年内最後、麻倉怜士推薦「いますぐ聴きたい、高音質ハイレゾ音源」

アスキー 12月30日(金)13時30分配信
麻倉怜士のハイレゾ

 評論家・麻倉怜士先生による、いま絶対に聴いておきたい“ハイレゾ音源”集。2016年最後の回となります。リサ・バティアシュヴィリがチャイコフスキーの協奏曲を録音していなかったというのは意外でした。クラシック成分がやや多めですが、ゴダイゴやスティングなども必聴盤です。年末年始、一息つくタイミングにダウンロードして聴いてみてはいかがでしょうか?

 特におすすめの曲には「特薦」「推薦」のマークもつけています。e-onkyo musicなどハイレゾ配信サイトをチェックして、ぜひ体験してみてください!!

チャイコフスキー&シベリウス: ヴァイオリン協奏曲
リサ・バティアシュヴィリ, ベルリン国立歌劇場管弦楽団
ダニエル・バレンボイム

特薦ロゴ

 リサ・バティアシュヴィリは、世界的に注目が集まるグルジア出身のヴァイオリニスト。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、CDジャーナルによると「あまりにも多くのヴァイオリニストがこの作品を演奏し、あまりにも多くの解釈が私の頭の中にあるからという理由で避けてきた」ということだ。

 彼女のやる気を引き出したのは、「あなたとチャイコフスキーを演奏したい。その思いに突き動かされて、私はこの協奏曲を研究し、自分のレパートリーの一つに取り入れた」と言ったバレンボイムだった、とCDジャーナルはリポートしている。

 冒頭のオーケストラの導入部が、これからヴァイオリンを迎える心構えとわくわく感を演出。あたりを睥睨しながら堂々と入るバティアシュヴィリのヴァイオリンは、一音一音が慈しむように発せられ、音の表面のなめらかさと、それと対照的な内実の深さと緻密さが同居する。チャイコフスキーのこの通俗名曲でも味わいの深さという点では、最近のベストではないか。悠々としたテンポ感も体感的に気持ち良い。オーディオ的なサウンドも素晴らしい。ナチュラルで解像感と階調感がここまで深い同曲の録音も随一だ。録音は2015年5月、ベルリンにて。

FLAC:96kHz/24bit
Deutsche Grammophon、e-onkyo music

Revive、Elina Garanca
Orquestra de la Comunitat Valenciana, Roberto Abbado

特薦ロゴ


 ラトヴィア出身のメゾ・ソプラノ、エリーナ・ガランチャは現代最高の歌手の一人と評される。私はクラシカ・ジャパンの放送でメトロポリタン歌劇場の「カルメン」を観て、とりこになった。

 冒頭のアリアで、なんて深くて勁く感情を揺さぶる声なんだ、と。その感動がこのアルバムで再度味わえた。ガランチャの深く、体積が大きく、渋く、深淵な音の塊が聴き手に向かってハイスピードで迫り来るのを聴くのは、ブレシャスな体験だ。情熱的なバックを務める、クラウディオ・アバドの姪のロベルト・アバドとバレンシア自治州管弦楽団の音がいい。抱擁力があり、包み込むような器量の大きさが聴ける。ガランチャの歌とオーケストラの音場的なバランスも好適で、2つのスピーカーのセンターを中心に、大きなヴォーカル音像を描く。

FLAC:96kHz/24bit
Deutsche Grammophon、e-onkyo music

In War & Peace - Harmony through Music
Joyce DiDonato

特薦ロゴ

 2度のグラミー賞を受賞した「アメリカン・ディーヴァ」。刮目の感情表現力と独自の音楽語法を展開するハイテクニックで、いま世界から注目の的だ。躍動的なベルカント・オペラ分野でも大評判だが、本ハイレゾはバロックアリアから「平和の意味」を考える、好アルバム。

 1曲目、ヘンデルの"Some dire event hangs o'er our heads... Scenes of horror, scenes of woe"。まずはリュートの伴奏を従えた、感情の濃い歌声から始まる。透明で、彩度感に豊むサウンドだ。

