音声波形編集ソフト「WaveLab 9.5」で、ノイズをどれだけ消せるか試した【藤本健のDigital Audio Laboratory】

AV Watch 2017年11月13日(月)12時43分配信

 先日、Steinbergから波形編集&マスタリングソフトであるWaveLabの新バージョン「WaveLab 9.5」が発売された。今回さまざまな機能が追加されているが、ここではノイズリダクション機能にフォーカスを当てて、実際どれくらいノイズが除去できるのか、実験を交えて紹介したい。

WaveLab Pro 9.5

5つの新機能を搭載。エラー修正などの改善も

 今回発売されたのは、上位バージョンであるWaveLab Pro 9.5(オープンプライス/実売62,640円前後)とWaveLab Elements 9.5(実売10,800円前後)の2ラインナップ。筆者はWaveLab Pro 9.0を持っていたので、Steinbergのオンラインショップを通じて7,560円で新バージョンへとアップデートする形で入手した。

WaveLab Elements 9.5

 WaveLab Pro 9.0とWaveLab Pro 9.5、見た目はそれほど変わっていないのだが、大きく5つの新機能が搭載されている。具体的には以下の通り。

・ウェーブレットディスプレイの搭載
・ライブスペクトログラムの搭載
・エラー修正機能の再設計
・ノイズ除去プラグインスイート「RestoreRig」の搭載
・DDP Playerの搭載

WaveLab Pro 9.0からアップデートして利用した

 これまでもスペクトラムエディターはあったが、より見やすくなるとともに、今回「ウェーブレットディスプレイ」が導入されている。このウェーブレットディスプレイでは高い周波数は時間分解能を高く、低い周波数では周波数分解能を高くするという、オーディオピッチのスケールに基づいた分析を行なうことで、音楽コンテンツをより正確に視覚化できるようにしている。

スペクトラムエディター画面
新たに導入されたウェーブレットディスプレイ

 またライブスペクトログラムは再生中のオーディオの周波数スペクトルをリアルタイムで視覚化していくもの。プラグインエフェクトなどの処理が加わった場合も、スペクトル情報がどう変わるかをすぐに確認できるようになっている。

ライブスペクトログラム

 一方、エラー修正機能も大きく見直しが行なわれ、より直感的なワークフローとなり、オーディオ素材のクリックやエラーを見つけて修正するプロセスが高速化している。さらにこれまであったノイズ除去のプラグインにも見直しがかかった。従来はSonnoxのノイズ除去プラグインであるDeBuzzer、DeClicker、DeNoiserのそれぞれが入っていたが、今回からはSteinbergオリジナルのRestoreRigというものに置き換えられている。

RestoreRig

 そしてDDP PlayerはCDのマスタリングデータの受け渡しに用いるDDPファイルを直接再生するプレイヤー、DDP PlayerがWaveLab Pro 9.5に入っており、これをDDPファイルとともに再配布可能になったのだ。これまでマスタリングした結果のDDPファイルを他の人に聴かせようと思っても、専用ソフトがないと再生することができなかったのだが、これならCDを再生する感覚でDDPファイルを再生できるようになる。

ノイズ除去機能はどれくらい効果がある?

 いろいろと機能向上が図られたWaveLab Pro 9.5だが、ここで試してみたのが、ノイズ除去についてだ。Digital Audio Laboratoryでは、かなり以前からさまざまなソフトのノイズ除去機能について試す実験をしてきているので、同じ素材を用いて、どのくらいノイズ除去が可能なのかを試してみたい。具体的には、以下の3つのデータだ。

音声サンプル

【オリジナル】original.wav(5.03MB)
【オリジナル+ヒスノイズ】akashi+hiss.wav(5.06MB)
【オリジナル+ハムノイズ】akashi+hum.wav(5.06MB)
【オリジナル+クラックルノイズ】akashi+cracle.wav(5.06MB)

楽曲:Arearea/ 愛のあかし

 これらは、女性2人ユニット、Areareaの「愛のあかし」という楽曲の一部を抜き出し、そこに各ノイズを加えたもの。かなりキツめのノイズが加えられているが、どの程度取り除けるか試していこう。

 前述のとおり、これまでのWaveLab Pro 9.0まではSonnoxの3つのプラグインが入っていたが、今回それらがSteinbergのものに入れ替わった。Sonnoxにライセンス料を払うよりも、自社開発したほうがいい、という判断なのだと思うが、機能的にもソックリなものに置き換えられている。ただし、3つのプラグインというわけではなくRestorRigという1つのプラグインスイートであり、この中に3つの機能が搭載されているのだ。

 まずはヒスノイズから取り除いていく。ヒスノイズ用にあるのが、DENOISERなので、まずは、これのみをオンにする。いくつかパラメーターがあるが、まずノイズ成分だけをDENOISERに教えてやる必要があるので、ノイズ部分だけを選択して再生しながら、LEARNボタンを押す。その後、DYNAMIC LEVELというものを用いて、時間変化とともに変わるノイズを取り除いていき、STATIC LEVELで固定的にあるノイズを取り除く。まあ、それぞれ、どのくらいなのかはよくわからないので適当に動かしながら、良い感じになるところを見つけて実行した結果が以下のものだ。

DENOISER
音声サンプル(DENOISER)

denoiser.wav(5.06MB)

 ここでは実行という表現を使ったが、形としてはマスターセクションにプラグインとしてRestoreRigを入れて、DENOISERを調整した結果をWAVで書き出すという手法だ。聴いてみると、かなりノイズが軽減されていることは確かだが、完全に消えたわけではない。またノイズ部分がキュルキュルといった音になっているのも気になるところではある。

