「キャンディークラッシュ」誕生5周年インタビューKing Japanと「キャンディークラッシュ」、その過去と未来

GAME Watch 2017年11月14日(火)12時00分配信
【iOS版】

2012年11月14日 配信開始

 もはや知らない人はいないとすら思えるパズルゲーム「キャンディークラッシュ」。「キャンディークラッシュ」は元々Facebookにおいて2012年4月12日にリリースされたタイトルで、その後人気の高まりとともにモバイルへとプラットフォームを移し、iOS版が2012年11月14日に配信開始となっている。

 記事の公開日である本日11月14日はモバイル版の配信開始から5周年を迎える、記念すべき節目の日なのである。弊誌ではこの節目に合わせ、「キャンディークラッシュ」を日本で展開した仕掛け人、King Japan代表取締役の枝廣憲氏にインタビューをすることができた。本稿ではその模様をお伝えしたい。

【「キャンディークラッシュ」ゲームプレイ】

日本で「キャンディークラッシュ」を展開するKing Japanとは?

King Japan代表取締役の枝廣憲氏

――代表取締役に就任されるまでの経緯を含めて、自己紹介をお願いします。

枝廣氏:私は電通<4324>を経て、gloopsでCMOとしてサンフランシスコにおりまして、そこでシリコンバレーの様々な企業の方々と知り合いました。そのなかでたまたまKingとの縁もあって、「うちにきたらどうだい?」と軽く打診は貰っていたんですね。そんな折にちょうど前の会社がUSオフィスを閉じるという話になったので、Kingに入社してKing Japanをスタートしたという経緯です。

 2014年1月に私がジョインして、King Japanのオフィスは2014年の4月にオープンしたので、その間は潜伏期間なんですけど(笑)。この間にオフィスを探したり法人登記などのペーパーワークをこなしつつ、「キャンディークラッシュ」のローカライズでテキストを1個1個いじったりしていました。

――なぜKingに入社しようと思ったのですか?

枝廣氏:「キャンディークラッシュ」が向こうで起こしていた爆発的なムーブメントが凄まじくて、日本でもこのゲームを流行らせることができるのではないかと思ったのがきっかけです。「キャンディークラッシュ」はとにかく全てが新しかったですね。まず1つ大きな点として、単純なパズルゲームなのにプレイしていて凄く気持ちがいい。そしてスマホゲームは必ずネットに繋がないとプレイができないという固定観念があったのですが、「キャンディークラッシュ」はオフラインでもプレイができる。あとはマップがずっと続いているので、1つ1つ進めていく達成感がある。そのあたりが色々新しくて、素晴らしいゲームだと思ったんですね。

――King本社に対してKing Japanはどのような役割を担っているのでしょうか?

枝廣氏:ある種尖兵隊みたいなところもあって、本社とは別に独自で戦略を練ったりしています。大きく3つのファンクションがあって、1つは日本における戦略です。どんなゲームを出していくのか、いつやるのか、それに対してどれくらいの予算規模を付けていくのかということを設定しています。

 2つ目がローカライゼーションですね。日本のマーケットもそうですし、アジアのマーケットは少し特殊で宗教的な部分での配慮も必要なので、単純に言語を翻訳するだけというよりは、キャラクター設定や言語表現といった意味で適切なものに変更する役割があります。逆にこちらの提案を英語に変えて世界展開をしたりということもありますね。あとは日本独自のイベントも展開しているので、そういったもののオペレーションを行なっています。

 最後はやはり調査や広告の展開といった意味で、日本市場におけるマーケティングを担当しています。

――Kingのタイトルを日本で展開するにあたって、選定はどのように行っているのですか?

枝廣氏:Kingはグローバルで200以上のタイトルを展開しておりまして、日本で展開しているのは現在14タイトルです。タイトルを選ぶ基準は主観と客観のミックスですね。現地のユーザーさんの評判がいいものというのが大前提ですが、先ほど申し上げたように宗教、文化や言語的な違いもあるので、僕らのほうで1通り目を通して選定しています。

――日本でKingのゲームを広めるために、どのようなことを心がけていますか?

