動画をYouTubeに置いておけばいい時代は終わった--ブライトコーブの提言

CNET Japan 2016年12月28日(水)11時00分配信

 動画配信プラットフォームを展開するブライトコーブは12月1日、ソーシャルビデオ管理/配信ソリューションである「Brightcove Social」を公開した。

 この製品は同社が企業向けに提供している動画配信環境である「Video Cloud」と「Video Marketing Suite」に対する付加機能として位置付けているもの。自社で保有している動画コンテンツ資産を一元管理しながら、YouTube、Facebook、Twitterなど複数のソーシャルメディアに動画を一斉投稿したり、パフォーマンス統計を集約したりできるという。

 大手企業をはじめ、動画コンテンツをデジタルマーケティングの有力な資産として活用する企業は増えてきたが、ブライトコーブは今回の製品を通じて、企業が動画を活用したコンテンツマーケティングの今後に、どのような示唆を投げかけようとしているのか。ブライトコーブのシニアディレクターである北庄司英雄氏と、デジタルマーケティングマネージャである大野耕平氏に話を聞いた。

「動画はYouTubeに置いておけばいい」という時代は終わった

――まずは、ブライトコーブの製品におけるBrightcove Socialの位置づけについて教えてください。

北庄司氏:ブライトコーブは長年に渡って、動画専用のクラウドCMSであるVideo CloudとVideo Marketing Suiteを通じて、動画の管理、再生、動画ポータルの作成、ライブ配信、コンバージョン(インタラクション)の創出、視聴ログ解析、マーケティングツールとの統合・連携などの環境を提供してきました。

 最近では、動画の視聴データをマーケティングオートメーションと連携させることで、コンバージョンへの誘導を効率化したり、ビデオポータルの生成が簡単になったことで、オウンドメディア内にビデオライブラリーを組み込んでエンゲージメントを強化したりといった動きが活発になってきています。

 その中、今回発表したBrightcove Socialは、ソーシャルメディアへのディストリビューション環境を提供するものです。具体的には、Video CloudとVideo Marketing Suiteの機能である「YouTube Sync」「Facebook Sync」「Twitter Sync」というソーシャル連携機能をひとつにまとめた製品です。

 おそらく、デジタルマーケティングの担当者は、YouTubeをはじめとするソーシャルメディアを積極的に活用しているのではないかと思います。そうしたマーケターに対して、オウンドメディアの動画コンテンツではBrightcoveの専用環境を活用し、その資産を生かしたソーシャルメディアへの配信はBrightcove Socialを利用して効率よく行ってもらおうというのが、今回の狙いになります。

――YouTubeへのアップロードだけでなく、FacebookとTwitterを連携先にしているのはなぜでしょうか。

北庄司氏:近年、デジタルマーケティング担当者の動画コンテンツ運用で、YouTube、Facebook、Twitterに配信しているという声は高まっています。企業にとっては運用が大変ですが、ユーザーのメディア接触は分散化して、それに対応する必要はあると思います。YouTubeに置いておけばいいという時代は終わったのです。

――機能的にはどのような特徴があるのでしょうか。

大野氏:管理画面から事前にYouTube、Facebook、Twitterのアカウントを登録してもらうと、裏でAPI連携する仕組みになっており、その後は管理画面から動画コンテンツとアップロード先を選べば複数のソーシャルメディアに同時にアップロードできるようになります。企業によっては複数のYouTubeチャンネルやFacebookページを管理している場合がありますが、それらもすべて登録してアップロード先を選べる仕組みです。動画はすべて各ソーシャルメディアのネイティブプレイヤーで再生されます。

 なお、ソーシャルメディアによって動画の長さを変えたい場合や、長尺の動画を短くしたい場合などには、管理画面から動画編集してアップロードすることが可能です。また自動同期機能を活用すれば、管理画面に動画を登録しただけで自動的に登録されたソーシャルアカウントにも動画を公開することもできます。

