ゲーム音楽吹奏楽コンサート「あそぶらす 第1話」 豪華作曲家陣インタビュー&演奏レポート

アスキー 01月08日(日)11時00分配信
あそぶらす

「僕らは新曲をどんどん書いているのだから、新曲だってどんどん演奏される仕組みを作っていかないといけない」

 そう語るのは、ゲーム音楽の制作会社でありながらゲーム音楽のコンサートやイベントも多数主催している株式会社ノイジークローク代表の坂本英城氏。
 2014年には「沖縄ゲームタクト2014」、2015年には「音霊 OTODAMA SEA STUDIO 2015 ビキニ&トランクス ~汗だく!ゲーム音楽ダンスナイト!~」と、ゲーム音楽作曲者自らがステージに立ってゲーム音楽を披露する企画を立ち上げ、ファンを楽しませています。

 昨年8月26日には、ゲーム音楽作曲者とプロの吹奏楽団がタッグを組み、作曲者本人が編曲・監修だけでなく指揮や演奏で参加するまったく新しい吹奏楽エンターテイメント「あそぶらす第1話」が開催されました。この演奏会に密着しましたので、本番直前のリハーサルで実施したインタビューや本番当日のレポートを写真を交えながら、特大ボリュームでお届けします!

「あそぶらす 第1話」本番直前リハーサル
豪華作曲陣&音楽監督インタビュー!

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ブリッツ フィルハーモニックウィンズ音楽監督 松元宏康氏

――本日初めて奏者全員が揃ってのリハーサルだったそうですが、リハーサルを終えての感想をお願いいたします。

松元:ゲーム音楽については、すばらしい作品を色々と知っているつもりだったんですけど、今日改めて「うわ、こんなにかっこいい曲もあるんだ」、「こんなにステキな曲もあるんだ」と感じました。自分でもこんなに心を動かされるなんて、ちょっとびっくりしたぐらいです。やっぱり吹奏楽とゲーム音楽の相性っていいんだなって思いましたし、そのことをより多くの人に知って欲しいなって思いました。

――今回の「あそぶらす」が初演になる楽曲が多いと伺っています。改めてゲーム音楽を指揮なさっていかがでしたか?

松元:携帯やゲーム機を通して聞いていた曲を生の音で聞いて、新しいクラシック作品を聞いたような思いになりました。
 モーツァルトならモーツァルト、ブラームスならブラームスで、それぞれの作風というものがあるわけですよね。僕は普段クラシックの専門家として、モーツァルトやブラームスなどの作曲者とその作品・作風に向き合っているわけですが、今日のリハーサルでは、作曲者の方と実際にお会いして、その方の作風というか、個性を生の音で聞けたことが僕はすごく面白かったし、わくわくしました。

――今日拝見したリハーサルでは、作曲家と演奏家が互いにより良い作品を生み出していこうという、一丸となった熱意をとても感じました。

松元:僕は仕事で演奏をしてはいますが、やはり根底にあるのは「演奏している音楽の良さを多くの人に伝えたい」ということです。
 今回はノイジークロークさんを中心に、ゲーム音楽の作曲家の方々とご一緒させていただいて、ゲーム音楽のすばらしさを伝えられたら、と思っていますし、作曲家のみなさんも同じ思いでいてくださっているんだな、ということが伝わってきて、僕もすごく嬉しかったです。

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リハーサルで打ち合わせをする坂本氏(奥)と松元氏(手前)
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株式会社ノイジークローク 坂本英城氏(左)、いとうけいすけ氏(右)

ゲーム音楽で、ステレオタイプの「吹奏楽」のイメージを変えたい

――前回のインタビューで「The Final Time Traveler」が「あそぶらす」を開催するきっかけになったとお伺いしました。
 そして、今回は2015年のバージョンからさらに編曲したオリジナルアレンジで演奏されるともお伺いしましたが、具体的にどのように変わったのか教えてください。

坂本:2015年のバージョンと一番違うのは、ピアノが入ったことです。前半部分は2015年のものとほとんど変わっていないのですが、間奏から後ろの部分にピアノが入りました。
 あと、演奏の後半、三拍子の部分がちょっとマーチングっぽかったところを変えて、原曲に近くしました。2015年のものの編曲は原曲を崩しすぎちゃったというか、やりすぎてしまった気がしていて。なので、今年(2016年)はクラシカルにメロディが流れるような編曲になっています。

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さらに編曲が加わった、2016年バージョンの「The Final Time Traveler」スコア

――ピアノが演奏に加わったきっかけは何ですか?

