USEN田村社長の“ブレない”経営--BtoBで勝機を引き寄せる

CNET Japan 2016年12月19日(月)10時19分配信

 USEN<4842>が目覚ましいスピードで新規事業参入を続けている。iPad向けの多機能レジアプリ「USEN Register」USEN<4842>レジ)の拡販をはじめ、東京電力との業務提携による法人向け電力販売への参入。2016年3月には、訪日外国人女性向けのカプセルホテル「NADESHIKO HOTEL」も開業した。

 一見すると多岐にわたった事業展開に見えるが、その根幹にあるのは“音楽配信”と“店舗向け”というUSEN<4842>の屋台骨が確固たるベースになっている。

 「BtoB領域で勝負していく」と宣言した社長就任から3年。USEN<4842>代表取締役社長である田村公正氏に、事業の選択と集中の仕方、また働き方改革までを聞いた。

新サービス「canaeru」で実現する店舗トータルサポート

--ここ1~2年でかなり多くの新規事業をスタートされていますね。

 USEN<4842>は、音楽配信、店舗向けICTソリューション、集客支援と子会社であるアルメックスが手掛ける自動精算機などの業務用システムという大きく4つのカテゴリを運営しています。その中で、いくつか新しいチャレンジをしようと思っていて、2016年春には電力自由化に合わせて、店舗向けの電力ビジネスを東京電力との提携によりスタートしました。それともう1つ、店舗向けビジネスとして12月にスタートしたのが「canaeru(カナエル)」です。

 USEN<4842>は、音楽配信サービスの提供という形で長く店舗向けビジネスに取り組んできましたが、実は音楽配信の導入を考えるのは、お店がほぼ出来上がった段階、もしくは完成後なんですね。しかし実際に開業するまでには、多くの時間がかかりますし、初期段階では開業資金の調達、テナント探し、店舗の内装、設備から人材確保まで、やるべきことがたくさんあります。

 canaeruはそうした店舗開業、経営のサポートサイトとして、開業の早いタイミングから店舗に関わっていきたいという思いから開始しました。この体制が整うと、開業を決意した瞬間から開業準備、運営など店舗へのトータルソリューションが可能になります。実際に資金調達などの相談も受け付けますが、ここはすべて無料で請け負う予定です。

--サポート対象はどのような店舗を想定されていますか。

 一部、中小のチェーン店なども想定していますが、USEN<4842>約50年の歴史の中で、大きく変わったことの1つは商業施設の規模と場所なんですね。今、ロードサイドの大型店舗が一般的ですが、以前は街中、駅前の商店街が中心でした。私たちは、こうした店舗の方たちにご支持いただいて、音楽配信事業の歴史を紡いできましたから、こうした店舗を応援したいという思いは強くあります。

 また、東京にいると感じにくいかもしれませんが、シャッター商店街の存在は地方の大きな課題になっています。地方創生とあわせ、この問題にUSEN<4842>として取り組んでいきたい。例えば、地元に戻って店舗を開業したいと思う方がいても、意外と相談しに行く場所がわからないというケースがあるんです。canaeruはそうした方たちの一助にもなり得ると思っています。

 それとともに店舗のICT化を推進していきます。例えば、POSレジは売上管理だけではなく、お客様の来店頻度、購入内容などの情報が詰まった、いわばお店の心臓部です。レジというと、大きく高価で買い替えもしづらいイメージですが、USEN<4842>レジは、iPadを活用でき、導入も簡単です。将来的には各テーブルから食べ物などをオーダーできる、テーブルトップオーダー(TTO)と連携させることも考えています。

 一見すると、手間暇がかかりそうなシステムですが、そこをわかりやすいサポート付きで導入します。インターネットの導入からワンストップでレジ、セキュリティカメラ、スマート決済と現在複数の企業がかかわっている部分をUSEN<4842>1社にワンストップで頼むことで、すべてを連携し、わかりやすくサポートする。そんな未来像を描いています。

USEN<4842>さんではなく○○さん、50年間培ってきたからこそ築ける営業力

--店舗向け営業はUSEN<4842>が特に強いジャンルですね。

 ただ、音楽配信のイメージが強いので、そこに隣接するレジやエネルギー周りのサービスに取り組んでいても、気づかれにくいというデメリットがあります。営業の担当者も「USEN<4842>でそんなことをやっていたんだ」と言われることが多いと聞きますし、今後はブランディングも含めて、新しいイメージを根付かせていく必要があると感じています。

 プロモーションももちろん考えていますが、USEN<4842>の強みは営業担当者が地上戦で広げてきた地盤です。現在、営業は全国に約1000人いますから、1人が1日5件のアポイントがとれれば、1日に5000件のリーチができます。そういう地道な努力は必要だと思っています。

--そうした営業力はどこで養われているのでしょう。

 やはり、地域に根付いた地道な顧客管理を継続出来ているからではないでしょうか。昔ほどではないかもしれませんが、営業やエンジニアが街を歩けば「USEN<4842>さん」ではなく「●●さん!」と担当者の名前で呼んでもらえるような、そんな関係を構築する意識を社員全員が持ってくれていると思います。ここ数年はITツールも導入し、店舗情報は常に更新することを心がけています。

 営業周りの際に工事現場を見かければ、地図上にマークを付けておき、店舗の業態がわかれば情報をアップデートするなど、日々の積み重ねで店舗情報を集めています。この作業も1人が行うのではなく、見かけた人間がその都度アップデートを加えるなど、連携をとることで、全体の営業につながっています。

