Dragon Ash・Kjが語る「デジタルで音楽がなくしたもの、変わらないもの」--独占インタビュー

CNET Japan 10月18日(火)21時03分配信

 1997年のメジャーデビューから20年近く、日本の音楽シーンの第一線を走り続けるロックバンド「Dragon Ash」。そのボーカルとして圧倒的な存在感を放ち、2015年にはソロ活動も開始したKjは、ファンの間ではSNSを使わないことで知られているが、その一方でテクノロジを愛する一面も持っている。

 10月18日には、KDDI<9433> ウェブコミュニケーションズが運営するビジュアルブログ「g.o.a.t(ゴート)」のバージョンアップにあわせて、Kjを起用した新たなプロモーションビデオ(PV)も公開された。モーションキャプチャなど最新のテクノロジを詰め込んだ、従来のDragon Ashのミュージックビデオとはテイストの異なる作品に仕上がっている。

 今回、Kjにインタビューする機会を得た。「音楽×デジタル」という切り口で、インターネットを使った音楽の届け方や、映像も含めた視聴方法の多様化、SNS時代に音楽が果たす役割などについて聞いた。

――「g.o.a.t」のPVでは、初めてモーションキャプチャなどを使った撮影に挑戦されたそうですね。近年は安室奈美恵さんの「Golden Touch」など、デジタルを活用した斬新なミュージックビデオも増えています。


 普通にロックバンドをしていたら、(モーションキャプチャ用のウェアは)絶対に着られないコスチュームなので、企画書を見せてもらった時からワクワクしていて、撮影も楽しめました。

 (デジタル活用は)いいと思います。何でもそうだけど最初は慣れないもんだし、長く同じことをやってると、そういうことを嫌がりがちなので。アーティストがそういうものを提示して、ユーザーがそれを面白いか、面白くないか決めるということだよね。ただ、安室奈美恵ちゃんと、普通のロックバンドのビデオの製作費はゼロが2個くらい違うから、俺らはできないけどね(笑)。やれる人はバシバシやった方がいいと思います。

――Kjさんは日ごろ、どのようなスマートフォンのアプリを利用していますか。また、アプリで楽曲を作ることもあるのでしょうか。

 アプリは音楽ものが多いかな、マニアックなものが。曲の制作まではしないけど、触るのは大好きですよ(「Dance with Apps」の楽曲制作でアプリを一部使用)。機械に強いわけではないけど、日本ではかなり早いタイミングでMacも導入していたし。

――音楽配信サービスやYouTubeなど、人々の音楽の聴き方は多様化していますが、Kjさんはどのような機器や方法で音楽を聴いていますか。

 俺は結構、CD買ったりライブに行ったりする方ですよ。でも、iTunesで買う音楽もあるし、Apple Musicで月額制で聴いてる音楽もあるし、すべての選択肢を使ってるかな。音はやっぱり良い方がいいから、ラップトップのスピーカーでは聴かないけど。ヘッドホンか、最低限クオリティコントロールされてるスピーカーで聴くことが多いかな。

――SNSを利用しないそうですが、その理由を教えてください。また、SNSによってコミュニケーションのあり方が大きく変化している現代において、音楽が果たす役割は何だと考えますか。

 SNSはやらないです。そんなに第三者に自分の思っていることを提示したいとは思わないから。それが俺の場合は、作詞だったり音楽だったりする。よく言っているのが、音楽家じゃない人がブログを書くような感覚で俺は曲を書いているのかもしれない。こういうことがあったなと感じたことを閉じ込めるために曲にしてみたり、想いを忘れないために曲にしてみたりって感じかな。

 (現代でも)音楽は変わらないよ、やっぱり。音楽のない人生とある人生だったら、傍らに音楽がある人生の方が豊かに決まってるし、20年も30年もロックバンドを続けているやつがいるってことは、それだけ人生を賭したとしても辿りつけない頂きみたいなものがあると思って、奥深いから探求しているわけだし。俺たちは労働ではなく生きがいとして音楽をやっていて、聴く人も音楽が大好きで傍らに置いて生きていきたいから、ピックアップするわけだし、そこは変わんないよ。

――最近はCDの売上が落ちている一方で、ライブに行く人が増えていると言われています。また、VRなどの技術を使ってライブを疑似体験できるようになりました。

 iTunesとかもあるから、音楽は聴かれてると思うけど、CD普及率はもう破滅的に下がってる。ただ、日本のリスナーは、アーティストに対してめちゃめちゃ愛があるし、日本ほど誰かのコンサートとかライブであんなに涙流したり、踊り散らかしたりする国はないと俺は思ってる。ヨーロッパでもアメリカでも、こんなにアーティストを愛してくれる国はないんじゃないかな。

 (演奏する)当事者だから、また捉え方が違うんだけど、やっぱりライブとかお芝居って生のものじゃない。パッケージングできない良さがあって、写真で見ても実際に行かないと風景が分かんないのと一緒だからね。

 別にCD普及率が高かった時代も、ライブ自体は絶対に価値があるものだったし、それはもう変わんないんだよ。もし、360度動画で家でライブが観られるようになっても全然違うと思う。大勢の人の渦の中で、喋れないほどの大音量の中で、アーティストとかオーディエンスの汗が飛び散ったり、涙流したり、みんなが大声で歌ったりっていうのは、そこにいないと絶対体験できないものだから。だからお金払っても来てくれるんだよ。