坂本:今回は音楽監督の松元さんに「坂本さんにピアノを弾いて欲しい」とご依頼いただきました。その依頼を受けて、後半の編曲が原曲に近いかたちになっています。
 ただ、僕、オーケストラや吹奏楽に加わって、誰かの指揮でピアノを弾くっていうのが初めてなんですよ。だから指揮と演奏のタイミングを合わせる方法がまったくわかんなくて。……みんな何を見て合わせているんだろう。

いとう:それは指揮を見て合わせてるんじゃないんですか?(笑)

坂本:いやでも、こうやってるここ(指揮棒を振る動作)で音を出すのかと思いきや、溜める場合はこんなこと(指揮棒を振る動作)やった後、1秒ぐらいおいてから「ジャーン」って音が出ることあるじゃん。

いとう:ある。あるある。

坂本:なんで溜めるところでみんな音が合うの? って不思議で。僕だけ指揮棒の振りに合わせて弾くから、一人だけ音が早く出てるっていうのが何回もあって。だから様子を見ながら、みんなが音を出すタイミングに合わせて弾こうとしてると、「坂本さん音小さいです」って指揮の松元さんに言われて。「どうしたらいいんだ!」って(笑)。
 指揮される体験を、もっとしなくちゃいけませんね。自分が指揮をするにしても、作曲をするにしても、「指揮される体験」は大事だと改めて思いました。

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――今回、坂本さんの楽曲はもう1曲、『討鬼伝2』の楽曲が演奏されます。こちらについてもご紹介いただけますか?

坂本:2曲からなるメドレーになっていて、最初の「西風」はゲームを起動したら誰もが聞く曲です。『討鬼伝』好きな人なら絶対に知っているメロディも入っています。
 「マホロバ -栄-」は、本拠地の曲。ミッションをした後、必ずここに必ず戻ってきて、この曲を聴きます。プレイヤーが一番聞く曲ですね。

――なぜこの2曲を選ばれたのですか?

坂本:自分が気に入っている曲だから、という理由ももちろんありますし、先ほど言った通りでプレイヤーがよく聞く曲だから、という理由もありますが、今回、僕はあえてテンポが早くなく、音数も多くない曲を選びました。『討鬼伝2』だけでなく、「The Final Time Traveler」もそうですね。
 というのも、いとうくんとか、岩垂さんとか、みんな派手なアレンジで来るんだろうなと思ったんです。で、派手なアレンジはほかのみなさんにお任せするとして、僕は「吹奏楽は繊細な演奏もできるんだよ」っていうのをアピールする役に回ろうと思ったんです。

――たしかに今日拝見したリハーサルでは、『サウザンドメモリーズ』メドレーも、『逆転裁判6』の「法廷組曲」も、吹奏楽曲と言われてまず真っ先に思い浮かべる「ザ・吹奏楽!」的なかっこよさが全面に出ている印象でした。

坂本:僕は吹奏楽のイメージをちょっと変えたいなって思っていて。
 おっしゃられたように、みんなが思っているステレオタイプの「吹奏楽」のイメージがありますよね。で、そういう力強い演奏ももちろんできるんだけど、もっとクラシカルで、優しい曲調も吹奏楽のレパートリーにあるんだよっていうのを聞いて欲しいなと思っています。

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――『サウザンドメモリーズ』メドレーのお話が出たのでいとうさんにもお伺いしますが、いとうさんは吹奏楽のアレンジをされるのは初めてですか?

いとう:初めてです。

坂本:意外な感じですよね。

いとう:「吹奏楽っぽい」編成で、打ち込みでゲーム用に曲を作ったことはありました。
 でも、こういうふうにちゃんと演奏していただく機会をいただいて、吹奏楽編曲をし、楽譜をつくり……っていうのは初めてです。

――吹奏楽アレンジならではのご苦労はありましたか?

