2017年のゲーミングPCのトレンドはどうなるか?「CES 2017」発表製品にみるゲーミング環境の多様化

GAME Watch 01月11日(水)19時44分配信
【CES 2017】

1月5~8日開催

会場:The Venetian Las Vegasホテル内CES 2017 Exhibition会場

MSIのVR READY製品群

 2017年新春早々の1月5日(現地時間)より、アメリカ、ラスベガスにて、世界最大規模のエレクトロニクスショウ「CES 2017」が開催された。ゲーム単独のショウである「E3」が開催されるようになってからは、ゲームメーカーの出展はなくなっているが、昨今のモバイルやVRの興隆に伴って、ハードウェアベンダーによるゲーム関連ハードウェアの新製品が発表されることも多くなり、ゲーマーにとっても再び無視できないイベントとなっている。

 本題に入る前にCESにおいてPC関連で大きなニュースについてまとめておくと、新型CPUとGPUの発表が行なわれた。まず、「CES 2017」開催前日の1月4日に、Intelが第7世代Core-iプロセッサの最新版で、デスクトップ向けの"Kaby Lake-S"プロセッサを3種、それぞれ「Core i7-7700/K/T」として発表。同じく、ノートPC向けの“Kaby Lake-H”プロセッサを5種(うち超小型PCなど組み込み向けを1種)、それぞれ「Core i7-7700HQ/7820HQ/7820HK/7920HQ/7820EQ」として発表した。また、NVIDIAは前々日の3日にノートPC向けに「GeForce GTX 1050/Ti」の2種類のGPUを投入すると発表した。これらを受けて、PCベンダー各社は、4日、5日と立て続けにPCの新製品を発表している。

 なかでもゲーマーにフォーカスしたPCをラインナップするMSIは、超弩級のゲーミングノートPC「GT83VR 7RF Titan SLI」を始めとする多数の製品を投入した。また、「Alienware」のブランドをMSIと同様にゲーマー向けに展開するDELLは、「Alienware 13/15/17」を、新CPU/GPUを搭載した製品に更新。両社ともに共通して言えるのは、今回のNVIDIAの新GPUがノートPC向けであったことから、必然的にノートPCを中心とした製品構成となっていたことだ。

 会期2日目の6日、筆者はMSIの単独内覧ブースと、DELLのゲーミングPCをお披露目するイベントにおいて、両社の最新モデルでVRゲームをプレイする機会を得た。両社ともに、大変力の入った展示ではあったが、アプローチの方向性はかなり異なる。MSIがスペックにわかりやすい差を設けた機種を多数用意して、ハードの魅力を前面に押し出してアピールしていたのに対して、DELLの方はハード展開のバリエーションは控えめながら、ゲームソフトの魅力を通じて、同社のゲーミングPCなら、どのゲームも快適にプレイできることを体感させるコーナーを多数用意していた。早速、次項から、イベントでわかった両社の新ゲーミングノートPCの魅力と、“VR元年”から早くも2年目を迎えた2017年のVRゲームを、ゲーミングPCでのプレイフィールを通じて、レポートしていきたい。

ゲーマー向けに真逆のアプローチで訴求するMSI

台湾本社から来米中のマーケティング担当Fei Wang氏

 豊富なラインナップを誇るMSIは、「GT/GS/GE/GP/GL」シリーズすべてのノートPCに対して、前述したIntelの第7世代CPU搭載機を投入している。また、「GS」シリーズには、GPUに「GeForce GTX 1050Ti」を搭載するモデルが追加されたほか、ミドルレンジの「GE/GP」シリーズには「GeForce GTX 1050/Ti」2種のGPU搭載モデルを追加している。なお、ローエンドの「GL」シリーズには「GeForce GTX 1050」搭載モデルのみ追加されている。今般の新CPU/GPUを、各シリーズの持ち味に応じて、適切に振り分けた格好だ。

 NVIDIAの発表がハイエンドGPUではなかったために、新GPU搭載機の投入が見送られた「GT」シリーズにおいても、CPUの世代交代にとどまらず、フラッグシップにふさわしいモデルチェンジが行なわれている。

