Core Xに完全勝利!?「Ryzen Threadripper」で究極のマルチスレッド性能を堪能

アスキー 2017年08月12日(土)19時50分配信

 2017年8月10日、AMDはZenアーキテクチャーのエンスージアスト向けCPU「Ryzen Threadripper」の発売を開始した。今回市場に投入された「Ryzen Threadripper 1950X」は16コア32スレッドで999ドル、「同1920X」は12コア24スレッドで799ドル。特に最上位の1950Xは現時点でのインテルの最上位モデル「Core i9-7900X」と(ドルベースの)同価格でありながら、マルチスレッド性能が最大38%高いことを武器にしている。

 残念ながら国内流通価格は謎の自作為替レート換算が働き、1950Xが税込15万7464円、1920Xが税込12万5064円と、やや高く設定されてしまった。ライバルとなるCore i9-7900Xの初値が税込約12万5000円前後(原稿執筆時点の実売価格は11万6000円前後)であるため、Ryzen Threadripperの武器のひとつである“価格の安さ”を捨て、割高な価格設定で勝負するというハンデ戦を強いられることになった。8月31日には8コア16スレッドの「Ryzen Threadripper 1900X」も549ドルで発売される予定だが、1900Xの国内価格については明らかにされていない。

Ryzen Threadripper
AMDのプレゼン資料によれば、Ryzen Threadripper 1950XはCore i9-7900Xに対し、マルチスレッド性能で38%優位に立ち、シングルスレッドでは15%劣るとしている(数値はCINEBENCH R15によるもの)

 今回は、豪華なトランクに入ったRyzen Threadripper評価用キットをテストする機会に恵まれた。果たしてAMDの主張する“(米ドルで)同価格なのに安くて速い”は本当なのか? 価格的なハンデを負った国内市場で存在感をアピールできるのか? さまざまなベンチマークを通じて検証していきたい。

Ryzen Threadripper
Ryzen Threadripper
今回プレス用に極少数用意された評価キット。専用トランクにRyzen Threadripper 1950Xと1920Xが入っており、トランク内部の光源がRyzen Threadripperのパッケージを怪しく光らせるという実に凝ったものだった
Ryzen Threadripper
Ryzen 7のパッケージと比べると、Ryzen Threadripperのパッケージは異常に大きい。上下の黒い部分はほぼ八方スチロールで占められているのだが……

クロック以外の要素は同じ。動作モードの違いに注目

 では最初にRyzen Threadripperのスペックを確認してみよう。最下位の1900Xのスペックが完全に明らかになっていないため、“全モデル(SKU)同スペック”というAMDの声明をもとに推測した値も含まれている。また、すでに発売されているRyzen 7の最上位1800Xの値も、比較用に加えた。

Ryzen Threadripperの価格は、AMDの公式発表価格。Ryzen 7 1800Xの価格は実売価格

Ryzen Threadripper
Ryzen Threadripper
「CPU-Z」でCPUの情報をチェックしてみた。右下の「Core」「Thread」の数値の大きさに注目
Ryzen Threadripper
「Coreinfo」で1950Xのコアとキャッシュの構造を表示させてみたところ。物理16コアCPUだけあって、出てくるリストが実に長い

 Ryzen Threadripperを語る上で最も大事なのははコアとメモリコントローラーの構成だ。1950Xも1920Xも2ダイ構成で、製造したコアの上位5%の良品を厳選して構成されている。

 Ryzen Threadripper内部の構造をさらに深く見ていくと、CPUコア4基+L3キャッシュで構成されるCCXが2基あり、それに対し2chのメモリーコントローラーがぶら下がる。ここまではRyzen 7と同じだが、Ryzen Threadripperでは同じものが1組、Infinity Fabricで繋がるイメージだ。対応メモリーはDDR4-2666までだが、シングルランクのモジュールを4枚接続した場合に限られる(Ryzen 7ではシングルランク2枚でDDR4-2666までというのと同じ)。