いとう:木管楽器やホルン、トランペットなんかの、移調楽器の多さですかね……。今回指揮も担当するのですが、実音階ではないパートの楽譜は全然読めなくて……。だから実は、こっそり自分用の楽譜だけは全パート実音階で書き出しました。

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リハーサルで指揮を振るいとう氏

坂本:僕もそう。でも今回、それをし忘れちゃって。

いとう:それマズくないですか?

坂本:だから今日木管の人たちから質問されたところは、間違いのないように「きちんと調べてから明日お答えします」と答えました(笑)。
 あと吹奏楽に限らないですけど、打楽器パートさんは人数が限られているんですよね。今回、マックスで5人奏者がいらっしゃいますけど、6つの打楽器の音が同時に乗ると、当然、叩けない。今回、僕の編曲で1か所だけ音が6つかぶっちゃったところがあって。見つけたとき「あーっ!」って(笑)

いとう:「ひとりでふたつ音出して!」みたいなことに……。

坂本:あと、打楽器の距離があんまりに離れていると、2拍の間にダッシュして次の楽器まで移動しなきゃいけないとかいう事が起こってくる。そういった物理的な制限があるのも、生演奏用のアレンジならではの難しさでしょうか。

――どのぐらいの期間で編曲されたんですか?

いとう:編曲はですね、音域がおかしくないかとか、楽器の組み合わせがおかしくないかっていうのを、社内チェックで色々見ていただいて。このやりとりを挟んだので結構時間かかりましたね。実働だと1週間ぐらい。

坂本:1週間って、結構かかったね。

いとう:僕の場合はコンピューターで曲を作るのに慣れてしまっていて。音量のバランスも、鋭い音やまろやかな音といった音色の変化も、コンピューターでどうにでもなる世界ですよね。音の厚みがほしい場合はシンセサイザー足せばいいし。
 その、コンピューターでどうとでもなる世界の仕事に比べたら、ちゃんと演奏していただくための編曲になるように綿密に確認しながらの作業はどうしても時間が必要でしたね。坂本さんはどのぐらいかかりました?

坂本:3時間ぐらい。

いとう:あっ……。これ、あれじゃないですか。社長が「俺は3時間でやった」って言ったことを「僕は1週間かかりました」って言ったら、なんか、今後の仕事に響きません?

(一同爆笑)

坂本:僕、決断が早いんだと思います。「この音、こっちにしようかな、あっちにしようかな」とか、あんまり迷わない。こうだと思ったら、それで決めちゃいます。もう、どんどん。
 とはいえ、後から考えて、直したいって思うこともありますけどね。事実、「The Final Time Travelers」は2015年に演奏していただいた演奏を聞いて、あーここ直したい、って思ったし。でも、『サウザンドメモリーズ』の曲みたいなのをもし書くとしたら、あれは3時間じゃさすがに無理だと思う。メドレーで、しかもあんな変拍子の曲ばっかり!

(一同笑)

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新しいゲームの曲を、旬の曲を演奏する、というのが当たり前にならなきゃいけない

――ノイジークロークさんが企画に携わっておられる演奏会では、常に新たな試みがされているように感じます。どういった思いで、斬新な、他とは違うようなアプローチを選んでいらっしゃるのか、考えていらっしゃることがおありでしたらお聞かせください。

坂本:あの、ダイレクトな言い方になりますけど、いまのゲーム音楽コンサートって「いつまで20年、30年前のゲーム音楽ばっかり演奏してるの?」って思っています。だって、僕らは今も新曲をどんどん書いているんですから。
 もちろん、聞く側に「あのゲームの曲をやるなら演奏会に行くけれど、やらないなら行かない」というような意識があって、有名タイトルの有名曲が求められているという実状もあるだろうとは感じています。でもこの状態を、率先して変えていきたいです。変えていかないと、演奏会はいつまでも過去の有名タイトル頼りになってしまう。
 そういう意味では、今回の演奏曲目は結構チャレンジングだと思うんですよ。「ゲームタクト」(※)にも通じるんですけど、「ハイドンやバッハのような作品」、つまりゲーム音楽ファンなら誰もが知っている過去の有名曲っていうのは、ひとつもないですよね。イベントの主催者視点だと、それで本当にお客さんが来てくれるのかとか、色々考える部分もあります。でも、作曲家たちが主導して、ちゃんと利益も上がって、新曲だってどんどん演奏されるような仕組みを、みんなで一緒に考えて作っていきたい、作っていかないといけない、と考えています。

