インドの物流問題に挑む「Locus」--ドライバーのシフト最適化、積み荷のアドバイスも

CNET Japan 2016年11月26日(土)10時00分配信

 物流インフラが整っている日本では、物をいつでも正確に送れて当たり前。しかし、インドでは小包1つを届けるのにも一苦労である。今回は、インドの物流インフラが抱える課題を解決するスタートアップをご紹介する。その前に、まずはインフラの課題の中身に触れたい。

インドの物流インフラ事情

 インドの物流市場は1600億ドル(約16.5兆円)にのぼり、GDPの約13%を占めている(2007年)。インド政府によれば、この市場規模は2020年までに約2倍の3070億ドル(約31.7兆円)に達する。「約13%」という比率は国土面積がインドの3倍のアメリカ(9.5%)と比べても大きい。

 マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によれば、そのうちおよそ450億ドルはインドのインフラの「非効率性」から生まれたもの。そして、今のインフラの状況のまま経済成長が継続すれば、非効率性による支出はさらに増えていく。

 また、インドでは現在、「Make in India」という標語のもと、国内の生産力を上げていこうとする政策が実施されている。これにより、製造業などの規模がより大きくなったときには、物流インフラの脆弱性によりその成長が阻まれるリスクもはらむ。

 こうした問題は政策によって解決されるべきものから、民間企業がアプローチできるものまで多岐に渡る。前者であれば、都市間の物流を改善すべく高速道路の数を増やしたり、鉄道での物流網を整えるなど。後者であれば、配送計画の効率化、ドライバーの怠惰による配送可能数の低下やそれに伴う配送員の待遇の悪化による悪循環を防ぐことなどが、手立てとして挙げられる。

物流に革新を起こす「Locus」

 そうした問題に取り組むベンチャー企業の1つが、インドのバンガロールに本社を置く「Locus(ローカス)」だ。


 Locusは主にクラウドとGPSの技術を用い、リアルタイムでトラックなどを追跡できるソフトウェアを提供している。配送会社や配送サービスを必要とする企業が利用している。

 Locusを利用することで、上に挙げた配送計画の非効率、ドライバーの怠惰による配送数の増加を解決できる。配送の依頼状況をクラウドで管理し、それとドライバーのGPSを連携させることで、配送計画からトラックの積荷の配置までをも計算し、ユーザーやドライバーに提示してくれる。

 GPSを使うことでドライバーのマネジメントがより簡単になり、パフォーマンスが高いドライバーにより多くの仕事を任せられるようシフトを最適化することも可能となる。荷物を受け取る消費者側も、Locusのアプリで配達状況を地図上で確認したり、配送に無駄がないかを把握できる。

 サービスはAPI、SDKそしてウェブアプリケーションとして提供されている。

 ユーザーは従量課金で基本的な機能を利用できる。追加料金を支払えば、配送状況を分析する機能やアラート通知機能、トラックの最適な積荷の配置方法を教えてもらえる機能なども利用できる。ユーザーはLocusを使って、約10~25%、コストを削減できるという。

 現在、約30社に利用されており、Locusを用いた取り引きは少なくとも1日に1万件、多いときで10万件以上にのぼる。また、これまでにインドで勢力的に活動するベンチャーキャピタルの「Blume Ventures」や「Beenext」などから275万ドル(約2億8000万円)の資金を調達している。

CEOが考えるインドの物流市場のこれから

 LocusのCEOであるNishith Rastogi氏は、過去にアマゾンでAmazon Machine Learningのアルゴリズム開発に従事。2年間アマゾンで働いたのち、PinchatというGPSを用いて近くにいるユーザーとチャットできるサービスで起業。その後、アマゾンでの経験を生かしてBtoBのサービスを提供したいと考え、アマゾン時代の同僚であるGeet Garg氏と昨年5月にLocusを創業した。

 「インドの非効率な物流インフラの状況には、サプライチェーンに関わるすべての人が管理しきれず閉口しています。しかし、物流網や配送サービスなどは顧客に最善なユーザー体験を提供する上で欠かせないもの。逆に言えば、こうした問題を解決できれば、それを利用する企業は大きなアドバンテージを得ることになります。私たちはそういった顧客目線に立ってサービスを提供しています」(Nishith氏)

 筆者は、実際にLocusの顧客が利用する管理画面と一連の利用フローを見せてもらったが、その完成度はとても高いと感じた。というのも、インドは配送計画を立てるにもUberやOla CabのようにGoggle MapのAPIを利用するだけでは難しいが、Locusでは「配送先の場所に車が入れるか否か」など細やかな点にも配慮された独自のサポートを提供していたからだ。

 リアルタイムで配送計画を最適化するための独自のアルゴリズムや、大量のデータトランザクションを処理しながらも安価なスマートフォン上でも動くようなアーキテクチャ設計など、サービスを実現するには高度な技術が欠かせない。しかし、Locusはそれを30人弱のチームで構築している。少人数で開発できた背景には、巧みな人材採用がある。

 「エンジニアのポストにはかなりの数の候補者から履歴書が送られてきます。しかし、必要で正しい人を採用するためにも技術面などは採用する前に細かく見るようにしています。履歴書から始まり、面接を通過しても、最終的に内定を出す前に一緒に一定期間働いてからお互いがハッピーだと感じられれば採用しています。結果、リファラル採用が多く、技術力がかなり高い人たちを揃えることができました。博士号を持つ人、個人で10万以上ダウンロードされたiOSアプリを開発した実績のある人、エンジニア向けのツールをオープンソースで作っている人たちもいます」(Nishith氏)

 現在は物流のSaaSアプリケーションを提供しているLocusだが、今後は「自動化」というキーワードを軸にさらにその世界観を多くの企業に提供していきたいと語る。

 「これまで人の手が介在してきた配送など物流は、コンピューターの進化によってより人の手を必要としなくなるでしょう。IoTの高度化が進めば、人が発注せずとも物が必要になった際に自動で配送センターに発注が飛び、自動で納品される。また、データが溜まってくれば、発注の頻度などを解析することでより高い精度で配送計画を組むことが可能となる。Locusのサービスでどんどん自動化を図っていければと考えています」(Nishith氏)

 年平均成長率12.17%を誇るインドの物流市場。まだまだ課題は多いが、Locusのようなテクノロジ企業がその成長をさらに力強く推し進めていくだろう。

(編集協力:岡徳之)

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    最終更新: 2016年11月26日(土)10時00分

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