著しい事業回復を見せる富士通の秘密は島根にあり

アスキー 2017年09月15日(金)09時00分配信

 富士通製ノートPCの国内生産を行なう島根県出雲市の島根富士通の6代目社長に、神門明氏が2017年4月に就任した。

新社長は島根富士通のすべての業務を担当

 同社初の生え抜き社長でもあり、神門社長も自らも「食堂を除けば、島根富士通のすべての業務を担当している」と笑う。

 1990年10月の操業開始直前の同年6月に、第1期生の一人として中途入社。それ以来、27年間に渡って島根富士通で働いてきた。

 現在はノートPCやタブレットの生産に特化しているが、操業開始時にはデスクトップPCも生産。神門社長は、自ら生産ラインに立って、マルチメディアパソコンとして話題を集めたFM TOWNSを生産していた経験も持つ。

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往年の名器「FM TOWNS」

 これまでの歴代の島根富士通の社長は、すべて富士通<6702>の出身者。生産ラインで働いていた経験を持つ神門社長の就任は、今後の島根富士通にとってもプラスになるだろう。

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島根県出雲市の島根富士通

 というのも、品質試験や部品供給、生産計画、製造技術、生産革新などの現場を熟知し、それを生産現場の改善だけでなく、製品開発の現場にも反映できるからだ。そして、前任の宇佐美隆一社長とともに作り上げた基本方針を維持。減速されることなく、トップスピードのまま「たすき」を渡すことができるメリットも大きい。

 富士通<6702>のPC事業は、2016年2月に分社化し、富士通<6702>クライアントコンピューティングとしてスタート。それ以来、世界最軽量の13.3型ノートPCを製品化したり、狭額縁のデスクトップPCを投入したりといったように意欲的な製品が相次いでいる。そして、2016年度は早くも黒字転換しており、事業の回復が著しい。

 レノボへの統合を前提とした提携を模索している段階にあるが、その提携話が発生した時点とは状況が変わり始めているともいえる。

 その事業の回復ぶりを継続するためにも、生産を支える島根富士通において、初の生え抜き社長の存在は重要だろう。

島根富士通の役割とは

 島根富士通は、富士通<6702>のPC事業の差別化において、重要な役割を果たしている。

 ひとつは、島根富士通が得意とする「超フレキシブル生産システム」によるカスタマイズ対応だ。これにより、需要にあわせて生産品目や生産量を自在にコントロールでき、1品ごとに異なる機種の生産が可能となっている。

 「スペックが異なる製品を生産するだけでなく、PCとタブレットを1台ずつ生産できる混流ラインを構築。企業からの一括受注の場合にも、それぞれのユーザーにあわせて設定し、1台ずつカスタマイズすることが可能であるため、エンドユーザーは製品を受け取った時点で、個別の設定を行うことなく、すぐに、自分のPCやタブレットとして利用できる」という。

 富士通<6702>が、金融、保険、製造、流通、文教といった幅広い業種の企業から、一括受注案件が多いのも、島根富士通において仕様が異なるPCやタブレットを生産したり、個別設定を実施している点が多いに関係しているだろう。それらの製品を国内生産のメリットを生かして、短期間に納められる点が見逃せない。

 また、定期便に間に合うように必要な製品を優先的に生産することができるのも、この超フレキシブル生産システムがあるからこそ実現できるものだ。これが、物流コストの削減にもつながっている。

 現在、島根富士通には、20本の生産ラインがあるが、そのうち14本で混流生産が可能になっている。現状は、約10人で組み立てる生産ラインだが、4~5人で組み立てることができるショートラインを新たに構築し、物量への変動や、組み立てる製品の種類にも柔軟に対応できる環境を確立するという。

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島根富士通のPC生産ラインの様子。混流生産が可能だ

 神門社長は、「今後は、こうした柔軟性を維持しながら、ロボットの活用による自動化を促進することで、生産効率化を図りたい」と、2017年度下期以降の自動化への取り組みに意欲をみせる。

 国内生産である島根富士通の存在が、富士通<6702>のPC事業の差別化につながっている例のひとつだ。

開発部隊との緊密な協力関係

 もうひとつは、神奈川県川崎市の開発部隊と緊密な協力関係を構築している点だ。

 島根富士通の社員が、PCやタブレットの開発段階から参加する仕組みを採用。これにより、高い品質で量産できるように設計を行なうことができるという。

 「PCの開発段階から島根富士通の社員が参加することで、量産化までの時間を短縮化。高い品質での垂直立ち上げ生産ができる」という。

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LIFEBOOK UH75/B1のキーボードの72本のネジを自動で締める

 たとえば、世界最軽量の13.3型モバイルノートPCのLIFEBOOK UH75/B1には、キーボードの裏側に72本のねじが使用されている。このねじを締めるために、量産開始までに2台の自動ネジ締めを行う装置を導入。効率化と高品質を両立している。

 今後は、自動化を推進するなかで、ポートリプリケータなどの周辺機器の生産に関しては、部品供給段階から検査までの完全自動化を図る考えだが、これも島根富士通が開発段階から関わっているからこそ、実現できるものだ。

 さらに、新たに「One品証」と呼ぶ仕組みを、富士通<6702>クライアントコンピューティングと島根富士通の連携によって導入。これまでは開発部門に設置していた品質保証組織を、島根富士通にも設置し、今後は、島根富士通を中心に、サプライヤーを巻き込んだ品質向上への取り組みを行なっている。

 「従来の仕組みでは、工場に入ってきた部品をチェックして、ラインに流していたが、One品証を導入して以降、島根富士通の社員が、サプライヤーの工場にまで出向いて、やり方に課題があれば、それを指摘し、一緒にプロセスを改善し、部品の品質を高めている。月に数人の島根富士通社員がサプライヤーの中国の生産現場を訪れて、改善を進めている」という。

 品質保証においても、島根富士通のモノづくりの力が生かされている。

 こうした取り組みを見ると、「富士通<6702>のPCの差別化には、島根富士通が果たす役割が大きい」と神門社長が語るのもうなづけるだろう。富士通<6702>のPC事業は転換期のなかにあるが、だからこそ島根富士通の存在は、より重要なものになる。

アスキー
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    最終更新: 2017年09月15日(金)09時00分

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