※坂本氏が代表を務めるゲーム音楽制作会社・ノイジークロークが主催するゲーム音楽フェス。2014年に沖縄で開催され、ゲーム音楽作曲家が多数参加する『濃い』イベントとして好評を博す。
2017年5月6日に第2回開催が決定。詳細はこちら

――確かに、「あそぶらす」の演奏曲は、ここ5年以内に発売・発表されたタイトルばかりです。

坂本:スマートフォンのゲームの曲も、今回あえて多めに選曲しています。新しいゲームの曲を、積極的に取り入れていくという点は、「あそぶらす」が他の演奏会とは違う、特徴として掲げていきたいです。
 新しい、旬の曲を演奏する、というのが当たり前にならなきゃいけないけれど、そうなるには少し時間がかかるかな、とも思います。とはいえ作曲者側の熱はすごく高いですし、続けていくことで絶対ファンも付いてきてくれると思っています。

――今回の演奏会では、かなりたくさんの学生の方々がご来場の予定だと伺いました。

坂本:「あそぶらす」は、今、吹奏楽を一生懸命練習している学生の方々に特にスポットを当てています。ここに来れば、吹奏楽をやっている中学生・高校生がレパートリーを増やせるといったような演奏会になるように、と。そこを意識しました。

――吹奏楽版の譜面の販売のご予定などはおありですか?

坂本:今のところ具体的な予定はないですけど、できるようにしていきたいなと考えています。
 演奏を聞きに来るだけじゃなくって、なんというか、「演奏課題曲紹介・ゲーム編」みたいな……演奏会に来た人が、あの曲やりたいな、学校で提案してみようかな、って思ってもらえるイベントにできたらと。そこから広がっていって、演奏者じゃない人にも、吹奏楽も面白いな、って思ってもらえる演奏会になればいいな、と思っています。

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左から、岩垂徳行氏、なるけみちこ氏、伊藤賢治氏

――『逆転裁判』シリーズの「法廷組曲」は、今までオーケストラで演奏されていたことはありますが、吹奏楽で演奏されるのは……。

岩垂:ないです! 初めて。もともと僕は吹奏楽をやっていたので、吹奏楽には慣れているはずなんですけど……最近はオーケストラ演奏が多かったんですよね。吹奏楽の譜面を書いたのもすっごい久しぶりでしたし。

――オーケストラと吹奏楽って、全然違うものですか?

岩垂:うん、全然違う。久々すぎて吹奏楽独自の音色を思い出すのが難しかったです。「こういう風に音が鳴るかな」って想定しながら編曲したんですけど、実際に音を出してみるとなかなか違っていたりしました。

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「逆転裁判6」リハーサルの様子

――なるけさんは、今日のリハーサルいかがでしたか?

なるけ:わたしも学生時代吹奏楽をやっていて、吹奏楽コンクールを趣味で聞きにいったりはしていたんですけど、仕事ではオーケストラに携わらせてもらうことが多くて。だからわたしも岩垂さんと同じで、想定している通りに鳴るかどうかとか、音量感はどうかとか、すーごい不安だったんです。でも、だいたい想定通りに、いい感じに鳴っていました(笑)。
 今日一番感動したのは、やっぱりユーフォニアムっていう楽器は偉大だなあ、って! もう、全てを丸く包み込んでくれる。すごくいい楽器だな、ってことに、改めて気がつきました。

――今までのコンサートで、なるけさんが演奏でご参加されていたことはおありでしたが、指揮で参加されるのは初めてですか?

なるけ:高校生の時、吹奏楽部で1年間ずっと指揮者をしていたことがあるので、経験はあるんです。でも、それからずいぶん経ってるので……。「もっとできるはずだった」とか、逆に経験が邪魔しているところもある気がしていますけど、蘇ってくる楽しさがとてもあったので、本番に向けてちゃんと整えたいって思ってます!