 次は、いかにもバロックオペラ的なアクセントが強調され、ハイスピードで進むオーケストラの番だ。細部まで丁寧に解像し、音の輪郭が明解。メゾ・ソプラノはエキセントリックとも形容できるほどの強調的な感情を発し、高音域が見事に強靱。音場はひじょうに透明感が高く、直接音、間接音のこまやかな音変化を余すところなく、高解像に捉えている。

FLAC:96kHz/24bit
ERATO、e-onkyo music

57TH & 9TH
Sting

特薦ロゴ

 タイトル「57TH & 9TH」は、ニューヨークのマンハッタン区・ヘルズ・キッチンにあるスタジオ前の交差点の名前。ビートルズ「アビーロード」のニューヨーク版だ。ジャケット写真はまさに、雨上がりの夕景のなか、57TH & 9TH交差点を歩くスティングの情景。レコーディングは3ヶ月に渡って行われ、作曲、編曲の締め切りがタイトだったとスティングは告白している。

 "a lot of rock 'n' roll" (ロック色の横溢した)サウンドがアルバム全体の狙いだ。

 1曲目、I Can't Stop Thinking About You。まさにロック。ギターとドラムの冒頭のリフからして輪郭が強く、音の主張が強靱。ヴォーカルもハイテンションで高剛性。くっきりと先鋭で、迫真感に溢れる。これぞロックという自負と鮮鋭さ。音のメッセージ性がクリヤーだ。

 2曲目、「50000」はプリンス、デヴィッド・ボウイ、グレン・フライなどのロックのアイコンが次々に世を去ったことからものした曲だ。冒頭のギターとドラムが、迫力満点。ヴォーカルは導入部は輪郭をぼかし、曖昧な感じを出しているが、バースに入るとエッジをくっきりと立て、対照的な音調となる。大きな音像が、2つのスピーカーの間に睥睨する。

FLAC:96kHz/24bit
A&M、e-onkyo music

GODIEGO GREAT BEST Vol.1 -Japanese Version-
GODIEGO

GODIEGO GREAT BEST Vol.2
-English Version- (24bit/96kHz)

特薦ロゴ

 「ビューティフル・ネーム 」、「ガンダーラ」、「銀河鉄道999」、「モンキー・マジック」などの大ヒット曲満載した全16曲のゴダイゴのベストアルバムだ。CDは94年発売。ゴダイゴはまず英語で作詞、次に日本語化している。そこで英語版と日本語版が選べるのは珍しいサービスだ。

 なつかしのゴダイゴだが、過去の記憶に比べて、本当はこれほど音が良かったのかと驚いた。3曲目「ガンダーラ」。ひじょうに解像度が高く、クリヤーで、先鋭感が高い。1978年の録音だが、音の質感は新鮮で、剛性感が高い。4曲目「銀河鉄道999」。いわゆるハイファイ調ではなく、中低音に重心を置いた歌謡ポップス的な音調だ。ここでは自宅の大きなスピーカーで試聴しているが、この中域に塊感のある音は、ポータブルハイレゾ機器と良質なヘッドホンでの聴取にも合うだろう。切れ味が鋭いが、線は決して細くなく、ぶっとい音の塊が疾走する、爽快な歌謡ポップスだ。

WAV:96kHz/24bit、FLAC:96kHz/24bit
日本コロムビア<6791>、e-onkyo music

Mozart: Don Giovanni
Teodor Currentzis

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 鬼才指揮者クルレンツィス/ムジカ・エテルナによる、モーツァルト/ダ・ポンテシリーズの完結編だ。

 第一弾「フィガロの結婚」(2014年)、第二弾「コジ・ファン・トゥッテ」(2014年)に続く第三弾。颯爽とかヴィヴットなどの形容を遙かに超えた超過激なモーツァルト。その劇薬性には、ダ・ポンテ作品の中でもとびきりデモニッシュな「ドン・ジョヴァンニ」がもっともふさわしい。

