TVドラマ「FFXIV 光のお父さん」ゲームパート監督山本清史氏インタビュー「ゲームの新しい可能性を示せたと思っている」。MMORPGロケという前代未聞の挑戦に密着!

GAME Watch 2017年04月20日(木)12時21分配信
4月16日 放送開始

エオルゼアパートの監督を務めた、山本清史氏

 スクウェア・エニックスのMMORPG「ファイナルファンタジーXIV」を舞台に、前代未聞の挑戦が行なわれようとしている。

 MMORPGのファンブログを、地上波で実写TVドラマにする。そして物語の中に出てくるゲームパートは、本人たちのキャラクターを使ってゲームのライブサーバーで撮影する。すべてが規格外というこの挑戦を仕掛けたのは、「一撃確殺SS日記」を運営しているブロガーのマイディーさんと、たゆたうのプロデューサー渋谷恒一氏だ。

 MMORPGが大好きな息子が、60歳代の父親をゲームに誘い、正体を隠したまま強敵、ツインタニアに挑む。TVドラマ「ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん(以下、光のお父さん)」は、MBSで4月16日から、TBSで4月19日からオンエアされる。4月20日にはNetflixからも配信される。さらに、今秋には全世界に向けて独占配信されることも決まっている。

 今回は、そのゲームパートの監督を手がけたエオルゼアユニットの山本清史氏に話を聞く機会を得た。山本氏は実写はもちろん、「ドラゴンズドグマ」や「真・三國無双 MULTI RAID 2」のカットシーンを手掛ける映像クリエイターであると同時に、「ドラゴンクエストX」をがっつりやり込んでいるオンラインゲーマーでもある。TVドラマ「光のお父さん」のゲームパートは、原作者マイディーさんが主宰しているフリーカンパニー「じょびネッツア」のメンバー本人たちが演じる登場人物を、山本氏が4Kでキャプチャーするという手法で撮影された。

 「FFXIV」を最高画質で起動しつつ、4Kでキャプチャーするためには、かなりのハイスペックPCが必要になる。そんな撮影を支えたのが、マウスコンピューターが撮影用に提供したG-TuneのハイエンドノートPC「NEXTGEAR-NOTE i71101シリーズ」だ。

 「NEXTGEAR-NOTE i71101シリーズ」は、17.3型4Kモニターを備え、GeForce GTX 980MをSLIで搭載というノート離れしたモンスターマシン。山本氏は、このパワーも重量も超ド級のPCを日々持ち歩いて撮影に挑んだ。インタビューでは、撮影の苦労話から、山本氏が作品に込めた思いまで、1時間半にわたってじっくりと語ってもらった。

 「FFXIV」ファンはもちろん、ドラマで初めてMMORPGを知ったという人も、ぜひ読んで欲しい。

「FFXIV」開発チームの協力は、敢えて求めなかった

日本でこれを撮れるのは僕しかいないとプレゼンした

――まずは「光のお父さん」のドラマ化について、どのような経緯、タイミングで、山本さんがゲームパートの監督をすることになったのですか? ゲームパートの監督というのは、初めて聞きますが。

山本氏:  そうですよね。僕も初めてです(笑)。企画の話を聞いたのは、2016年の6月ぐらいですね。企画自体はマイディーさんのブログによると、一昨年の12月ぐらいから始まっていたらしいです。そこで色々と渋谷さんが企画を動かしていて、監督を野口さんがやると決まって。最初はゲームパートの方も野口さんが監督するというお話で進んでたと思います。でも、ゲームの中でドラマを撮るって、やはり普通では想像がつかないようで、「ゲームに詳しい人が必要なのでは」という野口さんの提案もあって、では誰に頼むかという話になったときに、渋谷さん曰く、他の人からも僕の名前が挙がったということです。

 僕は、6月に話を聞いた段階で、「たぶん日本で、これをやれるのは、僕しかいないよ」というプレゼンはしていました。僕はすでにコーエーテクモゲームスという会社でオープニングムービーを撮っているし、カプコン<9697>でもカットシーンをやっている。そもそも、ゲーマーなので、ゲームの中で何をやればいいのかということが、わかってる。モーションキャプチャーもできるし、どんな絵になるのか想像もできる。他の人ができないなら、僕がやりますよと。最終的に参加することが決まったのは、7月下旬くらいです。

