな仕事をしてても、どこかで我慢しなきゃいけないことはありますよ。それをAIによって、ちょっとずつ、どうでもいい仕事というのをロボットやAIにやってもらうようにして、楽しいことを仕事にする、あるいは仕事すること自体が人生の目的になるような世界がきたら、もっと面白いのになと思うんです。

 それは労働者を救済しようと思ってるわけじゃなくて、そのほうが楽しいんじゃないかなってことです。

 僕が思ってるのは、覚えるとか頭を使うとかは、今後価値がなくなっていって、感じる、感動させる価値は残るんじゃないかと。人って、映画とかで感動させるのは簡単だけど、演説で感動させるのはすごく難しいんです。スピーチ原稿をAIが書くことはできますが、それを実際に口に出して人を感動させるのは、人でしかたぶんできない。残念ながら最後に残る職業は、政治家かもしれない、と考えると結構ディストピアですよね。

 たとえばAIが考えたものを見て、「これ、面白いよね」とか「こんな面白いものあるんだね」と感動するというのは、意外と人間のできる最後の仕事なんじゃないかなとちょっと思って。映画評論家が残るって、すごいつまんないですけど。映画つくる人よりは残る可能性があるかもしれないな、とは思っていたりします。

 また、AIを使う人と、AIを使わない人というのが生まれたときに、使わない人は、使う人に100%勝てないので、これはもう必然的に仕方なく使わない人というのは、淘汰というと言い方悪いですけど、少なくとも携帯電話使わない人も、死にはしないですけど少なくなっていったという意味で、淘汰されていってるのは間違いないですよね。というようなことが、おそらくAIに関しても起きて、この差分がちょっとずつ起きていく中で、グラデーションをつくっていくんじゃないかなと思ってます。

漆 去年たまたま高校生のディベートの大会に、うちの子たちが出てそれを見てたんですけど、テーマがAIだったんですよ。話題になってたのは、仕事をとられてしまうんじゃないかという話と、もうひとつ、シンギュラリティの、あっ英語使っちゃった(笑)。

清水 「シンギュラリティ=技術的特異点」ですね、どういう論法だったんですか、それは。ディベートだからどっちがどうとか。

漆 今まであるような説を、覚えてきてるんですよ、いろいろな学校の子が。

清水 ああ、ディベート大会だから。

漆 そのなかで、うちの子たちみたいに、全然下調べしないでその場で考えた筋書きのない突飛なことを言って、相手がびっくりする、みたいな。そういう学校も混じってたので面白かったですけどね。

清水 それは確かに面白いですね。AIを理解するという話でいうと、僕はAIというのはブラックボックスだから、ある種の自然現象として理解しましょう、触って理解しましょう、みたいなことしかやる方法ないと思ってるんです。あともう1つは、使いこなすために何を教えるかということと、何に使うかということを明確にしていく。実際、あんまりないですけどね。

 ただ子供って想像力豊かだから、すごいむちゃくちゃなことを言う。それこそ「僕のかわりに宿題やってくれないの」とか。「それつくったら、君、宿題やらなくていいよ。それつくったら、君もう大学入れるから、宿題やる必要ないよね。学校行かなくていい」。

 逆に言うと、そんな動機でも子どもって興味持ったら、わーってやっちゃう子はやっちゃうので、それはそれで1つありかもしれません。

 今までの教育って、真面目にやる、ある種のロボットの代わりじゃないですけど、ある時間我慢して求められるパフォーマンスを出すっていう仕事のやり方をする人を育てるためのものだったじゃないですか。それがAIによって、そういう真面目な方向で頑張っても、真面目な方向ではAI先生に勝てないですよっていうのは、割と共通した認識として出てくる可能性があります。

 実際僕らが今やってる仕事というと、本当にこれはみんながやりたくないんだな、というのをAIに置き換えようとしてたりします。ここでは具体的に言えないですけど、建設の現場とか、生産の現場とかで、70歳のおじいちゃんじゃないと判別できない微妙な部品の曲がり方とかあるんですよ。それを、このおじいちゃんもそろそろ引退したいから、後継者がいないので、代わりにAIでできないか、という案件がくるんです。

漆 なるほどね。

終夜営業飲食店のワンオペ問題をAIが解決する?