--サポート体制の充実にもつながっているようですね。

 USEN<4842>には約800人のエンジニアがいて、営業と連携しながら取り付けや保守を担当しています。この規模とカバー範囲は、おそらく全国で見ても唯一無二のネットワークでしょう。保守体制は、今取り組んでいるUSEN<4842>レジなどにも対応していて、24時間体制のコールセンターや駆け付けサービスなども実施しています。

 ここまでの保守体制を敷くことができるのは、USEN<4842>だけだと思っていますし、ここが他社の参入障壁になっているはずですから、アドバンテージとして捉えています。

--この3年間、徹底してBtoBビジネスに取り組んでこられた理由は。

 USEN<4842>自体は、過去にコンテンツビジネスなど多角化経営に踏み込んだ時期もありました。それがいい時もあれば、そうでない時もあった。

 音楽配信ビジネスは私たちにとっての礎で、これがあるからこそ、今のUSEN<4842>があります。現在、店舗向け音楽配信ビジネスの売り上げは横ばいで、減りこそしないものの、増えてもいない。ただ一定の利益は出ていますから、これを維持し、原資にして新たなビジネスに投資していくことが今は必要です。

 その中で、どこにフォーカスし、選択と集中をするとかいったら、USEN<4842>の強みが生かせるBtoB領域だと考えました。ここがブレてしまうと、成長にはつながらないと思います。まだ、成功しているとは思っていませんし、音楽配信に並ぶ、新たなNo.1サービスを作り、育てていくことが最重要課題です。

復職率は9割超、「古い」という自覚がもたらした働き方の適正化

--新規ビジネスを育てる一方、社内の働き方改革もこの3年でかなり進められたとのことですが。

 USEN<4842>は、1961年創業ですから、社内制度も古いままで、仕組みづくりが遅れていた感がありました。そこを適正化しようと3年前から「USEN<4842> WorkStyle」(WorkStyle)という就業環境の整備に取り組んでいます。

 営業担当が多いせいか、どうしても忙しいというイメージを社内外から持たれてしまいます。そうした社員も事実いますが、そういう働き方はいつか破たんしてしまいます。ただ「残業をしないで帰れ!」といっても、さばかなければならない仕事量がそのままでは早くは帰れないんですね。仕事は残っているのに帰れ、なんてこんな矛盾はないですよね。

 そこで、業務のプロセスを見直すことから始めました。現場が報告しているレポート類は、本当に活用されているのか、という部分から考え直し、必要なものだけを残しました。まずは、業務のムダ、ムリ、ムラをなくすことで、業務量を減らす工夫をしています。

--WorkStyleの改革を進める上で、社員の声をどのように取り込んでいますか。

 私自身、以前は支店を束ねる役職についていたので、どういう社員がどこにいて、どんなお客様に囲まれて、私たちの事業が成り立っているのか当時は全部わかっていました。しかし就任から1年もたつと、だんだんわからなくなってくる。これはまずいなと思い、自ら支店を回ることにしました。

 毎月、全国の支店を1~2カ所ずつ回っています。首都圏や政令都市などの支店は役員が訪れる機会も多いですが、なかには2~3人で運営してくれている支店もありますから、業務のコミュニケーションをとりにくいそうした小規模なところを中心に行くようにしています。

 実際に出向いてみると効果てきめんで、ここから人事制度の改定などの案も生まれてきています。例えば、お子さんを持つ社員の時短勤務は以前は小学校就学までの6年間でしたが、卒業までの12年間まで伸ばしています。保育園の補助金制度も認可、無認可ともに実施することで、出産後の女性社員の復職率は9割を超えました。

 もちろん、お子さんを持つ社員だけではなく、全員が該当するWorkStyleの拡充が目的ですから、評価制度や有休奨励日なども見直しています。

--かなりのスピードで制度改革を進められているようですね。

 スピード感を持ってというよりも粛々とやったという感じなのですが。ただやらなければいけないことはほかにもあって、その1つは採用の強化です。学生の数が今後減っていくなか、今後のUSEN<4842>を担う素養を持つ人材確保は必至です。

 今の動向をみていると、学生が入社を希望するのは、大企業かベンチャーに二極化していて、社員数約3000人のUSEN<4842>はちょっと中途半端な立ち位置なのかなと。その中でも「USEN<4842>に入りたい」と思ってもらえるような企業にしていかなければいけません。

 大事なのは“ワクワク感”じゃないかと思っています。USEN<4842>に入れば成長できる、挑戦できるという期待を持ってもらえる企業であること。店舗向け音楽配信という盤石な顧客基盤を持ちつつも、常に新たなことに挑戦するチャレンジ精神は持っていただかないといけません。姿勢としては「でっかいベンチャー企業でありたい」と思っています(笑)。

 現在、取締役会長を務める宇野(康秀氏)が社長を務めていた当時は、そういうワクワク感にあふれていて、私や現在の経営陣など、その時代に入社してきた人材も多い。そのときのような常にムーブメントを作れるような企業にしていきたいと考えています。

--今後の3年間はどのように考えていますか。

 メインの部分は変わらず、BtoB領域でどういうことができるのか、何をやるべきかを掘り下げて推進していこうと思っています。店舗ICTはUSEN<4842>のメイン事業の1つですが、省力化や店舗のコストを下げられるという大きな可能性ももっています。USEN<4842>だけの利益を追求するのはでなく、お取引先のお客様にも喜んでいただける、そういうサポートができる企業になりたいです。

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    最終更新: 2016年12月19日(月)10時19分

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