VRアトラクションの収益化は可能か--VR ZONE、USJ、ジョイポリス担当者が語る未来像

CNET Japan 11月24日(木)11時14分配信

 11月16日、グリー<3632>とVRコンソーシアムが共同開催した「Japan VR Summit 2」において、「先駆者から学ぶ~VRアトラクション編~」と題したトークセッションが開催。いわゆるロケーション施設における“体感型VR”の取り組みや可能性について語った。

 登壇したのは、10月までの期間限定で運営を行っていた「VR ZONE Project i Can」を手がけたバンダイナムコエンターテインメントAM事業部エグゼクティブプロデューサーの小山順一朗氏と、同AM事業部VR部VRコンテンツ開発課マネージャーの田宮幸春氏。テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)を運営する、ユー・エス・ジェイコンテンツ開発室室長の中嶋啓之氏。テーマパーク「東京ジョイポリス」を運営する、セガ・ライブクリエイション取締役施設事業推進部部長の速水和彦氏。ジャーナリストであり、Tokyo VR Startups取締役も務める新清士氏がモデレーターとして進行役を務めた。

3者それぞれの取り組みや導入の狙い、そして成果のとらえ方

 最初のテーマは「VRアトラクションで収益はあがっているのか?」というストレートなもの。小山氏はVR ZONEについて、もともとVRエンターテインメントコンテンツの研究(実験)施設とうたっていたことに触れ、「そこで得られた知見こそが大きな価値であり、収益」と一言。実際には運営していた約半年間、連日全てのコマが予約で埋まりきるほどの大盛況。田宮氏からは「売上の想定は当初の計画よりも大きく上回った」とする一方、人件費についても想定以上にかかったと付け加えた。

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お台場「VR ZONE」の所長らが語ったVRの知見--“感情”に訴え“体験”を考えるべき

 東京ジョイポリスでは、多人数かつケーブルレスで自由に動くことができる“フリーロームVR”のアトラクション「ZERO LATENCY VR」を、国内では初めて7月から導入。速水氏によれば予約もかなり好調で、想定の倍以上の収益があるという。もっとも「東京ジョイポリスという施設の中にあるからこそ、ビジネスとしてうまくいってる」と付け加えた。実際に、東京ジョイポリスには入場料が必要であり、ZERO LATENCY VRについても別途利用料が必要。利用者の館内回遊といったところも含めて、この料金体系だからこそ成功と言える状態であり、単独の施設では非常に厳しいという見方も示した。

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 USJでは、ヘッドドマウントディスプレイ(HMD)型のVRシステムとライドアトラクションを組み合わせた「きゃりーぱみゅぱみゅ XRライド」を期間限定で稼働。2017年1月からは「エヴァンゲリオン XRライド」を同じく期間限定で稼働予定としている。中嶋氏は、USJ内の数あるアトラクションのひとつとして稼働していたこともあり「単体での効果測定は難しい」と前置きしたうえで、「きゃりーぱみゅぱみゅさんをテーマとしたアトラクションという観点で見れば、成功したと考えている」とした。

 中嶋氏はVRライドアトラクションの企画にあたり、「きゃりーぱみゅぱみゅさんを打ち出すか、VRという最新テクノロジを前面に打ち出すかで迷った」と振り返る。テーマパークにおけるアトラクションは、物語や世界観の疑似体験や追体験ができるものであり、ある意味VRで得られる体験に近いものであることから悩んだという。さらに、家庭用向けでもハイエンドなVRシステムが販売されはじめている昨今、家の中ではできない広いスペースを活用したり、体感をともなったりするものがテーマパークにおけるVR体験のあり方ではないかとの考えもあったと振り返る。

 今回の企画において意識したのは「エントリーユーザーを取り込むこと」。VRのような最新技術に興味を示すのは、アーリーアダプターの男性が中心。一方でUSJのターゲットは女性や家族と異なっているが、VRに興味があるけれど体験する機会がないというユーザーの入口となって、最初の体験というインパクトがあるものをより良い形で提供するべきと考えた。そして、女性に共感が得られやすく親和性が高いきゃりーぱみゅぱみゅさんの世界観を押し出したVRコンテンツの企画に至ったいう。

