「爆買い」の舞台は中国本土へ 信頼性で急成長する越境ECベンチャーbolome

アスキー 12月09日(金)09時00分配信

 日本や韓国で商品を入手し、現地価格で中国市場向けに売り出す事業が急成長している。国家の枠を超えてダイレクトにEC事業を行う『越境EC』というビジネスモデルだ。

 中国大手の百度(バイドゥ)からも出資を受けるなど、今注目を集めているのがbolome(ボウロウミイ)だ。ベンチャー企業として、サービスを正式にスタートした2015年7月より約1年半。早くも月商は5億円に達する急成長を実現している。

 この中国ベンチャーの創業メンバーのひとりが水野裕哉氏だ。同社のCEOであるZhendong Zhang(張振棟・ジャンジェンドン)氏とともに、中国市場でモバイル広告用のプラットフォームベンチャーをかつて経営。2013年に、百度(バイドゥ)に約50億円でバイアウトした後、2015年に張氏と越境ECビジネスを運営するベンチャーを立ち上げた連続起業家だ。

 1年足らずで50億円超を調達し、「中国のGDPに影響を与える」目標をかかげ急成長をとげる日中混成ベンチャーの現在を聞いた。

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bolome(ボウロウミイ)共同創業者の水野裕哉氏

「爆買い」にライブ感・現地価格・信頼性担保で勝負

 最近でこそ落ち着きはしたが、多くの人が中国人観光客による「爆買い」と言う言葉を聞いたことがあるはずだ。急速に近代化した中国市場では、日本の家電製品や日用品の偽物が横行しており、現地購入の信頼性が低い。そのため、旅行者や留学生などに日本や韓国での購入を依頼するという流れがあった。bolomeが目を付けたのがこの部分だ。

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 その特長は大きく3つ。ひとつは、”現地からの生放送”という動画プレゼンによるライブ感のある演出と短時間でのフラッシュセール。次に、現地価格で購入できる仕組み作り、最後に信頼性のある現地調達だ。水野氏によると、同じように日本、韓国の商品を輸入して販売している業者は少なくないが、多くは香港などで仕入れているのに加えて、価格も日本で購入するより高いのが実情という。

 「うちはあくまで通販を越境でやっている会社。主に取り扱っているのは日本製と韓国製の商品。日本だとドラッグストアで販売している化粧品や日用品が中心。今、日本の商品でだいたい、5000点ぐらいを取り扱っている」(水野氏)

 bolomeでは日本と韓国に現地法人があるので、現地でモノを調達して、中国に持っていく。「買い取りや委託、受注発注の形式で、商品のサプライヤーを探して、日本の倉庫や中国の保税区と呼ばれる倉庫に集め、それを個別に配達するという仕組み」

 現在ユーザー数はアプリダウンロード数で約500万。競合他社の正確な数字、また取り扱う商品の種類がそれぞれ異なることなどから、判断は難しいが、サービス開始から約1年半という期間としては、順調なスピード感でユーザーを獲得できているそうだ。

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メーカーのオフィスでテレビショッピング敢行

 ではbolome躍進の原動力となっている、3つの要素をついてより詳しく聞いていこう。まずひとつが、動画ライブだ。bolomeでは、中国時間の平日昼12時半から、毎日スマートフォンで楽しめるカジュアルなライブ中継を行っている。いわゆるテレビショッピングだ。しかも、単なる一方通行のライブ中継ではなく、画面上にコメントが流れていくチャット形式で、スタッフとユーザーがインタラクティブにやりとりしながら、ショッピングを楽しめるようになっているという。

 さらに面白いのが、このライブ中継にはいわゆるテレビ用の機材を使っておらず、自社開発のスマホアプリで撮影を行っているという点だ。

 「スマホひとつでどこでも中継ができる。基本的にはライブ中継は現地メーカーのオフィスに伺って収録している。もちろん、場所がない場合など、外でやる場合や弊社でやることもあるが、できるだけ伺う。生の動画を通すことで、ちゃんとメーカーさんと関係があることを伝えられる」(水野氏)

 たとえば、化粧品メーカーのオフィスで生中継をやる場合、先方のトレーナーや社員も番組に出演して、一緒に商品の紹介や使い方の説明を行う。これをbolomeのスタッフが中国語に翻訳するかたちだ。さらにチャットルームに質問がきたら、その場でスタッフがすぐ先方に聞いてくれる。

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ナレーターや出演者の顔が見えることで親近感と信頼性の獲得につながっているよう

 「中国でECをやる上で、『偽物ではない』ということを、どうやってお客さんに信頼してもらうかが最も大切。だから、提携していますとテキストで書いても仕方がない。口で言うのはいくらでもいえる。しかし、先方のオフィスから動画ライブを中継したら、その信頼性が確保できる」

