おもてなしを実現するマーケティング、エンゲージメント3原則とは--日本オラクル

CNET Japan 2016年12月22日(木)11時00分配信

 朝日インタラクティブは12月7日、先進的なマーケティング戦略を実践している担当者とマーケティング戦略を経営に活かして実績をあげている企業を表彰し、またデジタルマーケティングの最新事例を紹介する「CNET Japan CMO Award & CNET Japan Conference 2016」を開催した。

 「顧客の動きで見えてきた、今やるべきマーケティング」と題した講演では、日本オラクル<4716> マーケティング・クラウド本部ビジネスディベロップメントのディレクターである渋谷由貴氏が、企業のマーケティングコミュニケーションが目指す理想像として、“ユーザーエンゲージメントの3原則”を紹介した。

“おもてなし”を実現するマーケティングコミュニケーションとは

 企業と顧客の関係は、ファーストコンタクトから始まり、エンゲージメントを育み、コンバージョンが生まれ、ロイヤリティを醸成して関係を深めていく。長い時間を掛けて成長させていく必要がある。

 この点について渋谷氏は、「オラクルでは、マーケティングの負うべき責任範囲は広い。新規獲得だけでなく、クロスセル、アップセル、リテンションなどビジネスの拡張すべての要になっているのが、マーケティングによるエンゲージメントの構築だ」と語る。加えて、「マーケティングにおけるエンゲージメントは、“おもてなし”だ」と語り、このおもてなしを実現することが企業のマーケティングコミュニケーションが目指すべき理想であると指摘した。

 では、この“おもてなし”を実現するマーケティングコミュニケーションはどのように実現するのだろうか。渋谷氏はこれを“エンゲージメント3原則”にまとめて紹介した。つまり、顧客ひとり1人に対して、(1)最適なメッセージを、(2)最適なタイミングで、(3)最適なチャネルで届けることが不可欠だという。この3つのステートメントは、マーケティング担当者であれば誰もが知っている“当たり前のこと”だ。しかし、あえてここで渋谷氏が提言したのは、その“当たり前”が実践できていないことに他ならない。

 「この3つの原則を全て満たしてマーケティングコミュニケーションを実践できている企業はどれくらいいるだろうか。さまざまなテクノロジや手法が生まれているものの、この3つの原則を実現できていると自信を持って言える企業はいないのではないか」と渋谷氏は語る。では、なぜこの“当たり前”が実践できていないのか。渋谷氏はデータをもとにマーケティングコミュニケーションの現実を紹介した。

 米国の調査会社のリサーチによれば、自分の興味関心や関係が薄いメッセージが送られてきたことで、送付元の企業とのコミュニケーションを断ったという人は、96%にも達するのだという。また別の調査では、適切なターゲティングによって顧客にコンタクトができていると自信をもって言えるという企業は、わずか11%に留まるという結果もあった。つまり、ほとんどの企業のマーケターは、適切なターゲティングをしてユーザーにメッセージを送信しているという確信が持てないまま、マーケティングコミュニケーションを行っていることになるのだ。

 「この要因としては、ユーザーが複数のデバイスを活用していることやオフライン・オンラインの混在が激しく、顧客管理の一元化が難しくなっているという状況が挙げられるのではないか」(渋谷氏)。

 加えて、“マイクロモーメント”と呼ばれるように、人々は毎日膨大な量の情報を処理する中で生まれたインスピレーション(商品への興味関心)を元に、ちょっとしたスキマ時間でも調べものを行い、商品購入の検討やアクションを行う。

 渋谷氏は、「こうした環境で企業は、ユーザーが興味関心を持ったタイミングを狙い、その瞬間に生まれたニーズに合った新鮮な情報を、最適な手段で提供することが、マーケティングの成否を分けることになる」と指摘する。マイクロモーメントにおける顧客とのコミュニケーションで競合他社にどのようなアドバンテージを生み出せるかが、ビジネスの勝敗を分けることになるのだ。

“エンゲージメント3原則”をどのように実践するのか

 では、マーケティングで成功を収めている企業は、この“エンゲージメント3原則”をどのように実践しているのか。渋谷氏は、海外の企業事例を紹介しながらそのポイントを整理した。

 まず、「最適なメッセージ」という点で紹介したのは、米国Durham Denimが実践するマーケティングだ。

 同社は、ウェブサイトを構成する要素のうち、ユーザーの属性などに合わせてパーソナライズできる枠や天候など外部要因に合わせてターゲティングを変えられる枠だけでなく、本来であれば素材を固定しているはずのメインビジュアルやキーメッセージまでもをユーザーひとり一人に合わせてパーソナライズしているという。さらにはクリエイティブの展開を変えながら効果を比較検証し、メンテナンスを行っているとした。

