崖っぷちすぎる状況から生まれた360度スピーカ「Egretta」--日本製にこだわり

CNET Japan 2016年11月25日(金)08時30分配信

 「リーマンショックの影響を受け、仕事はゼロになった。まさかと思っていたことが起きた」――オオアサ電子代表取締役社長の長田克司氏は、2008年以降の数年をこう振り返る。

 オオアサ電子は広島に拠点を置く企業。1983年の創業以来、液晶表示装置や電源装置、音響機器などの製造を請け負ってきた。しかし主力事業であった液晶表示機器は、リーマンショックを機に、多くのメーカーが製造を海外に移管。その後5年間は仕事がなくなったという。

 その時に「社員を路頭に迷わせるわけにはいかない。会社を存続させなければ」(長田氏)との強い思いから、新たなビジネスを模索。生まれたのが、自社オーディオブランド「Egretta(エグレッタ)」だった。オオアサ電子では、20数年前からオーディオメーカーのOEMを手がけており、音響機器作りのノウハウもあった。「請け負う仕事だけではなく、自社ブランドを立ち上げたかった」ことも大きな理由だったという。

 Egrettaは、広島県の山間地域にある工場で製造する“純日本製”。「Made in Japan」にこだわるオオアサ電子のポリシーをスピーカにおいても継承している。2013年には円筒形を採用したスピーカ「TS-550/500」を発売。2016年6月には、ハイレゾ再生に対応した「TS1000F」(税別価格:35万円/ペア)を発表し、12月上旬に発売する。

 TS1000Fは、高さ960mm×幅330mm×奥行き330mmの円筒形で、リスニングポイントを選ばす、360度に音が広がる無指向性スピーカ。ドーム型やコーン型など、振動板を前後に動かすことで音を出す従来のスピーカユニットとは異なり、独自の「ハイルドライバー方式」をトゥイータに使用する。これによりなめらかな高音域再生を実現する。

 ハイルドライバーの振動板には、新開発素材の「ポリマー・クレイ・コンポジット」を採用。これは、日本最大規模の公的研究機関である産業技術総合研究所と住友精化<4008>が開発した複合フィルムで、柔軟性と強度をあわせ持ち、熱伝導性にも優れる。これを蛇腹状に折りたたみ、横方向に収縮することで音を出す。

 スピーカは、この5cmポリマー・クレイ・コンポジットフィルム・ハイルドライバー型と13cmポリプロピレン・コーン型スピーカを備えた2ウェイ構成。ハイルドライバーが中域から超高域までをカバーし、再生周波数帯域は44Hz~45kHzを実現。ハイレゾ音源再生にも対応する。

 発売にあわせ、東和電子「NANOCOMPO」とのコラボレーションモデル「Egretta & NANO(ホワイトモデル)」も発表した。これは、TS1000Fと、プリメインアンプ「NANO-UA1a」、CDプレーヤー「NANO-CD1」を組み合わせたシステムで、東和電子製のスピーカケーブル「NA-SPC200」を同梱。開封後すぐに使えるようセッティングに必要な機材をワンパッケージにした。発売は12月14日。税別価格は46万円になる。

 オオアサ電子生産部開発技術課の川崎博愛氏は「生活の中で使えるスピーカを作りたいという思いから生まれたのがTS1000F。従来のスピーカは、左右のスピーカとリスニングポイントの三角形の中で聴かなければならなかった。無指向性のTS1000Fは、この三角形から解放され、どこでも聴いてもらえる」と、メリットを強調する。

 現在は、液晶表示装置などの受注も復活しているが「楽観視はできない状況。ライン化して省人化するなど、製造工程も見直している。これも社内で開発から製造まですべてを手がけているからこそできること。オオアサ電子はモノづくりの企業として生き残っていきたい」(長田氏)と、改良、改善を続けている。

 Egrettaにおいては、新開発のハイルドライバーをカーオーディオなどにも展開していく方針。加えて「スピーカ1本で再生できないかというお客様の声をよくいただく。次は1本のスピーカに挑戦していきたい」(長田氏)と今後の展開についても明かした。

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    最終更新: 2016年11月25日(金)08時30分

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