総務省ガイドラインと低価格競争の影響は--携帯大手3社の決算を読む

CNET Japan 2016年11月11日(金)07時00分配信

 10月末から11月頭にかけて、携帯大手3社の上期決算が発表された。携帯電話を中心とした通信事業については、各社ともに増収・増益を維持しているが、競争の軸が低価格サービスへシフトしたことや、総務省が端末の割引販売に対して一層厳しい姿勢を見せるなど、3社を取り巻く環境は決して良好とは言い難い。そうした中で、各社はどのようにして売上を伸ばしているのだろうか。決算説明会の内容から振り返ってみたい。

ドコモは上方修正、中期目標の前倒しは確実に

 先陣を切って、10月28日に決算を発表したのはNTTドコモ<9437>。同社の決算内容は、営業収益が前年同期比3.3%増の2兆2883億円、営業利益が前年同期比26.6%増の5855億円と、前四半期に続いて好調な決算となっている。

 業績好調の要因は、償却方法の変更などいくつかの特殊要因も含むものの、本質的には通信事業とスマートライフ領域の双方が伸びていることが大きい。通信事業に関しては、「ドコモ光」が継続的に伸びていることに加え、携帯電話サービス自体も音声、データともにARPUが伸びている。あくまでドコモ光のARPUを加えた額になるが、すべてのARPUを総合した額も、業績を下方修正するなど経営に大きな影響を与えた「カケホーダイ&パケあえる」導入前の水準に戻ってきており、回復傾向が鮮明なことが分かる。

 スマートライフ領域に関しても、「dマーケット」や「あんしんパック」、「dカード」の契約が順調なこともあり、着実に伸びているとのこと。その営業利益も609億円と、当初の年間予想の1200億円達成に向け、順調な伸びを示している。またコスト効率化も430億円の削減を実現しており、こちらも当初の年間予想が800億円であることから、順調に達成する見通しのようだ。

 これらの好業績を受け、ドコモは営業利益の業績予想を、プラス300億円増の9400億円に上方修正することを発表。中でも通信事業は当初予想より200億円増額するなど、好調ぶりが際立っていることが分かる。同社では2016年度中に、2017年度の中期目標を1年前倒しで達成するとしていたが、同社代表取締役社長の吉澤和弘氏は「達成はほぼ見込める」と自信を見せている。

 その好業績に影響を与える可能性があると見られているのが、総務省の動向である。4月に「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を打ち出し、端末の実質0円販売が事実上禁止されるなどの影響が市場には出ているが、吉澤氏は「ガイドラインが出てすぐその後は販売数が落ちたと思ったが、第2四半期からはほとんど計画通りになってきている。ものすごく影響を与えることはない」と話す。

 とはいえ、ガイドラインによるマイナスの影響が全く出ていない訳ではないようだ。吉澤氏は「ガイドライン後に、ワイモバイルやMVNOに番号ポータビリティでのポートアウトするなどの影響はある。そういう意味でいうと、ガイドライン前に戻っているかというと戻っていない」と話す。ガイドラインの影響によってユーザーの低価格志向が強まり、低価格のサービスにユーザーが流れていることが課題と見ているようだ。

 今回の好業績を受け、吉澤氏は次の「Beyond 2020」に向けた次期中期計画の検討を開始したと話している。次の中期計画とそこで打ち出された戦略こそが、吉澤氏の体制を真に評価するものになることから、まずは中期目標の1年前倒しを確実に進めつつ、行政の影響によって逆風が吹く市場動向となる中にありながらも、新たなビジョンで明確な成長が打ち出せるかが問われるところだ。

好調を維持も総務省ガイドラインに悩むKDDI<9433>

 11月1日に実施されたKDDI<9433>の第2四半期決算は、営業収益が7%増の2兆3016億円、営業利益が18%増の5326億円と、こちらも継続して増収増益を達成した。

 KDDI<9433>の好業績の要因も、やはり個人向け通信事業の好調にあるようだ。auの通信ARPA収入は前年同期比1.7%増の4472億円と順調な伸びを示しているのに加え、付加価値ARPAも加えた総合ARPAも、前年同期比210円増の6340円と、こちらも順調に伸びている。

 そしてもう1つ、好調をけん引しているのが販売コストの削減である。個人向け通信事業を主体としたパーソナルセグメントの営業利益を見ると、前年同期比20%増の4232億円となっているが、その要因としてKDDI<9433>側は「端末販売原価や販売手数料等の減少」と説明している。これは先の総務省ガイドラインの影響によって、端末の実質0円販売などが事実上できなくなったことから、割引額が減って利益の伸びに貢献したものと見ることができる。

 だが現在のところ、そのガイドラインによるマイナスの影響を最も受けているのはKDDI<9433>であろう。同社は低価格サービス戦略で他社と比べ大きく出遅れており、最近になってようやく、UQコミュニケーションズの「UQ mobile」を活用して低価格ユーザー獲得に力を入れてきている。だが多数のMVNOを有するドコモや、ワイモバイルで先行するソフトバンク<9984>と比べると出遅れ感は否めない。

