マーケティングの真髄は「分断されたデータ統合」--アクティブコアの山田社長

CNET Japan 2016年12月20日(火)10時38分配信

 企業への導入が進み、必須となりつつあるマーケティング支援ツール。しかし、CRMや基幹システムが持つ社内データやプライベートDMP<3652>、分析ツール、マーケティングオートメーション(MA)ツールとの連携が不十分であったり、ツールの複雑な操作性から一部の機能しか使われないケースも多い。

 これまでウェブサイト、CRM、リテールといった部署に分断され、個別最適化されてきたさまざまなデータだが、スマートフォン時代にあわせたマーケティング施策を展開する上で、企業が持つ各データの統合が必要になってきている。

 各機能を統合したマーケティングツールを提供するアクティブコアは、もともと手がけていたウェブ解析ツールやレコメンドエンジンを活用し、プライベートDMP<3652>の構築から分析、レコメンド、MAまで一気通貫した「activecore marketing cloud」を提供している。同社代表取締役社長の山田賢治氏に、データの重要性と同社のソリューションについて話を聞いた。

――まずは、アクティブコアの成り立ちを教えてください。

 なりわいは、ウェブサイトのログ解析のASPで、そこからランディングページ(LP)ツールを手がけていました。今で言うA/Bテストに近いもので、バナー表示切り替えやLPの広告の文言を変えるようなツールです。また、キーワードや訪問回数、ウェブサイトの閲覧情報といったログ解析用のデータを活用したレコメンドエンジンを開発しています。専業のASPのベンダーが持つレコメンドエンジンと遜色ない性能を持っています。

 レコメンドエンジンを手かげている他のベンダーでは、必要でないデータは取得していませんが、私たちはトップページからの動きをすべて取得していますので、商品を見ていないユーザーに対してもレコメンドを出すことができます。また、2年前まではウェブの行動データをもとに解析していましたが、今では基幹系システムのPOSデータ、ECの売上データ、ユーザー企業が持つ顧客データ、広告データに加え、例えば新聞広告や折り込みチラシから送客された会員データも紐付けています。こうした広告には、資料請求やハガキに専用の番号が振ってあり、どの媒体から申し込みしたのか判別できるようになっているのです。

 大抵の場合は、EC事業部や通販事業部、CRM事業部とそれぞれ分かれていますが、対象としているのはどれも同じ顧客であることには変わりありません。最初はウェブで送客し、その後は電話からの注文であっても問題ない、それが“顧客単位”ということです。各データから共通事項を見つけ出し、1人の顧客データとしてきちんとひも付けすることで、顧客一人に対して別々のアプローチを統合化する考え方です。スマートフォンが登場したおかげで、自宅に戻ってからPCを立ち上げなくとも情報にアクセスできますし、そのまま電話をかけるといったタッチポイントも増えました。一方で、企業メッセージをスマートフォン、PC、チラシにも届けたいというニーズもあり、同一人物にさまざまなタッチポイントでレコメンドしたいという世の中の流れもあります。

 実際のところ、activecore marketing cloudには、コールセンターのシステムはありませんし、ECパッケージのCMS機能も持っていませんので、本当にオールインワンとは言えません。それでも、複数の部署が絡むマーケティングの底の部分を統合することで、成果もだいぶ変わってくると思います。

――顧客一人一人にフォーカスするには、きちんとしたデータの準備が必要ということですね。

 最初のデータのつなぎ合わせをしっかり準備しておかないと、どこかで限界点が現れますし、システムを組んだ後でまたやり直しが発生してしまいます。例えば、ECサイトで顧客が注文商品をキャンセルした場合、あるデータではたしかにキャンセルされているのに、あるもう一つのデータではキャンセル扱いになってない場合もあり、その顧客にキャンセルした商品に関するレコメンドを出してしまうことがあるのです。

 データのつなぎ合わせといっても数カ月から半年ぐらいで済みますから、まずはユーザーが持つ顧客データとウェブサイトの分析データからMAを進めていき、準備ができ次第、広告データや事業部の売上データをステップバイステップで足していきます。ユーザーの状況に沿いつつも精度を高められますし、ゼロからデータを追加するわけではないので、時間も短縮できるのです。