Ryzen Threadripper
Ryzen Threadripperのダイは上位5%の良品を厳選しているとAMDは謳っている
Ryzen Threadripper
メモリーの構成と動作クロックの関係(レビュアーズガイドより抜粋)。4chメモリーな点以外は基本的にRyzen 7とそう変わらない。Ryzen 7と同様にノンバッファーなECCメモリーにも対応している(もちろんマザーボード側の対応も必要)
Ryzen Threadripper
Ryzen Threadripperの構造。オレンジ色のCPUコア4基ずつをInfinity Fablicで繋げたものがCCXで、これ2基に対し2chのメモリーコントローラー(DIMM4枚)が1基付く。これがもう1ペアあり、Infinity Fabricで連結されている
Ryzen Threadripper
「CINEBENCH R15」を1950Xで実行中のタスクマネージャ。16コア32スレッドなのでCINEBENCH R15のレンダリング領域を分割するボックスもタスクマネージャの論理プロセッサー数も32個。まさに壮観!

 では、今度はRyzen Threadripperのパッケージの中身を確認してみよう。Ryzen Threadripperのパッケージは、冒頭で見せたようにRyzen 7のパッケージよりも巨大だ。周りを囲う包装紙を取り外し、背面の手回し部分を捻ると開封できる。

Ryzen Threadripper
Ryzen Threadripperのパッケージは、RYZENと印刷してある部分に裏から光を当てると、写真のようにRYZENロゴの周囲に光彩が浮かび上がった。なかなか凝ったつくりだ
Ryzen Threadripper
Ryzen Threadripper
これがRyzen Threadripperが入っているパッケージ部分
Ryzen Threadripper
開封した状態。CPUはフタの裏に張り付いているだけで、器のような部分は単なるドンガラだったのだ……
Ryzen Threadripper
Ryzen Threadripperのパッケージを取り出す。オレンジの枠はCPU装着時に必要なガイドなので、引きちぎらないよう注意して取り扱う必要がある
Ryzen Threadripper
Ryzen Threadripper
Ryzen Threadripper(左)とRyzen 7(右)を並べてみると、いかにRyzen Threadripperが大きいかがわかる
Ryzen Threadripper
Ryzen Threadripper
Ryzen ThreadripperのパッケージにはCPUを固定するためのT20のトルクレンチとAsetek製水冷を利用するためのアタッチメントが付属する

コア半減&メモリーレイテンシー抑制モードもある

 なぜRyzen Threadripperの構造に触れるかといえば、今回Ryzen Threadripperのメモリーアクセスモードは「Distributed」と「Local」という2つのモードが用意されているからだ。デフォルトのDistributedモードは全メモリーを等しく扱うため、コアが2基あるメモリーコントローラーの中の遠い方にアクセスする場合、レイテンシーが犠牲になる。そこでコアが自分のCCXに近い方のメモリーのみにアクセスするLocalモードにすれば、レイテンシーは大きく改善する。

 AMDはメモリーレイテンシーが効くゲームにはLocalモードが有効としているが、Localモードではメモリーコントローラーをまたぐようなメモリーアクセスが発生した場合、大きなペナルティーとなる。後のベンチでも示すが、万能のモードではないといってよい。

Ryzen Threadripper
デフォルトではDistributedモード、あるいは「UMA」と呼ばれるアクセスモードとなる。2基あるメモリーコントローラーを区別せずに扱う
Ryzen Threadripper
Localモード、別名「NUMA」モードは自分(コア)から見て一番近いにメモリーにのみアクセスするモード。メモリーアクセスは高速化するぶん、対岸のメモリーにあるデータにはアクセスできなくなる
Ryzen Threadripper
Distributedモード(左)ではメモリーレイテンシーは平均86.9ナノ秒に対し、Localモード(右)では66.2ナノ秒となる

 このDistributedモードとLocalモードの切り替えはOCツール「Ryzen Master」で随時行える(ただし再起動が必要)。さらに多コアのCPU環境を苦手とするゲームのために、コア数を半減させる「Legacy Compatibility」モードもRyzen Masterで設定可能だ。1950Xであれば4+4コア、1920Xであれば3+3コアとなるので、Ryzen 7 1800XやRyzen 5 1600Xに近い構成となる。