 ちなみにアトラクションの利用者は、きゃりーぱみゅぱみゅさんの彼女のファンがおおむね半数程度、残りはUSJにほかの目的で来た人が利用したと付け加えた。

 ZERO LATENCY VRについて、このシステムは豪州に拠点を持つゼロ・レイテンシーが開発したもので、正式サービス版として導入されたのは東京ジョイポリスが世界でも初めて。速見氏は、いの一番に導入することで話題性や集客につながると判断して導入したと振り返る。もっとも、テスト版で運用していたものは広大なスペースと長時間楽しむものであったため、スペースも時間もコンパクトなものに作り替えたと説明。はじめはVRに興味のあるコアユーザーをターゲットにし、そこからの口コミで一般にも広がっていったという。この流れは狙い通りであったとしている。

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 VR ZONEにおいては、開設初期にIP(知的財産)を使わないアクティビティを展開。小山氏は、これは来場目的が施設に対してなのかIPに対してなのかがわからなくなるためとし、当初からデバイスや機器の面白さや目新しさでアピールするのもやめていたという。田宮氏も、VRの目新しさで興味を引く時期から、VRだからこれができるという遊び方や体験が求められる時期に移っていると指摘。小山氏も、VRに興味がない人を振り向かせるにはデバイスではなく体験の価値だとして、「さぁ、取り乱せ。」というキャッチコピーのもと、体験者が驚いたり怖がったりする“そのままの姿”をPVにしたという。

 田宮氏は、このキャッチコピーやPVを見た人が「本当かよ?」と疑問に思う気持ちも狙いであり、それを確かめたいという気持ちが足を運ばせる力にもつながったと説明する。

VRアトラクションに求められる安全性と人件費

 話題は、VRアトラクションにおける課題となり、運用における安全面やホスピタリティについてさまざまなエピソードが飛び交った。中嶋氏は、コースターに乗ってるときにゴーグルが意図せず外れる場合があることを想定し、装着したあとにワイヤーでくくりつけるといった対策をしたほか、待機列において装着方法の説明を徹底したと振り返る。またアテンドだけではなく、HMDの清掃を行うクルーもかなりの人数を配置。期間中約100万人が利用したというきゃりーぱみゅぱみゅ XRライドは、いわゆる“人海戦術”によって安全性やホスピタリティを高めたが、そのための人件費も数千万円というレベルで高騰したと説明する。

 安全性の観点から、きゃりーぱみゅぱみゅ XRライドが年齢制限ではなく身長制限を行ったことについても質問がおよんだ。中嶋氏は、USJにおける安全基準がある上で、さらに安全面に特化した管理チームが本国に存在するという前置きの上で、「USJは安全に対する考え方が非常に厳しい。こちら側の都合で変えることはできないもの。安全対策チームと有識者と議論したなかで判断したもの」と語った。

 小山氏は「人間が持つ、本能としての怖さに対する反射が、安全面のひとつの課題」とした。田宮氏は、人間が驚きや興奮度合いが高まったり危険な状況に置かれると、本能としての防衛本能が働き、反射的に動いてしまうという、その反応を想定したうえで対策をとらないといけないと指摘。もちろんVR ZONEでもその想定をしていない事例はたびたび発生し、「運営側から見てひやっと思ったことは、積もり積もって事故が起きることにつながる。研究施設とうたっていることもあり、効率は後回しで安全面の検討と対策を優先した」と振り返る。ただ、初期段階では想定外の事例も、期間を重ねるとある程度反応のパターンが見いだせてくるものだという。

 また小山氏からは、小さい子どもがVRコンテンツを利用すると斜視など目に悪影響を与える可能性があるという説についても言及。田宮氏は「昔の論文の事例と、現在のVRデバイスの精度や完成度も違ってきているので、事例を積み重ねていくしかない。今の段階では親の承諾も必要となると思われるが、年齢制限を緩和できる道を探ることを業界として取り組むことができたら」とコメント。このあたりは小山氏として、VRの対する理解を早い段階からしてもらうということ、またバンダイナムコグループは子どもに通用するIPを豊富に保有しているという観点からも「機会損失が大きく非常にもどかしい。安全には最大限配慮しなければいけないが、なんとか解決したい」と、目の影響についてさらに検証していきたい考えを示した。