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リハーサルで「刻の工房」の指揮を振るなるけ氏

――『パズドラメドレー』はいかがでしたでしょうか。

伊藤:僕は、アレンジはアレンジャーさんにお任せして、最後の監修をさせてもらいました。とってもいい編曲になっていると思います。

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リハーサルを見守る伊藤氏(奥)と、編曲を担当した三浦氏(手前)

なるけ:『パズドラ』かっこよかったね。ぐっとハートを鷲づかみだよね。

伊藤:トランペットがやっぱり肝ですね。鳴りと、あとは演出。
 演奏ももちろんですが、それぞれのパートのソロの立ち方だとか、吹き方とか。そういうところも今日監修させてもらえたので、本番ではもっと目立って映えるといいな、と思っています。

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パートごとでの立奏も

――せっかくなので、もう少し具体的にそれぞれのご担当曲の聞き所について教えていただけますか?

岩垂:『逆転裁判6』に関しては、ゲームタクトとかにも来てくれてる人は分かってると思うんですけど、曲中で「異議あり!」というかけ声を、お客さんも含めてみんなでやります。せーの、でお客さんを立たせて、「異議あり!」ってしたら、盛り上がると思うんですよね。それから、法廷の木槌の音も入れる予定です。
 あとは、吹奏楽用に編曲したことで増えてる音もあるので、そのあたりを聞き比べて欲しいかな。

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「異議あり!」のポーズは『腕は振り下ろすのではなく横から突き出し、体を少し斜めに、指先はやや下向きに』という具体的な指示が、岩垂氏から飛んでいた

なるけ:わたしのは……えーと、なんて言ったらいいのかな……。

岩垂:「わたしを見てくれ」って言わなきゃ。

なるけ:わたしを見……あははははは(笑)。
 わたし結構、いつもなにかしら演奏に交じったりとかしてて、出たがりなんで(笑)。なんかやるたびに、見てる人全員が緊張するっていう状況を打破したいと思いつつ、今回は一番緊張させる、指揮をやることに……自らしてしまったという。どっちかっていうと見ないで欲しい部分ではあるんですけど。うまくいくように祈っていてください。

岩垂:「見どころ」じゃなくて「見ないどころ」(笑)。

なるけ:うん(笑)「見ないどころ」は私の指揮です(笑)。
 冗談はさておき、「刻の工房」は結構メロディアスな曲なので、木管のみなさんの歌心が見せ所ですね。きっと楽しんでもらえるかと思います。

伊藤:パズドラは、音楽そのものと、ブラス<2424>のパワーが聞き所ですね。スマホゲームの宿命じゃないですけれど、いまだに「音楽あったんだ」って認識のされ方をしてるんですよ。「あ、イトケンが作曲やってるんだ」って、いまだに言われる。今、この時点でさえも、です。
 電車の中でプレイしていたり、部屋の中で音を消してプレイしているのは、ある意味仕方ないとしても、じゃあ、こういう演奏会の機会で「これがパズドラの音楽だ」と改めて聞いていただいて、音楽的な聞かせどころとか、ブラス<2424>による迫力とかを感じていただきたいな、って思ってます。

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作曲者、メーカー、演奏者で組むタッグを

――「あそぶらす」は、「ゲーム音楽×吹奏楽」の組み合わせを大きく取りあげた演奏会となりますが、今後吹奏楽演奏でやっていきたいと思っておられることなどはありますか?

岩垂:僕もずーっと吹奏楽やってたし、今も教えていたりもするんですけど、現状、学生たちには新曲の楽譜が足りていないと感じています。だから、供給していかなきゃいけない。そういうところは、「僕らの使命」みたいなところがあるのかな、と思ってます。吹奏楽でどんどん新曲が演奏されるようにしたいですね。

なるけ:岩垂さんの流れを汲んだような話になりますけれども、今回の「刻の工房」はパートごとのアンサンブルを順々に並べたようなアレンジなんですね。
 で、RPGの曲で、町の曲とか、フィールドの曲とか、たとえば木管アンサンブルで成立するような譜面を作って、少人数でもどんどん演奏できるような展開ができれば、と思っています。いろんなゲーム音楽の作曲家と相談して、まとまったかたちで定期的に提供できればいいな、と。オーケストラや吹奏楽団として演奏するのも楽しいけど、アンサンブル、パートアンサンブルとしても展開できるといいな、って、今回の一連の作業をしながら思っていました。