――配信後の統計はどのように確認できるのでしょうか。

大野氏:管理画面のダッシュボードでYouTubeとFacebook、そしてBrightcoveのネイティブプレイヤーによる動画再生回数の統計やコメント、いいね、リツイートなどのソーシャルレスポンスの統計を確認できます。TwitterはAPIで再生回数データを公開していないため、この統計には含まれません。

 再生回数のカウントについては独自の基準を設けており、YouTubeでは30秒以上、Facebookでは3秒以上の視聴で1回再生とみなしています。データの反映は各サイトのAPIに依存しているので、時差が生じることがあります。

動画からビジネスのインパクトを生み出すには

――ところで、説明の中で「動画の視聴とマーケティングオートメーションの連携」という点を強調されていますが、具体的にどのようなスキームなのでしょうか。

北庄司氏:たとえば、ある大手電機メーカーのBtoBマーケティングだと、リードジェネレーションを目的として動画を活用しています。事例や製品紹介の動画をオウンドメディアで提供して、その裏ではマーケティングオートメーションのツールを走らせます。そして、視聴した動画の種類や視聴時間に応じて、次にどのようなアクションを促すかをマーケティングオートメーションによって自動的に決めていくのです。

 2016年の動画マーケティングのグローバルなトレンドを振り返ると、インタラクティブ化の拡大とマーケティングオートメーションとの連携が挙げられるのではないかと思います。たとえば、動画再生中にアンケートを組み込んだり、動画視聴後にリードフォームが出現したりして、得られた情報をマーケティングオートメーションに蓄積していくといった仕組みです。こうした仕組みは日本でも導入が進んでいくと思います。

――誰が動画を視聴しているのかを追えるということですね。

北庄司氏:マーケティングオートメーションと連携することで可能になります。ある人が製品紹介動画の87%を視聴したということがわかれば、次のアクションとしてメールを配信して製品検討の後押しをしよう、95%以上視聴していれば、もう営業担当者が電話をしてフォローをしよう。こうしたことがマーケティングオートメーションとの連携によって可能になるのです。

 もはや、動画を作って配信するだけで満足という時代は終わりを告げるのではないかと思います。動画をどのように顧客に提供していくか、そしてそこで得られた情報を、どのようにビジネスの拡大に活用していくかが今後の大きなテーマになると思います。

――動画の視聴データというのは、デジタルマーケティング担当者にとってはなかなか活用が難しいものだと思います。ソーシャルメディアであれば、再生回数のインパクトや拡散数くらいしか参考になりません。どのように活用すればいいのでしょうか。

北庄司氏:再生回数や拡散数がマーケティング活動にどのような貢献をしているかというのは、なかなか見えてこない部分だと思います。たとえば、ピコ太郎の「PPAP」が数億回再生されたというのは確かに凄いことですが、企業のCMが数十万回再生されたことがどのような価値を持っているのかはわからないですよね。再生回数は上司にレポートする時くらいしか意味を持ちません。

 ただ、動画の視聴状況を追うこと自体には大きな意味があると思います。Brightcoveの動画配信では、視聴者がどこで視聴を離脱しているのか、動画を飛ばして観ているのか、どれくらいの割合で視聴を完了しているのかなどがすべて可視化できるのですが、こうしたデータを参考に動画コンテンツそのものを見直せるようになります。コンテンツマーケティングは感覚に頼りがちですが、数値化することで改善のヒントが見えてきます。

 動画のどのようなシーンで離脱率が上がるのか、減るのか。どのような構成だと視聴完了率が下がるのか、上がるのか。サムネイルの内容で再生回数に変化が生まれるのかなどを分析すれば、動画コンテンツそのものを細かくチューニングしてエンゲージメントを高められます。これは制作会社にとっては頭が痛い話ですが(笑)、漫然と作って公開するよりも効果的に動画コンテンツを活用できるようになるのです。

大野氏:かつては、テレビCMのリソースをYouTubeに公開しておけばそれでよかった時代もありました。しかし最近では動画コンテンツも多彩になり、動画制作にコストを掛けるようになった。Brightcoveのような有償サービスの導入企業も増えてきました。