 しゃれではないが過激な歌劇だ。演奏はピュアピリオドに、クレンティスの過激な解釈を加え、これまで聴いたことがないウルトラスピード。疾走というより爆走といったほうが正しい。音が音場内を走り回り、ひじょうにくっきりとした音のクマドリを作る。音もこの過激なパフォーマンスを活かす、解像度の高さとハイスピード性が耳の驚愕だ。2015年11月23日-12月7日、ロシア、ペルミにてセッション録音

FLAC:96kHz/24bit
Sony Classical、e-onkyo music

オン・マイ・ニュー・ピアノ
ダニエル・バレンボイム

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 世界最高峰のピアニスト&指揮者のダニエル・バレンボイム氏が考案した新型ピアノを同氏が演奏したD。従来型のグランド・ピアノは左端で低音域と中音域の弦を交差させているが、新型は交差を避け、すべての弦を平行に張った。

 従来構造と実際の音の違いは何か。音の透明度が格段に上がり、特に中高域において音の響きの滞空時間が長くなったことだ。低音部での平行化による低域特性の改善は当然だが、その好影響により中高域での粒立ちが細やかだ。いかにもスカルラッティらしいラブリーなコケティッシュさが、新ピアノの音調のクリヤーさ、音離れの速さにより、より感じられるようになった。

 録音は、そんなピアノの新構造を活かした、これまた品質感が高い。録音は2015年10月、ベルリン、テルデックス・スタジオにて。

FLAC:96kHz/24bit
Deutsche Grammophon、e-onkyo music

Japanese Songbook 2
たなかりか

推薦ロゴ


 たなかりか は関西のライブハウス・ホテルなどで活動しているジャズ・シンガー。2012年のJapanese Songbookの続編だ。

 1曲目「黄昏のビギン」(作詞: 永 六輔 作曲:中村八大)。味わいが深い音調。たかなりかの太い声調を活かし、大粒な音の塊感を作っている。 共演のピアノ、アコースティックベース、ドラムスというシンプルなコンボも、音が太い。音調的にはハイレゾの情報量をしっかりと持ちながら、音の器量感を押しだす。5曲目「夢で逢えたら」 (作詞/作曲:大瀧詠一)。英語調の発音が心地良い。アルトな音域でのしっかりとして押し出し感が、この可愛い曲想に迫力を与えている。

WAV:96kHz/24bit、FLAC:96kHz/24bit
After Beat、e-onkyo music

KTR×GTR
押尾コータロー

推薦ロゴ

タイトルの「KTR×GTR」は「KoTaRo × GuiTaR」のこと。アコースティックギターのスーパーソロアルバム、ソロはソロでもメロディ、ハーモニー、リズムの音楽の三要素をひとり、1丁でこなす多能なギター独奏だ。

 2曲目、三菱電機<6503>カーナビのCM音楽、TOGETHERはハイリズムだが、ベースからパーカッションまでひとりでこなすのは本当に驚き。音はまさに眼前演奏の生々しさ。近接マイクで、直接音のすべてが鮮烈に捉えられている。音の立ち上がり/立ち下がりが極めて俊敏で、切れ味が抜群だ。87

FLAC:96kHz/24bit
Sony Music Labels Inc.、e-onkyo music

ラプソディー・ジャパン
村治佳織

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 村治奏一とのデュエットの2台ギターと、ソロギターで奏でる日本の名歌集。透明感の高いジェントルな音色が、日本の叙情を高らかに歌う。

 メロディを歌う佳織のギターは、音が太く、音色もカラフルで、音の到達力が強い。奏一のギターは細身で優しい。2つのギターの音色の違いがハイレゾで鮮明に再現される。

 「花は咲く」は佳織の独奏。優しく、深い思いを込めた撥音が、ハイレゾでひじょうにクリヤーに伝わってくる。ハイレゾの表現力にてこの曲の情感がさらに深い部分まで到達したといえよう。映画「ディア・ハンター」テーマ曲の「カヴァティーナ」(スタンリー・マイヤーズ作曲)は深い感情と限りなき優しさを湛えた名演だ。

FLAC:96kHz/24bit
Decca、e-onkyo music

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    最終更新: 12月30日(金)13時30分

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