 まず、18.4インチ液晶を搭載し、長辺が42センチ以上ある「GT83VR 7RF Titan SLI」には、その巨体を活かして、新設計の「Cooler Boost Titan」サーマルモジュールが搭載された。CPU/GPUx2の熱は、直上の冷却プレートから1つのファンあたり5本のヒートパイプで伝導されて、3つのファンで空冷される。熱を帯びたエアは、そのまま背面と側面に設けられた排気口から放出される仕組みだ。ファン3つで構成されているのは本機専用の「Cooler Boost Titan」だけで、GPUキーボード部分からモニタ側に向かって奥側にレイアウトされていて、これだけ大きければ、大型の冷却システムでも十分に筐体に収めることができるのだなとわかる。高性能な冷却システムを収めるために、大型化しているのだろう。この点において、MSIの発想は一般的なノートPCに対して真逆を追求している。

 なお、GPU1基のみの構成の「GT73VR 7RF Titan/Pro」では、同じ「Cooler Boost Titan」の名前を持つ冷却システムでも、冷却対象がCPUとGPUそれぞれ1基であることから、ヒートパイプが10本、ファンが2つの構成となっている。ファンの数が2基、3基、いずれの場合でも、同社の従来製品より30%吸気性能が向上している。

 最高のパフォーマンスを出せるCPU、GPUを、長時間ゲームに熱中しても、熱によるパフォーマンス低下を起こさない起こさせない、というのが答えのひとつだ。加えて、冷却性能が優れているということは、製品の耐久性にも直結する。CPUやGPUの故障の最大原因は、熱によるものだ。そもそも筐体内の容積が低く、CPUやGPUに変えが利かないノートPCの場合、放熱はデスクトップPC以上に重要だと言える。

フラッグシップ機「GT83VR 7RF Titan SLI」と同機に搭載されている冷却システム

 ふたつ目の目玉は、最新のメカニカルキーボードへのリプレイスだ。「GT83VR 7RF Titan SLI」には、最新のドイツCherry製「MX RGB Speed軸(シルバー軸)」のメカニカルスイッチを採用した本格的なキーボードを搭載している。メカニカルキーボードの採用そのものは、本機が初ではなく、2015年のモデルから継続して採用されているものだが、2016年下期にリリースされたばかりの最新の「MX RGB Speed軸」は、キーの反応までのストローク長が1.2mmと比較的短く、FPSなど即応性を要求されるゲームに向いている。ただし、キーストロークそのものは、デスクトップ用と何ら変わらない4mm仕様であるため、従来製品と変わらず、ノートPCとしては異彩を放っている。カチャカチャとしたメカニカル独特の打鍵音も健在だ。ゲームプレイに最適なキーボードを載せることが優先で、本体の厚みの増加などお構い無しで、シリーズを重ねても劇的に薄くなるとは思えない。この点も、2センチに満たないオーソドックスなノートPCの発想とは明らかに異なっている。

 また、この新しいキースイッチには、その名が表す通り、RGB三色のLEDが仕込まれているのが特徴だ。このLEDは、イルミネーションを本体にインストールされた専用のツールでカスタマイズすることができる。イルミネーションのプリセットは、あらかじめ30種類程度用意されており、懐かしの携帯電話の着信イルミのようなレインボーカラーから、ゲーマーおなじみのWASD操作系のみキートップを点灯させて、その他のキーを消灯させることも可能だ。

 なお、「GT83VR 7RF Titan SLI」の「Core i7-7920HQ」、「GeForce GTX 1080 x 2(GDDR5X/8GB)SLI」搭載モデルが60万円、「Core i7-7820HQ」、「GeForce GTX 1070 x 2(GDDR5/8GB)SLI」搭載モデルでも、50万円前後という想定価格がMSIジャパンから出されている。「GT」シリーズは価格の面でもモンスター級だ。これは、つまり最高のプレイ環境を手に入れるためには金に糸目をつけない人に向けた、完全にマニア向けのモデルということになる。日本の住環境等にありがちな問題で、PCをデスク上に常設しておけないために、ノートPCを選ばなければならないとしても、ゲームプレイ環境には一切の妥協をしたくない。そういったゲーマーに向けて投入された製品が、この「GT83VR 7RF Titan SLI」というわけだ。