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伊藤:じゃあ、僕はある意味現実的なお話を(笑)。
 演奏会をするにしても、やっぱり、メーカーにもご協力頂けないことには難しいんですよね。例えば、僕の場合はスクウェア出身ということもあって、自分の判断だけでは「スクウェアのオフィシャル」ということには絶対にできないんですよ。譜面も残せません。権利はスクウェア・エニックスにあるので。
 と、いうことも踏まえて、メーカーなどの権利側にもサポートしていただけるのであれば、僕らも楽曲提供者や作曲者として、いろいろな譜面を書いたり、演奏のサポートをさせてもらったり……という協力が、もっとできると思うんですね。ゲーム楽曲がこれからも演奏会を盛り上げていくための素材となるように各メーカーに動いていただいて、我々作曲者も参加する、という流れが理想だと思います。

「若さ」というファクターと「ゲーム音楽演奏会」

なるけ:実はわたし、申し訳ないんですが、ブリッツフィルさんのことを今回のお仕事で初めて知ったんです。で、高校時代の吹奏楽部の友達に今回の演奏会のことを話したら、「ブリッツフィル知ってるよ、CD持ってるよ」って言って貸してくれて。聞いてみたらすっごく上手くて! だから、ちょっとびびってますけど非常に光栄です。

岩垂:若い人が多かったね。

なるけ:うん、なんか、あらゆるレスポンスがすごく早くて……そしてとても好意的にわたしたちを受け入れてくださった。ありがとうブリッツ!

(一同笑)

伊藤:僕が言うのもなんだけれど、若さってすごい重要なファクターだと思うんですよ。吸収力とか柔軟性も含めて。
 年齢が上の人達って、意識はせずともやっぱり「ゲーム音楽」っていう意識があるというか、どこか色眼鏡で見られていたりとかするじゃないですか。それがその世代の考え方として、仕方ないにしても。
 でも、若い人達っていうのは、僕らの関わってきた、ファミコンから始まる「ゲーム」を子供の頃からやっていて、今、こういう演奏の仕事について、子供の頃にやっていたリスペクトしてくれている作品の曲を、ちゃんと一緒に演奏しよう、っていう意識でやってくれる。だから立場からして違うんですよね。
 彼らの一生懸命さと、我々が求める部分が合致すれば、演奏会はもっと、2乗にも3乗にもいいものになっていくと思います。こういった演奏会をきっかけに、我々としてもイベントやレコーディングなんかで仕事のオファーをさせていただく機会もあるでしょうし。そういう意味では、お互いのプレゼンの場だと思うんですよね。楽曲のプレゼンと、演奏のプレゼン。高いモチベーションで、今後も一緒にやっていきましょう、と。いい意味でのぶつかり合いを期待したいです。

なるけ:すてきな意見が。

岩垂:すばらしい(一同拍手)。

なるけ:そうだね。建設的にね。続けていけるといいよね。

 そして迎えた「あそぶらす 第1話」演奏会当日。演奏プログラムを、レポートとともにご紹介いたします!

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「あそぶらす 第1話」演奏曲

■あそぶらすのテーマ
作曲:坂本英城
指揮:松元宏康

 「あそぶらす」のために坂本英城氏が書き下ろした、開演のファンファーレにぴったりな華やかな曲。今回演奏された坂本氏の曲の中ではもっとも「派手」な音で構成されながらも、坂本氏らしい、「坂本節」のメロディが随所に効いていて、ファンならば思わずぐっとくる作品。

■『パズル&ドラゴンンズ』メドレー あそぶらすスペシャルアレンジ!(『パズル&ドラゴンズ』より)
作曲:伊藤賢治
編曲:三浦秀秋
指揮:松元宏康

 伊藤賢治氏作曲の『パズドラ』戦闘曲「Walking Through The Towers」「The Orb Festival」を、三浦氏が吹奏楽用にメドレーとして編曲。キーボードで演奏されるベースの上に、伊藤氏がインタビューでも「演奏の肝」だと語ったトランペットの鳴りが乗って、最高に迫力のある「イトケン節」を堪能させていただきました。
 「Walking Through The Towers」では曲のループ部分で「ドロップが連鎖して消えていく音」の演出が入り、ソロパートでは奏者が立って演奏するなど、プレイヤーが思わずにやっとしてしまう聞き所と見せ所がたっぷり!

