なぜ、女子高生はInstagramで「バトン」をするのか?

CNET Japan 12月03日(土)08時00分配信

 「バトン」はSNSで人気のテーマだ。バトンとは、特定のお題の質問に対してSNSなどで回答していくこと。次の回答者を指定したり、見た人は必ず回答しなければならない仕組みとなっているものが多い。古くはmixiの時代からあったものだが、最近はLINE<3938>のタイムラインが主な場となっている。

 ところが最近は、女子高生たちなどによって、Instagramがバトンの場として選ばれることも増えていることをご存知だろうか。

 バトンといえば、質問と回答がセットとなっている。「写真共有SNSであるInstagramでバトン?」と意外に感じる人も少なくないだろう。Instagramにおけるバトンの実態と増えてきた理由について考えていきたい。

強制力が強く固定されたLINE<3938>バトン

 そもそもバトンは暇つぶしに投稿するネタとなり、自分のことを知ってもらうきっかけとなる。周囲からのリアクションも期待できるネタのため、女子中高生にとても人気が高い。投稿するバトンネタを探すためのポータルサイトまで登場しており、相変わらずバトンの人気が高いことがよく分かる。

 代表的なバトンは次のようなものだ。

 「名前=

 年齢=

 学年=

 部活=

 プロフィール画像=

 カバー画像=

 趣味=

 好きなアニメ=

 好きな人=」

 このような質問を回されたら、回答欄を埋めて自分のタイムラインにアップし、次に回す人を指名する。

 LINE<3938>バトンは質問が多岐にわたり、ルールがはっきりと決まっている。「見た人は全員強制参加」「指名されたら絶対参加」というものがほとんどであり、強制力が強い点が特徴的だ。「タイムラインは(同じクラスのメンバーなどが全員見ているので)バトンを回されたら拒否が難しいからしかたなくやる」と女子高生に聞いたことがある。

 Yahoo!知恵袋などで「LINE<3938>バトン」で調べてみると、やり方を尋ねるものと「~というバトンを教えてください」という積極的に使いたい派と並んで、「うざい」「なぜやるのか」「やらなければいけないか」などという否定派の投稿も目立つ。

 「暇つぶしによい」「楽しい」と感じる層が一定数いる一方で、「やりたくないのに強制的に回されてきて困る」「なぜあるのか意味がわからない」「同じものが何度も回ってきてうざい」と感じている中高生も少なくないことがわかる。

緩くて自由度が高いInstagramバトン

 Instagramで「#バトン」は5万件投稿されている。それ以外にも多くのバトンが回されている。その多くは、Instagramらしく画像形式のバトンとなっている。タグ付けで回されたバトンを、そのハッシュタグを付けて写真を投稿することで回答に換えるものが多いのだ。

 「#自己紹介バトン」は唯一通常のSNSと同じ文章での自己紹介付きのバトンだが、投稿数は4000件とそれほど多くはなく、Instagram内では少数派だ。その上、自己紹介と言っても質問が固定されているわけではないので、自由に自己紹介すればいいという緩いものとなっている。

 他のバトンも、一般的に行われているバトンとはかなり違う。たとえば「#文字バトン」は、「あなたの字はどんな字ですか。あなたの字でこの文章を書いてください。そしてインスタグラムのお友達をタグ付けしましょう」という手書き文字を写真で投稿するユニークなものだ。

 「#ホーム画面バトン」「#ロック画面バトン」はその名の通りスマートフォンのそれぞれの画面のスクリーンショットを載せるというもの。「#ドリンクバトン」は好きなドリンク写真、「#寝顔バトン」は赤ちゃんの寝顔写真を載せればよい。

 Instagramらしいのは、「#帽子バトン」「#デニムバトン」「#ボーダーバトン」「#ニットバトン」などのファッションアイテム写真を紹介するバトンだ。テーマに合ったファッションアイテムを写真で紹介するというものであり、その人らしさがとても出る。

 「#ブルーバトン」「#ピンクバトン」「#レッドバトン」「#モノクロバトン」「#ホワイトバトン」などはさらに興味深い。その色でありさえすれば、撮るものはなんでもいいという自由さだ。ブルーバトンだけでも、青空、夜空、ファッション、小物、海など、さまざまな写真があげられている。

 「#半顔バトン」「#ドアップバトン」「#笑顔バトン」「#バックショットバトン」など、撮り方や撮る内容だけを指定しているものもある。

 Instagramのバトンに共通することは、コミュニケーションのきっかけにはなるけれど、とても緩くて強制力が低いという点だ。自由度が高いためセンスが生かせるほか、投稿する側も楽しめる。タグ付けで指名しているものもあるが、「やりたい人はどうぞ」という指名なしの緩いものも多数見かける。

SNS疲れから自由になりたい女子高生たち

 バトンは元々、コミュニケーションしたい、相手のことを知りたいという気持ちからスタートしたものだろう。mixi時代からあったものだが、足あと機能があったため、「見た人はわかるよ!見た人は全員参加なのになんで答えないの!」と怒っている人を見かけたこともある。

 ネタとしてのバトンは歓迎されて一気に広まったが、広まりすぎてやりたくない人にも回ってきて強制されるようになると、「バトンお断り」「答えるけれど誰にも回さない」という人が出てきたことを覚えている。

 女子高生たちは、コミュニケーションしたい、自分を知ってほしいという気持ちを強く持っている。しかし、同時にSNS疲れに陥ってもいる。既読スルー問題などに疲れて、義務感が少ない人間関係に縛られないInstagramなどの画像・動画コミュニケーションに移行してきた。一定時間でメッセージが消えるSNOWやSnapchatなどの“エフェメラル系(消える系)SNS”も歓迎されている。

 SNSにおける強制や気遣いに疲れた女子高生たちが、純粋にコミュニケーションや自己表現ができる場として選んだのが、Instagramバトンなのではないか。彼女たちは疲れない場、楽しめる場を探してコミュニケーションを始めているのだ。

 女子高生におけるコミュニケーションは、刻一刻と変化してきている。しかし、使うサービスや使い方が変わっているだけで、根幹にある願いや思いなどの本質は変わっていないと感じる。楽しむためのはずのSNSに疲れるという本末転倒に陥っている女子高生がいたら、ぜひこのように柔軟に使いこなしている例を示してあげてほしい。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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    最終更新: 12月03日(土)08時00分

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