「GT73VR 7RF Titan Pro」と「GT73VR 7RE Titan」も価格通りの実力を備えた製品

 MSIの“真逆に突き抜けた”ハードは、大型化するノートPCにとどまらない。東京ゲームショウの本誌レポートでもお伝えした、あの“背負うPC”「VR ONE」も、インテルの新CPUの発表を受けて、最新スペックに更新されている。TGS2016での発表から経過した期間も短いことから、CPU/GPUの変更以外に大きなモデルチェンジはないようだが、その分、価格も日本国内の想定価格が30万円と据え置きになっており、単純にスペックアップした分コストパフォーマンスが向上したと考えて良さそうだ。

 「VR ONE」は、複数人が同じ“Lighthouse”内で交錯しながらゲームプレイを行なってもケーブルの干渉がないため、MSIジャパンからは、アミューズメントスペースでの展開を主眼にしている旨の発表がなされている。とはいえ、モニタ抜きで30万円と高価な部類ではあるものの、個人でも視野に入る価格帯だ。他社が小型化してHMDと一体化したり、ケーブルをワイヤレス化するという正攻法を取るのに対して、MSIは既存のテクノロジの組み合わせだけで快適なプレイ環境を実現してしまった。本機の購入に際して最低購入数の設定や購入者が法人に限定されているということもないので、リビングに最高のVRゲーム環境を用意したいゲーマーにとっては、現時点で即購入可能なソリューションとして、十分に検討に値するハードではないだろうか。

CPUが更新された「VR ONE」はVRゲーマー必須のアイテムか!?

 今回、筆者もこの内覧イベントで「VR ONE」を背負ってVRゲームプレイを体験してみたところ、プレイフィールはなかなか良好だった。直前まで10キロ弱のバックパックを背負った状態で取材していたこともあってか、わずか3.6キロと5キロにも満たない「VR ONE」を背負ってのVRゲームプレイは、思いの外快適だ。ハイキングやトレッキング用バックパックと同様のショルダーハーネスの効果もさることながら、通常のVRゲームプレイでは、どうしても気になってしまう、どことなく縛られている感覚から完全に解放されるのが嬉しい。ケーブルに無理なテンションをかけることを心配して、急に現実に引き戻されることなく、常に没入した状態でゲームプレイを行なうことができた。

 こうして“異能ハード”ばかりを紹介していると、MSIが奇をてらった“色物ハード”ばかりを発売したかのように感じられてしまうが、実際のところはそんなことはない。今回発表された新製品のなかには、ノートPCでありながら19万円前後の価格帯で、新製品のCPUとGPUの「Core i7-7700HQ「GeForce GTX 1050 Ti(GDDR5/4GB)」を搭載したモデル「GE72 7RE Apache Pro」(参考レビュー記事)を始め、多種多様なモデルが用意されているから、ゲーマー向けの最高峰のフィーチャーにこだわりがなければ選択肢の幅は広い。また4K解像度であるとともに、AdobeRGBの色空間を完全にカバーした「GT73VR 7RF Titan Pro」も使用用途がゲームに限らず、4K映像ソースの鑑賞、デジカメやビデオ撮影素材の編集といったホビーにも活用したい場合には、良い選択肢となるだろう。

ハイレゾサウンドやIPS液晶パネルをアピールした製品も

VRゲームを通じて王道の製品で安心をアピールするDELL

パーティ会場の模様。ちょうどVRゲーム大会が同時開催されていた

 一方のDELLのほうはというと、ハードウェアのアピールについては、ずいぶんと控えめだ。冒頭で触れたとおり、1月5日(米国時間)より、カスタマイズ可能なゲーミングノートPC「Alienware 13/15/17」のCPUを、13インチモニタ搭載の「Alienware 13」では「Core i5-7300HQ」と「Core i7-7700HQ」に、17インチモニタ搭載の「Alienware 17」では「Core i7-7700HQ/7820HK」(ただし現時点のDELLダイレクトでは日米ともに「Core i7-7820HK搭載モデルは日本時間の8日の時点で未発売)に、それぞれ一新している。

 また、「Alienware 15」では、従来の第6世代CPUを搭載したモデルを併売しながら、新モデルとして「Core i5-7300HQ」と「Core i7-7700HQ/7820HK」搭載モデルを追加して選択肢の幅を広げている。なお、デスクトップPCの「Alienware Aurora」も同様に、CPUの第7世代への更新が決定しているが、アメリカでは1月12日から、日本では2月からとなることが予告されている。