 どのように無効化されるコアが選別されるかは明らかでないが、Legacy Compatibilityモードを使ってコア数を半減させてもメモリ搭載量は変化しないことから、2つあるCCXのペアのうち片方を無効化していると考えられる(CCX全体が無効になるとそれに付随するメモリーコントローラーも使えなくなるだろう、ということからの推測だが……)。

Ryzen Threadripper
Ryzen Threadripperの温度監視やOC等をWindows上で設定できる「Ryzen Master」。上部に並ぶ16個のスライダー(1950Xの場合)で、コアごとにクロックを設定できる

 これらのモードはひとつひとつ手動で組み替えることもできるが、Ryzen Masterのウィンドー下端には「Creator Mode」と「Game Mode」という簡易的な切り替え機能が実装されている。前述のLegacy CompatibilityモードとDistributed/Localモードは次のような組み合わせになっている。

Ryzen Threadripper
Ryzen Threadripperの動作の標準設定はCreatorモードに準ずる。つまり全コアが使え、メモリーアクセスはDistributedモードとなる
Ryzen Threadripper
Gameモードでは、Legacy Compatibilityモードが有効になり、さらにメモリもLocalモードとなる

 今世に出ている多くのゲームはコア数よりもメモリーレイテンシーの方が重要なのでその2つを組み合わせたGameモード、そうでない場合はマルチスレッド性能とメモリー帯域を優先させたCreaterモードを切り替えて使おう……というのがAMDのメッセージである。

 ただ、後で反例をひとつ示すようにGamerモードに切り替えたからといってどんなゲームも高速化する訳ではない。厳密にやるならCPUコア数とメモリーモードの4通りの組み合わせがどのゲームに合致するかを見極めていく必要があるだろう。

Ryzen Threadripper
CreatorとGameモードの違い。Legacy Compatibilityモードを使わずにメモリーをLocalモードにしたい場合は、Ryzen Master上でプロファイルをつくる必要がある

装着方法も大きく変化

 検証に移る前にX399マザーボードの話とCPUの取り付け方を軽く見ておこう。Ryzen ThreadripperはRyzen 7のソケットAM4やX370チップセット等とは互換性がなく、専用の「ソケットsTR4」を備えたX399チップセット搭載マザーを利用する。

Ryzen Threadripper
今回評価キットに含まれていたASUS製のハイエンドX399マザー「ROG ZENTH EXTREME」

 Ryzen Threadripperが持つもう一つのアドバンテージはCPUに直結するPCI Expressバスのレーン数の多さだ。インテル製のCPUではメインストリームが16レーン、エンスージアスト向けで28ないし40レーンであったが、Ryzen Threadripperでは64レーン利用できる。うち4レーンはチップセット用に消費されてしまうが、それを差し引いても60レーンは大きい。

 4-WayのSLI/CrossFire構成をする場合でも、4枚のビデオカードに16レーンのフル帯域を割り当てることができ、その上でさらに余裕がある(余った帯域はNVMe SSDに使うこともできる)。ゲーマーにとってのマルチGPUソリューションは縮退傾向にあるとはいえ、究極のパワーを持ったマシンを組みたければ、Ryzen ThreadripperとX399マザーボードは非常に面白い存在だ。

Ryzen Threadripper
Ryzen ThreadripperはCPUに64レーンのPCI Expressバスを接続することができる
Ryzen Threadripper
Ryzen ThreadripperにX399マザーを組み合わせた時のシステム構成。4-WayのマルチGPUに各々16レーンずつ提供しながらも、x4接続のM.2 NVMe SSDを3枚接続できるなど、足回りの構成が非常に強力。ただこの全てを実現するには、相当ゴツいマザーボードが必要になるだろう

 さてRyzen ThreadripperではCPU形状が大きく変化したが、ソケットへの取り付け方も非常に独特だ。ここで簡単にRyzen Threadripperの装着手順をまとめてみた。

