「暇つぶし」でカップル動画を撮る--リスクが見えない10代

CNET Japan 2016年10月15日(土)08時00分配信

 カップル動画が10代の中で加速している。

 「親にカップル動画撮るなとか言われたらどうする?」

 「え、マジうざいし。撮らないと(仲間内で)浮くから無理」

 「どういう時に撮るの?」

 「デートで1日遊んでご飯食べて最後暇だから撮る?みたいな。やることなくなったら撮ってるかな」

 「どんなことを撮るの?」

 「どこどこに遊びに来ましたとか。ちゅーくらいなら全然オッケー」

 ある10代カップルは、カップル動画を日常的に撮っていると答えていた。親もニュースで知って止めたりはしているそうだが、もはや若者世代にとってカップル動画は「暇つぶし」。デートのルーティンメニューに動画撮影が入っているそうだ。

 「キス動画を公開すると別れたときに困るのでは」と言うと、彼女は「別れないから大丈夫。あと、万一別れたら新しい恋人と投稿するから平気」と答えていた。彼らにとっては、「激しいイチャイチャはNGだけれど、キス動画くらいならオッケー」と、大人に比べて公開を許容する範囲がかなり広くなっている。

 カップル動画で知られるMixChannelは2013年12月にリリースされ、まだできてからわずか3年弱。それでも、元彼氏に「今の彼氏にキス動画をバラす」と脅された女子高生や、「あんたレベルがキス動画公開するなんて」といじめにあった女子中学生もいる。

 顔がわかるキス動画を公開すると問題が起きることが大人には予想できても、10代は周囲に公開して幸せをかみしめるため、あるいは今のコミュニティから浮くことを恐れて公開し続けている。

 「就活や将来の結婚に影響が出るかも。イチャイチャをSNSで公開した学生が保育専門学校を退学処分になったこともあるし、人事採用担当社が採用を見送った例もある」と伝えたが、「そんなことで採用しないようなつまんないところには入らないからいい」と、まったくピンときていないようだった。公開によって就活の選択肢が狭まることは確かなのだが、保護者世代も「注意しても聞いてくれない」と、対応に苦慮しているようだ。

 キス動画やカップル動画は、以前は当たり前のものではなかった。しかし、MixChannelで10代に広く普及したことで、投稿の敷居が一気に下がってしまった。「学校で1人くらいは絶対誰か(カップル動画を)投稿している」と女子高生に聞いたことがある。そのような状態になると、真似して投稿する子が次々と現れるようになる。実際に、その女子高生は「素敵だったから、私も彼氏ができたら投稿したい」と答えていた。

 長く取材してきて、10代の意識がすごい勢いで変化しつつあることを感じる。今や、中高生において「顔写真公開は日常」だし、「カップル動画公開も当たり前」なのだ。

保護者によってさらされる運動会写真

 しかし、保護者世代は個人情報を安易に公開してないかと言えばそうではない。「キス動画はNGだけれど、子ども写真ならOK<3808>」と考える人は多いのだ。たとえば今の時期は、ハッシュタグ「#運動会」が危険だ。

 ハッシュタグ「#体育祭」は、中高生の自撮りや体育祭風景を撮影した写真で溢れている。高校生はそもそもスマホが校内持ち込み自由なところが多いし、中学生は持ち込みこそ禁止されているが、こっそり隠れて撮影し、SNSにリアルタイム投稿している。

 一方、「#運動会」は子どもの幼稚園や小学校の運動会写真が投稿されることが多い。投稿しているのはほとんどが保護者だ。Instagramで「#運動会」で検索すると、競技中などの子どもの写真が多数見つかる。自分の子どもの顔はもちろん、他の友だちの顔もはっきりと写っているものや、「第◯回大運動会 ☓☓幼稚園」という看板の前などで撮影するなど、園名や校名がわかるものも多数見つかる。

 体操服姿なので、フルネームがはっきりわかるゼッケンが写った写真も多数投稿されている。中には名前だけにはモザイクをかけているものもあるが、体操服などを見れば幼稚園や小学校は特定できる状態だ。

 そのすべては保護者の手によって投稿されており、「初めての運動会、感動!」「◯◯ちゃん大きくなったね!」など、のんきなコメントがつけられている。顔写真どころか、名前や幼稚園、小学校などが特定されることをまったく考慮していないのだ。

 Facebook、Instagramが浸透してから、保護者によるSNSへの子どもの顔写真投稿が身近になった。周囲のほとんどが投稿している状態のため、公開への心理的抵抗が下がっているようだ。また、スマートフォンネイティブ、ソーシャルメディアネイティブ世代の保護者には、そもそも公開に抵抗を感じたことがないという人もいる。

 保護者が自己責任で子どもの顔写真を公開したり、公開範囲を友だち限定などにして公開することには問題は少ないだろう。しかし、名前や在籍している幼稚園・小学校まで公開することは問題ないのかどうか。子どもに及ぶリスクについて甘く見すぎていると言わざるをえない。

 保護者が子どもの写真を扱う場合は、ママとなった芸能人ブログ、SNSが非常に参考になる。顔がわからないように撮影したり、居住地や在籍している幼稚園・小学校がわからないようにしつつ上手に写真を公開しているので、参考にするといいだろう。

公開に慣れてもリスクは減らない

 mixiの頃は多くのユーザーが匿名で登録していた。Twitterでも同様だった。しかし、Facebookは個人情報を登録、公開を求めるサービスであり、当初抵抗を感じている人が多かったものの、もはや「Facebookで実名を登録するなんて」と抵抗している人の方が少数派のように感じる。

 我々はSNSで実名を公開することに慣らされてしまったのだ。大人世代でさえそうなのだから、物心つく頃からそのようなサービスに慣れてきた10代、20代が公開に抵抗がないのはある意味当たり前のことだ。

 前回ご紹介した「ノートン オンラインセキュリティ消費者意識調査」(2016年9月)を見るまでもなく、全体の8割以上が何らかのSNSを利用しており、約6割が何らかの個人情報を公開している。これは15~69歳まで全体の数字であり、10代後半~20代女性はもっとも個人情報を多く公開していることが分かっている。

 SNSが浸透するにつれて、人々の「SNSに公開してもいいと思う範囲」が緩くなってきている。実際に多くの世代がSNSにさまざまな個人情報を公開しており、逆に眉をひそめる人が減っている。

 しかし、公開が当たり前になってきても、それによってリスクが減ったわけではない。公開されている情報を使って女子高生がストーカーされた事件も起きているし、炎上が起きたときに公開情報をかき集めて個人情報まとめページが作られる事例が増えている。就活の際に公開した情報が、不利に働いた例も耳にしている。

 誰もが公開しているからといって安易に公開してもいいわけではない。一度公開した情報は取り戻せないことが多いので、公開しても今後も問題ない情報かどうかよく考えてから公開するようにしたい。

 特に10代は先のことを考えずに公開してしまうことが多いので、公の場に出すべき情報か否かを判断できるよう保護者がアドバイスすることも必要だろう。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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    最終更新: 2016年10月15日(土)08時00分

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