 GPUの方は、「Alienware 13」への「GeForce GTX 1050/Ti」搭載モデルの投入を1月5日(米国時間)からと先行し、「Alienware 135/17」に対しては12日からとずれ込む。現状、DELLダイレクトの表記も、ちょっとややこしいことになっているので、購入を検討するなら、すべてのゲーミングノートPCが出揃う12日を待った方がよさそうだ。

【「Alienware 15/17」ゲーミングノートPC】
新発売の「Alienware 15」はCES 2017 INNOVATION AWARDS受賞

 上記のCPU/GPUの更新に加えて「Alienware 17」で特筆すべきなのは、Tobiiの赤外線アイトラッキングカメラを標準装備したことだ。Ubisoftの「Tom Clancy's The Division」「Watch Dogs 2 」「Assassin’s Creed:Syndicate」といったゲームが、従来よりTobiiのアイトラッキングを活用したゲーム操作をサポートしているが、2017年はさらに「Rise of the Tomb Raider」「Dying Light」といった作品が新たにTobiiのアイトラッキングに対応する。DELLの動きは、MSIが「CES 2016」発表モデルでは採用しながら、2017年の新ラインナップには採用しなかったことと対照的だ。Tobiiからは「CES 2017」で具体的な発表がなく、45タイトル以上で採用されているからと言って、正直Ubisoftソフト以外のタイトルにめぼしいものがないなか、DELLが新採用を決めているということは、今年のGDCあたりに何か新しい動きがあるのかもしれない。

 また、従来は一般的なホーム&オフィス用ノートPCのブランドであった「Inspiron」にも「Inspiron 7000 Gaming」シリーズが新たに追加されている。「Inspiron 7000 Gaming」はゲーミング用途にも使えるようにGPUに「GeForce GTX 1050/Ti」を採用しており、「Core i7」に内臓されているIris620をGPUとして使う無印の「Inspiron 7000」シリーズと差別化されている。「Alienware 15」との比較でいうと、先述したとおり「GeForce GTX 1050/Ti」搭載モデルの投入が12日にずれ込むため直接の比較はできないが、「Inspiron 7000 Gaming」のほうがやや価格が安い印象だ。ただし「Inspiron 7000 Gaming」は、ハードウェアのカスタマイズができないモデルであるため、ゲーマーにはやはり「Alienware 15」のほうが良いだろう。替えの効かないディスプレイの性能も「Inspiron 7000 Gaming」の方が落ちる。「Inspiron」シリーズ全般に言えることだが、このスペックと価格で妥協できるというモデルが簡単に見つかるようなら、候補に加えても良いと思うが、通常は「Alienware」のカスタマイズをあれこれと試しながらPC選びをした方が納得の結果が得られるように思う。

【 Harmonix「Rock Band VR」】
アメリカ人に非常にウケが良いVRギターパフォーマンス「Rock Band VR」は2~3ヶ月のうちにリリース予定とのこと

 ハードのアピールでは控えめなDELLだが、それはNVIDIAがゲーミングノートPC向けにハイスペックなGPUを投入しなかったからだとも言える。スペックアップとなるIntelの最新CPUへの更新によって、ゲームプレイにも恩恵はあるにはあるが、第6世代のものと比較してそれほど劇的な変化はないと考えられるからだ。逆に言うと、すでにハイスペックなGPUの「GeForce GTX 1050/1080」あたりを搭載したモデルは、昨年の下期にすでに出荷されており、GPUの仕入れ価格もこなれてきていると考えられるわけだから、CPUの世代交代を契機にした、現行の新機種を選ぶのがベストと言えるかもしれない。

 まさにそれを証明するかのように、6日夜のDELLのイベントでは、複数のゲームタイトルが会場に展示されていた。筆者が実際にプレイできたのは、2つのVRゲームで、ひとつは「Unreal Engine 4」で開発されており、HTC VIVEとOculus Riftの両方をサポートするFIRST CONTACT ENTERTAINMENTのシューター「ROM: Extraction」だ。

