“ラズパイ”はソニーの工場でも作られている--生みの親が来日

CNET Japan 2016年12月15日(木)17時46分配信

 アールエスコンポーネンツジャパンは12月13日、「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」の産みの親であり、同財団の代表を務めるエベン・アプトン氏の来日に合わせ、最新動向や日本市場に関する記者会見を開催した。

 Raspberry Piは、ARMプロセッサをベースとしたシングルボードコンピュータ。2011年5月に販売を開始し、安価かつ高い拡張性を備えることから、ホビーユースをはじめ教育機関、産業用の組み込み用途などで受け入れられ、出荷台数は現時点で1100万台を突破。向こう3年間で台数を2倍に伸ばす計画を掲げている。

 アールエスコンポーネンツは、電気・電子部品などを中心に2500以上のブランドを取り扱う英国の専門商社。Raspberry Piを取り扱う2社のうちの1社で、世界32カ国で展開する強力な販売網を生かし、初代モデルから製造・販売面でのパートナーシップを締結している。

 Raspberry Piは、初代モデルの「Model A」「Model B」を皮切りに、2015年にはクアッドコアCPUや1GバイトのRAMを搭載した「Raspberry Pi 2」、64bit対応のクアッドコアCPUにWi-Fi、Bluetoothを内蔵した「Raspberry Pi 3」と進化している。また、5ドルの低価格を実現した「Raspberry Pi Zero(日本未導入)」や、産業用の「Compute Module」などさまざまなラインアップを有している。

「Raspberry Pi」の目的は学生のコンピュータスキル向上のため

 アプトン氏がRaspberry Piを開発した背景には、学生のコンピュータサイエンスにおけるスキルの低下があるという。Raspberry Piのアイデアを思い付いたのは2006年。当時、英ケンブリッジ大学のコンピュータサイエンス分野で教鞭を取っていたアプトン氏は、大半の学生がアセンブリでプログラミングできた90年代中ごろと異なり、年々コンピュータサイエンスを志望する学生が減少し、「HTMLでウェブページを書いたことがある程度」まで、スキルが低下していることを課題に感じていたという。

 その理由を考察したところ、80年代の子どもはMSXマシンやシャープ<6753>の「X68000」、コモドールの「コモドール64」といったマシンでプログラミングを経験したことがあるからだという結論に達したという。同氏は、子どもたちが再びコンピュータサイエンスに興味を持ってもらえるよう、「プログラミング可能なもの」「おもしろいもの」「頑丈」「安価(教科書と同じ25ドル程度)」の4要素を持つコンピュータの開発プロジェクトを開始した。

 2008年には非営利財団を設立し、同年には試作品が完成している。量産にあたっては、財団を立ち上げた6人それぞれがお金を出し合って1万台を作る資金を用意していたが、そもそも売れるのか、資本的に十分なのか、すべての子どもに行き渡らせることができるのか不安だったという。そこで、2011年にアールエスコンポーネンツとライセンス契約を結び、製品製造契約に合意。2011年5月に発売したところ初日で10万台が売れたという。アプトン氏は「“1万台売れるのか”という心配は2時間しか続かなかった」と語る。

 Raspberry Piは、RSコンポーネンツから委託を受ける形で英国内にあるソニー<6758>UKの工場で作られている。当初は中国で製造していたが、「想定よりもコストが上がらないことがわかった」として、半年後に英国生産に切り替えた。この流れを受け、国内で流通するRaspberry Piに関しても、ソニー<6758>の稲沢工場で製造を開始しているという。

 アプトン氏は、「非常にローコストのコンピュータを先進国でも作れる先進的な取り組み。早くMade in JapanモデルのRaspberry Piを見てみたい」と語った。

「日本での取り組みを世界に紹介したい」

 アプトン氏は日本市場について「私たちにとって未知のマーケットではない。非常に熱心にコンピュータを使う人が多く、さまざまな点で英国に似ている」としており、月に1万台ほどの出荷台数を10~20万台までに引き上げたいとしている。これを実現すべく、日本語で書かれたコンテンツの充実を図るほか、アールエスコンポーネンツの販売ネットワークを生かし、教育プログラミング用途に加えて産業用Raspberry Piケースを販売するなど、ルートを広げていくという。

 産業用のCompute Moduleは、SO-DIMMメモリ規格のシングルボードにeMMCストレージを増設したもの。日本メーカーでの採用例もあり、NEC<6701>ディスプレイでは、アールエスコンポーネンツのドイツチームと、ドイツにあるNEC<6701>ディスプレイの開発チームが連携し、業務用モニタにCompute Moduleを搭載するためのスロットを内蔵した。また、韓国でも産業用に数万台出荷するプロジェクトがあり、日本でも今後数量が伸びてくるとアールエスコンポーネンツでは予測している。

 アプトン氏は、日本におけるRaspberry Piの活用方法として、Googleの機械学習プラットフォーム「Tensor Flow」とRaspberry Piを組み合わせて、きゅうりの等級仕分け作業を自動化した農家を紹介。日本のRaspberry Piコミュニティについて「一つのプロジェクトにすごく関心を持つ傾向が多い。英国や米国ではプロジェクトがすぐに移り変わる傾向にあるが、日本では1年などのスパンでプロジェクトを深く進めている。2018年には日本から世界にプロジェクトを紹介したい」としている。

 ちなみに、注目しているプロジェクトについて聞くと「ロボティクス分野に関心がある」として、Raspberry Piを使用した高精度の教育用マウスロボットを嬉しそうに見せてくれた。アプトン氏は、「日本には複雑なプロジェクトがあるという一つのテストベッドになる」としている。

 そして、注目を集めているRaspberry Pi ZEROの日本投入については、「日本での展開方法について議論している段階。2017年の前半には発売にこぎつけたい」としている。なお、ZEROに関しては、Raspberry Pi財団が初めて製造から販売まで手がけるプロダクトで、チャリティ要素が強くほぼ原価で販売しているという。アールエスコンポーネンツの担当者は「チャリティは支援する」としつつも、あまりにも安価のため製造・販売については現時点でも水面下の状態としている。

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    最終更新: 2016年12月15日(木)17時46分

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