スマホアプリ「POCKET PARCO」による“個客”マーケティング事例--「CMO Award」講演

CNET Japan 2016年12月23日(金)11時00分配信

 朝日インタラクティブが運営する「CNET Japan」は、マーケティング戦略の重要性やマーケティングの意義を訴求する目的で、マーケティング分野でめざましい成果をあげるなどしたマーケティング統括責任者(Chief Marketing Officer:CMO)を毎年選出し、表彰してきた。第4回にあたる2016年の「CMO Award」受賞者は、資生堂<4911>ジャパンで執行役員、マーケティング本部長(JCMO:ジャパンチーフマーケティングオフィサー)を務める音部大輔氏、三井住友<8316>カードでネットビジネス事業部長を務める佐々木丈也氏、三越伊勢丹ホールディングス<3099>で常務執行役員、情報戦略本部長を務める中村守孝氏。

 ここでは、表彰式の後に開催された講演「『POCKET PARCO』~個客理解を通じた『PARCOの未来』」の内容を紹介する。登壇したのは、第3回の受賞者で、スマートフォン用アプリ「POCKET PARCO」によるマーケティングを展開するパルコ<8251>執行役の林直孝氏と、POCKET PARCOのバックグラウンドでデータの収集や分析に使われているプライベートDMP<3652>「TREASURE DMP<3652>」を提供したトレジャーデータのマーケティング担当ディレクター、堀内健后氏である。

“個客”を知るツール「POCKET PARCO」で「TREASURE DMP<3652>」を採用

 パルコ<8251>は各地で商業施設「PARCO」を運営し、約3000あるショップの情報をPOCKET PARCOアプリで配信している。さらに、PARCO来店時のチェックイン、お得情報などクリップ(お気に入り登録)、クーポンやポイント「コイン」の獲得といった機能も同アプリで提供する。ユーザーそれぞれ、つまり“顧客”でなく“個客”のライフスタイルに応じたコミュニケーションを通じ、24時間、いつでも、どこでもPARCOショッピングの体験ができる環境構築を目指してきた。

 2014年にリリースしたPOCKET PARCOは、購買や来店、クリップ、記事閲覧などの履歴を記録している。しかし、従来型リレーショナルデータベース(RDB)では事前にデータの項目定義が必要で、項目の順次追加などが困難であった。そこで、非構造化データの取り扱いが可能なうえ項目追加にも対応している、TREASURE DMPの採用に踏み切った。TREASURE DMP<3652>採用は「“個”客との接点をさらに拡大し、エンゲージメントの向上に大きく貢献」しているという。

 現在、TREASURE DMP<3652>の導入企業は全世界で約250社あり、2016年のCMO Awardを受賞した資生堂<4911>もユーザーである。

来店前から顧客行動をウォッチして「24時間PARCO」を実現

 PARCO店頭での接客の良し悪しが、購買の成否を直接左右することは間違いない。テナントのスタッフによる接客の質が高まれば、購買に結びつくはずだ。ただし、パルコ<8251>は接客が「来店前からすでに始まっている」と考え、店頭の限られたスペースだけでなくウェブでも接客をして、顧客行動分析とパーソナライズの結果を購買へ結びつけようとした。そのための店頭接客とウェブ接客を結びつけるツールが、POCKET PARCOである。

 オンライン通販サイトの場合、顧客がアクセスしてから離脱するまでのページ遷移や閲覧内容といった行動は、ウェブログ解析で簡単につかめる。これに対し、PARCOのような実店舗では、入店後にどのフロアのどの店舗を巡って購買したかなどの回遊データが取得しにくい。

 この課題を解決するためパルコ<8251>は、顧客の行動を来店前、来店時/来店中、来店後の3段階に分け、各段階でPOCKET PARCOを操作してもらうことで顧客行動を可視化、データ化した。具体的には、以下の機能を提供して、来店前から来店後に至る一連の顧客行動をウォッチできるようにしたのだ。

(1)来店前:POCKET PARCOのメインコンテンツであるブログを読んでもらい、お得情報などのクリップを促す。
(2)来店時:PARCOでチェックインしてもらい、入店を把握する。
(3)来店中:購入などのコンバージョンを記録する。
(4)来店後:サービス、つまり接客内容を“星の数”とコメントで評価してもらう。

 こうして得たデータを接客向上につなげ、「メビウスの輪のように、店頭とウェブサイトの双方をループする状態を維持する」ことで、「24時間PARCO」やオムニチャネルプラットフォームを実現させているのだ。

さまざまマーケティング施策を計測

 パルコ<8251>の林氏は、POCKET PARCOの世界観を解説した後、POCKET PARCOで実行した各種マーケティング施策の具体例をいくつか紹介してくれた。

(1)クリップ数と来店数、購入数に相関性が見られることから、クリップ操作に対して付与するポイントを10倍に増やすキャンペーンを実施。その結果、クリップ数が急増し、連動するように売上も増加した。

(2)POCKET PARCOを閲覧した際の位置情報を活用。PARCO店舗から5km圏内の閲覧者だけを対象に、チェックイン操作に対して付与するポイントを増やすキャンペーンを通知したところ、チェックイン数、つまり来店者が増えた。

(3)POCKET PARCOで配信するブログ記事フィードのレコメンデーション精度を、人工知能(AI)を導入して向上した。ユーザーの関心が高いほど情報がクリップされやすくなり、来店や購入につながると考えている。

(4)購入翌日に通知するポイント付与メッセージに、ショッピング評価機能を付けた。来店後に接客内容を評価してもらい、ショップにフィードバックして接客レベル向上を促す考えだ。データを分析したところ、評価が高いほどリピート購入率が高く、顧客満足度と再購入の相関関係が可視化された。

(5)1万円以上の購入者に優待券を進呈するキャンペーンを実施した際、1万円未満の購入後もPARCO店舗にいるユーザーへ同キャンペーンをプッシュ通知した。その結果、通知を受け取ったユーザーの約半数が追加購入をし、通知から再購入までの平均時間は1時間強だった。つまり、買い物直後のタイミングでのプッシュ通知は非常に効果的だという。

フリーWi-FiやIoTもマーケティング活用へ

 さらに、林氏は館内フリー無線LAN(Wi-Fi)サービス「atPARCO Wi-Fi」や気象データなど、モノのインターネット(IoT)デバイスから得られる情報をマーケティングに活用することも検討中とした。

 例えば、来店者の接続するatPARCO Wi-Fiアクセスポイントを追いかけて得た館内での大まかな移動ルートに購買情報などを重ね合わせると、行動パターンをいくつかのタイプに分けられる可能性がある。PARCOの屋上に設置した気温、照度、降雨センサからの情報も、パターン分類に活用できるだろう。そして、各パターンに応じたプッシュ通知などを実行し、施策の精度向上につなげたい考えだ。

 最後に林氏は、過去が変えられないのは当たり前で、これをマイナスにとらえてはならない、と述べた。過去のデータが変わらないからこそ、次につなげる分析が可能だという。データを読み解くことで、よりよい未来を作り出し、顧客の体験を改善したい、とまとめた。

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    最終更新: 2016年12月23日(金)11時00分

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