2370万円のスーパーカー「ホンダ NSX」の凄さは渋滞でもビンビンに感じられる!

アスキー 11月23日(水)15時00分配信

フロントは左右独立EV、リアはV6ハイブリッド
唯一無二のメカニズムがスーパーハンドリングを生み出す

 ホンダ<7267>から2016年夏に2代目NSXが登場したことはご存知だろうか。かつてオールアルミボディの軽量スーパースポーツとして一時代を築いたNSXが復活したことは多くのメディアでも報じられた。そのメーカー希望小売価格は2370万円(車両本体・消費税込み)と国産メーカーの中では突出したもので、発表会の席において本田技研工業<7267>の八郷社長さえも「自分では買えない」と冗談めかして言ったほど。その庶民には縁遠いホンダ<7267>製スーパースポーツを試乗する機会に恵まれたので、さっそくレポートしたい。

NSX

 アメリカ・オハイオに新設された専用工場において一日8台のペースで作られるというNSX、つまりホンダ<7267>のクルマではあるが輸入車となる。モノグレードで、様々なオプションによって好みに合わせるといった設定だ。

 試乗した個体は、カーボンファイバーエンジンカバー(40万円)、カーボンファイバーインテリアスポーツパッケージ(36万円)、カーボンセラミックローター ブラックキャリパー(113万4000円)、電動4WAYパワーシートセミアニリンレザーアルカンターラ(32万4000円)、そして特別有料色のバレンシアレッド・パール(67万円)といったオプションを装備していた。合計、車両価格は2658万8000円(税込)!

 さらに試乗前には「フロントオーバーハング(タイヤより前のバンパー部分)が長く、段差で擦りやすいので気をつけてください」と注意される。2658万8000円のクルマだから、ちょっと擦っただけでも物凄い修理代になるのだろうな……と緊張しつつシートに収まることになった。

NSX
ボディーサイズは全長4490×全幅1940×全高1215mm、車両重量1780kg。幅は広いが、意外に取り回しはしやすい。重量についてもハイブリッドスポーツとしては十分に軽量といえるだろう

 あらためてNSXのプロフィールを説明すると、定員は2名で、ボディーはアルミを中心にカーボン<5302>や高張力鋼板、軽量樹脂などを適材適所に使ったもの。エンジンは専用設計された3.5リッターV型6気筒ツインターボをミッドシップ(運転席の後ろ)に積んでいる。エンジンの出力は、これまた専用開発された9速DCT(デュアルクラッチトランスミッション、MTよりも素早くシフトチェンジができる)を介してリアタイヤを駆動する。エンジンとトランスミッションの間には薄型モーターが組み込まれており、これはターボエンジン特有のラグ(遅延)を解消するなどに活用されるハイブリッドパワーユニットだ。

 フロントタイヤは左右独立したモーターで駆動、こちらはハイパワーのためというよりも、左右の駆動トルク移動などによってハンドリング性能を高めるためのメカニズムとなっている。そのシステム全体の最高出力は427kW(581PS)、世界のスーパースポーツの中では突出したパワーを持っているわけではないが、前述したようにフロントタイヤで曲がる性能を高めていることが新型NSX最大の特徴となっている。

NSX
リアウィンドウ越しにも確認できる3.5L V6ツインターボエンジン。ごく一部しか見えないようにカバーされている演出はスーパースポーツらしい部分。エンジン単体でも507馬力を発生する

 とはいえ、スペック上の最高速は308km/h、車両設定でスピードリミッターをカットすることもできるので、許された状況と腕に自信があれば、その速度まで味わうことは可能だ。今回は静岡県御殿場で箱根エリアを中心とした試乗だったので、その領域には遠く及ばない速度域でしか味わうことはできなったが……。

 公道に繰り出した第一印象は、実に乗りやすいというものだった。2500万円を超える価格、全長4490mm×全幅1940mm×全高1215mmというボディーサイズから緊張感あふれるドライブになるかと思いきや、動き出した瞬間から体との一体感を強く感じたのには驚かされた。フロントタイヤの接地感や位置が、まるで両手の先につながっているようにリニアに感じられたのだ。おそらく動き出しはフロントタイヤをモーター駆動するだけのEV状態となっていて、エンジンが止まっているのも、こうしたフレンドリーさにつながっているのだろう。ミッドシップで多気筒エンジンが唸りをあげていると緊張してしまうものだが、NSXについては本当に静かに走り出すことができる。