――データをきちんとつなぎ込んでいる企業は多くないと。

 多くありません。分析や可視化といった部分はちょっと地味かもしれません。ただ、高度なことを言ってるわけではなく、自社の顧客を把握してどのようにアクションすればよいかがわかるのです。ここ数年は、ウェブはウェブだけ、顧客部隊は顧客部隊だけで個別最適化していましたが、スマートフォンの登場で分断したデータを統合する必要性から、大手企業も事業部の組織編成につなげるケースも増えてきました。

――実際にMAを導入した企業では、操作が複雑で導入したけれども結局はメール配信システムしか使ってないという声がありますが。

 既存のMAについて、アップロードのフィールドが少し増えたぐらいで、結局メールのASPと同じような使い方になっているという声は確かによく聞きます。旧来のメール系MAでは、膨大なリストがあり、それを管理するためのマクロ入りエクセルシートが用意されていたりと、MAを活用するスキルが属人的になる傾向がありました。marketing cloudでは、ITに詳しくなくてもボタン操作さえできれば、ツリー型でシナリオを作成できます。もちろん、リスト型を好まれるユーザー向けに、以前のUIも用意しています。

 また、ツリーから「メールを開封しただけのユーザーにもう一度メールを送る」といった指定ができますし、そのシナリオの定義画面に実行結果(例えばコンバージョン率が18%だったなど)も表示されます。プレビューボタンもあり、どういったメールを配信したかを確認できるほか、A/Bテストも実施可能です。ユーザーからは、「AIを使って自動で結果の良い方を配信してほしい」という要望もいただいていますので、2017年に取り組む予定です。

 レポーティングの機能も強化しています。分析用のソフトなどを所有していらっしゃるマーケターの方や、社外の専門機関で分析する場合に向けて、顧客リストを抽出して分析し、属性別に分けるレポートインターフェイスも持っています。担当者の技量に合わせて、管理画面からUIを変更できるので、定義設定とメールレポートだけで簡便に使えますし、顧客ID単位でのデータがほしい場合にも管理画面からダウンロードできます。また、管理職向けに売上金額だけ見られる自動レポーティング機能も備えています。

――顧客との接点で欠かせないSNSとの連携は。

 FacebookやTwitterのAPIを使って、投稿データから解析できるようになっています。Facebookでキャンペーンに反応したグループといった風にTwitter、Instagram、ヤフー<4689>検索などでグルーピングすることも可能です。

 また、「Yahoo! DMP<3652>」や「Google Display Network」などとインターフェイス連携し、パブリックDMP<3652>で広告配信、オーディエンスの拡張もできます。統合したデータをもとにしたプライベートDMP<3652>を連携できますし、統合したデータをSAPの「HANA」といった企業の基幹システムとの連携も可能です。

――marketing cloudの導入はすべてアクティブコアで実施するのですか。

 構築を手伝ってくれる会社は探していますが、今の段階では直接手がけた方が早いですし、大変ですが技術者や営業にもノウハウが蓄積されます。あと、自社で開発していますが、我々が直接導入まで手がけることで、ユーザーからの機能改善に関する声が届きやすいというメリットもあります。

 例えばUIなどは現場のユーザーから意見を聞くことも多くありますが、直にヒアリングできるので素早く改善に結びつけられます。

――既存のシステムからの乗り換え需要もありそうです。

 最近増えてきました。導入したシステムが、実はデータが統合されていなかったり、レコメンドエンジンと呼んではいるものの、アルゴリズムが入っておらずランキングのみでレコメンドされていなかったなどの話が多いです。

 ウェブサイトはすべてデータを取得しているので、1カ月もあればアクティブな顧客のデータが集まります。また、過去数年分のデータもあれば、接点があった顧客にはMAを実施できます。直近のデータから、過去の顧客をウェブサイトに呼び戻すサイクルが出来上がってくるのです。