 中国市場で海外商品を販売するときにもっとも求められるのが信頼性だ。偽物が横行する中国だからこそ、信頼性を担保することに意味がある。bolomeの動画ライブは、見ているお客さんと直接コミュニケーションをとりながら、商品を紹介できることに加えて、メーカーをそこに絡ませることで、圧倒的な信頼感の獲得を実現しているのだ。

 「人って顔が見えたり、自分が質問したりしたことに対して、いつも見ているナレーターが返してくれると親近感が沸いて信用してくれる。ほかのeコマースは顔が見えないが、bolomeは顔が見える。中国市場でやる上で、大切な信用が得られている」

現地調達も含めた、サプライチェーンを構築

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 越境ECにおいて大切なのが中国市場で人気のある商品をしっかりとおさえることだ。たとえば、中国のいわゆる爆買いユーザーの間では「神12」と呼ばれている商品がある。越境ECとしてビジネスを行う上で、まずはそれをしっかりとおさえる必要があるのだ。

 そして、その上で、まだ知られていない商品を開拓していかなければ競争力はつかない。しかし、それらもただ写真とテキストを載せただけでは買ってもらえない。動画を通じて、日本の良い商品を紹介して販売していく。bolomeではライブ動画を現地で撮るということ、そして、現地での仕入れの2つのために、日本と韓国に現地法人を置いているという。

 「商品を仕入れて売るわけなので、普通に売ってくれると思っていた。でも実際はそんなに簡単ではない。最初は、国内流通にも相手されずに、量販店で買ったこともあった」(水野氏)

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 どうやって現地の流通と組めるか、サプライチェーンを築けるかという部分も、ほかとの大きな差別化点だという。bolomeは日本支社も韓国支社も、半分は現地人。だから、現地調達も含めた、サプライチェーンを作っていける。そうして関係を作りながら、まずは爆買いリストの商品を集め、さらに中国で知られていない日本の良い商品を開拓している。

 現地に支社を持つということは大きなコストを抱えることになる。しかし、それ以上にメリットがあるという。ひとつは中国で知られていない良い商品の情報をいち早く入手し、仕入れられること。そして、中国市場で絶大な支持を集めている爆買い商品をメーカーから直接、仕入れられるということだ。他社が、二次流通などから商品を仕入れているのに対して、bolomeでは主要商品の多くを現地で仕入れられる。これが商品価格の設定と利益を生み出している。

 ただし、越境ECとメーカーとの間ではさまざまな問題があるという。それが中国に現地法人を持つ場合のコンフリクトだ。

 「たとえば、なかには何年もかけて中国市場の開拓のために身銭を切りながら、コストのかかる一般貿易で税関を通して、市場を作っていった日本企業も多い。しかし、越境ECなら、その税関コストが圧倒的に安くできる。また、時間もかからない。現在では日本の新商品をリアルタイムで販売できるため、それを行った場合、そのまま現地法人にダメージとなってしまうことがある。とあるメーカーからは、1つの商品は正規で卸すから、他の商品の取り扱いを辞めてほしいと言われたこともある」

現地での小売価格で販売する

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アプリ内での価格は現地の値札写真とともに

 通常、輸入販売される商品というのは流通コストが乗せられるのが当たり前だ。しかし、bolomeで取り扱っている商品は、現地価格、つまり日本の商品なら、日本国内のドラッグストアなどで販売されている価格で、中国で販売しているのだ。

 これは前述のとおり、越境ECだからこそ実現していることだ。

 「その名の通り、小売店で販売している価格でそのまま中国でも爆買いができますよということ。アプリを見てもらえればわかるが、ドラッグストアに置かれているような値札をそのまま写真で掲載している。あとは今日の為替レートがいくらだから、人民元だといくらだという表示もしている。これらも信用化のための一端。こういった写真をとれるのは現地にチームがあるため」(水野氏)

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 だが、日本で仕入れて中国で売るというビジネスモデルである以上、流通コストなどはかさむ。それでいて、日本の小売価格で成立するのだろうか。現在は、2つの配送方式で使い分けているという。

 まず、越境ECによる輸入の場合、中国政府の後押しにより、一般貿易と比べて圧倒的に関税などが安い。そももそ化粧品などは、通常50%の関税がかかっている。さらに、いわゆる人気商品はロットで買い付けて大量に輸出できる。ただし、商品は「保税区」という倉庫に保管しなければならない。この保税区に商品を入れた時点では税金はかからず、そこから出すときに出す分だけ税金が掛かる仕組みだ。中国国内の物流コストは非常に安いため、そこからは通常のeコマースと変わらずに配送すれば、日本の小売価格での販売ができているという。こういった商品は、すでにきちんと利益が出ている。