枝廣氏:我々はゲームの、そして弊社のファンを増やしていきたいので、派手なプロモーションというよりは、地道にいいゲームを出すことによって「Kingのゲームだったら」ということでプレイしてくれるユーザーさんを増やしていきたいと思っています。

 SNSなども活用していて、弊社のFacebookをはじめ、TwitterやInstagramなどでもユーザーさんの数は少しずつ増えています。ファンイベントも定期的に開催しておりまして、いい意味でも悪い意味でも色々なフィードバックをもらうので、それが刺激になったりしていますし、我々もファンの皆さんに満足してもらうために努力していかないといけないなと思っています。

――やはり「キャンディークラッシュ」からKingのファンになった方も多いのでは?

枝廣氏:「キャンディークラッシュ」シリーズは我々の中では非常にシンボリックなタイトルなんですが、ある調査によると、ありがたいことにKingは日本で1番ユーザーさんが複数タイトルを遊んでくださっている会社だということです。弊社のゲームがコアにしている「Bite Size Brilliance」という言葉、「一口大の輝き」という訳し方をしているんですけど、ちょっとした空き時間でもできるカジュアルなゲームというところがKingのゲームは一貫しています。なので、色んな方に遊んでいただけるようになっているのかなと思います

――Kingさんは徹底してカジュアル路線を進んでいるのですね。

枝廣氏:コアにしているところはまさに「一口大の輝き」といいますか、「時間・場所・お金」、ユーザーさんにとってこの3つの負担がなく、ストレスフリーであるということを大事にしています。さっとスタート出来て、さっと閉じたいときに閉じられるというところですね。オフラインでもプレイできるので、「飛行機の中でもプレイできますよ!」という謳い文句があったんですが、最近だと飛行機にもWi-Fiが常設されているのでどのゲームでもできるようになっていて。時代と環境が僕らのアイデアを追い抜いてきたなと(笑)。

――では逆にいわゆるハードコアな、長時間一気に遊ぶようなタイトルは扱わないのですか?

枝廣氏:これだけデバイスや通信が進化してくると、"ガッツリ"遊べるゲームがもしかしたらカジュアルと定義されることもあるかもしれないので、そのあたりは世の中の流れというのがあると思います。

 例えば弊社ですと「パラダイス・ベイ」というタイトルがありますが、島を開拓して管理していくような、パズルゲームとは一線を画したタイトルもあります。こちらはユーザーさんからも「Kingらしいゲームだね」という非常にいい評価を頂いておりますし、我々も"Kingらしさ"を保っていくためであれば、多様化はあるのかなと思います。流石に凄いコアなゴリゴリの戦争ゲームとかはこれから先もないと思うんですけど(笑)。

――収益の面で厳しいタイトルのサービスを中止することはありますか?

枝廣氏:僕らはやめることはないですね。一旦世に出したものはユーザーさんに対して責任があると考えているので、我々は運用停止とかストアから削除するといったことは今のところはしていないですし、これからもそうありたいと思っています。ユーザーさんに楽しんで頂けている限りは我々も続けるべきだと思っています。

「キャンディークラッシュ」におけるKing Japan独自の取り組み

――「キャンディークラッシュ」を日本で展開しようと思ったきっかけは?

枝廣氏:個人的に「キャンディークラッシュ」にハマって、この面白さを周りに、日本に伝えたいなと思ったのがきっかけですかね。「キャンディークラッシュ」は当時特にローカライズ回りに色々と問題を抱えていたので、そこを改善すればもっと大きくなるのではないかなと思いました。また、僕が当時シリコンバレーで見た「キャンディークラッシュ」の先進性のようなものが日本に入ってくることによって、日本のゲーム業界も盛り上がるのではないかと思いました。

――ローカライズの問題というと例えばどのようなところですか?