――ゲームに関しては、山本さんが1番詳しくて、リーダーシップをとったのですね。

山本氏:  現場のスタッフは実写のことはわかるけど、ゲーム内に関しては、僕が説明する必要がありました。

渋谷氏:  実写の方もわかっている監督でなければダメだったんです。実写のカメラがどういうカメラで、機材で、どういう絵を撮ってきて、どういうクオリティであがるかを、ゲームパートの監督もわかっていないと繋がらないんです。

――「FFXIV」の前にはどういったゲーム映像を手掛けられたのですか?

山本氏:  カプコン<9697>では、「ドラゴンズドグマ」のオフライン版のカットシーンですね。モーションキャプチャから全部です。

――カットシーンを全部というのは、中で、制作スタッフの1人として作ったってことですか? その時はカプコン<9697>にいたのですか?

山本氏:  外注です。その前に、コーエーの「真・三國無双 MULTI RAID 2」というPSPのゲームのオープニングを作りました。

――それはリアルタイムレンダリングのイベントシーンですか?

山本氏:  プリレンダのムービーもあります。両方ですね。

――カットシーンのスペシャリストですね。

山本氏:  そうでも無いと思いますけど、好きというか。僕がそういうのをやりたいやりたいとずっと言っていたので、どこかから話を聞いてオファーしてくれたという。

――ゲームにもいろんなパートがありますけど。カットシーンにこだわるのはなぜですか?

山本氏:  僕がプレーヤーだからじゃないですかね。そもそも、子供の時にファミコンに出会って、RPGを遊びながら、将来自分がゲームを作るとしたら、こういうゲームを作りたいとずっと思っていたようなものが、今、現実になっているのです。当時、僕が作りたかったゲームは、「FFXIV」的なものというか、天気が変わって、ゲーム内で時間が流れて、飯も食えて、寝れて、冒険はせずとも遊べる。世界中にもそういうMMOはたくさんありますけど、そういったものを「FFIII」とか、「ドラゴンクエストIII」とかをやってる時に夢想していたんです。モンスターを倒すだけじゃないゲーム。それがどんどんでてきたので、遊ぶじゃないですか。そうするとストーリー上にカットシーンが出てくるのですが、もっとこうした方がいいんじゃないかとか、ここはこう撮った方がいいんじゃないかとか、映像の仕事をするようになってから、僕なりに思うことも増えてきて。僕がやればもっと面白くなるのにと、おこがましくも思っていた頃があって。そういう、ゲームのストーリーに絡む仕事をずっとやりたいと思っていたのです。

――今回のモチーフになってる「FFXIV」は、スクウェア・エニックスさんのゲームですが、スクエニさんって、その辺りのクリエイターが大勢いる組織ですよね。実際に、一緒に作業してみてどのように感じました?

山本氏:  今回一緒に作業できたのは、実はサウンドチームだけです。彼らがいうには、守秘義務がすごく厳重なので、開発チームも詳細は全然知らないと。噂は知ってるけど、ドラマ作ってるらしいぞとは聞いてるけれど、何がどうなってるかは本当に、誰も知らないらしいんです。

――開発スタッフに逐一相談しながら、という作り方ではないのですね。

山本氏:  全然してないです。

――相談できていれば、また全然違った展開があったかもしれないですね。

山本氏:  もちろん相談すれば、協力関係は取れたと思います。でも、そこは敢えて、スクエニさんとの協力は断ち切ったのです。おそらく、彼らは一緒にやりたかったと思いますが。

――やはり何を作ってるか気になるでしょうしね。

山本氏:  自分たちが作っているゲームがTVドラマになるなんて、そうそうないと思いますね。でも僕はゲーマーですから、ゲームの中でドラマを作るというものすごいチャレンジに、“神様”が入ってきてはダメだということがわかっていたのです。神様が入ってきたら、なんでもできてしまうので、もっとこうしたい、ああしたいと欲が出る。でも、そんなものはチャレンジでもなんでもない。放送日も決まっている。だから、敢えて断ち切ったのです。

――プロデューサー兼ディレクターの吉田さんとは、ある程度コミュニケーションはあったのですか?