■西風~マホロバ-栄-(『討鬼伝2』より)
作編曲・指揮:坂本英城

 インタビューでも語っていただいた、「吹奏楽は繊細な演奏もものすごく得意だということを伝えたい」という坂本氏の言葉通り、美しい響きにうっとりとしてしまうメドレーでした。
 あまりの美しい響きに酔ってしまったためかあっという間に演奏が終わってしまい、もっと聞いていたい、という名残惜しさすら感じました。

■吹奏楽のための交響詩「消滅都市」第一楽章(『消滅都市』より)
作曲:加藤浩義・川越康弘
編曲:川越康弘・福田洋介
指揮:松元宏康

 「原曲はEDMなので、今回の演奏曲の中で一番、原曲とアレンジ版の差が大きい。言うなれば僕たちがファミコンで聞いていた曲をオーケストラで初めて聞いた時のような音楽体験になる」とは、演奏直前の坂本氏の言。
 「Eternity」「I miss you baby」「Discord」「The noise」「Avalon」「Wizard」をメドレーにした川越氏によるオーケストラアレンジ版を、吹奏楽のために新たに編曲した作品です。
 ピアノソロで始まり次第に音が重なっていく「Eternity」から、パーカッションがリズミカルで華やかな印象の「I miss you baby」、そして低音から始まりテンポが上がるとともに不穏さをかきたてられる「Discord」、「The noise」から次第に疾走感を増して「Avalon」「Wizard」でエンディングを迎えます。
 プレイヤーにとって胸の熱くなる曲を余すところなく聞くことのできる、美味しいところめいっぱい取りのメドレーでした。

■『サウザンドメモリーズ』メドレー(『サウザンドメモリーズ』より)
作編曲・指揮:いとうけいすけ

 「ロード・オブ・リターナーズ」「新たなる王国」「ラスト・バトル」「Theme from THOUSAND MEMORIES」「ありふれた平穏」をメドレーに。壮大な物語のような演奏に圧倒されました。特に、「ラスト・バトル」からゆっくりとテンポを溜めた後にやってくる「Theme from THOUSAND MEMORIES」のメロディに最高に胸が熱くなります。

■刻の工房(『ノーラと刻の工房 霧の森の魔女』より)
作編曲・指揮:なるけみちこ

 なるけ氏のゲスト参加決定後、「吹奏楽で演奏するならばこの曲!」と、演奏曲が即座に決まったそうです。同曲は今までオーケストラやケルティックアレンジで演奏されていますが、今回は吹奏楽アレンジとして、素朴なかわいらしさのパーカッションと、やわらかい木管の音が美しい作品に。
 「こんなにすてきな笑顔で指揮を振る方を見るのは初めて。見ていて思わず自分もニコニコしてしまう」と、松元氏も笑顔でコメント。

■法廷組曲 逆転裁判6(『逆転裁判6』より)
作編曲・指揮:岩垂徳行

 「逆転裁判6・開廷」「尋問 ~モデラート2016」「尋問 ~アレグロ2016」「成歩堂龍一 ~異議あり!2016」「追求 ~追いつめあって」で構成される、『逆転裁判』ファンにはたまらない曲がぎゅっと詰まったメドレー。吹奏楽演奏の「かっこいいところ」を、すべて余すところなく聞けてしまう、吹奏楽ファンにもたまらない編曲だったのではないでしょうか。
 曲の途中では、演奏者による「待った!」「ポルクンカー!」、観客も立って参加する「異議あり!」の掛け声、そして白いヒゲを着けてサイバンチョに扮した松元氏が木槌を持って登場するシーンも。

■The Final Time Traveler(『TIME TRAVELERS』より)
作編曲・ピアノ独奏:坂本英城
指揮:松元宏康

 演奏にピアノが加わったことで、曲後半で印象的に歌うメロディに引き込まれました。さらに演奏とともに映された特別編集のゲーム映像も相まって、感動のため涙を流す人も。観客は演奏に呑まれたように、最後の音が消えた後もしばらく拍手できなかったほどでした。

 豪華プログラムとトークで大盛況のうちに終わった「あそぶらす 第1話」。これから毎年、夏の恒例プログラムとして開催される予定とのこと。

 最後に、今年(2017年)開催予定の「第2話」に向けて、音楽監督の松元氏、そしてゲスト参加された作曲者のみなさんにお話をご紹介して、レポートを終えたいと思います。今回来場できなかった方もぜひ、次回の「あそぶらす 第2話」に観客として参加して、この得難い演奏会を体感してください!

