不動産業をテクノロジで変革する「スマート内覧」の挑戦

CNET Japan 11月24日(木)07時25分配信

 デジタル変革の波は、業種を問わず大きな広がりを見せている。その1つが不動産ビジネス分野だ。ライナフのインターネット対応スマートロック「NinjaLock」と、リブセンスが運営する賃貸不動産ポータルサイト「door賃貸」、そして三菱地所ハウスネットの無人内覧サービス「スマート内覧」によって、賃貸不動産のあり方が大きく変化している。そこで各社のキープレーヤーである三菱地所<8802>ハウスネット 賃貸企画部長 篠原靖直氏、リブセンス<6054> 不動産ユニット door賃貸プロダクトグループ グループリーダー 澁谷拓氏、ライナフ 代表取締役 滝沢潔氏の3人に協業を実現できた背景などを聞いた。

――3社が出会ったきっかけは?

篠原(三菱地所<8802>ハウスネット):スマートロックメーカー数社と話を重ねてきましたが、共同開発ではなく他社が用意したシステムをわれわれが利用する形で提示されることが多く、一緒に開発できるライナフと連携しました。ライナフを選んだのは、純粋なスマートロックメーカーではない点で、不動産テックという領域で広い提携を結べると考えたのが1番大きいです。われわれも2016年2月から始めた「スマート内覧」というサービスの着地点が見えていなかったため、相談しながら一緒にいいものを開発できると考えたのです。

滝沢(ライナフ):弊社は不動産ビジネスベンチャーとして、不動産に関する新しいビジネスにチャレンジしたかったのです。そこで2015年8月頃に三菱地所<8802>ハウスネットから「スマート内覧」のお話を頂き、自身がやりたい「空室の活用」につながると考えました。内覧はもちろん、それ以外の時間を活用した時間貸しシステムも目指せます。

澁谷(リブセンス<6054>:2016年の繁忙期が終わった頃から、「door賃貸」の価値を高める取り組みの1つとして「(情報の)リアルタイム性を高めよう」という声が社内から湧き起こりました。物件のメンテナンス情報をサイトに反映する時間や、内見までに要する時間、人の関わりを減らしてスピードアップさせたいという想いと、スマート内覧の利用者の立場を深く考えている仕組みがすばらしいと感じたことから、取り組みに参加させていただきました。

――利用者の認知はいかがでしょうか。

篠原(三菱地所<8802>ハウスネット):「鍵が開かない」という問い合わせは、これまで280室ほど案内した利用者からは一切ありません。皆さん直感的に使っていただけているようです。

滝沢(ライナフ):ダブルキー(扉に複数の鍵を取り付ける)タイプで、両方の鍵を誤って閉めてしまったというトラブルが1件あったが、5分に1回インターネット経由でシステム全体を動作チェックしているため、故障などのトラブル発生時もすぐに発見ができます。

――スマート内覧の特徴は?

滝沢(ライナフ):スマート内覧の利便性は2つに分かれます。1つは仲介業者にとって、物件の内覧時に鍵を取りに行く必要がなくなるという利便性です。もう1つはエンドユーザーにとって、内覧したい物件をすぐに見に行くことができるというスピーディさです。多くの利用者は、賃貸不動産ポータルサイトで物件を探し、そこから問い合わせをし、その後に不動産管理会社からの連絡を待ちます。「この物件を実際に見たいなと思ったら内覧ボタンを押して、予約画面から時間を指定して現地で鍵を開ける」というソリューションを実現するには、賃貸不動産ポータルサイトとの提携が重要です。大手ポータルサイトと相談を重ねてきましたが、今回、ついにDoo賃貸との提携につながりました。

――競合が増える可能性が高そうですが。

篠原(三菱地所<8802>ハウスネット):利用者の利便性につながるので競合が出てくるのは歓迎です。多くの不動産業者は「情報の非対称性(市場で取り扱うサービスに関して、ある経済主体が他の経済主体よりも情報を多く持つ状態)」を利用してきましたが、現在はその非対称性が失われつつあります。これを既得権益として保持していても、技術革新によって追い抜かれてしまいます。だからこそ積極的に情報を公開し、新たなサービスを生み出さなければなりません。各社が競い合って新技術の開発やサービス提供によって、新しい不動産ビジネスフェーズに移行し、その上で切磋琢磨したいと考えています。

滝沢(ライナフ)三菱地所<8802>は大手ながらも「自社さえよければ」と考えず、不動産業界全体の展望を持っています。我々は皆スマート内覧の普及で利用者の選択肢増加につながると考えています。

澁谷(リブセンス<6054>:他の大手賃貸不動産ポータルサイトは売り上げが大きい分、課金ポイントを変更するのが難しいと思います。しかしdoor賃貸は柔軟に対応できるため、内覧課金など成果に近い形でサービスを提供すれば、不動産業者のメリットにつながります。現在は内覧する利用者も物件の紹介や案内を求める方と、自分だけでもいいからすぐに内覧したいという方に分かれます。しかし、利用者はそれを選べないという課題があり、スマート内覧が普及すれば、不動産業界もIT企業も賃貸物件利用者も幸せになると考えています。

――今後の展開は?

澁谷(リブセンス<6054>:情報のリアルタイム性と正確性を高めたいです。物件情報は利用者によって目的の1件に絞ったり、複数を必要としたりするなど探し方はさまざまですが、空室情報をリアルタイムにサイトへ反映させるなど「技術の力を用いた最適化」をdoor賃貸で推し進めたいです。

滝沢(ライナフ):実際の商品や物件が現実世界にありつつも、インターフェースはネットを活用する場面が増えています。現実世界のフェーズを取り込むために「不動産に特化したモノ作り」を目指していきます。また、それらハードウェアと連携したWebサービスにも力を入れていきます。

篠原(三菱地所<8802>ハウスネット):弊社は賃貸管理業者の側面が強いので、管理の簡略化を目指します。不動産オーナーにしても物件利用者にしても、手厚い対人接客を求める方と逆に不要な接触を極力省いて効率性を重視したい方がいらっしゃいます。それぞれのニーズに合わせると同時に営業原価に占める人件費の比率を改善するため、「人がやらなくても済む仕事を抽出する」ことを追求していきたいと思います。さらに、不動産業界が持つ課題して、情報伝達コストを圧縮する「情報同期問題」があります。1カ所にデータを入力すれば自動的にデータ同期を行う仕組みを構築し、各プレーヤーと共有すれば多くの問題は解決するのです。

――不動産業界では情報のやりとりや連絡でいまだFAXが主流という面がありますね。

篠原(三菱地所<8802>ハウスネット):今は紙ベースで受け取った情報を自社のシステムに入力し、それを更に出稿データとして登録するなど煩雑な部分が多いのは確かです。このような関所を減らすのが目の前の課題と言えるでしょう。賃貸住宅管理市場は全体では2000数百億程度の規模があるため、1不動産業者が自社のデータだけを囲い込んでもたかが知れていると思います。データをオープン化し、淘汰の上で事実場の標準システムが生まれれば、利用者の価値はもっともっと高まるのは間違いありません。

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    最終更新: 11月24日(木)07時25分

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