 特に総務省のガイドラインが打ち出されて以降、低価格を求めるユーザーは大きく伸びており、auのユーザーも多く流出していると見られる。実際、同社代表取締役社長の田中孝司氏も、「ARPAの伸びはそれほど心配していないが、契約者数はMVNOへの流出が出ており、マイナス傾向にあると思う」と話しており、低価格を求めるユーザーへの対応がまだ弱いことをうかがわせる。早期にUQ mobileの認知を高め、販売を拡大することで、低価格を求めるユーザーの受け皿を確実に構築することが求められるところだ。

 一方で、ユーザー1人当たりの売上を高める上で重要となってくる、au経済圏の拡大に向けたライフデザイン事業の拡大は着実に進められている。3月にテレビ通販大手のジュピターショップチャンネルを連結対象としたのに加え、12月にはディー・エヌ・エー<2432>のEC事業の一部を取得する予定だ。また、長期利用者優遇プログラム「au STAR」に関しても、11月からポイントによる還元プログラム「au STARロイヤル」を開始するなど取り組みが本格化。こうした施策によって既存ユーザーをいかにつなぎとめられるかも、KDDI<9433>にとっては重要になってくるだろう。

 ちなみにKDDI<9433>は、個人向け事業が好調な一方で、グローバル事業が前年同期比で売上高がマイナス12.5%、利益がマイナス26.1%と、大幅な減収減益となっている。この点について田中氏は、「その大半は為替の影響だと認識してもらえれば」と説明。同社らが合弁で手掛けるミャンマーの通信事業に関しては、契約者数が順調に伸びるなど好調を維持しているとのことだ。

ソフトバンク<9984>孫氏が関心を失った国内通信事業の業績は?

 11月7日に実施されたソフトバンクグループ<9984>の第2四半期決算は、営業収益が前年同期比0.2%減の4兆2718億円、営業利益が前年同期比3.5%増の6539億円と、減収増益となった。

 売上減の要因は、米Sprintの売上高が、やはり急速な円高の影響によって円ベースで大幅に減少したことが響いているとのこと。同社代表取締役社長の孫正義氏は、円高の影響を除けばSprintの業績は好調と説明。「これからはソフトバンク<9984>の成長エンジンになる」と、長年の懸念であったSprintの業績回復に手応えを見せているようだ。

 だが実際のところ、今回の決算説明会において、孫氏が既存事業に直接言及する場面は非常に少なかった。代わりに時間を割いて説明していたのが、9月に買収が完了した英ARMの今後に対する取り組みと、10月に設立を決定した10兆円規模の投資ファンド「ソフトバンク<9984>・ビジョン・ファンド」に関してだ。

 孫氏はこのファンドを通じて、AIやロボット、IoTなど同社が力を入れる分野の企業に投資をすることで、かねてより懸念されていたソフトバンクグループ<9984>自体の借金を増やすことなく、大規模な投資ができるようになるとしている。ARMの買収を機に、投資事業へとまい進する考えのようだ。

 一方で既存の事業、特に国内通信事業については「退屈だが順調に伸びている」と話すなど、完全に興味が失せてしまっているようだ。では実際のところ、ソフトバンク<9984>を中心とした国内通信事業の業績はどうなっているのかというと、売上高は前年同期比3.1%増の1兆5556億円、利益は前年同期比9.4%増の4659億円と、増収増益を達成している。

 だがその要因を見ると、好業績の要因は他社とは異なっている。というのも、移動通信サービス自体の売上は減少しており、「ソフトバンク<9984>光」を主体としたブロードバンドサービスの契約やそれに関連する機器の販売が伸びたことで、売上を伸ばしているからだ。

 決算短信によると、移動通信サービスの売上減少要因は、主に固定・携帯のセット割「おうち割 光セット」の影響や、PHSの契約減少とされているが、ARPUの減少も気がかりだ。というのも、PHSなどを除いた「主要回線」の通信ARPUを見ると、前年同期比マイナス170円の4020円と大幅に減少しているからだ。そしてその要因は、セット割の影響に加え、ワイモバイルのユーザー構成比率が高まったことだと説明している。

 ワイモバイルは、低価格を求める他社のユーザーを獲得して好調に伸びているが、その増加によってARPUが下がっていることは、今後を考えると不安を抱かせる。孫氏も総務省ガイドラインの影響などもあって、今後通信料は下がると話しており、サービスや固定回線とのセット販売や、コンテンツの拡充によって売上を高めていく方針を示している。だがソフトバンク<9984>は他の2社と比べると、既存ユーザー向けに顧客単価を高めるための施策が弱く、この点は大きな課題となってくるだろう。

 端末の実質0円販売の事実上禁止措置に関しても、孫氏は「端末の販売では1円も儲かっていない。端末の買い替えが減少しても経営への打撃はない」と話し、ガイドラインの影響は小さいと説明する。だがガイドラインの影響によって、足元の市場環境は大きく変化しており、それはソフトバンク<9984>にとっても、低価格を求めるユーザーの増加として如実に表れてきている。他社に先行してきたワイモバイルの地位も、競争激化でいつまでも安泰とは言えないだけに、国内通信事業でも「ギガモンスター」に続く一手が問われるところだ。

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    最終更新: 2016年11月11日(金)07時00分

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