決済にイノベーションを-- JCBが「本気」でスタートアップと組む理由

CNET Japan 10月27日(木)08時00分配信

 「われわれは本気です、皆さんと一緒にイノベーションを起こしたい」──そう語るのはJCB事業創造部次長の北原治彦氏だ。JCBは、Fintechに関連するスタートアップ向けのアクセラレータープログラム「JCB Payment Lab」を開設。選考を通過した企業には業務提携や出資も検討するという。

 JCB Payment Labは、JCBとスタートアップによる事業創造プロジェクトだ。エントリーした各スタートアップのビジネスアイデアをJCBが選考。そしてJCBおよび運営サポート企業のメンターとの協業により、約4カ月かけてかけてビジネスアイデアを具体化していく。

 タイムスケジュールはこうだ。10月30日まで専用ウェブサイトでエントリーを募集する。11月より選考を開始し、プログラムの参加企業を決定する。2017年2月から約4か月にわたりビジネスアイデアを具体化し、6月に業務提携・出資を検討。7月には成果発表の場として「DEMO-DAY」を実施する。

 募集するビジネスアイデアは2つ。「新たな顧客体験を実現するモバイルペイメントサービス」と、カード利用履歴などの「データを活用したサービス」だ。日本発の国際カードブランドとして知られるJCBがなぜスタートアップを支援するのか、その狙いやFintechへの取り組みを北原氏に話を聞いた。

カード会社の役目は、カード決済だけじゃない

──JCBではFintechをどのように捉えているのでしょうか。

 1つはキャッシュレスです。日本ではキャッシュレス比率が18.5%。つまり81.5%が現金ということなんですね。一方で諸外国を見ると、キャッシュレス比率は韓国で6割、米国でも5割に達しています。

 そのような背景もあり、日本政府もキャッシュレス化を大きく推進しています。また、モバイル機器の普及がキャッシュレス化の推進剤になると考えていて、この分野でのイノベーションが重要だと捉えています。

──日本のキャッシュレス比率が低い要因とは。

 日本は安全な国なんですね。海外では現金を持ち歩いても日本ほど安心という国は多くありません。また、韓国では政府がトップダウンでキャッシュレス化を推進している背景があります。

 日本では現金でも特段の不便もなく過ごせてしまうので、諸外国と同じようにキャッシュレス化が進むとは思っていません。われわれが考えているのは「現金よりも便利だし、もっとビジネスがまわるよね」という価値の提案なんです。そのなかで、“ペイレス”ということを意識しています。

──ペイレスはキャッシュレスを一歩進めた概念なのですか?

 ペイレスのわかりやすい例はUberです。普通タクシーに乗ると、行き先を告げて、到着したらメーターを見て運賃を支払いますよね。それでは運転手も大変だし、ユーザーにとっても財布の中からお金を探すには手間です。

 Uberではアプリで行き先を告げてあり、アプリに登録したカードで自動的に支払われます。ほかには、スターバックスも米国でペイレスのサービスを提供しています。共通しているのは、ユーザーにも従業員にも”決済する”という動作がないことです。

──そこでJCBが力を発揮できると。

 はい、ペイレスの取り組みは諸外国で進んでいます。その時にカード決済が使われるわけです。日本でもこのシェアを高めることができれば、世の中を良くしながらわれわれもビジネスができる。カード会社って、カードを“ピッ”とスワイプするだけじゃないんです。

──従来はFintechとどのように関わってきたのですか。

 正直これまでは自前主義でやってきました。カード会社として初めてギフトカードを出したのもわれわれですし、ポイントプログラムやサインレスシステムの導入もわれわれが先行しているんですね。ただ、今後は、すべての取り組みを自前でやるのは時代に合わないなと感じています。

──そこでスタートアップと組むわけですね。

 はい。JCBは日本発唯一の国際カードブランドであり、挑戦者としての自負があります。日本でいろいろなことを考えているスタートアップと連携し、日本発のイノベーションを仕掛けていきたいんです。そのためにJCB Payment Labを企画して、スタートアップと一緒にやろうと考えました。

溜まった決済データは「宝の山」

──募集するビジネスアイデアとは。

 1つ目は「モバイル」をキーワードにしたペイメントイノベーションです。例えば個人間送金だと、日本ではLINE<3938> Payが近い存在です。店で幹事がまとめて支払う時、現金で割り勘は大変ですよね。LINE<3938> Payならこれがスマホ上の操作で完結します。また先ほどのペイレスのような取り組みも募集します。

 これまでのようにカードを財布から取り出して決済するのではなくて、モバイルを組み合わせたイノベーションを起こしたいのです。これは一例で、これ以外のアイデアも大歓迎です。

融資を判定するとか

──データを活用したアイデアも募集していますね。

 はい、それが2つ目の「データを活用したイノベーション」になります。今後モバイルのイノベーションが進むと、消費活動のほとんどがカード決済になります。溜まった決済履歴がどんどん価値を持ってくるんです。「この溜まったデータで新しいイノベーションを起こせませんか?」という視点です。

 例えば、溜まった決済履歴をAIに処理させて融資を判定するとか、消費者がどこどこで消費活動をしているので、ここに出店すればいいという具合にマーケティングにも活用できます。溜まったデータは宝の山なので、われわれの考えていなかったイノベーションが起きればいいし、米国ではすでにそういう事例があります。

うまくJCBを使い倒して欲しい

──ハッカソンとの違いはどのあたりなのでしょう。

 ハッカソンですと1日から2日、1週間など短期的に終わります。その意味では広告宣伝的で、われわれのやりたいこととは異なります。JCB Payment Labは9月末のエントリー受付開始から2017年7月に開催するDEMO-DAYまでの1年弱のプログラムです。ビジネスを形として立ち上げる十分な時間を用意しています。

──スタートアップがカード会社と組むメリットを教えてください。

 われわれは24時間365日動くカード決済インフラを持っています。世界中で決済が発生しているので、処理性能としては、同時処理で45万件をこなす能力を用意しています。

 新しいイノベーションを起こす場合、ある程度のインフラを持たないと、面白いものは作れません。安心安全という堅牢性を提供したい。システムの堅牢性はわれわれで守ります。逆にスタートアップの皆さんにお願いしたいのは、ユーザーにどう価値創造するのかという点です。極論を言うと、うまくJCBを使ってほしいんです。

──どのようなインフラを提供できるのでしょうか。

 例えば「会員管理機能」や「オーソリゼーション機能」「不正抑止機能」など。このテーマについて、JCBにできることはこれ、といった具合に、ビジネスアイデアに応じて個別具体的に提供していきます。

──出資も検討するとのことですが、キャピタルゲインは狙っていますか。

 キャピタルゲインは狙っていません。応募各社が出資を望まず、事業提携してほしいというところに、われわれが無理して出資することもありません。出資はあくまで要望があった場合のみ。事業提携して、世の役に立つイノベーションを起こすことが目的です。

──最後に一言お願いします。

 JCBは本気です。コンテストのように「表彰しておめでとう!」でフェードアウトすることはありません。繰り返しになりますが、あくまでイノベーションを起こすパートナーを探しています。事業提携して、世の中の役に立つものを出していきたいと思います。

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    最終更新: 10月27日(木)08時00分

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