 ただ、「そこまでやる価値ってどこにあるんだっけ?そもそもこれってどれだけの効果があるんだっけ?」という点については、今までなかなか明確になってこなかった部分だと思います。ただ、統計分析機能が充実してきている中で、改めて動画マーケティングの効果を検証し、さまざまな改善を試みる必要があるのではないでしょうか。

動画マーケティングにもカスタマージャーニーの発想が必要

――Brightcove Socialに話を戻すと、「YouTubeで十分なのでは」という声はマーケティング担当者からも聞かれそうですが、あえて専用のツールを開発した狙いはどこにあるのでしょうか。

北庄司氏:私たちとしては、視聴者へのリーチ拡大などや無償で利用できることを背景として「YouTubeは絶対に活用しましょう」と言っています。否定派では決してありません。ただ、アップロードした動画の所有権がGoogleになってしまう点や、アップロードして拡散した後のコントロールが難しい点、視聴環境の担保が一切できない点などは担当者が知っておかなければなりません。

 加えて、オウンドメディアにYouTubeの動画をエンベットして視聴環境を作っている企業も多く見られますが、そうした場合にはせっかく集客した見込み顧客をYouTubeに流出させてしまう可能性があります。

 たとえば、プレイヤーに設置されているYouTubeボタン(YouTubeサイトで動画を視聴するためのボタン)や関連動画のおすすめなどから、YouTubeのサイトにジャンプしてしまえば、視聴者の興味関心が変化してしまいオウンドメディアには戻ってきてくれなくなってしまいます。自社で計測してみたところ、YouTubeサイトに流出したユーザーが戻ってきてくれる割合は1%を切っているのです。

 また、BtoBのマーケティングでYouTube動画を活用している場合に気を付けたいのは、YouTubeの視聴環境です。日本アドバタイザーズ協会のWeb広告研究会が2015年に実施した調査では、依然として20%近くの企業でYouTubeを閲覧できない環境があります。つまりYouTubeを使って動画マーケティングをしようと思っても、肝心のターゲットユーザーは視聴できないわけです。

 重要なのは、オウンドメディアとYouTubeで主従関係を明確にしておくことだと思います。手軽さゆえにYouTubeを主として動画コンテンツの展開を考えがちですが、それにはいくつかの課題があるわけです。オウンドメディアにコンローラブルな動画配信環境を構築して、それを主としてYouTubeを活用してもらうというのが、Brightcove Socialの狙いの大きなところです。

――オウンドメディアでの動画コンテンツ活用を主軸にしたコンテンツマーケティングを考えることが重要ということですね。

大野氏:動画コンテンツも目的によって使い分けの時代がくるのではないかと思います。たとえば、「認知」のフェーズであれば、ブランディング動画や商品サービスの説明動画を、YouTubeなどを活用して広くユーザーにリーチさせることが適していると思います。

 しかし、自社サイトを訪問して「比較検討」や「行動(購買・問合せ)」を行うフェーズでYouTube動画を使うと、そこから見込み顧客が流出してしまう可能性がありますよね。企業が自分で“逃げ道”を用意してしまうのです。そこでは適した動画コンテンツと自社オリジナルの視聴環境を用意する必要があると思います。

 すでに欧米のデジタルマーケティングではスタンダードな考え方で、海外のマーケターの中には、「オウンドメディアにYouTubeを張るのはブランディングとしてよくない」という意見さえ生まれているほどです。日本では広告会社などを中心に依然として「作って満足してしまう」という印象が強く、配信環境の使い分けまではあまり意識していないのかもしれません。

北庄司氏:重要なのは、カスタマージャーニーの中でどのタイミングで、どの環境で、どのような動画コンテンツを視聴すれば、ユーザーに響くかを意識して戦略的に動画コンテンツを活用していく必要があるということです。

 多くの企業が動画コンテンツを数多く制作して、YouTubeチャンネルに蓄積してきている中で、“次の一手をどうすべきか”というテーマについて誰も提案できていない状態にあるのが今だと思います。コストを掛けて蓄積してきた動画コンテンツの資産から、どうやってビジネスのインパクトを生み出すかということが、今後の大きなテーマになるのではないでしょうか。

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    最終更新: 2016年12月28日(水)11時00分

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