 ユーザー側は、いち早く実績を作って上層部に成果を報告する必要があります。現時点の実績に、「この部分のデータを入れたらこうなる」という青写真を見せることで、各部署との連携や、データ連携に必要な予算の獲得などが可能となります。

――今後はどういった分野に力を入れますか。

 「こういうケースはこういう風にしたい」といったユーザーからの要望に個別で対応し、対応した機能の標準化を進めていきます。システムも万能ではないので、レポートとして出力するグラフの表示まで要望をいただくことがあります。我々でも何パターンかは用意してますが、「部長が見る場合は、見出しがこうじゃないと分からない」など、できるだけカスタマイズして希望に合うようにしています。

――AIに関してはいかがですか。

 すでに一部で取り組んでいます。AIを使うことで、それぞれの顧客がコンバージョンする時間帯にあわせてのメール配信も可能です。コンバージョンデータがない顧客は閲覧時間や開封時間といったアクティビティの傾向を抽出し、システムで自動判定します。メール担当者は、配信日だけ決めることで、あとはシステムが配信タイミングなどを自動的に最適にして配信していきます。メールの内容も顧客ごとに変更できますし、配信したメールからデータが得られるので、精度も上がります。これは、管理画面上で「最適化」というボタンを押すだけです。

 レコメンドの改善も次の課題です。初回購入した顧客だけに出すレコメンドや、とある商品を購入した顧客専用のレコメンド、金額によってレコメンドの内容を変えるなどたくさん要望をいただきます。「この顧客にはこのレコメンドを表示する」といったところでディープラーニングを活用し、コンバージョン率を上げられると思います。ユーザーからは手間なく成果を上げたいという声もありますので、MAのシナリオについて「次はこのシナリオが良い」と提案してくれるレコメンド機能を考えています。

――デジタルマーケティングに対して認識を変化させる企業は増えてきたのではないでしょうか。

 たしかに認識が変わってきました。ときどき、MAを導入するとすぐに売上が上がると思っているユーザーがいらっしゃいます。確かに売上は一瞬良くなりますが、どこかで高止まりします。一方で、ここを理解しているユーザーも増えてきました。先を見据えて市場を広げていかないと頭打ちになると感じているマネージャー層は増えています。

 ただし、基本的にはMAというとメールの発射台として認識されている感じが若干あります。海外ベンダーも、マーケティングを回していくためのオートマチックエンジンと訴求していますが、去年あたりに導入したユーザーからは「きちんと利用しよう」と気づくところと、「メールASPを拡張しただけ」の認識のところに分かれています。

 ただ、何も手を打たないわけにもいかないので我々に相談したというケースも増えており、そこでメールの発射台から認識を改めるユーザーも多いです。我々はレコメンドエンジンを持っているので、MAと組み合わせたいというユーザーからの相談もあります。また、結構多いパターンとして、当初はMAとレコメンドを実装する案件だったものの、データベースがきちんと整備されておらず、レコメンドもMAも実装できないため、結果的に最初のデータ統合から手掛けるケースですね。

――簡便なUIでAIも活用され、どんどんマーケティングの手間がなくなってくると、営業担当の方でも使えるようになりますね。

 顧客に近い方で抵抗がなければ、マーケティング領域でも活躍できる時代になるのではないでしょうか。ITに精通している人が顧客寄りになるのか、もともと顧客とコミュニケーションする側だった人がツールをマスターするのか。実際のユーザーを見ていて思うのですが、コミュニケ―ションできる人の方がツールを使いこなせる気がしますし、売り上げも上がるでしょう。

 米国では、MAツールを武器に企業を渡り歩くプロのマーケターがいますが、日本でも同様のことが起こると思います。あとは、会社やブランドが好きであったり、顧客が好きで、MAを使って売り上げを最大化するうちにプロになるパターンもあると思います。アルゴリズムを知らなくても関係なく、「こういう人にこれを出したら受け入れられる」といった感覚が分かる人の方が結果が出ると思います。マーケティングノウハウを得た営業の人が最前線に立つでしょう。

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    最終更新: 2016年12月20日(火)10時38分

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