山本氏:  吉田さんとは、ドラマの実写パートの方の打ち上げで、「これからゲームパートを撮るんですよ」、「あ、頑張ってくださいね」というやり取りと、終わった後の記者会見。そのくらいです。本当はもっとお話ししたかったんですが、人見知りなんで。

――そうなんですか、驚きですね。

山本氏:  全然、密じゃないです。吉田さんが12月24日のプロデューサーレターLIVEで言っていた、「ドラマを撮ってるやつがいるらしい」というのは本音なのですよ(笑)。

――実際どうなんでしょうね。皆さん見た上の評価ってどうなんでしょうね。

山本氏:  わからないです。直に言われたことがないので。ダメと言われていないということは、いいということだと思うのですが(笑)。

渋谷氏:  ダメなときには、遠慮無く言う方たちなんですよ。だから大丈夫なんだと思います。

現役プレーヤーでもある山本氏が語る「FFXIV」の魅力とは

撮影をきっかけに「FFXIV」を始めたという山本氏。「紅蓮のリベレーター」への準備もばっちり

――プロジェクトに参画してから、野口さんから山本さんに与えられたタスクはどのようなものでしたか?

山本氏:  野口さん的には、脚本に書いてあることがわからなかったかもしれません。例えば「タイタンの攻撃を避けて倒す」と書いてあって、それを3分の映像にするとなると、野口さんも僕に任せるしかないんですよ(笑)。だから、全体的にはお任せでした。もちろん絵コンテを描いてお見せしたりはしていましたが。まずは第1話ですね。とにかく第1話で視聴者が混乱しないようにすること。光生がプレイしているのが、マイディーというキャラクタ―なのだということがわかるように、ゲームパートとリアルパートの画面切り替えのところだけは、お互いにコンセンサスを取りました。実写の千葉君のカットと同じ角度で、エオルゼアでも撮影して、クロスフェードさせたりとか。1話はそういうことが多いですね。

――実写映像を見てから、同じものをゲームパートで用意するのですか?

山本氏:  一応スチール写真はもらいますが、正直全然わからないです(笑)。こんな絵になりますと言われても、編集で変える可能性がありますし。一応、正面から撮っているとか、横から撮っているということはわかるので、それっぽく撮りました。

――尺もわからない?

山本氏:  わからないです。実写も同時進行でしたから。だから多めに作っておいて、野口さんの編集に合わせて切ってもらうという感じです。

――実写パートの俳優さんにはお会いしてるのですか?

山本氏:  現場に行って、千葉君や、大杉さんにお会いして、「僕がゲームパートを撮ります」とご挨拶はしました。

――山本さんの方から指示を出したりはしていないのですか?

山本氏:  演出的なことはほとんどしていません。向こうの芝居にあわせる感じになってます。

――ゲームパートは、マイディーさんのブログに従って進んでいくわけですが、何カットぐらい撮ったのですか?

山本氏:  カット数は膨大になります。そうですね。撮った量だけでいったら、全体で7TBぐらいあります。

――7TB(笑)。

山本氏:  1日のカット数がだいたい50~60はあるので、それが約2カ月ですから。ほとんど使わないカットもたくさんありますけど(笑)。撮っただけというというか。NGとかリテイクもたくさんあるので。

――7TBの収録データのうち、使ったのはどれくらいなのですか?

山本氏:  使ったのは半分以下ですね。

――いい出来なのに全カット、ということも結構あるのですか?

山本氏:  ツインタニア戦ではありましたね。

――山本さんは当初どのようなツインタニア戦を目指したのですか?

