ネット依存になる子ならない子は何が違う?--保護者ができることは

CNET Japan 2016年10月22日(土)08時00分配信

 「うちの子、毎日学校に行かずスマホゲームをしているんです。どうしたらいいでしょうか」

 講演に来た保護者に相談を受けることがある。最近目立つのが、過剰なスマホ・ネット利用問題だ。保護者がいる前で女子中高生の娘が延々とLINE<3938>を使い、イライラした保護者とぶつかるタイプのLINE<3938>依存問題はあちこちで耳にする。それだけでなく、さまざまな理由でネット依存になる子どもは多い。

 冒頭の台詞は、あるときの講演に参加された保護者の言葉だ。高校生の彼は、元々は成績が良かったが、保護者とのあつれきと受験へのプレッシャーからスマホゲームにはまって不登校になり、受験も諦めてしまっている状態だ。スマホゲームやネットコンテンツは受け身で楽に快楽が得られるため、逃避行動に使われることがある。

 一方、まったくネット依存にならず、ちょうどよい距離感を保って使いこなしている子どももいる。依存になる子とならない子は一体何が違うのか。最近私が講演でアドバイスしている、保護者が子どもをネット依存にしないためにできることをご紹介したい。

女性がなるSNS依存、男性がなるゲーム依存

 SNS依存(きずな依存)は女性がなりやすく、ゲーム依存は男性がなりやすい傾向にある。特に女の子にとって、LINE<3938>で終始つながることは楽しい。情緒不安定な10代女子は、友だちと始終つながることで安心感を得る。不安なときは慰められ、嬉しいときはともに喜び、LINE<3938>ライフを楽しんでいるのだ。しかし同時に、裏で悪口を言われているかもしれない、返事が遅いと嫌われるかもしれないという恐怖から、LINE<3938>依存に陥っていく。

 一方のゲームへの依存は、スマホやゲーム機が自由に使える環境があり、家族とうまくいかない、学業不振などのつらい状況から逃げるために逃避行動としてはまるパターンが多く見られる。そもそもゲーム自体が中毒性が高くできているため、一度はまると惰性で延々とやり続けてしまう子が多いのだ。

 以前、日本で2カ所しかない「ネット依存外来」を扱っている成城墨岡クリニック院長墨岡先生に取材したところ、初診で訪れたネット依存患者は2007年の81人から2013年には285人と約3.5倍に増えていた。同院では、2011年からスマホやタブレットに関わる問題が増え始め、2012年には7割を占めるようになった。さらに2013年には、ほとんどがスマホやソーシャルメディアに関する問題となったという。

 同じくネット依存外来を扱う久里浜医療センターでは、執筆現在、「12月末まで初診の予約がいっぱいのため、初診予約の受付を一時停止している」という。スマホが普及したことにより、ネット依存外来のニーズが増えていることは間違いなさそうだ。

 スマホやSNS、ゲームは魅力がいっぱいで楽しいものだが、はまりやすく、依存状態になってしまう子どもは少なくない。中高生にもなるとスマホを持つ子が増え、SNSやゲームをまったく使わないという子どもの方が少数派だ。そんな中、依存する子どもとしない子どもは、どこで分かれるのだろうか。

もっと夢中になれることはあるか?

 私の小学1年生の息子は、幼児のとき育成ゲーム「おさわり探偵 なめこ栽培キット」にはまり、その後、夫に影響されてパズルゲーム「パズドラ」にはまった。電車での移動中や外食の最中など、騒がれると困るときに使わせてしまった結果、簡単にはまってしまったのだ。

 やがて会話の最中も唐突に「ゲームがやりたいんだけど」と言い出すようになり、中毒っぷりを心配した夫はスマホから「パズドラ」をアンインストール。「もうできないよ」と言い渡したが、それから1年以上経っても「『パズドラ』やりたいな」と訴えるありさまだった。

 ところが小学校に入学して、学校で流行っているけん玉にはまってからは、ゲームには見向きもせずひたすらけん玉の練習をするようになった。有段者となり1年生の中でトップ争いをしているので、ゲームよりもけん玉が面白いのだ。代表で舞台に出たりみんなに「うまいね」とほめられるのだから、スマホゲームよりも面白いと感じるのは当然だろう。

 SNS依存について調べていたときに、ある教員にこんな話を聞いたことがある。「成績が良い子は、友だちに『これから試験勉強するからLINE<3938>抜けるね』と言える子が多い。残念ながら逆もそう」。成績が良い子は、良い成績を取ること、志望校に入ることが今やるべきことと分かっているから、LINE<3938>にはまらないのだろう。部活動に熱心で結果を出している子も、やはりLINE<3938>にははまっていなかった。つまり、やるべきことややりたいことがはっきりしていれば、SNSやゲームにははまらないのだ。

 ネット依存の治療には、認知療法が有効という話を聞いた。スマホやネットを始める前に好きだったこと、やりたかったことを思い出させ、スマホやネットをすることで得られたものと失ったものを考えさせるというのだ。改めて自分のスマホ・ネット利用について考え直すことで、自分が客観視できるようになるという。そこで疑問を感じることができれば、後は徐々にネットに触れる時間を減らしていくことでネット依存状態から抜け出せるというわけだ。

大切なのはセルフコントロール力

 心理学者ウォルター・ミシェルが行った「マシュマロ実験」をご存知だろうか。4歳の子どもの前にマシュマロの載ったお皿を起き、「15分間食べてはいけない。食べなかったらもう1つあげよう。食べてしまったらもう1つはもらえない」と言って部屋を出て行く。ある子どもはすぐに食べてしまい、また別の子は15分間我慢してもう1つマシュマロをもらえた。自制心を調べる実験だ。

 後に、この実験結果と子どもの社会的成功度には相関関係があることがわかった。マシュマロをすぐに食べてしまった子よりも、15分間我慢できた子の方が周囲から優秀と評価されることが多く、大学進学適正試験(SAT)において平均210ポイントも高い点数を取っていることがわかったのだ。目先の欲求ではなく目的のために自制心を持って振る舞えることの大切さがわかるだろう。

 今の10代が、一生SNSやゲームをやらないで生きることは難しい。少なくとも、保護者が一方的に禁止や制限をしても、こっそり隠れてやる可能性が高いだろう。禁止や制限には限界があるので、最終的には子ども自身がセルフコントロールできるよう教育する必要がある。

 小さな子どもの場合は、まだセルフコントロールは難しいので、広くて面白い世界を見せてあげよう。もっと夢中になれること、自分が発揮できる場を見つける手助けをしてあげよう。ネット依存を治す際、患者をネットから隔絶された状況に置くことがある。そのように、強制的にネット以外の環境に身を置くのも1つの方法だ。

 ある程度成長してやりたいことややるべきことが自覚できるようになったら、徐々にスマホやネットを解禁していこう。いきなりセルフコントロールすることは難しいので、最初のうちは保護者の手助けも必要だ。各キャリアが用意している時間制限機能なども使い、時間を決めて利用させるところから始めてもいいだろう。最終的には子どもが自分だけでセルフコントロールして利用できるよう、じっくりと見守ってあげてほしい。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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    最終更新: 2016年10月22日(土)08時00分

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