枝廣氏:5年前、「キャンディークラッシュ」はもともとFacebook上のゲームだったんですよ。もちろん今もFacebook上でも展開していますし、沢山のユーザーさんもいらっしゃいますが、当時はFacebookのアカウントの有無で大きく有利不利があったんです。Facebookに繋ぐと友達同士でライフが送れたり、先のステージに進むのを手伝えるということですね。

 そこからモバイルに移ったときに、日本とアメリカではFacebookの利用率も大きく違いますし、例えばFacebookに繋がずに自分1人で楽しみたいという方がいらっしゃったとしたら、そうした方々に対してどのようにライフを回復する方法を提供するかなど、そういったところの改善を図っていきました。

 当時の日本ではビジネス用にFacebookのアカウントを持ってる方が多かったので、会社の同僚や上司から「ライフくれ」なんて言われて対応したりすると、仕事中なのに「キャンディークラッシュ」からメッセージが送られてきてしまうのはやめてほしい、といった指摘などもユーザーさんからいただきました。そこはやはり改善すべき点だということで変更したりなどもしました。今考えると懐かしいですね。

――「キャンディークラッシュ」におけるKing Japan独自の取り組みにはどのようなものがありますか?

枝廣氏:やはりマーケティングですかね。例えば「キャンディークラッシュ」のCMに岡田准一さんと遠藤憲一さんに出ていただいたんですけど、白黒の世界で「キャンディークラッシュ」を表現したんですよ。これは恐らく、世界中どこのオフィスもトライしていないことで、これだけカラフルな「キャンディークラッシュ」の世界観を白黒で表現しようとするというところが非常に斬新だったと思います。表現としても質としてもいい評価をいただいて、そのCMのシリーズを続けたことによって今の資産があるのかなと思います。

 CMは2014年の4月17日から放映したんですが、入社からオフィスオープンまでの間に仕込みをして、タレントさんやクリエーターさんと色々打ち合わせを重ねながら、およそ3カ月くらいで仕上げました。

――CM作成に3カ月というとかなり短い制作期間なのでは?

枝廣氏:普通よりは早い方だと思います。これは縁ですよね(笑)。CMを作ってくださった方や色々とコーディネートしてくださった方が電通時代の先輩だったということもありますし、私自身ある程度CMのつくり方やメディアさんとの交渉の進め方についての経験があったので、それが制作を加速させてくれたかなと思います。

――そのCMはどのように生まれたのでしょうか?

枝廣氏:岡田さんにお願いしたいというのは私が是非にと提案しました(笑)。白黒の演出は山崎隆明さんというクリエイターさんのチームが考えてくださったアイデアです。私はTVCMのクリエイティブのプレゼンの経験もあるのですが、普通は商品名を連呼するパターン、タレントさんを使うパターン、という感じで沢山案を出すんですよ。思い返すと凄いんですが、山崎さんが持ってきた案はたった1個で、「この『キャンディークラッシュ』の世界を岡田准一で表現するならこれしかないです」みたいな。A3の紙1枚のコンテで、「はい、白黒。」って。衝撃で鳥肌が立ちました。

――日本でこれほど「キャンディークラッシュ」が流行るというのは、日本展開を始めた時から想定していましたか?

枝廣氏:少なくとも日本でナンバーワンにもっていきたいなと思ってはいました。「キャンディークラッシュ」も含めてKingは日本で1番ユーザーさんが多い、というお話をいただいた時は非常に達成感はありましたね。ユーザーさんは僕らにとって宝物なので、ファンの方の数を増やしたり、より濃いファンになっていただくということが仕事として凄く楽しいです。

――「キャンディークラッシュ」がこれだけ長く愛される理由はどういうところにあると思われますか?