 「ただ、この保税区は一度商品をいれると、出すのが大変。大量仕入れができるような、売れる商品しか入れられない。一方でテストマーケティングのために仕入れた商品や日本の店頭で仕入れた戦略的に仕掛ける商品、そして、日本限定などの数がない商品は別。こういったモノは問屋からは入手できないため、店頭で買う必要があり、こういった商品は直送用の倉庫から送っている。収益は良くてトントンでもうかるものではない」

 だが、こういった「ほかではない商品」を取り扱っていることが引きになる。これらがあることで、日本商品が好きなユーザーはbolomeを選んでくれるという。今や越境ECで取り扱っている商品の大半は横並びで、中国市場で人気の爆買いアイテムなどは他の越境ECでも購入できるのだ。

 ちなみに、直送商品は単体で発送すると赤字になるため、数百元以上購入すると送料無料といった形にしている。金額にシビアな中国人に対して、『日本の小売価格で買える』という訴求は非常に大きい。

ターゲットは可処分所得が高い20~30代の女性層

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画面内に飛び交うクーポン券アイコン

 bolomeを初めとする越境ECを利用している人はどのような人なのか。水野氏によると、90%以上が女性だという。中国人の平均所得がアップしたとはいえ、それは一部の都市層の市民だけだ。結果、利用者は可処分所得の多い若い女性が多い。そのため、アプリの利用者として、iOSユーザーが圧倒的に多いそうだ。

 「一般貿易で中国に入って来た化粧品などは、日本の小売価格の2倍以上になる。そのため、越境ECの方が圧倒的に安い。化粧品や粉ミルクやおむつなど、若い女性が必要とするモノがよく売れる。また、日本の場合は、カルビー<2229>の『フルーツグラノーラ』なども人気」(水野氏)

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 商品ラインナップだけでなく、売り方もさまざまなチャレンジをしている。最近スタートしたのが、動画ライブとからめた共同購入だ。これは一定数の注文が来たら、販売価格が安くなるというもの。ユーザー側が自らのコミュニティに商品のリンクを教えるなどして、拡散してくれる。また、動画ライブを試聴しているチャットルーム内のコミュニケーションもより盛り上がるという。

 このほかに、アプリ画面内に赤い封筒アイコンが表示され、当たりを引くとクーポン券がもらえる『ホンバオ』というお年玉のような仕組みや、動画ライブ中に合い言葉をコメントし、購入したユーザーに電話をかけて、その合い言葉が言えたら購入額が無料になるといった、インタラクティブなゲームも用意。こういった取り組みを通して、bolomeでの買い物そのものを楽しんでもらえるようにしているという、

 「もともと中国でも、テレビショッピングは人気があった。越境ECで動画ライブを始めたのはbolomeが最初。今大切にしているのは、新規ユーザーを獲得すること。この1年でビジネスモデルと企業としての体制がしっかりとできあがってきたので、あとはユーザー数が増えたら、利益は上昇する」(水野氏)

 約1年半で500万ダウンロードと、月商5億円を生み出したbolomeだが、中国市場ではすでに越境ECの淘汰も始まっているという。百度(バイドゥ)をはじめとした50億円を超える資金調達も、勝ち組としてさらなる成長を目指すためにある。

 動画ライブの仕組みで新規ユーザーは一気に増えたが、現在では落ち着きつつある側面もあるという。今後は、商品数を増やすなど試行錯誤の取り組みが待っている。あくまでターゲットは若い女性であり、日本、韓国の商品だけを取り扱うというスタイルは崩さないと水野氏は語る。

 日本国内での取引先も150社を突破。爆買いでの盛り上がりを背景にしつつ、問屋との取引を開拓した段階はすでに終わり仕入れも安定してきている。「やはり日本人として日本の商品が好きなので、知られていない商品を紹介したい。中国のユーザーに買ってもらうことで、日本側にもお金を流すやりがいがある」

 中国のeコマース市場はまもなく、100兆円という日本の約10倍の規模に達する。さらに2020年には、200兆円以上の市場になると予想されている。bolomeの目標は、この市場を手中に入れ、中国のGDPに影響を与えることだという。

 桁違いの巨大市場で勝負し、さらに桁違いのスピードで成長を続ける日中混成チームによる中国ベンチャー「bolome」の今後に注目したい。

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●株式会社bolome
2015年創業。本社は中国・上海の保税区内にある。「スマートフォン」に特化したライブ中継スタイルの越境ECアプリ『bolome(波羅蜜)』を中国で展開。日本・韓国の商品を販売している。
中国・シンガポール・韓国のVC、エンジェルから複数ラウンドで合計4300万米ドル(約50億円)を調達済み。
社員数は200名。日本の支社は40名。

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    最終更新: 12月09日(金)09時00分

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