トランプ氏の勝利、ソーシャルメディアから見る現実との乖離が起きた理由

CNET Japan 2016年12月19日(月)11時32分配信

 前回の大統領選ではオバマ、ロムニー両候補ともソーシャルメディアを駆使したが、自らツイッターを使って有権者に発信した大統領候補は、トランプ次期大統領が初めてだ。

 記者会見をしたりプレスリリースを発行したりすることなく、無料のツイッターで次々に物議を醸す発言をし、メディアに取り上げてもらう。「同氏はツイッターの使い方がうまく、当選したのはツイッターのおかげ」──などと言うツイッターの取締役もいるが、データ科学者の分析によるとトランプ氏は闇雲にツイートしていたわけでなく、トランプ氏以外にも同氏のアカウントからツイートしていた陣営スタッフがおり、すべてトランプ陣営のデジタルメディア戦略によるものだという。

 トランプ陣営が駆使したのはツイッターだけではない。大統領選の最終時期、クリントン陣営がテレビ広告に2億ドル費やす一方、トランプ陣営が費やしたのは、その半分以下で、それよりもデジタル広告に力を入れていた。

 Facebookでは、どのようなコンテンツにユーザーが「いいね」をクリックするかのテストを繰り返し、ユーザーとのエンゲージメント(絆作り)を最適化し、資金集めにも利用した。

ユーザーの嗜好に合わせたFacebookのフィード

 クリントン陣営・支持者は「Facebookでの嘘のニュースがトランプ氏勝利につながった」というが、Facebookのフィードでは、個々のユーザーの嗜好に合わせたコンテンツが表示されるようになっている。プロフィールでの政治的志向や過去の「いいね」「共有」の履歴を基に、そのユーザーが気に入るであろうコンテンツがパーソナライズされる。つまり、右派ユーザのフィードには右派のニュース、左派には左派のニュースが流れるのだ。

 これはウォールストリート紙の実験でも証明されており、「D・トランプ」「H・クリントン」といったトピックに関して流れるコンテンツは、右派(赤)フィードと左派(青)フィードで驚くほど違っている。そのニュースのソースも非常に偏った新興メディアやオピニオンサイトが多く、両派とも「見たいものだけを見ている」のであり、嘘のニュースによって左派(クリントン支持者)が右派(トランプ支持者)に寝返ったわけではないのである。

 Facebookの友達も、政治的志向が似通った人たちが集まるため、共有されるニュースも「やっぱりね」と自分たちの信じていることをさらに強固するものになりがちだ。自分の信条に反するコンテンツを共有すると友達登録を削除(unfriend)されるという事態は、選挙戦中、私の周りでもいくらでも起こっていた。「〇〇の支持者は私を今すぐ削除して」「△△に反対の人はフォローしてくれなくて結構」などという投稿をする人たちも珍しくなかった。

情報源はソーシャルメディア、現実社会との分断

 これはソーシャルメディアに限らず、主流メディアに関しても同じで、右派は主に右派メディア、左派は左派メディアから情報を入手するという政治的志向による消費コンテンツの分断、それによる社会的現実の分断(右派の現実、左派の現実)は、米国ではもう何年も前から続いている。大半が左派である米主流メディアがクリントン勝利を予測していたのも、左派の現実(と左派の願望)を映し出していたからだ。

 今秋、米ギャラップ世論調査では「メディアを少なくともある程度、信じている人」は32%と過去最低の数字を記録した。右派(共和党支持者)で(大半が左派である)メディアを信じている人は、わずか14%である。

 こうした既存メディアへの不信感も、有権者らが情報入手手段としてオンラインメディアに移行する傾向に拍車をかけている。アメリカ人の6割近くが今も「ニュースはテレビで見る」というが、「ニュースはオンラインで」という人も4割に達しており、とくに18~29歳の若者の間では5割に達している。

 オンライン、特にソーシャルメディアが主な情報収集ツールとなるにつれ、「見たいものだけを見る」という傾向は、今後さらに強まるだろう。そして、候補者はソーシャルメディアを駆使できるかが勝敗を左右する大きな鍵となるのだ。

有元美津世(ありもと みつよ)
大学卒業後、日米企業勤務を経て渡米。MBA取得後、独立。16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。現在は投資家。在米30年の後、東南アジアを中心にノマド生活。
著書に、ロングセラーの『英文履歴書の書き方』『面接の英語』(ジャパンタイムズ)の他、『ロジカルイングリッシュ』(ダイヤモンド)、『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『図解米国のソーシャルメディア・ビジネスのしくみ』(あさ出版)など30冊。
新面接の英語
英文履歴書の書き方Ver.3.0
米国ンソーシャルメディア・ビジネスのしくみ
英語でソーシャルメディア!
ロジカルイングリッシュ
Twitter

@getglobal(日本語) @TweetinEng(英語)

Google+ Page
・有元美津世  http://plusya.com/ArimotoMitsuyo(日本語)
・英語でソーシャル!  http://goo.gl/Zu0T6
CNET Japan
もっと見る もっと見る

【あわせて読む】

    最終更新: 2016年12月19日(月)11時32分

    【関連ニュース】

    【コメント】

    • ※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

    【あなたにおススメ】