Ryzen Threadripper
Ryzen Threadripper
ソケットsTR4は3本のトルクス(ヘキサローブ)のT20ネジで固定されている。なぜ普通の+ネジにしなかったかといえば、ナメにくく確実にトルクを与えられるからだろう。3本のネジには番号が振ってあり、ソケットを開ける時と閉める時で回す順番が決まっている
Ryzen Threadripper
ソケットを固定するネジを開け、カバーを解放したらさらに中ぶたを引き起こす。中ぶたには保護用のプレートが固定されているので、まず最初にこれを外す
Ryzen Threadripper
Ryzen Threadripper
保護用のプレートを外したら、CPU周囲に付いているオレンジのタブを持って、保護用のプレートがあった場所に滑り込ませる。中ぶたのフレームは結構ヤワい印象なので、丁寧に扱わなくてはならない。装着したらソケットを保護するカバーも外しておこう
Ryzen Threadripper
中ぶたの奥までCPUを入れた状態で中ぶたをソケット側に倒して固定(クリック感があるまで押す)する。最後にカバーをネジ止めして終了だ
Ryzen Threadripper
Ryzen Threadripperに同梱されるT20のトルクレンチは15Nm以上がの力がかかると空回りするようになっている。逆に言えばこのレンチが空回りするまでネジをしっかりと締め込む必要があるのだ
Ryzen Threadripper
簡易水冷式のCPUクーラーを装着。Ryzen Threadripperに同梱されたアタッチメントを使うのが、現時点では一番確実な冷却方法だろう。ただ今後sTR4専用クーラーも出そろってくるはずだ
Ryzen Threadripper
今回検証に使った簡易水冷(CRYORIG A40)を装着した際の水枕のカバーする範囲は、CPUの中央のこの領域のみ。これでも十分冷えているようだが、OCを強く意識するならヒートスプレッダーをフルカバーできるsTR4専用クーラーの出現を待った方がよいだろう
Ryzen Threadripper
エンスージアスト向けCPUだからなのか、今回テストしたマザーボードはEPS12V電源のコネクターが2系統用意されていた。写真中のEATX12V_1の方に接続しても普通に動作はするが、「高負荷やOC時にオーバーヒートする可能性があるからEATX12V_2の方にもケーブルを接続せよ(意訳)」というメッセージがPOST後に表示されるようになる

検証環境はCore Xシリーズ検証時になるべく近づけた

 検証に入る前に検証環境を紹介しよう。今回入手した評価キットにはCPUクーラーからメモリー、OS入りのSSDまで入った至れり尽くせりの内容だったが、今回はほとんど活用していない。Core Xシリーズ発売時のベンチマーク結果を流用しやすいよう、パーツは極力共通化してある。

 Ryzen Threadripperに対決させるCPUはインテル製の現時点での最速モデルであるCore i9-7900Xを準備、さらにRyzen 7 1800Xと、ベースラインとしてCore i7-7700Kのデータを引用する。

 そしてRyzen Threadripperの持つモードの違いをみるために、以下の3通りのパターンでも計測している。“-Distributed”は全CPUコアを使用するデフォルト(Creatorモード)の状態、“-Local”は全CPUコアを使用するがメモリーのみLocalモードの状態、そして“-Gaming”はCPUコア数半減とLocalモードを併用するGameモード時の結果となる。

記載のないパーツは共通

圧倒的なマルチスレッド性能

 では「CINEBENCH R15」を利用したCPUの馬力比べから始めよう。Core i9-7900Xに比べ1950Xはマルチスレッド性能で38%上回るというAMDの謳い文句は本当だろうか?

Ryzen Threadripper
「CINEBENCH R15」のスコアー

 1950Xのマルチスコアスコアーは圧倒的。ただ圧倒的としか言いようのない差を見せてくれた。1950XはCore i9-7900Xに対し実測値で37%高いスコアーを示しており、早くもAMDの謳い文句は正しいことが示された。さらに1920XもCore i9-7900Xをやや上回っている。もしかすると日本におけるRyzen Threadripperの価格設定は“性能なりの価格”で再設定されたのではと邪推してしまえる程だ。

 また全CPUコアを使用したDistributedモード(Creatorモード)と全CPUコアを使用したLocalモードではマルチのスコアーに差はないが、シングルコアテストのスコアーが若干上がる傾向が見られた点が面白い。メモリーのレイテンシーが低下したためその分シングルスレッドの処理も微妙に速くなると考えられる。

