自動心肺蘇生マシンやドローンなどで救急救命を支援するEmerTech Labの挑戦

CNET Japan 01月04日(水)10時54分配信

 日本で突然心肺停止に襲われる人の数は驚くべきことに1日200人にものぼるという。だが、救急車が到着するまでに迅速な心肺蘇生と自動体外式除細動器(AED)を使用して適切に処置できれば、社会復帰率は43%と何もしない場合の10倍に――。

 そうしたいざという時に役立つ救急救命技術を開発するプロジェクト「EmerTech Lab」のメンバーが神戸で開催されたITイベント「神戸ITフェスティバル」のセミナーで現在の取り組みを紹介した。

 ドラマや映画でよく見かける心臓マッサージと呼ばれる胸骨圧迫法は人命救助の基本だが、訓練を受け、なおかつ質の高い技術を維持するのが難しい。

 そうした現場の声に応えて開発されたコーチングシステム「CPR Evolution」は、モーションキャプチャに使われる3次元動作解析システムや赤外線を搭載したカメラで心臓マッサージの動作をモニタリングして音声で指導、質も評価される。

 専用カメラとマーカー付グラブとPCだけでどこでも使えて、訓練用のボディがなくてもゴムボールで代用できる。開発したキッセイコムテックの片山貴文氏は「テストモードでは点数が競えるので繰り返し訓練に取り組む意欲につながる」としており、問い合わせも増えているという。

 心臓マッサージと併用して使うのがAED。その設置密度は、今や日本は世界一となったが、救急車が到着する平均8.6分以内に一次救助で使われるのは4%程度で、結果的に92%が死亡を含む社会復帰できない状況に陥っている。

 Coaidoが開発するスマホアプリは、119番に通報すると同時に近くにいる救命救助の知識を持つ人に通知し、さらにAEDの位置がわかるなどの機能を搭載している。アイデアは13年からあり、AEDの設置場所の情報提供や運用に協力する自治体もあるが、インフラにまで展開するには収益モデルなどの課題があり、Coaido代表取締役最高経営責任者(CEO)の玄正慎氏は今後はEmerTech Labを通じて支援者やアイデアを集めていきたいとしている。

 現場で作業する救命士を支援する自動心肺蘇生マシンも開発されている。

 「Clover3000」は搭載されたパッドで心臓マッサージをしながら酸素吸入し、そのまま救急車へ搬送できるオールインワンマシンだ。使用できるのは救命士のみだが、約3割の自治体が導入を進めており、搬送時間なども記録され、現場の改善につなげられる仕様になっている。

 ドローンの活用では、災害救急を目的に現場を空撮するパイロット育成の取り組み、陸路では難しい現場へ救命物資や道具をテイルシッター型の2時間連続飛行が可能な高速ドローンで届けるという2つのアイデアが紹介された。

 前者は空撮事業を手掛けるダイヤサービスが、社会貢献事業として取り組んでいるもので、地域の防災会で飛行訓練などを実施しながら活用のアイデアを考えていくという。後者は元レーシングドライバーのヒロ松下氏を中心に、119番通報でドローンを呼び出せるようにする計画を検討中で、2017年早々に正式に発表される予定だ。

 EmerTech Labのメンバーで救命士の資格を持つ小澤貴裕氏は「現場は新しい道具を使うのは得意ではなく、国の法律やリスクとの兼ね合いを見ながら、アウトソーシング<2427>する方向が連携を検討していきたい」としている。

 活動拠点は、弁護士事務所が併設するソーシャルスタートアップ向けのシェアオフィス内に設けられており、運営する弁護士の小野田峻氏は「EmerTech Labのような救急救命へのICT活用アイデアは必要不可欠でありながら、生死が関わるので新しいことを始めにくかった。そうした状況に少しずつイノベーション<3970>を積み重ね、できるのにやらないという意識を変えるきっかけにしたい」とコメントした。

CNET Japan
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    最終更新: 01月04日(水)10時54分

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