製造、介護から畜産まで、IoTビジネス共創ラボが国内事例紹介

アスキー 12月06日(火)06時00分配信

 日本マイクロソフト(日本MS)と東京エレクトロンデバイス(TED)が中心となって2016年2月にスタートした「IoTビジネス共創ラボ」。12月1日、その主要参加企業と、米マイクロソフト クラウド&エンタープライズ マーケティング担当の沼本健コーポレートバイスプレジデントによるパートナーラウンドテーブルが東京・品川の日本マイクロソフト本社で開催され、各ワーキンググループが進捗状況を報告した。

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「IoTビジネス共創ラボ」パートナーラウンドテーブルの模様
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米マイクロソフト クラウド&エンタープライズ マーケティング担当 コーポレートVPの沼本健氏
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東京エレクトロン デバイス<2760> IoTカンパニーVPの福田良平氏

IoTビジネス共創ラボ、すでに200社を超える規模に成長

 IoTビジネス共創ラボは、IoTプロジェクトの共同検証を通じて、日本市場におけるIoTの普及と、ビジネス機会の創出を目的とした取り組みだ。「IoTエキスパートによるエコシステムの構築」「プロジェクトの共同検証によるノウハウ共有」「先進事例の共有によるIoT導入の促進」を活動の3本柱として、「Microsoft Azure」ベースのIoTソリューションを開発し、共同検証の結果を公開したり、参加企業とエンドユーザー企業とのマッチングの場を提供したりするとともに、IoT技術者の育成活動なども行う。

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IoTビジネス共創ラボの活動目標。IoTソリューションのエコシステム構築から共同技術検証、顧客企業とのマッチングまで

 TEDと日本MSのほか、アクセンチュア、アバナード、テクノスデータサイエンス・マーケティング、電通国際情報サービス<4812>、ナレッジコミュニケーション、日本ユニシス<8056>ブレインパッド<3655>、ユニアデックスが発足メンバーとなって、今年2月にスタート。8月からはソフトバンクロボティクスも加わり、この11社が中核参加企業となっている。

 TEDでIoTカンパニーVPを務める福田良平氏は、「最初の1年間で100社の参加を見込んでいたが、(IoTビジネスには)多くの企業が興味を持っており、10月末時点で218社が参加している」と説明する。

 具体的な活動はワーキンググループに分かれて行われている。ビジネスインパクトを持ったIoTシナリオを検討する「ビジネス ワーキンググループ」、モノから収集・蓄積した多様なデータを分析・活用する「分析ワーキンググループ」に加えて、業種ごとに、「製造ワーキンググループ」「物流・社会インフラ ワーキンググループ」「ヘルスケア ワーキンググループ」を設置。さらに8月からは、ロボットとの連動を模索する「Pepperワーキンググループ」も設置されており、それぞれの分野でIoT普及活動に取り組んでいる。

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IoTビジネス共創ラボでは6つのワーキンググループが活動している

養豚の現場でIoTとデータアナリティクスが“出荷予測”を可能にした

 同日のラウンドテーブルでは、各ワーキンググループによる、IoT導入事例とその効果の紹介も行われた。

 製造ワーキンググループの報告では、コンテック<6639>小牧工場におけるIoT活用事例が紹介された。工場および防湿保管庫の温湿度をセンサーで集中管理しており、部品の温湿度だけでなく作業者の健康管理にも活用しているという。

 「稼働状況が見えることで、作業者の意識が高まった。また、これまでクローズドだった情報が生産部門以外にも“見える化”され、工場に勤務していない社員も稼働状況を意識するようになっている。今後もさらなる効率化、コスト削減効果を目指す。外部へのシステム販売の基礎が出来たほか、この実績は風力発電の遠隔監視などにも展開できる。今後は、Azure IoT Suiteで製造分野向けパッケージの品揃え強化を期待したい」(TED IoTカンパニーエンベデッドソリューション部 部長代理の西脇章彦氏)

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コンテック<6639>小牧工場におけるIoT活用事例

 物流・社会インフラ ワーキンググループでは、グローバルビッグファームによる養豚の現場におけるIoT導入について説明した。これは、新たに生まれた豚が、出荷されるまでにどれくらいの日数がかかり、将来的にどれくらいの頭数を出荷できるのかを予測したいというニーズに対応するものだという。

 「過去10年分の出荷データとセンサーデバイスから得られる豚舎のデータを組み合わせることで、分娩から出荷、配送までを含めた予測が、1週間の誤差でできるようになった。これまでは属人性の高い“勘と経験”による予測だったが、それを標準化できた。今後は、IoT活用でリアルタイムに温度状態を監視し、豚舎の空調の自動化をしていく」(ナレッジコミュニケーション 取締役執行役員COOの小泉裕二氏)

 一方で、豚舎を定期的に高圧洗浄する際に、水圧によってセンサーデバイスが故障するという課題も見つかっており、小泉氏は「耐久性のあるAzure Certifiedデバイスを増やしてほしい」と要望した。ちなみに現在、Azure Certifiedデバイスは100以上あり、日本製も26デバイスが認定されているという。