 そしてGameモード(Legacy Compatibilityモード+Localモード)では、コア数に比例したスコアーの落ち込みを見せた。1950XとRyzen 7 1800Xのスコアーがほぼ同じだが、シングルのスコアーが若干向上している点は、メモリー帯域が2倍になっている結果かもしれない。

 では次に同じCGレンダリング系である「V-Ray Benchmark」でも試してみる。こちらはマルチスレッド性能しか測定できないが、CINEBENCH R15のスコアーの裏付けになるだろう。このテストの結果は“時間”なので短い方が優れたCPUとなる。

Ryzen Threadripper
「V-Ray Benchmark」における処理時間

 ここでも1950Xと1920XがCore i9-7900Xに対し勝利。CINEBENCH R15ほどスコアー差はついていないが、マルチスレッド性能において現在のAMDはCore Xシリーズを完全に上回ったと評価してよいだろう。

 ここでDistributed/Localモードの違いに目をむけてみると、わずかではあるがLocalモードの方が短時間で終わる気配を見せており、Gameモードで動作させた1950Xの方がRyzen 7 1800Xよりも短時間で処理を終えている。メモリレイテンシーの低下が性能向上に繋がると判断してよいだろう。

 次は「TMPGEnc Video Mastering Works 6」を利用し、再生時間3分のAVCHD動画をMP4形式にエンコードする時間を比較する。エンコーダーはCPUを利用する“x264”“x265”を利用し、いずれも2パスで処理を行なった(ビットレートなどのパラメーターはデフォルト値を使用)。

Ryzen Threadripper
「TMPGEnc Video Mastring Works 6」の処理時間

 CINEBENCH R15やV-Ray Benchmarkで好成績を収めるCPUはエンコードでも当然速い。1950Xと1920XはCore i9-7900Xに対し勝利したが“x264”のみという限定されている。これまでRyzenのレビューを続けてみて、TMPGEncにおけるx265系の処理はインテル製CPUに比べ遅い傾向が観測されてきたが、これはRyzen Threadripperにおいても同じだった(CPUのダイが同じだから当然なのだが)。x265でエンコードする状況ではCore i9-7900XはRyzen Threadripperに一矢報いた格好だ。

 だがそれ以上に興味深いのはDistributedモードとLocalモードの違いだ、V-Ray BenchmarkではLocalモードの方が若干処理が速くなっていたが、TMPGEncにおいては全く逆どころか、目に見えて処理が遅くなる(ま、それでも結構速いのだが)。処理の内容が違えば、最適なメモリーアクセスモードも変わるという一例がここに示されたわけだ。

 次は総合ベンチマークソフト「PCMark10」を利用する。WebブラウズからCG作成、ゲーミングまで総合的なパフォーマンスを調べられる“Extended”テストを行なった。グラフが2つあるが、Extendedテストの総合スコアーと、そのスコアー算出の根拠となったテストグループごとのスコアーも比較する。

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「PCMark10」Extendedテストの総合スコアー
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「PCMark10」Extendedテスト実施時のテストグループごとのスコアー
Ryzen Threadripper
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「PCMark10」実行中のCPUクロック(左:1950X、右:1920X)。どちらもクロックのピークは4.1~4.2GHzの間、低い部分で3.7GHz近辺となった

 PCMark10ではコア数の多さよりもIPCが高く、高クロックで回るCPUが高評価を得る。ここでトップに立ったのがCore i7-7700Kなのはこのためだ。だがRyzen Threadripperもかなり健闘している。このスコアーの源泉はGamingとDCC(Digital Contents Creation)であり、ProductivityとEssentialsはRyzen 7にも負けるケースも見られた。Core i9-7900Xの処理中のクロックは電源プラン(バランス)のおかげで大きく上下するのに対し、Ryzen 7やRyzen Threadripperはほとんど下がらない事もスコアーの底上げに大きく貢献しているようだ。

 さらにこのテストではLocalモードの方がDistributedモードよりも高スコアーを上げている。Essentialsテストでも動画(ビデオチャット)のエンコード・デコード作業があるが1950X/1920XともにLocalモードの方がスコアーが良い。エンコードではLocalモードはダメというよりも、アルゴリズムや扱うデータの量で最適なメモリーアクセスモードが決まるといった感じだろう。