清水 仕事が奪われる、みたいな観点でも、本当にみんながやり甲斐がある仕事を奪っているわけではない。たとえば残業の話もそうなんですけど、なんで残業しなきゃいけないかというと、いろんな事情あると思うんですけど、結局のところ、仕事量が多すぎるんですよね、簡単に言えば。多すぎる仕事量をAIがいくばくかでも肩代わりすれば、残業しなくていいはずで、それでも残業しろっていうなら、それはまたちょっと違う話ですよね。

 実際飲食とかだと、「ワンオペ」なんかが問題になりましたけど、あれなんか、それこそロボットでいいと思ってるんですよ。だって、コンビニエンスストアって、見方を変えれば巨大な自動販売機じゃないですか、実質的に。同じものを出してくれる自動販売機があったら、別にそこでいいわけじゃないですか。店員がロボットに代わったからといって、コンビニの価値が下がるわけじゃない。

漆 実際セルフレジというのもありますからね。

清水 じゃ、なんでコンビニに店員がいるかといったら、万引きするやつとか、コンビニの前にたむろったりするやつがいるからで、それってシステムによって、近隣の4店舗を巡回するセコム<9735>みたいなのがいるとか、巡回する人がいるとかで、ある程度解決できる。

漆 レジ通らないと出られないとかね。

清水 あとそれこそ、画像解析がすごいしっかりしてるから、入った瞬間に3丁目の山田くんってわかっちゃう。しかもIDタグがついてて、持って出た瞬間に万引きしたってわかるから、万引きしたってわかるより早く、親に課金すると。

 そうすると怒るのは親ですから「コンビニ行っちゃダメ!」と言われるとかね。入る前にID出さないと入れないとか、いろいろ方法はあって。たとえばですけど、店員がいないコンビニができるとします。そしたらたぶん、店員がいるコンビニよりも明らかに安くなりますよね。

漆 そりゃそうですよね、人件費がね。

清水 そしたらそういうコンビニが、既存のコンビニの隣にできたら、人がいるコンビニは潰れますよね。だからこういうパラダイムシフトというのは、ものすごい勢いで起きていくと思いますよ。料理も一緒で、極端な話でいうと、今、牛丼屋の店員さんと触れ合いを求める人って、あんまりいないですよね。カフェにはいるかもしれないけど。

漆 ネギ抜きで!とか?

清水 それは触れ合いじゃないです(笑)。それは僕がiPhoneのSiriにいかにうまくものを頼むか、という話とあんまり変わらないですから。そういう意味では、ロボットになったらワンオペの問題って消えるし、今よりもっと安くなる。24時間営業のごはん屋さんというのが、一食100円、50円とかになっちゃったら、家でもう誰も料理つくらないですよね。そんなことは、ちょっとずつでも起きていく気がしていて。

 誤解を呼ぶ発言かもしれないですけど、コンビニの店員が人生の目標だという人は、そんなにたくさんいないですよね。家業がコンビニエンスストアならともかく、大学を卒業してコンビニエンスストアで一生働きたいと思ってる人は、そんなにいないと思うんですよ。

 それはやっぱり、ひとつの考え方として、人生のある時期にタイムチャージで、自分の時間を売ってお金を稼ぐということだと思うんです。あともっと言うと、そもそもなんでお金を稼がないといけないんだっけ? ということなんです。お金を稼がなきゃいけない理由って、とても少ないと思ってて。

