IT人材輩出国のはずのインドで起こる採用難--解決を目指す「ハッカーアース」とは

CNET Japan 10月30日(日)10時00分配信

「インド人エンジニアは優秀」は本当?

 近年、インド人の技術力に対する世界からの注目が増している。最近ではインドのエリート学生に「年収1000万円以上」という破格の条件を提示する企業は珍しくない。Oracleがインド人の学生に「年収4000万円」で採用をオファーした話題も記憶に新しい。

 優秀な技術者を輩出するインドの理数系教育の頂点をなすのが「インド工科大学(IIT)」だ。IITの卒業生の多くは、有力なグローバル企業に就職し海外でも活躍する。国内の層は厚く、専門性が高くプロジェクトを統率できる「高度IT人材」は日本の4倍以上の302万人いると言われる。

 しかしこれは、優秀なインド人にかぎられた話。毎年約150万人ものエンジニアが輩出されているが、そのうち20~33%は職に就けていない。

 大手企業や有望なスタートアップの求人1件に対して1000人を超える応募が殺到し、その際に提出される職務経歴書の内容は詐称されたものであることは日常茶飯事である。有名な企業ほどエンジニアの採用に苦労しているのだ。

従来のエンジニア採用方法を覆す「ハッカーアース」

 そんなエンジニア採用の課題を克服しようとするのが、新興系人材プラットフォームの「HackerEarth(ハッカーアース)」だ。

 HackerEarthはエンジニアたちがコーディングスキルを磨くための学習プログラムや、そこで磨いたスキルで競い合うハッカソンイベントをオンライン上で開催している。このハッカソンでエンジニアに課されるお題を企業が決められるため、企業は自社が求める技術力をエンジニアが本当に有しているかを知り、精度の高い採用活動に活かすことがきる。

 ハッカーアースに登録するエンジニアは100万人超。またこれまでに、ベンチャーキャピタルの「500 Startups」や「Beenext」などから67万ドル(約6780万円)の資金を調達している。

ハッカーアースCEOが考えるインド人エンジニア採用のこれから

 ハッカーアースのCEOであるSachin Gupta氏は、IIT Roorkee校の情報工学科出身、学生時代はMicrosoftやGoogleでインターンをしていた。そんな彼に、サービス開発について直接話を聞いた。ハッカーアースを始めようと思ったきっかけは、優秀なエンジニアの友人の苦労だったという。

 「大学時代から友人たちと一緒にプログラミングをしていましたが、『彼が書けないコードは無い』と思うほど飛び抜けて優秀な人もいました。しかし、いざ就職活動の時期が来て友人の就職活動の結果はというと、彼のような人材を必要としているであろうFacebookやGoogleの入社試験で不採用に。採用基準は分かりませんが、そのことに違和感を覚え、エンジニアの技術力を可視化するサービスを作ろうと思いました」(Sachin氏)。

 100万人超のユーザーを抱え、順調に成長しているかに見えるハッカーアースだが、ユーザーがエンジニアというだけあり、ユーザーインターフェースやユーザー体験の設計には気を遣っているようだ。「エンジニアが使うサービスである以上、小さなバグやエンジニア目線で変な挙動などが少しでもあるだけで信用を失い、ユーザーはたちまち離れていってしまいます」。

 ユーザーを増やしサービスを拡大するために、特にハッカソンの開催に力を傾けている。「ハッカソンのテーマはアルゴリズムを解くプログラミングコンテストに始まり、モバイルアプリやIoT、AR/VRなど多岐に渡ります。最近では機械学習や人工知能など、データサイエンスに関するハッカソンが盛んです」。

 ハッカーアースを運営しながら、エンジニアに特に求められるスキルはどのように見ているか。「採用の方法は常に変わっていますが、エンジニアに求められる『根本的な部分』は変わりません。新しい技術への探究心や、問題に対して能動的に解決していく姿勢、そして他者と協力して取り組めるコミュニケーション能力です。これらを見極めるために『面接』は引き続き欠かせません。その他の技術力を見極める作業をハッカーアースで容易にしていきたいと考えています」。

 インド人エンジニアの採用の「未来」はどのように変わっていくか、あるいはハッカーアースで変えていくのか。「これからはもっと職務経歴書ではなく、『スキル』を重視した採用に移り変わっていきます。『GitHub』などもそうですが、エンジニアのスキルはより可視化され実力主義に変わっていき、最終的には職務経歴書に頼らない採用が実現されると信じています」。

 エンジニアの技術力を正確に見極めた上での採用というのは、インド国内に限らず、IT企業に共通する課題である。しかし、インドのようにエンジニアの数が多い一方で、正しい職務経歴書が提出されないような文化圏にあっては、能力を可視化できるサービスが特にこれから求められるようになっていくだろう。

(編集協力:岡徳之)

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    最終更新: 10月30日(日)10時00分

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