 次に「3DMark」のスコアーを比較してみよう。テストは“Fire Strike”および“Time Spy”を選択した。

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「3DMark」Fire Strikeのスコアー
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「3DMark」Time Spyのスコアー

 CPUのマルチスレッド性能が総合スコアーに加算されるベンチマークだが、スコアーの出方が異なっている。まずDirectX11(DX11)ベースのFire Strikeではコア数の多いRyzen ThreadripperがPhysicsテストで高いスコアーを稼いでいる一方、CombinedでRyzen 7同様にコア数の割にはスコアーが稼げていない(CombinedはCore i7-7700Kがスコアー効率が非常に良い)。DistributedとLocalは勝ち負けが入り乱れており、どちらが優れているか結論は出せない感じではある。

 一方、DirectX12(DX12)ベースのTime Spyになると、これまでのテストで引き離していたCore i9-7900Xに一気に詰め寄られているどころか、CPUテストで抜かれてしまう。Localモードにすると一気にCPUスコアーが下がるあたりは、このテストではレイテンシーよりもメモリーの帯域が重要であることが読み取れる。

 今度はマルチスレッドが性能に響くゲームとして「Watch Dogs 2」を試してみた。解像度はフルHDに固定し、画質“最大”と“高”の2種類をテスト。前者はGPUのボトルネックが発生するが、後者は発生しない条件になっている。

 テストは「Fraps」を用いて一定のコースを移動した時のフレームレートを計測した。

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「Watch Dogs 2」画質“最大”設定でのフレームレート
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「Watch Dogs 2」画質“高”設定でのフレームレート

 元々高クロックかつコア数が多いCPUで有利なゲームであるため、Core i7/i9が安定して強い、という点は変わっていないがフレームレートの出方を見る限り、Ryzen 7よりもRyzen Threadripperの方が若干改善されている(価格が倍くらい違うのでそうでなくては困るのだが)。

 ただこのゲームではGamingモードがプラスの要素ではなくなっている点に注目したい。特にGPUのボトルネックがない画質“高”設定ではGamingモードでコア数を絞るとRyzen 7に近づいていってしまう。LocalモードもDistributedモードに比べて微妙にフレームレートが出ない……などがあるので、ゲームだからといって無条件にGameモードやメモリーをLocalモードにするのは止めた方がよいだろう。

 最後に「Sandra 2017」を使用してメモリー周りの特性を眺めてみる。ここでは時間の都合上1950Xのみの計測となる点をご容赦頂きたい。まずはメモリーのレイテンシーの差を計測したのが下のグラフだ。

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「Sandra 2017」で計測した1950Xのメモリーのレイテンシー

 DistributedでもLocalでもデータサイズが小さいうちはレイテンシーに差は出ないが、8MBを過ぎると急激に差がつき始める。16MB以降はほぼ横ばいとなり、Distributedモードでおよそ83.3ナノ秒、Localモードでおよそ62ナノ秒となった。

 次にメモリー帯域をそれぞれのモードで計測したのが下のグラフだ。

Ryzen Threadripper
「Sandra 2017」で計測したメモリーの帯域

 Sandraのメモリー帯域テストの結果では、レイテンシーの小さいLocalモードの方が帯域が若干太くなっている。ただメモリーコントローラーをまたぐようなアクセスの場合は、このSandraでは計測しきれていないようだ。

 最後のグラフはキャッシュとメモリーの帯域を比較したものだ。

Ryzen Threadripper
「Sandra 2017」で計測したキャッシュとメモリーの帯域

 Core i9-7900Xのキャッシュ周りの帯域は256kBまでは非常に高いものの、それ以降は急激に失速。1950XはCore i7-7700Kとi9-7900Xのほぼ中間的なポジションを維持しながらも、1MB以上の領域では優位に立っている。

 また、DistributedとLocalモードでは帯域に大きな差は見られないこと、GameモードではほぼRyzen 7 1800Xに近い特性を示すが、メモリーチャンネルの違いからか微妙に性能が良くなっていることがわかる。