なぜ人は「稼がなければいけない」のか?
人工知能はその当たり前の行為の意味を問う

漆 それわかるな。

清水 昔はやらなきゃいけかった。誰かが農作業をやらないと、ごはん食べられないから農作業が始まった。農作業が全自動になっちゃったら……。

漆 ソローが書いた『森の生活』を読んだら、まさにそうで、働くからお腹が空いて、食べなきゃいけなくて、働かなきゃいけないっていう。

清水 悪循環。ごはんを食べられる、もしくはロボットが勝手にお金をつくって、日本政府が適当にベーシックインカムでとりあえず1ヵ月死なずに暮らせるようなお金をくれる、となったら、実は働かなくてもいいという人たちが続出するはず。という意味では、なくならなそうなのは、YouTuberとかじゃないですか。

漆 それが結論!? 今日持って帰るのは(笑)。

清水 来週あたり校長先生の話で、「皆さん、YouTuber目指しましょう」とか言ったら爆笑しますよね。

漆 あまりびっくりしないかも。いつも未来の話をしているから。たとえば、女性の仕事の中で起業家って増えてくると思うんです。それでソーシャルビジネスの概念で文化祭の模擬店を営業したり、企業コラボとかもやってるので。実際、中3で起業した子とかも出てきてるんですね。YouTuberも考えてみます。

清水 正直、YouTuberはいろいろリスクはあると思うんですけど、YouTuberでやっていける人ってめちゃくちゃ頭いいですよ。

漆 それはそう思います。

清水 コンテンツづくりの部分もそうだし、常に人の気を引くとか。意外とそういう能力は、AIには獲得できませんから。キャラクターを立たせていくというのは。AIがわーっとくる前に、YouTuberを維持できるかどうかちょっと保証できないですけど。

漆 今だったら、CMクリエイターの能力だけど、これからはAIが面白いものだけ分析して抽出して受ける作品をAIがつくるという時代がきちゃうかもしれませんね。

清水 CMとかは、個人の才能にそんなに頼らなくてもいい時代というのは必ずやってくる気がしていて。すごいお金かけてつくったCMよりも、おじさんが高い声でまくしたてるテレショップのほうが売れちゃったりするじゃないですか。そこはまだ検討の余地があるかなと思いつつ。

漆 分かれてくるのかもしれませんね。本当に相手が人でなくても、安いならAIがやるので構わないって人もいるし、一方で高くてもいいから本当に人と人との触れ合いがいい、という人もいる。分かれてくるかもしれない。

清水 そうですね。結局は社会でうまくやっていく能力を磨かないといけない。人と人との触れ合いの世界ですから。そこだけはAIには学びようがない。社会がないから、あいつが好きとか、嫌いというのは、まだAIの世界にはとりあえずない。

 そんなややこしい感情を、我々もわざわざ入れないでしょうしね。仮にAIつくる側が「好き嫌いの機能、入れようぜ」と言ったら、「俺、嫌われちゃったよ」みたいになる。それ、困るじゃないですか。

漆 わかる。私の言うことだけ聞かない、とかね。親御さんがよく言うんですよね。「なんで先輩の話は聞くのに、私の話は聞かないの」って。

清水 尊敬するとか、そういう感情は人工知能には絶対入れないですね。変な邪教とかにはまったら困るじゃないですか。「やっぱ、人類は滅ぶべきだと思うんだよな。どうすか?お父さん」みたいなこと言われて、「ダメだよ」「でもちょっと、俺、先輩についていきますよ」みたいな、他のAIについていっちゃうやつとか現れたら、ヤバいです。それこそ人類滅亡のほうに行っちゃう。あえてわざわざそんな機能つけないですね。今のとこ、安全にコントロールできる。皆さん、ただちに健康上の心配はないということでご納得いただきたいですけど。

 未来の話もちょっとしてみましょうか。

「実は人間は科学的な発見が得意ではない」から
AIが使いこなせない研究機関は競争力を失う

清水  本書ではドワンゴAI研究所の山川先生とか、PEZY Computingの齋藤社長に最終章に出てもらったんですが、急にここだけはブッ飛んだ内容になっています。