――YouTubeやニコニコ動画などに自身が歌っている姿や楽曲を投稿するなど、インターネットを通じて、誰でも音楽を全世界に発信できる時代になりました。

 いいと思うよ。音楽ってそれこそ、幼稚園児でもできるし、70歳の人でもまだやってるし、全員にやる権利があるわけだから。一部の限られた人たちだけが、人に聴いてもらえることを許されるなんてことは絶対にあっちゃいけないし、多分、世に出てるミュージシャンって言われてる人たちの何倍も才能がある人たちがいるはずだから、その人たちが少しでも評価されるチャンスが増えるならいいと思う。

 ライバルが増えるって観点ではちょっと競争率が上がるけど、面白いことを考えて誰かを楽しくさせたり、誰かの心や体を動かしたいって人が1人でも多い方が、聞いてる人は楽しくなると思うよ。

――インターネット発のアーティストも含めて、Kjさんがいま注目するアーティストを教えてください。最近だと、ハイスタンダード(Hi-STANDARD)が16年半ぶりにニューシングルをゲリラ発売したことも話題になりましたね。

 何買ったかな~、最近。ハイエイタス(the HIATUS)の新譜は買ったけど、友だちのことをこういうところで褒めたくないな(笑)。

 実は、ハイスタは出す前から知ってたんだよ。割と現場でいつも会うようなやつらはみんな知ってたし、なんならすでに聞いてるやつらもいて。ただ、あれはハイスタだからできる技だから、みんながコピーしようとしてもあんな成果は出せないし、ハイスタの魔法なんだよ。ただ何より、みんな(発売を)知ってたのに、こんなに情報過多な時代にそれが漏洩せずに、結果的にリスナーたちを本当にビックリさせることができたっていう、音楽業界の倫理観がすごいなって。「ハイスタ出すんだ」って言いたいじゃん、超言いたいじゃん(笑)。

 たとえばさ、レコ屋(レコード屋)の子とか、ちょっと関係があってその話を知ってた人ってたくさんいたと思うんだよ。実際にハイスタと仲間なわけじゃないし、別に言ったってバレやしない。でも、そいつらも口をつぐんで、自分のことのように楽しみにしてさ、「ビックリさせてやろうよ、世界を」って感覚で、ハイスタのサプライズにみんなが乗っからないと、これは成り立たなかったと思うんだよ。

 そういう、みんなの愛とか倫理観とか、マナーがすごいなって思うんだよ。やっぱり、マナーがあればルールはいらないわけだから。(情報が)漏れなかったことが当たり前なんだけど、この世の中では奇跡みたいなことだなと思って。ロックというか、自分のいる世界は最高だなって実感したし、レコ屋の愛も感じるよね。

――改めて、情報過多の現代において、どのような音楽が求められていると思いますか。

 ちょっと重複しちゃうけど、いろんな人が人前に出るチャンスを得ている。ネット上が人前なのかどうかはわかんないけど、自分のアートを提示できるチャンスが増えているじゃない。ってことは、どんどん目新しさがなくなっていく時代でもあるよね。だから、アーティストやバンドマンとして一旗あげることが少し前よりは困難だと思う。でも、たとえば何ならiPhoneで撮っても、アイデアとスパイス次第でいいミュージックビデオを撮れたりするし、むしろ俺はそういうところに目を向けてるけどね。

 失ったものも、たくさんあると思う。こういう時代になって、いまはコンピュータで曲のレコーディングもしてるから、アナログレコーディングをしたことがないやつの方が多いだろうし。デジタルの方が全然便利なんだけど、アナログの音にはならない。だから、企業はアナログなシミュレーターをどんどん作ったりするけど、「いや、じゃあアナログにしたいんじゃん」みたいな。

 アナログにしたいんだけど便利にしたいっていうエゴだけなんだよ。ノスタルジーもあるんだろうけど、1回すごく便利になっちゃって、逆にそれが退屈になっちゃったみたいな時期だよね。本当は必要なものを作るべきなんだけど、基本便利なものを作る時代じゃん。便利なものって、本当はなくてもよかったんだよ。だから、必要なものは全部出きっちゃってるのかもしれない。

 それは音楽も同じなんだよね。もうこれじゃなきゃだめだってマテリアルは、全部机上に乗っちゃってるかもしれない。あとはその変化形で、こういうのもあるよってものがバーっと出てて、それでユーザーがコンフューズ(混乱)するっていうかさ。だから、名前のあるやつのCDとか音源はずっと回っていけるんだけど、新しいやつらは出るのが難しい。

 たとえば日本の映画って、めちゃくちゃクオリティが高くて、セリフとか描写も一番綺麗だと思う。でも、お金出す人が少し臆病になってるから、何かで評価を受けたものを映画化するってものばかりじゃん。ああなったらもう商業。それって、ものづくりを否定してる気がするし、本来なら新しいストーリーをそのために書くべきだと思うんだよね。エンターテインメントなんだけどアートって部分は、やっぱり残るか否かの瀬戸際だと思うよ。何が必要というよりは、この中でいかに光を見出せるかってことかな。全飽和状態だけど、それでも好きですって言える人がいるかってことだよ。

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    最終更新: 10月18日(火)21時03分

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