山本氏:  お父さんと、光生の、お互いの気持ちがシンクロ<3963>していくというシーンではあるのですが、その中に仲間達が追加されて、仲間達の気持ちも同じようになっていくという要素もあるのです。各自のカットというか、各自が役割をしっかり把握して、お父さんをサポートしている。尺の問題で、7話はすごく長いので、普通に繋ぐとドラマ2本ぶんくらいになってしまうから、カットされた部分は仕方がなかったと納得しています。ただあっさりしてしまっているから、ちょっともったいないなと思いました。

――ところで山本さんは、ゲームパートの監督をきっかけに「FFXIV」を始めたのですね。

山本氏: 「FFXIV」の噂はいろいろ聞いていました。友達もたくさんやってますし。「やらないの?」と聞かれるのですが、「ドラゴンクエストX」で精一杯だったのに、やったらどうなるか目に見えてるから、「やるものか!」と思っていました(笑)。

――発表会でもそうおっしゃってましたね。

山本氏:  そうなんです。だから、ついに始める時がきたなと。7月に、光のお父さんと同じグリダニアから始めました。僕はヒーラーで、そこからお父さんと同じことをやりつつロケハンをして回って、脚本ができあがったのが9月ぐらいだったので、それに合わせていろいろ調整をしつつ、実際にエオルゼアで撮影を始めたのは11月からです。それまでにレベル50にして、ツインタニアも倒して、ストーリー上こういうことだということを、全部腹に呑み込んだ上で、もう一度最初から始めましょうという感じに撮影を始めました。

――前例のない試みなので、大変だったのでは?

山本氏:  じょびネッツアのみんなも、最初は何をしていいのかわからないみたいだったので、とにかくチャットで延々と話し合いを続けました。絵コンテを送ってはいましたが、カメラの制限があって、必ずしもその通りに撮影できるわけではないのです。あおりで撮りたくても、簡単にはあおれないとか、俯瞰に入るも結構大変ですし。カメラは僕のキャラクター目線なので、高さを変える方法も、立つか座るかしかないですから。この画角でやれることをいろいろと探りました。ララフェルのキャラを突くって目線の高さを変えてみたり、景観カメラをいろいろと試してみたり、グループポーズをこう使えば自分を隠しながら撮れるとかだんだんとわかってきて、4kで撮ってリサイズしてみるとか、そういう撮影的なギミックも使いつつ、1話から7話までの間に、徐々にレベルアップして、絵のクオリティが上がっていく感じでした。

――ちなみに今でも「FFXIV」はプレイされているのですか?

山本氏:  やってますよ。今パッチ3.4で、もう少しでパッチ3.5にいきます。ドラマ放送までには3.5をクリアしておこうという気持ちでいます。

――実際遊んでみて「FFXIV」の魅力って何だと思われましたか?

山本氏:  僕は正直、バトルじゃないところだと思います。バトルだけなら面白いゲームはほかにもありますよね。ただ、リップシンク1つにしても、秒数を変えられるとか。合理的な考え方をしたら、そのためのプログラムを組むのは、無駄だと思うのです。チャットを打って口が動くって、作り手の自己満足でしかないじゃないですか。ファッションにしても、僕が今着ているのはシーズナル装備の水着とロングスカートですが、それを合わせるとワンピースに見えるのです。そういう組み合わせができるというデザイン性も、普通はありえないわけですよ。だって、エンド装備をもらったら、それで1つ完成なのに、取り換えられると。しかも見た目もかえられますというのは。そういう敢えて無駄なことをやって、ユーザーに挑戦しているのですよね。こういう機能を盛り込んだけど、お前らはどう遊ぶんだと。それを「FFXIV」のユーザーは遊び倒しているわけです。それがいいなと思って。単純にバトルだけだったら、ここまで盛り上がっていないと思います。

――それは遊びつくしたから出る言葉ですね。

山本氏:  まだ遊び尽くせてないです。まだ髪型でもそんなに遊んでいないし。今はとにかくメインストーリーを終わらせて、アイテムレベルを上げてからのスタートになるので。まだじょびのメンバーと並べていないですから。やっとアイテムレベル251なので、まだまだ。アレキサンダーもクリアしてないですから。

――むしろアイテムレベルが上がっていく今は楽しんじゃないですか?

山本氏:  今苦しいですね(笑)。ここから先は週1でダン・スカーに行かないとどうにもならないので。

――では、6月にリリースされる「紅蓮のリベレーター」も?

山本氏:  ツイッターも続々フォローが増えるので、やらざるを得ないですね(笑)。ほぼ毎日エオルゼアに行ってます。

――では、その関連のお仕事が続くといいなあという感じ?

山本氏:  そうですね。好きですからね。ゲーム作りたいくらい好きなので。

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    最終更新: 2017年04月20日(木)12時21分

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