 もっと普通の人向けの話をすると、今年の人工知能学会の全国大会で、ソニー<6758>CSLの北野所長が人工知能使ってこういうことやらなきゃいけないんだ、という話をしていました。科学者がいかに科学的発見をするか、それには3つあると。「“セレンディピティ”“幸運な間違い”“科学的直感”。これらはすべて偶然である。だから実は我々は科学的発見が得意ではないんだ」という話をしていて。

 実は世の中には年間150万本の何らかの論文が出ています。この論文に書かれた実験結果なり考察なりというのを、相互に検証することはもはや人類にはできません。それをAIでやるしかない。科学的発見の本質というのを見つける必要があって、実は科学的発見ということだけを考えると「産業革命以前の状態じゃないか」というようなことを言われています。

 この一番下が大事なんですけど、「AIが研究に不可欠なツール」となって、高度な人工知能システムがない研究所は競争力を失う、と。それこそ文明の進化が、本書の冒頭でも東大の松尾先生が「農業革命以来の進化だ」みたいなことをおっしゃってますけど、いま人類は知識を生み出す道具を獲得するというすごい大きな流れの中にいますよ、ということなんですよ。こういう話聞くと、本当!? って感じですか?

人工知能は教育をどう変えるか?「よくわかる人工知能」発売記念セミナー開催
「AIが研究に必要不可欠なツールとなる 高度な人工知能システムがない研究所は競争力を失う」すなわち、研究機関においても、人知を超えた試行錯誤、仮設の検証が可能な人工知能の利用は欠かせないものになっていくということだ。

漆 いや、逆にね、ちょっとあまりにこのところの進歩が速いから怖いぐらい。どうなるんだろうって。今の小学校の生徒の65パーセントは親の知らない仕事に就くって、ニューヨーク市立大学のキャシー・デビットソンさんが言ってましたけど、もっともっとそうなっちゃうのかな、とか。

清水 講演が面白いのは、人工知能の研究者が集まった中でこの話してるわけですよ。彼らはもう、2045年までにノーベル賞とるって言ってるんです。人工知能がですよ。

漆 そうすると自動運転の事故の責任は誰なのか?と同じ問題で、ノーベル賞は誰のものになるんでしょうね。

清水 それは玉虫色の感じになるんじゃないですか。とりあえずAIをつくった人の名誉になるとか。本書の中に出てくるエピソードですけど、メトホルミンという50年以上前からあった糖尿病の薬があるんですけど、実は大腸ガンにも効くんじゃないか、ということが最近わかって。

 それが半世紀もわからなかったという話が、ショックだという話なんです。それも結局、偶然に見つかった。こういうのはたくさんあるはずで、最終章を締めくくってもらった齋藤さんに言わせると、人工知能によって、人類はすべての疾病、病気を克服してしまう可能性があると。

人工知能は教育をどう変えるか?
日経新聞 Web版が2016/3/6に取り上げた記事。古くからの薬が今になって別の重要な効能を持っている可能性が判明するということは、薬効の発見そのものが相当に運に頼ったものであるということを示している。同じような現象は、材料工学などあらゆる分野に潜んでいる可能性がある。

漆 縦割り組織のお医者さんが横に連絡とれるということでしょ。わたし、更年期で動悸がしますって心臓外科の先生に言ったら、「僕、更年期の心臓、わからない」って言われたことあるんですよ。

清水 更年期障害の心臓は違うんですか。バチスタ手術できるのに。

漆 冗談かもしれないけど。結局、ハートセンターで検査しても分からなくて、婦人科に行ったらすぐわかりました。

清水 結構タコツボ化していて、人類の知性って大したことないな、という感じじゃないですか。

漆 それが横につながれば、それこそ若いお医者さんとかよりも、見立ても優れているというのがもうできてるんですよね。

清水 そうですね。いわゆる「コネクトーム」とかの話になるんですけど、これはネズミの脳ですね。ネズミの脳がどんなふうにつながっているか、というのも今はわかっていて、人間の脳もあと数十年、十年ちょいぐらいでできるよ、という話が本の中に出てきます。