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過去10年間の出荷データと豚舎のセンサーデータを用いて“勘と経験”に頼ることなく予測

 分析ワーキンググループでは、AIを活用したユースケースを模索。具体的な提案として「すし屋でおもてなし」を開発し、コグニティブサービスを使った接客の高度化と、新たなユーザー体験の実現を目指しているという。

 「店舗に入る際に一時対応してくれるロボットを作り、訪日観光客に対して『日本は最初にロボットが混雑状況を教えてくれる』という環境を作りたい」「画像認識(顔認識)を使って、年齢に合わせた大人向け/子ども向けメニューの切り替えたり、外国人が発音しにくいメニューの音声を補完して聴き取ることで、訪日観光客でも音声注文できるようにしたりする」(ブレインパッドソリューション本部プロダクトサービス部・熊谷誠一部長)

 すし屋以外にも、ファミレスなどでも使用できるように横展開を想定しているという。

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「すし屋でおもてなし」ソリューションの概要

介護サービス改善や顧客エンゲージメント向上にPepperを活用

 ヘルスケアワーキンググループでは、2つの事例を示した。

 ひとつは、オフィスの個室トイレの可視化である。個室トイレのドアにセンサーを取り付けて、使用状況を把握。トイレの使用状況を可視化することで、オフィスライフの充実と生産性向上が実現できるという。

 「機械学習を活用することで、長時間に渡って個室を利用している人には警告を発するという使い方もできる」(ユニアデックス マーケティング本部ビジネス開発部新ビジネス企画室グループマネージャーの椿健太郎氏)

 もうひとつは、介護サービスにおける活用だ。2025年度には38万人の介護士が不足すると言われており、現場の効率化は不可避。そこで、Pepperを活用した介護支援の実証実験を、半月ほど前から開始したという。これは、Pepperが個人を特定して声をかけたり、会話を楽しみながら血圧測定を行えるというもの。また、環境データと体調との相関関係なども研究しているという。

 「実証実験のなかでは、介護士へのケアを含めてやっていく必要性を感じた。ヘルスケアIoTの普及に向けた認知度向上の活動も大切である」(椿氏)

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「Pepperを活用した介護支援」ソリューションの概要

 Pepperワーキンググループでは、Pepperの活用が顧客エンゲージメントに効果を発揮することを説明した。

 「Pepperは日本語、中国語、英語に対応し、データ収集やリピーター対応も可能。本体だけならば顔認識できる人数が制限されるが、Azureとの連携で多くの人を認識するようになる。加えて、Azureの音声認識機能を活用することで、自然な対話が可能になる」(ソフトバンクロボティクス 事業推進本部 エンタープライズ&グローバル事業推進部 エンタープライズ事業課の村林圭子氏)

 なお村林氏は、約230社のPepperパートナーにはAzureを活用できる企業がまだ少ないため、日本MSと協力して8月から毎月、50人規模の勉強会を開催しており、開発事例の紹介も積極的に行っていると述べた。

IoTビジネス開発は「ROIよりも『ビジネスそのものが変化する』点が重要」

 IoTビジネス共創ラボでは実証実験も積極的に行っているが、「実証実験といえども、実ビジネスに近いところで活動を行っているのが特徴」だと、日本MS クラウド&エンタープライズビジネス本部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの大谷健氏は説明する。

 今年10月、11月には、製造ワーキンググループによるソリューション活用セミナーを東京/大阪/名古屋/福岡で開催し、合計で475人が参加した。このセミナーは実際にAzureを活用するもので、参加者の7割がその場でAzureを使えるようになったという。

 「参加者からは、こんなに簡単にAzureが使えるということに驚きの声があがっていた。今後も『実ビジネスを作っていく』活動を中心にして展開していきたい」(大谷氏)

 また、IoTビジネス共創ラボに対する日本MSの関わり方は、従来とは違っているという。

 「これまでの日本MSのコミュニティは、製品を提供し、あとはSIerに任せるという動きが多かった。しかしIoTビジネス共創ラボでは、プラットフォームを提供するだけでなく、MSのエンジニアリング部門やマーケティング部門が一緒になって検討し、ソリューションを作り上げていく姿勢がみられる。これまでの日本MSのコミュニティ活動とはまったく状況が異なる」(ユニアデックス マーケティング本部ビジネス開発部長の関口修氏)

 米MSの沼本氏は、同社ではIoT分野に「レベニューをはるかに超えた投資」を行っており、「クラウドならではのソリューションレイヤーとして期待している」と語った。

「IoTは、ユースケースごとのROIが算出しにくい側面もあるが、ROIよりも『ビジネスそのものが変化する』点が重要。今後はパートナーエコシステムをいかに支援していくかという点にも注力したいと考えており、その意味でも、IoTビジネス共創ラボの活動は重要である」(沼本氏)

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今回のラウンドテーブル参加者
アスキー
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    最終更新: 12月06日(火)06時00分

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