北米に学ぶ、不動産ビジネスにおけるデジタル変革の行方 --CNET Japan Conference 2016

CNET Japan 2016年11月09日(水)10時09分配信

 朝日インタラクティブはこのほど、ビッグデータやAIを活用した「Real Estate Tech(不動産テック)」と呼ばれるビジネスの変革が著しい不動産ビジネスに焦点を当てたイベント「テクノロジが創世する不動産産業の新潮流 ~Real Estate Tech 2016 Summer~」を開催した。

 基調講演では、米国Zillow GroupのIndustry Relations Directorであるブライアン・デ・シェパー氏が登壇し、「Understanding Real Estate in North America(北米の不動産業界を理解する)」と題したプレゼンテーションを行った。

デジタル変革に対応できなければ淘汰される

 ブライアン氏は冒頭、「北米(米国、カナダ)の不動産ビジネス市場はデジタルによって大きく変革を遂げている。不動産業界関係者はデジタルに精通していること=デジタルネイティブであることが求められ、ユーザー環境はPCからモバイルへとシフトしている。この変化に対応できない者は淘汰される。実際に、北米でも淘汰は恐るべきスピードで進行している」と、北米市場における不動産ビジネスの現状を語った。

 デジタルデバイスやデジタルコンテンツを当たり前のように日常生活で活用するデジタルネイティブは世界中で急速に増加し、彼らはスマートフォンとGoogleなどの検索エンジンやツールを駆使して膨大なデジタルの波を泳いでいる。こうした消費者の“デジタルネイティブ化”と“データ社会”の到来に対応できなければ、不動産ビジネスの将来は明るくないのだ。「世界は、私たちが考えているよりももっと大きな力で変わろうとしており、デジタルへの対応を“するか”、“しないか”の二者択一を迫られている」(ブライアン氏)。

全米の不動産物件情報を網羅する、MLSとは何か

 この1年でReal Estate Techという言葉が急速に注目を集めるようになった日本にとって、一足先に不動産ビジネスにデジタルによる変革の波が訪れた北米市場の実態を知ることは、日本の不動産ビジネスの将来を予見する上で重要なことである。ブライアン氏は、これから日本でも起きる可能性が高い北米市場におけるさまざまな変革について紹介した。

 北米市場における個人不動産取引では、不動産売買担当者、その担当者が所属する不動産仲介会社、その不動産会社や不動産売買担当者が所属する業界団体、そして全国の業界団体が所属する全米リアルター協会という構造で成り立っている。この不動産仲介ビジネスに関わっているすべての人々が活用しているITシステムが、Zillowが開発したMLS(Multiple Listing Service)と呼ばれるものだ。

 ブライアン氏によると、同社が開発したMLSは不動産物件に関するあらゆる情報を掲載したデータベースで、米国における物件の99.9%をカバーしているという。その範囲は売り出し中の物件だけでなく、取引成立済み物件、取引キャンセル物件などにもおよぶ。情報の中身は物件の詳細情報のみならず、地域住民の特徴や地域犯罪率といったコミュニティに関する情報、地図や航空写真などの地理情報、市場統計、相場データ、取扱事業者リストなど多岐に渡る。

 「米国の不動産担当者は、MLSを活用して物件の相場価格を調べたり市場分析をしたりしている。これがなければ仕事にならない」(ブライアン氏)。

 またブライアン氏は、北米市場における不動産のビジネスモデルについて紹介。北米市場では不動産業者同士の協働体制が整っており、売り主負担となる約6%の仲介手数料はMLSを通じて取引を行った売り手、買い手それぞれの不動産業者で均等にシェアする仕組みになっているのだそうだ。なお北米にも専任売買契約は存在するのだそうだが、こうした物件がMLSを通じて取引されることはまれだという。

“ミレニアム世代”が不動産ビジネスのデジタル変革を推進する

 このように、不動産仲介ビジネスのデジタル化が急速に進んでいる背景には、米国における不動産ビジネスの特徴がある。日本では新築物件の販売が不動産ビジネスの大きな比重を占めているが、ブライアン氏によると2015年の中古物件の販売比率は90.3%(約525万件)。新築販売はわずか9.7%(51万件)で中古物件販売の比重が非常に高いのだ。

 加えてブライアン氏は、「買い主が購入した家を見つけた手段としては、44%をインターネットが占め、不動産仲介エージェントからの紹介(33%)を上回る。インターネットで物件を探す割合は今後さらに増加し、その傾向は当分続くだろう」と語り、米国の一般消費者はインターネットを駆使して中古物件を探し、不動産購入を検討しているという実態を紹介した。

 一方、不動産を仲介するエージェント(リアルター)は、現在の平均年齢58歳から若年化が進み、今後の大きなカギを握るのは“ミレニアム世代”と呼ばれる1982年から2000年に生まれた若い世代なのだという。

 「ミレニアム世代は世界で最も人口の多い世代で、米国では8000万人、グローバルでは25億人がこの世代にあたる。ミレニアム世代はテクノロジに精通し、やる気にあふれ、グローバルマインドと社会的責任を持っている。米国ではベビーブーム世代の労働力が毎日50000人リタイアしており、今後の労働力の中心としてミレニアム世代に注目が集まっている」(ブライアン氏)。

 こうしたデジタルに精通したミレニアム世代による不動産担当者の若年化、そして消費者行動のデジタルシフトが、不動産ビジネスにおけるデジタル変革の背景にあるとブライアン氏は指摘。

 「ミレニアム世代の優秀な人材がチームでビジネスを推進し、ミレニアム世代の消費者は取引に透明性を求め、自分でリサーチをして納得して物件を購入する。こうした変化が、MLSが成功した背景にあるのではないか。これからの不動産ビジネスのトレンドは、間違いなくモバイルとビッグデータだ」と語った。

CNET Japan
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    最終更新: 2016年11月09日(水)10時09分

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