 そういう話でいうと、人工知能の学習手法の「蒸留」というアイデアを人間に対して適用すれば、人間に何か絵を見せたときの脳の反応を、そのままAIが学習することは十分可能です。つまり、意識を蒸留すれば(ある種の)不老不死ができるんじゃないかとか。

 もちろん、脳の反応パターンだけ見えても困るので、こういう脳の反応のときにその人はどんな顔してるかという(こともわかるようにする)。これなんか、「デジタル遺影」として、墓前に置いておくというサービスがつくれそうですよね。

人工知能は教育をどう変えるか?
ネズミの脳の神経回路ネットワークを再現したCG。
人工知能は教育をどう変えるか?「よくわかる人工知能」発売記念セミナー開催
高度な人工知能が学習した問題と解答の組み合わせを、よりシンプルな人工知能に再学習させる手法を「蒸留」という。再学習させれば、シンプルな人工知能であっても、高度な人工知能と大差ない結果が出せることが最新の研究で明らかになっている。

 あとは「シンギュラリティ」という話があって。シンギュラリティ(AIの知性が人間を追い越す時期のこと。技術的特異点)が訪れるのって、そんな遠くないですね。本書だと早ければ2025年になってますから、ちょうど今から10年未満ぐらい。今年の入学した人が12歳で入ったとして、22歳、大学卒業するぐらいに、シンギュラリティがきてるって話なんです。

 本当を言うと、僕らには何もアドバイスできないんですね。だって卒業する頃に、人間の脳と同じ能力をもつコンピューターが、頑張って2025年までにつくれるという仮説のもとで動くという話ですからね。しかも今日は割愛しましたけど、人工知能のプログラミングというのは、他のプログラミングに比べて簡単すぎなんですよ。そこにまた恐怖を感じるんですね。

漆 子どもでもできちゃうんですか。

清水 できます。実際、僕も教室で教えたわけですから。10歳の子もやってましたから。一番元気だったのは10歳とか12歳でしたね。怖いものがない。すごい単純な回路を学習しただけでも、すごく喜んでました。昔でいったらベーシックぐらいのプログラムで(最小限で動く本物のAIが)作れちゃう。

 1ページで入るようなプログラミング言語でできちゃうというのが、実は一番僕らが恐怖しなきゃいけないとこかな。ここらでまとめましょうか。どうですか、少しは伝わりました?

漆 あんまり(笑)。でも、いろんな要素がわかりました。どういう要素が、今、考えなきゃいけないのかっていうこと。この本もいろんな人が出てきて、いろんな切り口で話すので、こんなに広い範囲に影響があるんだな、というのは改めて思って。そういう様々な視点、切り口が手に入った感じがしますね。

清水 本書のまえがきに書いたんですけど、「どこまでわかってて、どこまでわからないかがよくわかる」というタイトルだってことになってます。よくわかんないことがよくわかると。はっきり言って、僕が聞いてても「どうなってるんだ、この人たちは」という話ばっかりなんですよ。

漆 でも「なるほどー」とか書いてますよね、対談で。

清水 一応「なるほどー」と言わないと、話進まないじゃないですか(笑)。相手の話を聞きながら、どこまで実現するか僕もわからない。久しぶりにとんでもない本を書いてしまったな、という感じなんですけど。なんか刺激になったら、よかったです。

漆 ありがとうございます。品川女子学院の図書室に入れますね。あとでサインしてくださいね。

(対談セッション後の質疑応答では、参加者からの活発な質問が飛び交います。漆先生、清水さんはどう回答したか?第3回に続きます。)

アスキー
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    最終更新: 11月21日(月)09時00分

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