あそぶらす第2話へ向けて

■音楽監督:松元宏康氏

松元:「あそぶらす」では、作曲家のみなさんに色々なアイディアを出していただいて、それに対して我々演奏家がどう応えられるのか、挑戦していきたいんですよね。「ゲーム音楽と吹奏楽」というのが相性のいい組み合わせであることは間違いないので。
 ゲーム音楽の作曲家と吹奏楽の演奏家のクロスオーバーというか、作曲家のみなさんがより生き生きと作品を表現する媒体として、我々が何をできるのか。いい意味での受け身でありつつ、演奏で積極的に応えていきたいと考えています。

■坂本英城氏・いとうけいすけ氏

いとう:あそぶらす第1話いかがでしたでしょうか。
 これを機に、第2話、第3話……と展開していけたらいいなと思っていますので、ゲーム音楽好きなみなさんも、吹奏楽好きなみなさんも、これからのあそぶらすの活動にご期待ください。

坂本:ゲームって、ひとつの画面に向かって友達と一緒に遊ぶ、というスタイルじゃなくなってきてますよね。一昔前には一般的だった「お兄ちゃんがゲームを遊んでいて妹が後ろで見ている」という場合は、プレイヤーのお兄ちゃんだけではなく、妹もゲーム音楽を聞いているわけです。だから、プレイしていなくても曲を知っているし、コンサートに行けば楽しいという状況が生まれていた。
 でも、今はひとりずつ、携帯でゲームを遊んでいる。しかも、あるデータによると、音楽を聴きながらスマホゲームをプレイしている人って、今、17%ぐらいしかいないらしいんです。
 なので、こういう演奏会に来てもらって、「パズドラ曲目当てで来たけど、サウザンドメモリーズの曲かっこいいな」ですとか……音楽を聴いて、そのゲームをプレイする人が増えたらいいなっていうのは、すごく思っています。

いとう:それは嬉しいですね。

坂本:部活で吹奏楽をやっている人たちって、今のゲームを一番遊んでいる人たちですよね。層が被っている。ここは、うまくまぜたら、絶対双方に良い作用があるはずだと思っています。
 で、こういった演奏会からゲーム音楽作曲家という仕事に興味を持って、僕たちみたいに、この道を目指してくれる人が増えたらいいなって思っています。

■伊藤賢治氏・岩垂徳行氏・なるけみちこ氏

岩垂:ゲームの曲ももちろんいいんだけど、オリジナルも作ってみたいね。今回の「あそぶらすのテーマ」じゃないけれども、オリジナル曲を少しずつゲーム音楽作曲者側から発信できたらいいな。これは、僕の夢ですね。

なるけ:わたしも、演奏してもらえるのであれば、いつかぜひオリジナル曲にトライさせていただけると嬉しい……て思います。まずはやっぱり小編成のアンサンブルからかなぁ。

伊藤:2回目をやるとしたら、自分だったらやっぱりスクウェア曲をやってみたいですね。
 スクウェア曲をできるかできないかで、やっぱり反応も影響力も大きく違うと思うんですよね。楽しみ方も違うと思いますし。

なるけ:イトケンの曲はさ、やっぱり吹奏楽と親和性が高いよね。イトケンの曲は、吹奏楽でやる意義がある。

岩垂:あとさ、イトケン次はなんかやりなよー。サックス持ってきて演奏しなよー。

なるけ:やりなよ~。

伊藤:楽器持ってないんですよ!

岩垂:買ってこなきゃ!

なるけ:買おう!

伊藤:まじですか!(笑)

岩垂:いいところ紹介するよ(笑)。

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    最終更新: 01月08日(日)11時00分

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