シャープ戴社長は社員に何を語ったのか--3度目のメッセージに見る復活への思い

CNET Japan 11月02日(水)21時12分配信

 シャープ<6753>の代表取締役社長である戴正呉氏は11月1日、社内イントラネットを通じて、社員にメッセージを発信した。戴社長が社員にメッセージを発信したのは、8月22日、9月21日に続いて、これが3回目となる。

 「“Be Original.”を胸に刻み、創業の精神を取り戻そう」と題した今回のメッセージは、この日、新たなコーポレート宣言として正式に発表した「Be Original.」に込めた意味と、同じく同日に発表した2016年度上期決算で公表した2016年度下期の黒字化への強い決意、そして社員の意識改革を促す内容となっている。

創業の精神である「誠意と創意」を取り戻す

 Be Original.は、10月に開催した「CEATEC JAPAN 2016」のシャープブースで先行公開していた言葉だが、11月1日付けで、新たなコーポレート宣言として、ニュースリリースを出した。

 戴社長は「Be Original.は、単に社外に向けた宣言ではない。私たち一人ひとりが創業の精神である『誠意と創意』を取り戻すことによって、すべてのステークホルダーの信頼回復を実現するための、自己変革の宣言」と位置づけ、「私はシャープ<6753>が黒字化し、成長軌道へと転じていくためには、社内に創業の精神を根づかせることが、一番の近道だと確信している。まずは、皆さん一人ひとりが、日々『誠意と創意』に基づく仕事ができているか、自分自身の行動を振り返ってほしい」とした。

 ここでは具体的な例を示してみせる。「誠意」としては、「新製品の企画・開発、取引先との商談・交渉、新しいビジネスモデルの検討など、今あなたがやろうとしていることは、本当にシャープ<6753>の黒字化、成長に貢献できるのか」、「決裁権限、業務プロセスなど、決められたルールを遵守しているか」、「ビジネスの基本である報連相(上司への報告、チームへの連絡、上司・関係者との相談)が、きちんとできているか」、「ステークホルダーの信頼を取り戻すために、有言実行を実践しているか」といった具合だ。

 また、「創意」では、「あなた方の提案には、新しい仕組みやプロセスなど、従来の発想にとらわれない新たなアイデアが盛り込まれているか」、「提案資料は、相手に理解、納得してもらえるよう、工夫しているか」、「常に改善を心がけ、挑戦的な目標設定をしているか」という内容を示した。

 その上で「例えば、上司への報告の際、『昨年は、こうだったから……』『前回と同様に……』と言い訳をしていないか。よく考えてほしい。シャープ<6753>は、2014年、2015年と2年連続して2000億円を超える赤字を計上している。それにもかかわらず、創意の見られない過去と同じ発想、同じやり方をしていて、黒字化を成し遂げられるのか。黒字はおろか、再び2000億円の赤字になりかねない」と、社員の意識改革を促した。

「Be Original.」に相応しい4つの事例とは

 その一方で、すでにBe Original.に相応しい取り組み事例が出ていることも4つの具体例として紹介した。

 1つ目は、マスコミへの対応だ。10月6日付けの毎日新聞夕刊で、シャープ<6753>の複合機事業売却の報道がされたが、「過去に例をみないスピードと強さで完全否定するだけでなく、“Be Original.”や“One SHARP”の取り組みなど、シャープ<6753>のポジティブな取り組みをリリース文に織り込んだ」とする。

 10月12日には、専務執行役員ビジネスソリューション事業本部長の中山藤一氏が、これを受て、急きょマスコミ向け事業説明会を大阪で開催。「単にビジネスソリューション事業について説明するだけでなく、IoT通信事業を含めたスマートオフィス、スマートファクトリーの提案や、“Be Original.”のコンセプトについても説明した。これは新たな発想でマスコミ対応をすることで、ピンチをチャンスに変えた事例」とする。

 2つ目は、IoT分野における事業拡大に向けた取り組みだ。10月18日から2日間に渡って、シャープ<6753>福山事業所で開催した社内向けの「IoTコンベンション」では、シャープ<6753>と鴻海グループのIoTに関連する12団体66名が参加して、スマートホームやスマートオフィス、スマートファクトリー、スマートシティなど幅広い領域での技術展示や提案、ディスカッションをした。

 「コンベンションでは、マーケットや技術のトレンド分析、シャープ<6753>の強みと弱みを明確化。今後の方向性などが活発に議論され、メンバー間の強固な信頼関係が築かれた。シャープ<6753>ならではの『人に寄り添うIoT』の実現を加速するための、起爆剤になった」とする。

 3つ目が新たなビジネスモデルへの取り組みだという。商品単品のスタンドアローンのビジネスから、ソフトウェア、サービスなどを組み合わせた付加価値の高いビジネスへのシフトを進めていく中で、日本の特性に合わせた最適化や新たな機能の追加など、シャープ<6753>ならではのお客様に満足してもらえるサービスを目指すという。