 今回プレイすることができたのはVIVE版で、宇宙船か宇宙基地の中のようなSFテイストなVR空間に設えられたシリンダー状のトーチカの内側にいる設定で、ゲームデザイン的に“動けない”ことの必然性に説得力をもたせている。このトーチカの内側から外周方向に向かって、四方八方に広がる通路からやってくる敵アンドロイド兵を殲滅するのがミッションの内容だ。上手にプレイするためには、ちゃんとした理解と練習が必要だが、ざっくり体験するだけなら、まったく説明がなくてもプレイできるほど単純明快で、すぐに楽しむことができる。

 通常のシューターと変わっている要素としては、初期状態から左手に榴弾、右手に銃という決まりがあることだ。この左手に持った榴弾を、効果的に敵の群れめがけて投げつけたり、投げた榴弾が発火する前でも銃で撃って爆発させれば、その爆発の威力で一網打尽という趣向なのだが、これが案外難しい。投げつけるための腕を振る動作の大きさとスピードをみていると思うのだが、かなり大きめに腕振りをしなければならないのと、離すタイミングも実際にボールを投げるより、かなり早めにしなければならない印象だ。そうしないと榴弾は敵に向かって飛んで行かず、足元のトーチカ内に無意味に転がることになってしまう。

 また、敵アンドロイドが急に自陣に接近して強襲してきたり、視界外の上方階の通路からも遠慮なく攻撃してくるため、意外とうかうかとしていられないゲームに仕上がっている。左手側の操作は視界に入っていなくてもできるようなので、視界外にもあらかじめ榴弾を投げておくといったトレーニングも必要だ。これらの練習を積んで上手くなるということがゲームプレイの面白さに繋がっていくのだろう。

 簡潔な操作方法のガイドが表示されるだけで、まどろっこしいチュートリアルやプロットを説明する重厚なカットシーンなどは用意されていないデモ版であったため、さっと体験することはできたものの、わずか5分ほどのゲームプレイ時間であったため、もう少し長くプレイしていたいと感じられ心残りだった。そういう意味では、上手に作られたデモだと言えるだろう。「ROM: Extraction」は、Steamを通じてすでにリリースされているタイトルであるため、機会を見つけて是非またプレイしてみたい。

 本作のビジュアルは十分に美しいものだが、それは輝度の高いエフェクトと無機質なフィールドのコントラストによるものだと思われる。メカニカルな“硬いモノ”が多いVR空間、つまりポリゴン数が多くならないように世界観を設定して、重量級のアセットを用意しなくても十分に見栄えのするフィールドでありながら、上手にフレームレートを稼いでいる。背景で稼いだリソースの余力は、すべて敵キャラクターに振り向けられており、敵アンドロイドのポリゴン数はそこそこリッチに感じられたが、「Alienware」ゲーミングノートPCの実力も相まって、急激に頭を振って10体くらいの敵を視界に入れてもフレームレートが低下することなく、常に快適にプレイすることができた。

【FIRST CONTACT ENTERTAINMENT「ROM: Extraction」】
「ROM: Extraction」はVRシューター初体験のインド人メディア女性もプレイに大興奮

 もうひとつ体験することができたゲームは、昨年10月にリリースされたUbisoftの「Eagle Flight」だ。筆者が体験したのはOculus Rift版で、パリの市街地上空を自由に飛び回るフリーフライングモードを試してみた。GDC 2016以来となる体験だったが、頭を向ける方法で移動する方向を決定して、コントローラのトリガーで加減速という基本的な操作に変更はなく安心してプレイすることができた。

 GDC版からのゲーム内容のアップデートとしては、速度による視界の遮蔽がなくなっており、代わりにアニメ的な集中線エフェクトを速度に応じた数とアニメーションスピードで表示されるようになっていたが、これはE3 2016の段階ですでに変更されていたことだ。また、いわゆる“VR酔い”を防止する方法論として確立している“鼻”モデルの描画と同種の役割を果たす“クチバシ”モデルが以前より長くなっているように感じられたが、これもE3時に合わせて行なわれたのだろう。風切り集中線エフェクトの描画とクチバシを長くする工夫によって、せっかくの雄大なランドスケープを遮蔽してしまわなくても“VR酔い”は起こらないと判断したのか、おかげで視界の抜けが良くなっており、数分間に渡る飛行による空の散歩を快適に楽しむことができた。