枝廣氏:まず1つ大前提として、モバイルの時代になってゲームは出して終わり、ではなくなったんです。「キャンディークラッシュ」は約2週間に1回アップデートを繰り返していますので、キャンディーの見え方や演出なども5年前のリリース当時とは根本的に違います。1度リリースした後にもより良いゲームにしていくチャンスがあるんですね。アメリカでは「キャンディークラッシュ」がランキングで1位に返り咲いたりということもありましたし、売り切りのゲームではないがゆえに、僕らは日々改善を続けることができて、新しいゲーム上のメカニクスやキャラクターというのをどんどん入れていていくことができます。

 あとは有名シリーズのテレビ番組や映画などとコラボさせていただいたりということもありまして、そういったものが僕らのゲームのフレッシュさを保ってくれているかと思います。

――今後、「キャンディークラッシュ」はどのように変化していくのですか?

枝廣氏:色々な方向性があると思っていて、「キャンディークラッシュ」とひとくちに言っても、現在は「キャンディークラッシュ」、「キャンディークラッシュ ソーダ」、「キャンディークラッシュ ゼリー」と3つのタイトルがあります。例えば「キャンディークラッシュ」と「キャンディークラッシュ ソーダ」はキャンディーの出てくる方向の上下が違いますし、「キャンディークラッシュ ゼリー」になると、自分と誰かが競うという要素が加わります。そういったゲームのテーマというか、本質的なコアの部分に関わるアイデアがあれば、アップデートで対応するよりも新しいゲームとしてリリースされるでしょう。

 現状のタイトルでもそれぞれキーとしているメインテーマが違うので、楽しみ方も違うと思いますし、そういったなかで好きなものをユーザーさんが見つけていただけるような環境を維持しつつ、1回リリースした以上は細かくユーザーさんの声に耳を傾けて、それぞれのテーマに対して日々改善をしていくというのはスマホゲームの会社としての使命だと思っています。

枝廣氏が見る"未来"

――King、そしてKing Japanは今後どのような取り組みをしていきますか?

枝廣氏:これまでもこれからもですけど、世の中に新しい風を起こせるような、とにかく面白いゲームを作っていきます。Kingは会社の規模として従業員は約2,000人以上いて、オフィスも世界14カ所にあります。「キャンディークラッシュ」をもっとよくしていこうというチームや、また新しいものを作っていこうというチーム、新しいところだとゲーム内に広告を出そうということにチャレンジするチームもあって、各拠点で色々なトライを重ねつつ、様々な方向性を持って開発を続けています。

 先のことはわかりませんが、もしかしたら10年後はデバイスとかプラットフォームすら総入れ替えになっている可能性さえあると思うんです。KingはもともとWebのゲーム会社で、オンライン上の独自のプラットフォームにFlashゲームを展開していました。それをFacebookさんのプラットフォームに出すようになって、「バブルウィッチ」というゲームで1つのマイルストーンを経て、その後モバイルに引っ越したんです。その切り替えのタイミングはどこよりも早く動くことができたので、今のこのKingの存在があると思いますし、また次に何か変化がくるとすればそのときもKingはそれに対していち早くアプローチできる会社であると思います。

――ここ数年でもデバイスの変化は目まぐるしいですよね。

枝廣氏:iPhoneがこれまで普及した台数は10億台なので、そのボリューム感でいうとこれから先、例えばパーティーゲームなどもモバイルでプレイする時代になるのではないかと思うんです。コンソールのマーケットはコンソールの楽しみがあって、モバイルはモバイルの楽しみがあると思うんですけど、だんだんとクロスオーバーしていくと思っています。

――最後に、Kingのファンの皆様に一言お願いします。

枝廣氏:いつも弊社のゲームを遊んでいただいてありがとうございます。あなたがた1人1人の顔を思い浮かべながら毎日の人生を過ごしております。これからもいいゲームを出していったり、既に出ているゲームももっと面白くなるように頑張りますので、引き続き一緒に遊んでいただけると嬉しいなと思います。

――本日はありがとうございました。

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    最終更新: 2017年11月14日(火)12時00分

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