 「この新たなビジネスモデルを一気に普及拡大させることを狙っている。さらに、IoT事業との連携による新商品、サービスの広がりにも取り組むことで、『人に寄り添うIoT』の実現を加速していく」とした。

 最後は、モノづくりだ。ここでは、世界初の8K放送対応高度広帯域衛星デジタル放送受信機が、「CEATEC AWARD 2016 総務大臣賞」を受賞したこと、さらに「ロボホン」「蚊取空気清浄機」「空気清浄機 S-style」、デジタルフルカラー複合機が、2016年度グッドデザイン賞を受賞したことをあげた。

 戴社長は「シャープ<6753>ならではの、創意あふれるモノづくりは、復活の兆しを見せている。遅くとも1年以内に、すべての事業部門で、シャープ<6753>の原点である『他社に真似される商品』の創出を目指してほしい」と要望。さらに、「今日からは、これまでのやり方はすべて変えるつもりで、仕事に取り組んでもらいたい」とした。

 なお、Be Original.の象徴として、創意のシンボルと位置づける世界初のモバイル型ロボット電話ロボホンを活用することも明言し、「これは、『人に寄り添うIoT』の実現に全力で取り組むことも示している」と述べた。

前倒しで黒字化達成を実現する、未達の言い訳はできない

 さらに、「私は、信念である現場主義の実践という観点から、9月に引き続き、10月中旬から改めて各事業所を順次訪問している」とし、前回の訪問では、事業所視察と幹部ミーティングだけに留めていたものを、今回は、全マネージャーを対象にして、Face To Faceによる経営基本方針の徹底、Q&Aセッションを実施。「Be Original.への理解を深めてもらうとともに、再生に向けた決意を新たにしてもらう」と狙いを語った。

 「誠意と創意にあふれる人材、チーム、本部を次々と生み出せば、必ずシャープ<6753>は輝きを取り戻すことができる」と意気込む。

 一方で、業績についても言及している。2016年度上期決算で発表した年間業績予想については、「2016年度は、依然として当期純利益が赤字となるが、下期だけを見ると、3年振りに黒字に転じる。経営基本方針では、1~2年で黒字化を目指すとしており、当初より前倒しで黒字化を実現する挑戦的な目標」と前置きし、「一旦、対外公表したものは、何があろうとも、必ず達成する。決して、未達の言い訳はできない。新体制になっても、やはりシャープ<6753>は信頼できないとの烙印を押されれば、もはやシャープ<6753>に未来はない」と、計画達成に強い意思をみせた。

 決算会見の場でも、「これまでのシャープ<6753>は、有言実行ではなかった。2015年度は、800億円の黒字にすると言いながら、結果は2559億円の赤字。私は、有言実行を追求する」と強い口調で語っていたのが印象的だった。

 「今期は、月次の計画はもとより、日々のアクションプランに対しても、高い精度で着実に実行していくことが極めて重要。そのためには、リスクに対する感度を高めるとともに、常に、幾重ものバックアップ策を準備しておかなければならない」と、ここでも社員の意識改革を徹底する。

 さらに、「シャープ<6753>が本当の輝きを取り戻すためには、2017年度以降も、安定的に利益を確保し、拡大していくことが重要。そのためには現在、集中的に進めているコスト削減策に加えて、売上拡大に徹底的にこだわること、そして、お客様に評価される付加価値の高い商品・サービスの創出により利益率を改善することに、全力を挙げてほしい」と述べ、「こうした取り組みを積み重ねていくことで、何としてもV字回復を果たし、遅くとも2018年度には、東証1部への復帰を目指す」と宣言した。

 最後に、戴社長は、「私たちの『有言実行』が試される時である、という覚悟を全員に持ってもらいたい。総力を結集して、業績と信頼の回復、成長軌道への転換、そして輝けるグローバルブランドの実現に向けて取り組もう」と呼びかけた。

 今回のメッセージは、シャープ<6753>再生に向けて強い意思を持って取り組んでいく姿勢が示された内容になった。そして、これから本格化するシャープ<6753>の再生は、社員の意識改革にかかっていることを伝えるものになったといえる。

 戴社長は決算会見で、現在兼務している鴻海精密工業の役員を12月にも辞任し、シャープ<6753>の社長としての仕事に専念する姿勢を明らかにしている。、シャープ<6753>の改革に本腰を入れる構えだ。なお、副総裁の役職については鴻海精密工業の会長である郭台銘氏との長い盟友関係を考慮して、現在検討中としている。

 2016年度通期見通しを公表し、いよいよその手腕が試される時が訪れたといえる。

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    最終更新: 11月02日(水)21時12分

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