 飛行中、“VR酔い”対策の変更が悪い方向に影響していないか確認するために、敢えてトップスピードまで加速して、急上昇、急降下、急旋回を試してみた。全周囲画像を観ているときに特有の浮遊感と重心の変化が自分の肉体に起こるのが感じられるものの、特に不快感を感じるほどではなかった。フリーフライングということで、特にゲームプレイ上の目的のチェックポイントがあったわけではなかったため、そこまで無理な急旋回をしなかったのも大きいのかもしれないが、やはり、なによりも頭を向ける方法で移動する方向を決定するという入力が有効に働いているのだろう。

 コントローラのステイックの場合、簡単に力が入ってしまうため、ゲームプレイに熱中すると、ついつい急に反対方向に最大まで入力してしまう。これは本質的には、マウスのストローク量やステアリングを切る量でも同じことで、シューターのマウス操作や実車のパワーステアリングなど、少ない入力量で大幅な移動量を得ると有利なケースでは人間が認識可能な範囲内では積極的に活用されている。それを可能にしている手や腕を人間は器用に素早く動かせる反面、視界の変更は主に眼球の移動に頼っている。首関節の移動が起こるのは、眼球の移動だけでは視界に捉えることが困難になると予測し始めてからといった具合に、人間はあまり首を器用に動かすことに慣れていない。この首の不器用さが、VRゲームの入力に役立っている。この操作方法がリリース版まで維持されていることが確認できて本当に良かった。

【Ubisoft「Eagle Flight」】
「Eagle Flight」は気軽に楽しめそうな雰囲気から多くの来場者が体験

 VRゲームの体験を通じての「Alienware」のアピールに加えて、DELLのイベントでは、もうひとつユニークなデバイスを見ることができた。ペンタブレットとして使えるディスプレイの「Canvas 27」がそれで、ワコム<6727>の液晶タブレット「Cintiq 27QHD/Touch」と完全に競合する。画面上に配置して使用するダイヤル型のデバイスはワコム<6727>の製品にはないもので、ボリュームつまみのような操作とクリック操作が可能だ。このデバイスからはMicrosoftの「Surface Studio」のような印象を受けるかもしれないが、「Canvas 27」はあくまでディスプレイ上に表示されたイメージをその上で編集するペンタブレットで、ライバルはやはりビジネス用途のタブレット型コンピュータ「Surface」から派生した製品をリリースするMicrosoftではなく、液晶の有無はともかくPCに接続してイメージ製作の入力に用いる製品をリリースするワコム<6727>だ。

 ゲーマーには、あまり馴染みがないかもしれないが、一時期PCゲーム用の入力デバイスとしてペンタブレットを活用するのが流行ったことがあるので、ワコム<6727>を知っている人もいるかもしれない。ワコム<6727>は世界中のペンタブレットのシェアをほぼ独占するメーカーで、そのシェアは8割とも9割とも言われている。筆者はワコム<6727>以外のペンタブレットを使っている人を1度も見たことがない。

 このワコム<6727>の液晶タブレットがAdobeRGBカラースペースのカバー率が97%であるのに対して、DELLの「Canvas 27」はカバー率が100%になるとみられている。それでいて価格は、ワコム<6727>が30万円~35万円程度するのに対して、本機は20万円程度になる見込みだ。高スペックで低価格なDELLの製品が、圧倒的な既存ユーザー数とブランド力を誇るワコム<6727>に対して、どのような販売戦略を取っていくのか発売予定の3月が楽しみである。

【DELL「Canvas 27」】
「Canvas 27」は3月の発売予定

 こうして両社のイベント展示を見ていくと、企業規模や地域性、業態が違っている両社だが、ゲーマーをターゲットと捉えているのがわかる。たとえ、コストパフォーマンスの良し悪しの検討に余念はないとしても、ゲーマーはPCの購入に強いモチベーションを持っていて絶対的な価格に対しては抵抗感の薄い層だと言えるからだろう。加えて、両社の新製品からは、PCで映像やサウンドの鑑賞を楽しむマニア、PCで写真や映像の編集、イラストの製作といった創作活動を行なうハイアマチュアやセミプロを、次の“上客”として狙っている様子がうかがえる。

 これらの“上客”たちのハートを鷲掴みにして、2017年のヒット商品となるのは、どの製品だろうか。「CES 2017」に対して、いろんな意味で突出した製品を野心的に出展していた両社の動向には、今後も変わらずに注目していきたい。

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    最終更新: 01月11日(水)19時44分

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