DENOISERを調整した結果をWAVで書き出す

 続いて試してみたのがハムノイズだ。これはもともと電源系から発生するノイズを録音して、オリジナル音源とミックスしたもの。横浜での電源ノイズだから当然50Hzの電源が元になっているわけだが、どうなるのだろうか。このハムノイズ用として用意されているのがDEBUZZER。

DEBUZZER

 マニュアルを見ると、FREQUENCYのところにある「A」ボタンを押すとハムノイズの周波数を自動で解析できるとあるが、これを試してみたところ、50.0ではなく、なぜか25.9という表示になってしまう。その後、SENSITIVITYで感度を設定し、LEVELでノイズ除去量を設定するのだが、25.9のままではそれぞれ調整しても、ほとんど変化がなく、ノイズが除去できていないのが実情だ。仕方ないので、50.0に手動で設定して試してみたが、それでも、あまりいい結果とはいえない状況。それが以下のものだ。

ハムノイズの周波数を自動解析すると、25.9と表示された
音声サンプル(DEBUZZER)

debuzzer.wav(5.06MB)

 これを聴く限りではDEBUZZERはもうちょっと性能アップを望みたいところだ。ただし、このハムノイズ入りのものを先ほどのDENOIZERを通してやることで、もう少しいい結果が得られた。実際にはこれら2つをうまく組み合わせて使うのがいいのかもしれない。

音声サンプル(DENOIZER/ハムノイズ)

denoiser_hum.wav(5.06MB)

 そして3つ目に試したのが、レコードのプチプチノイズであるクラックルノイズの除去だ。これも元々はプチプチノイズだけを録音したものにオリジナルの曲をミックスしたものが素材となっているわけだが、これはDECLICKERを用いて取り除いていく。

DECLICKER

 パラメータを見ていくとCRACLE、CLICK、POPとあり、それぞれのノイズ成分を取り除く量を設定していく形になっている。実はCRACLE、CLICK、POPのいずれもプチプチノイズのこと。ここでは非常に短いインパルスノイズのことをCRACLE、中ぐらいの長さのインパルスをCLICK、そして長いインパルスノイズをPOPと定義しているのだ。実際、この素材にはCRACLE成分、CLICK成分、POP成分ともに混ざっているので、これらを適当に調整して実行。波形表示上、縦に突き出すインパルスノイズがキレイに取れていることが分かる。その結果のサウンドが以下のものだ。

CRACLE成分、CLICK成分、POP成分を調整
適用前
適用後の波形を見ると、インパルスノイズがキレイに取れている
音声サンプル(DECLICKER)

declicker.wav(5.06MB)

 波形上はキレイに取れていたが、聴いてみるとやはり完全とはいえないのが実情。それでもそれなりに取り除かれているのが分かると思う。

特定部分だけのノイズを除去することも可能

 ここまで説明したのが、お手軽なノイズ除去ではあるのだが、WaveLab Pro 9.5にはもう一つ大きなノイズ除去機能が追加されている。それは、波形をスペクトログラム表示した上で、特定部分を取り除くというものだ。iZotopeのRXに近い機能であるが、これを使ってどの程度取り除けるのかもテストしてみよう。サンプルとして使うのは、以下のものだ。

音声サンプル(オリジナル+ノイズ)

akashi+seki.wav(5.04MB)

 これもだいぶ以前に使ったデータだが、鉛筆を転がした音と咳をオリジナルにミックスしたもの。こうしたノイズは前述のRestoreRigでは取り除くことができないので、スペクトログラムを見ながら、ノイズ部分を見つけ出し、そこを取り除いていく。WaveLab Pro 9.5では、見つけ出したノイズ部分を、フォトレタッチソフトのような感覚で範囲指定をし、周りに調和させるように取り除けるのが大きな特徴。

スペクトログラムを見ながらノイズ部分を探して指定

 試してみたところ、鉛筆を転がす「カララン」という部分全体を選択して取り除いたのではうまくいかなかったため、「カ」「ラ」「ラ」「ン」と一つずつ選択してオーディオ修復を実行。咳については輪投げ選択ツールを利用して実行した結果が以下のものだ。

鉛筆を転がす「カララン」という音の部分全体を選択すると、うまくいかなかった
1つずつの音を選択して実行
輪投げ選択ツールを利用
音声サンプル(部分指定でノイズを除去)

repair.wav(10.08MB)

 先日Steinbergで見せてもらったデモでは、ほぼ完ぺきにノイズが取り除かれていたのに対し、これがそれはそこまで完ぺきというところまでいかなかったのは、音楽がピアノ+ボーカルというシンプルなものだったからなのかもしれない。バンド系サウンドなど音数がもっと多い音楽で、もう少し小さなノイズが入った場合ならば、断然キレイに取り除けたのかもしれないので、その辺はもう少し割り引いて見てあげてもよさそうだ。

 クラックルノイズも、このスペクトログラムを使いながら修正していくことで、さらにいい効果が出せそうではあるので、その辺はどこまで時間をかけて丁寧に作業するのかによって変わってきそうだ。

 以上、WaveLab Pro 9.5のノイズ除去機能のみにターゲットを絞って見てきた。どのソフトでも、完全にノイズを取り除くのはなかなか難しいところだが、今後も新しいソフトが出てきたら実験してチェックしていきたいと思う。

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    最終更新: 2017年11月13日(月)12時43分

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