りらいあコミュニケーションズのハイブリット型デジタル変革

CNET Japan 11月28日(月)10時40分配信

あらゆる企業で求められる「デジタル変革」

 前回のコラムでは、デジタル変革をどのような観点で実施すべきかを、7つの視点(目的、業務範囲、中長期戦略、経営コミット、業務プロセス、組織・評価、マインド)をベースに、いま地球上で最もデジタル変革をダイナミックに進めている企業の1つであるGE(ゼネラル・エレクトリック・カンパニー)を例にとって説明した。

 成功事例として参考になる点は多いものの、一方で、ジェフ・イメルトというスーパーCEOやGEという超エクセレント<8987>・カンパニーだからこそ機能している面もあり、特殊なケースであることは否めない。そこで今回は、より身近な日本企業の経営者に直接インタビューし、「デジタル変革についてのリアル」な実態について聞いた。

 国内のコンタクトセンター業界を牽引する、りらいあコミュニケーションズ<4708>。コンタクトセンターの受託サービスを本業とする同社はこれまで「もしもしホットライン」という社名であったが、業務領域が拡大し、コンタクトセンターに限らず、ウェブや対面営業など多様な顧客接点を支援するようになったことから、2015年10月に社名を変更した。

 これと並行して、ソフトバンク<9984>の「Pepperパートナープログラム」のロボアプリパートナーやIBM Watsonのテクノロジーパートナーになっており、業界に先駆けて、従来の人と人とのコミュニケーションが中心のコンタクトセンター業界にAI(人工知能)などの高度なITサービスを持ち込み、次世代の新たなサービスを積極的に提供している。

 りらいあコミュニケーションズ<4708>代表取締役社長の中込純氏に、デジタルシフトによる企業変革について話を聞いた。

コンタクトセンター業界で起こっているデジタルシフト

――中込社長になって以降、社名変更とともに積極的にデジタルシフトに関する取り組みをされていますが、その背景には何があるのでしょうか。

 コンタクトセンター業界で起こっている構造変化に起因します。コンタクトセンターは約30年前に日本に導入されたビジネスモデルで、人+電話+システムの組み合わせで成立していました。昨今、我々と同じようなサービスを提供する企業が増え、コモディティ化するとともに、国内の労働人口の減少やデジタル技術の進展により、従来のこのビジネスモデルが大きく崩れつつあります。その結果、必然的にデジタルシフトに取り組んでいます。

――一口にデジタルシフトと言っても、その領域は広いと思いますが、御社としてはどのような領域に注力しようとしているのでしょうか。

 コンタクトセンターの場合、大きくは2つに分かれると考えています。1つは、顧客接点にあたる「フロント」の部分、もう1つは、それを裏で支えるオペレーションにあたる「バック」になります。フロントの部分は複雑で難しい領域でありますが、お客様の価値向上に直結するため、当社では、まずは「フロント」に関する領域を重視しています。例えば、AIがお客様の質問に自動で回答するオンライン・セルフサービスの「バーチャルエージェント」や、最新の音声認識テクノロジーを使用したIVR(自動音声応答)システムといったものが、このフロントにあたります。

既存サービスをひっくり返す「A→B」ではなく、付加価値を高める「A+B」

――デジタルシフトを進めるといっても一筋縄にいかない部分は多いかと思いますが、経営者として気をつけている点はありますか。

 ご指摘のとおりで、気をつけるべき点は多いですね。まずは、デジタルシフトといっても、今あるものを全否定して、新しいものをゼロから始めるわけではないということだと思います。変革というと、過去を否定して新しいものをドラスティックに、と考えてしまいがちですが、そうではないと思っています。あくまで、これまで培ってきた自社の既存サービスがベースとしてあり、そこにデジタル化が加わり、今までのサービスがより良いもの、より高付加価値のものになることだと思います。

 また、この過程で自社の強みは何かを明確にしていくことが必要です。当社の場合で言うと、コンタクトセンターの現場を支えるオペレーション力や、スタッフの誠実さ、課題解決に向きあう真面目さといったものが強みになります。当社は、この人間系の強みと高度なIT・デジタル化を掛け合わせたハイブリット型を軸に、デジタルシフトを進めるようにしています。

――とは言え、従来のサービスを提供する部門と、新しいサービスを提供する部門での協業は、利害が一致せず対立してしまうようなケースも起こり得ると思いますが、そのあたりはいかがですか。

 今日のキャッシュを生む既存組織と、未来のキャッシュを生む新規組織間の対立は、どの企業でも同じでしょうがもちろん当社でも起こり得ます。担当者間での折り合いがつかないような場合、早めにトップが入って推進することも重要な役割です。また、適切なステップで変革が進んでいくように注視しています。これは、デジタルシフトに限ったことではないでしょうが、全社変革をする際には

  • 1、変革を推進するエバンジェリストを立てる

  • 2、小さくても良いので成功事例をつくる

  • 3、成功事例をベースに全社展開(横展)する

 と言ったプロセスを踏んでいく必要があります。このとき、2の成功体験づくりまでにあまり時間がかかってしまうとエバンジェリストも疲弊してしまい、改革も頓挫してしまうため、そうならないよう初速を上げていくことが欠かせません。

デジタルマーケティングではなく、“マーケティング with デジタル”の発想

――御社ではデジタルシフトとともに、マーケティング力の向上も並行して強化していると聞きましたが、なぜでしょうか。

 当社の事業領域がコンタクトセンターだけでなく、Webなど多様な顧客接点へと拡がってきたこともあり、昨年に現在の社名に変更しました。しかし、まだまだ新しい社名が浸透しきっていないことや、コミュニケーション全般の支援ではなく、コンタクトセンターの支援をやっている会社だと思われていることもあり、マーケティング力の向上に注力しています。また、デジタルシフトとマーケティングの推進と言うと、デジマ(デジタタマーケティング)を強化すると思われることもありますが、デジマはあくまでマーケティングの一部として捉えています。重要なことは、デジタルマーケティングが先ではなく、マーケティングが先でデジタルはそこに付随するもの。「マーケティング with デジタル」といった表現がより適切でしょう。

デジタルシフトは、自社のためではない

――では最後に、御社でのデジタルシフトの今後について教えていただけますか。

 先ほども話しましたが、やはり、変革にはスピードが大事です。先ほどのステップで言うと、18年3月期までには、一通り全社展開ができあがっている状態までには持っていきたい。とは言え、デジタルシフトは、自分たちの都合ではなくあくまでもお客様のニーズに合わせて推進していくものなので、その点は忘れずに進めていきたいと思います。


“お客様のニーズに合わせた変革”はデジタル変革の重要なテーマとなっています。本連載の筆者等の共著による書籍「カスタマーセントリック思考 -真の課題発見が市場をつくる-」が発売中です。戦略の意思決定基準を「顧客」に置いた“マーケティングストーリーづくり”や“組織変革”について詳説しています。

ぜひ、お手に取ってみてください。詳しくはこちらから。


村澤典知

戦略コンサルタント。インテグレート執行役員。
一橋大学経済学部卒。トヨタ自動車<7203>、博報堂コンサルティング、A.T.カーニーを経て現職。国内大手企業を中心に、成長戦略の策定、新規事業開発、新商品/サービス開発、デジタル変革、マーケティング組織再編等、10年間で約100に及ぶプロジェクトに従事。「カスタマーセントリック思考」、「最新マーケティングの教科書2016」等、執筆多数。

株式会社インテグレート

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    最終更新: 11月28日(月)10時40分

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