NSX
試乗車にはメーカーオプションのカーボンセラミックローターが装備されていた。ブレーキ<7238>はバイワイヤ(機械的につながっていない)のでペダルフィールを判断するのは難しいが、低速からキュッと効くタイプではなく、踏み込んでコントロールするキャラだ

シーンに応じてクルマのセッティングを
ガラリとかえるダイナミックモード

 NSXには「ダイナミックモード」といって、パワートレイン、サスペンション、ステアリングなどの特性を4つのプリセットから選ぶ機能が備わっている。その中で、もっともおとなしく走るための「QUIET」モードを選んでいれば、可能な限りEV状態(つまりフロントのみで駆動する!)で走ってくれるのだ。そのほか「SPORT」、「SPORT+」、「TRACK」とあり、それぞれシフト前のダイヤルを回すことで選択可能。

 シフトといえば、最近のホンダ<7267>車に増えているボタンを使ったセレクターで、マニュアル変速はステアリングについたパドルで行なうタイプ。つまり、走り出してしまえば、両手はずっとステアリングを握っていることになる。自然と、こうしたドライビングスタイルになることも、クルマとの一体感を強めてくれる理由のひとつだろう。

 今回は公道試乗ということもあり、ほとんどを「QUIET」と「SPORT」モードで走ることにした。どんなに頑張っても法定速度でNSXの限界性能を感じるのは難しいだろうから、日常域でどれだけスーパースポーツの片鱗を感じることができるのかを探ってみようというのがテーマだ。

NSX
エンジンの後ろに小さなトランクを持つNSX。フロントはラジエーターや駆動モーターなどがギッシリと詰め込まれている

 結論からいえば、渋滞中でもNSXの凄さ、とくにハンドリング性能の素晴らしさは体感できる。フロントタイヤの駆動トルク移動を軸としたパワートレインは「スポーツハイブリッドSH-AWD」と名付けられているが、その効果は30km/hくらいでステアリングを操作したときにも感じられたのだ。低速ではステアリング系の遊び(操作から動き出しまでのタイムラグ)が気になるものだが、NSXについてはそれがほとんどない。まさに心のままに曲がっていくという印象を受ける。逆に、リニアリティを追求してメカニカルな遊びを減らしていくと、操作がシビアで難しくなりがちだが、そうした印象もない。つまり、「スポーツハイブリッドSH-AWD」の効果は市街地走行の領域でも存分に味わえる。そして、このメカニズムが世界のスーパースポーツにおいても唯一無二の特徴である。

NSX
逆台形のマフラーエンド。その中に大小4本のパイプが並んでいる。排気音はターボらしい低音系で、快音という印象ではない

 そのうえ、旋回速度は明らかに速い。直線からコーナーに入るときも最小限の減速で済むのは実感できる違いだ。絶対性能ではないが、公道走行においてもパフォーマンスの高さを感じることができる。それは「QUIET」モードでも変わらない。ちなみに「ダイナミックモード」でサーキット走行向けの「TRACK」を選ぶには停止状態でダイヤルを長操作する必要があり、走りながら変えることはできない。

 せっかくなので、そのモードも選んでみたが、磁性体を使った可変サスペンションはサーキット指向の硬いフィーリングとなり、当然ながら街乗りではオススメできない。市街地であれば「QUIET」か「SPORT」を選んでおきたい。ただし、「TRACK」モードはアクセルペダルの操作に対するリニア感が優れているのが魅力。現時点では、「ダイナミックモード」に好みの組み合わせを作るといった機能は設定されていないが、「SPORT」モードのサスペンションに、「TRACK」モードのパワートレインとステアリングを組み合わせたモードを試してみたくなる。

 だからといって電子制御に乗せられているという感覚はない。電子制御によってハンドリング特性までも含めて、好みの状態に変身してくれるとうポジティブな印象であり、その意味ではスーパースポーツの世界に新しい時代を拓く一台となっている。冒頭、2370万円の価格は庶民に縁遠いと書いた。たしかに購入するためには宝くじで一等に当たるくらいしか可能性はないが、たとえ渋滞しているようなシチュエーションであっても、スーパースポーツらしいハンドリングが味わえる唯一性を思うと、2370万円というのはバーゲン価格かもしれないと思い始めるのであった。

NSX
ドアミラー越しに、スタイリングの特徴となっているフローティングピラー(浮き上がった柱)やインテークの奥にターボで過給されたエアを冷やすインタークーラーが確認できるのは、NSXに乗っていることを実感させてくれる。(写真は助手席で撮ったもの)
アスキー
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    最終更新: 11月23日(水)15時00分

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