 パーソナライズ枠はユーザーのブラウジング履歴に基づき、また外部要因の枠ではユーザーの現在位置に応じて天気や季節に応じたレコメンドをしているとのこと。加えて、ユーザーの商品検索の結果にも、ユーザーの行動履歴を反映させるなど、徹底したパーソナライズを行っている。

 渋谷氏は「最適なタイミング」について、顧客のアクションから経過した時間の長さに応じて購買の可能性が急激に低下するというデータを引き合いに出し解説した。一般的なバッチ処理でユーザーに送信されるフォローメールなどのアプローチは、ユーザーがウェブの閲覧や検索、カートの放棄といったアクションから相当な時間を経過してから行われるが、そのタイミングではユーザーの購入意欲は著しく低下してしまい、効果を期待できない。ユーザーのアクションに対するフォローは、早ければ早いほど効果的なのだ。

 「一般的なITシステムでは、ユーザーへのフォローが行われるのはアクションの翌日になる。しかしそれでは、ユーザーの購入意欲は失われ、別の店舗で購入してしまっているかもしれない。翌日のフォローでは可能性は限りなくゼロになってしまう」(渋谷氏)。

 では、フォローアップが早ければどのような効果が生まれるのか。渋谷氏は、「アクションのあとすぐにフォローができれば、購入意欲は6割程度という高い状態でユーザーに接触することができる。翌日のフォローで失われてしまう売上を想像すれば、速やかなフォローはすぐに売上アップに結び付くのではないか」と語り、フォローアップのスピードアップがビジネスの拡大に直結する可能性を秘めていることを示した。

 また渋谷氏は、ライフイベントに合わせた購買チャンスを企業が把握して適切なアプローチをすることも重要な点に挙げた。例えば誕生日や結婚記念日のプレゼントを購入したいという顧客に対して、遅すぎず、早すぎないタイミングでユーザーが興味のある商品をレコメンドすることが、購買に直結する可能性があるのだ。

 渋谷氏は、こうした購入タイミングを「Golden Selling Window(GSW)」という言葉で説明。GSWの間に送信したメッセージに対する収益の貢献は、一般的なメッセージ送信の場合と比べて非常に大きい。GSWの時期とそうではない時期で収益チャンスの差は、最大で40倍にもなるのだという。「重要なのは、クロスセルなどという味気のない言葉ではなく、顧客にライフイベントを最高の体験にして欲しいということをゴールにして、“おもてなし”のコミュニケーションを創出することだ」(渋谷氏)。

 最後に、渋谷氏は「適切なチャネル」について解説した。顧客が接触するチャネルは多様化の一途を辿り、バラエティに富んでいる。企業は、顧客ひとり一人が利用しているチャネルをピックアップし、メッセージを伝えていかなければならない。

 つまり企業は、顧客が利用しているデバイスやツールを把握し、かつその中でどのデバイスやツールが購買に結び付いているかを理解しておく必要がある。性別、年齢や職業によって、接触するデバイスやツールは大きく異なる。このことを前提としたマーケティングコミュニケーションを考えなくてはならないのだ。

 加えて、顧客が接触しているチャネルが理解できても、実際のマーケティング施策では顧客の反応に合わせてチャネル戦略を最適化しなければならないと渋谷氏は付け加える。

 例えば、メール配信への反応が良い顧客に、大きなライフイベントを控えた時期にアプローチする場合には、過去の購買履歴などをもとにお勧めの商品をチョイスし、メールを起点として反応に応じたディスプレイ広告やSNSの広告、メールによるクロスセルなど配信チャネルをスイッチして顧客への接触を試みる。そうすることで、コミュニケーションを継続的に生み出していくという。

 「このようなアプローチに対して、顧客は企業をコンシェルジュのように感じてくれるのではないか。これこそが、私たちが目指すカスタマーエクスペリエンスに繋がる。こうした顧客体験とのコミュニケーションを、テクノロジの力を借りて、少ないリソースで効率的に生み出していくということが、私たちの目標だ」(渋谷氏)。

CNET Japan
もっと見る もっと見る

【あわせて読む】

    最終更新: 2016年12月22日(木)11時00分

    【関連ニュース】

    【コメント】

    • ※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。