 Ryzen ThreadripperはRyzenの持ち味をほぼそのままマルチチップ構成にしたCPUである、ということがこれまでのテストでわかったはずだ。

性能が出るぶん、消費電力はかなり大きい

 最後に消費電力と発熱をチェックしよう。ラトックシステム製「REX-BTWATTCH1」でシステム全体の消費電力を計測する。“アイドル時”とはシステム起動10分後の安定値、“高負荷時”とは「OCCT Perestroika 4.5.0」の“CPU Linpack”テスト(64bit、AVX、全論理コア使用)を30分回した際のピーク値である。

Ryzen Threadripper
システム全体の消費電力

 高負荷時の消費電力は1950Xで300Wに到達したが、コアが16基もあれば無理もない話。Gameモードにすると消費電力はぐっと下がるが、Ryzen 7 1800Xよりもかなり大きい。マザーの装備の差(ROG ZENITH EXTREMEの方が重装備)やメモリーチャンネル数の差などが影響していると思われる。

 ライバルCore i9-7900Xと比較すると、Core i9-7900Xの方がコアあたりの消費電力は大きい(25.3W対18.8W)が、Core i9-7900Xはクロックが高いぶん消費電力も大きいといったところだろう。

 続いて温度は上記のOCCT実施中の温度推移を「HWiNFO64」で計測した。このツールではCPU温度は「Tctl」と「Tdie」、およびマザーボードのセンサーが読み取る「CPU」の3つの数値を読み取ることができるが、HWiNFO64で読み取れる「Tdie」はダイ温度(Tj)を示すので、これをこのままグラフにした。ちなみにTctlはファン回転数制御に用いられる値で、Ryzen Threadripperの場合Tj(Tdie)+27℃になっている。

Ryzen Threadripper
「HWiNFO64」で1950Xの温度を拾ってみたところ。このツールでは「Tctl」「Tdie」「CPU」の3つの数値が取得できる
Ryzen Threadripper
Tdieの推移を追跡したもの。最初の1分はアイドル、そこから30分CPU Linpackテストを実施、31分から先はアイドル状態となる

 今回はOCする時間がなかったため定格運用だが、物理12コア/16コアのCPUをOCCTした割には温度は大人しい印象を受けた。全コアブースト時のクロックが3.7GHzに抑えられているせいもあるが、CPU中央の一部だけカバーした簡易水冷でも十分運用できる印象だ。

 Gameモードにするとピーク時の温度がほぼ半減してしまうのが面白いが、これはTdieがコア温度ではなくダイ全体の温度として報告されているためだろう。

突き抜けたパフォーマンスと面白さは最高だ(ただし価格)

 以上でRyzen Threadripperのレビューは終了だ。今年はKaby Lake-S→Ryzen 7→Core X→Ryzen Threadripperという激しいCPUの性能競争が展開されてきたが、Ryzen Threadripperは筆者にとってこれまでで一番興奮したCPUといえる。シングルスレッド性能はRyzen 7+α程度とはいえ、突出したマルチスレッド性能にはまさに脱帽。シングルもマルチも速いCore i9-7900Xも魅力ではあるが、Ryzen Threadripperの“強者感”は半端ではない。

 さらにDistributedとLocalモードの使い分けも面白いところだ。レイテンシーの低いLocalモードで常に性能が稼げるという訳ではなく、処理によってはDistributedモードも使う必要がある。試行錯誤しながら設定を詰めたい人にとっては、かなり楽しめるCPUといえるだろう。

 このRyzen Threadripperの欠点は? と問われればシングルスレッド性能がインテル製CPUよりも低いことと、国内価格の圧倒的割高感と答えざるを得ない。フタを開けてみればCore i9-7900Xと1920Xがほぼ同等性能なケースが多々みられ、その部分だけを見ればインテル製CPUに対し“性能と価格のバランスがとれた”値付けになっているという強引な結論を付けることもできる。

 だが、コスパというRyzen Threadripper最大のメリットを、日本の消費者に提供できなかった点はかなり残念と言わざるを得ない。この価格設定では、ファンの自作意欲を削いでしまい、自作市場のさらなる縮退を招きかねない。早々に価格改定が行われることに期待したい。

(提供:AMD)

アスキー
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    最終更新: 2017年08月12日(土)19時50分

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