価格設定は「体験の中身」に対して考えるべき

 収益面については、小山氏から価格の設定において他の娯楽とは比較せず、体験の中身に対しての価値を考えること、そしてその価値を高めることを主張した。スキーを体感できる「スキーロデオ」では谷底に落ちてしまうこともあるが、そういう体験は現実にそうそうできるものではないため、VR上で体験できるのはものすごくぜいたくなものとし、その体験から価格を考えてほしいと語った。田宮氏からも、もともとアミューズメント施設向けの“1プレイ100円”の価値観が強いアーケードゲームを手がけてきたこともあり、社内からも体験料金の1回につき700~1000円といった設定は賛否があったという。そして「値段で勝負するフェーズではない。今は価値や中身、新しい体験の提供というところで勝負する考え方をしてほしい」と提言した。

 速水氏も、ZERO LATENCY VRの料金設定が平日が1800円、休日などが2000円とやや高めにも思える価格となっているが、現状であれば受け入れられる設定であることと、VRの価値を考慮したという。中嶋氏は、「日本のテーマパークの価格は、世界から見ると安い」という。USJは年々値上げをしている実情があることに触れ、それはリスクを背負いつつも見合う体験を提供していることと説明。「コンテンツやエンターテインメントの価値を適正化しビジネスとして展開するうえで、トライアル自体は大事だが、いかに体験に見合う価格を設定いくのかがとても大切」と語った。

 また速水氏からは、施設を預かる立場としては1回の体験人数を増やす多人数型コンテンツのほうが導入しやすいという意見も出され、田宮氏もVR空間で他の人と一緒に何かを体験するのは面白いということは実感しているとし、そういったコンテンツが増えてくるのではと付け加えた。

施設は「ここにみんなで行こう」と思える場所にすることが重要

 小山氏からは、現在のところVRが与える体験や感動を中心に組み立てたコンテンツを展開してきたものの、同じ体験繰り返すと薄れてしまうため、リピートしてもらうことも視野に入れて考えていく必要もあるという。田宮氏からひとつの方向性として、例えばスポーツなどのように、練習してうまくなるような上達した感覚が得られるものをシミュレーションしたものは、体験として価値があるうえにリピート性もつながるため相性がいいと語る。

 VRアトラクションの施設については、小山氏と田宮氏から未来像のひとつとして、施設に入った段階からHMDを装着しっぱなしのままで体験できるのほうが、かえって楽という考え方を示した。速水氏からは施設運営の強みを生かす上では、家庭用との差別化として「みんなでわいわい楽しむこと」と「体を思いっきり動かせること」の2つを挙げていた。中嶋氏もこの意見に同意し「音楽ライブをVRライブとして見るよりも、やはり実際の現場で見た方がいい。その領域で勝負するのではなく、VRだからこそできることを考え、それに体感をともなうものを考えている」とした。

 田宮氏からは、人間はどこかで「ハレとケ」という切り替えをしており、非日常的な体験をしたいと思ったときに家の中では味わいにくく、外に出るといったことやみんなと遊びに行くという行動そのものにスイッチの切り替えがあると説明。そのときに、ここはハレの場所だとして運営しつつアピールし続けるのが大事と語る。中嶋氏も、最終的にはテーマパークでの体験そのもの以上に、誰と行ってどのように楽しんだかという共通した体験の共有が重要であり心に長く残るものだとし、どこかに行こうとする段階で、ここにみんなで行こうと思える場所にしていくことが大事だとした。

 この先の展望について、速水氏は「会社としてVRに特化しているわけではなく、またARやMRといった技術、多人数型で楽しめるもの出始めているなかで、さまざまな形で非日常的な体験を楽しめるものが増えてくるといい」との考えを語る。中嶋氏は、「3D」「4D」は、なんとなく体験が想像できる言葉として定着しているものであるとし、そこに「VR」も加わるといいとした。

 田宮氏は、VRが既存のメディアから大きくジャンプしたものであるとし、この先想像できないようなものが発明されていくであろうことから、自分がそのポジションにいたいという気持ちと、1ユーザーとして新たに生み出されるものを楽しみたいという気持ちがあると語った。小山氏は、市場は技術革新によっていろいろなものが代替していったことに触れ、VRについても同じように代替していくのではと話す。「例えば雪山に登る、スキーをする、ロードバイクに乗る、それらをほかの人と一緒に楽しむといったことが“本当のスポーツよりもすごい”という感覚を得られた瞬間、市場代替になる。VRはその可能性を秘めており、その方向性でなければ生活の必需品として溶け込んでいかないのでは」と語った。

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    最終更新: 11月24日(木)11時14分

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