ソニー、赤字は止血完了--有機ELも投入し成長戦略に踏み出す北米市場

CNET Japan 2017年01月07日(土)12時04分配信

 米ラスベガスで開催されているCES 2017において、ソニー<6758> エレクトロニクスデピュティプレジデントの奥田利文氏が、日本のメディアの取材に応じ、同社の北米市場での取り組みなどについて説明した。

テレビ、カメラ、オーディオと事業領域定め年追うごとに強化

 奥田氏は「過去3年は赤字を止血して、事業を立て直す時期だったが、2017年は構造改革から成長モードに変化していく年になる」として、北米市場における事業成長に意欲をみせた。

 奥田氏は「2014年はテレビ事業の再生を行い、家電量販店「ベスト・バイ」において、ショップ・イン・ショップ展開を開始した。これは「ソニー<6758>・エクスペリエンス」と呼ぶもので、4Kテレビなどの説明をしっかりできる環境を作り出した。2015年にはイメージング分野に力を注ぎ、特に「Eマウントレンズ」を通じて、キヤノン<7751>ニコン<7731>にはない提案をした。ここではカメラ専門店の展開も強化した。そして2016年は、オーディオ事業の再構築に取り組んだ。いずれも店頭において、プロミアム価値を届けることを重視し、店も場所も選んで展開してきた。売り上げは決して伸びている状況にはないが、すでに事業は健全化し、利益貢献もできている」と、過去3年の取り組みを振り返った。

 ソニー<6758>・エクスペリエンスは、現在、ベスト・バイの390店舗で展開。「数年前まで350店舗であり、それほど増やしてはいない。出店に関わるコストもあり、これ以上増やしても効果はない。店舗への投資は一段落している」とする。だが「カメラ専門店との連携は強化していきたい。販売員に使ってもらって、販売員のファンを増やしたい」などとした。また、基本的に撤退しているソニー<6758>直営店については「直営店舗を構えてもペイはしない」とし、成長戦略においても直営店展開に再び踏み出す考えがないことを示した。

 その一方で、オンライン販売の強化が課題だとして、「自前でeコマースをやる予定はないが、ヘッドホンやAVレシーバなど、買うモノが決まっているケースや、設置作業が不要なものはオンラインでの購入比率が高い。こうした商材向けにオンライン販売を強化する」と述べた。

 ソニー<6758>では、過去3年間における構造改革の成果をもとに、北米市場において、成長戦略を描く姿勢を示す。

有機ELと液晶は売り分け、「ソニー<6758>画質であれば安心」を打ち出す

 注力するのはテレビ、ホームネットワーク、そしてデジタルカメラだ。テレビ市場については「4Kテレビは、2016年には1200万台規模だったが、2017年には1800万台になると予想されている。特に55型以上はすべて4Kになっていくだろう。また65型、70型以上の市場が伸長しており、65型が品切れを起こす状況になっている。50型のプラズマテレビから、65型、70型に移行していくという買い換え需要が発生しており、55型は2台目需要になっているのが北米市場の現状。100型以上の領域についてはプロジェクタで提案していくことになる。ここはサイズで棲み分けが可能になっており、食い合うことはない」とした上で、「テレビのビジネスに音響をどう組み合わせていくかが、今後の重要な要素になる」と続けた。

 今後の展開のなかで注目されるのが、今回の「CES 2017」で発表した有機ELテレビ「BRAVIA A1E」である。北米市場向けには、主流となる65型のほかに、77型、55型もラインアップし、3モデルを販売することになる。サイズ展開は各国ごとの需要動向をもとに、どのモデルを販売するかを決めるという。

 「これまで、有機ELテレビというとLGエレクトロニクスしかなかったが、『ようやくソニー<6758>が出してきた』というのが市場からの反応である。プラズマテレビの次は有機ELテレビであると考えている人や、薄くて、お洒落なところに関心を持っている人に販売していく」とする。

 その一方で、奥田氏は、「液晶テレビと有機ELテレビは、それぞれの特徴を生かしながら売り分けていく」と語る。「有機ELテレビは、ニュースバリューはあるが、これがすべてではない。映画を視聴するには、引き締まった黒や微妙な色調を再現できる点で有機ELテレビに分があるが、スポーツ観戦をするのならば、大画面で明るい液晶テレビの方がいい。ニーズにあわせて、デバイスの特徴を生かした提案をしていく」とする。

 ソニー<6758>では、有機ELテレビを主軸に据えたコミュニケーションメッセージにはしない考えだ。「ソニー<6758>のテレビであれば、高画質プロセッサ『X1 Extreme』を搭載しており、どのデバイスを活用したテレビでも、ソニー<6758>の画質ならば安心であるというイメージづくりを進めたい」としている。

ホームネットワークの拡大がオーディオ市場を下支え

 ホームオーディオについては、AVレシーバが400ドル以上のレンジでも年間100万台規模の安定的な需要があること、サウンドバーも400ドル以上の市場が成長していること、Wi-Fiスピーカの需要も急速に増加していることなどを指摘。「『Amazon Echo』の広がりもあり、ホームネットワークの拡大が、こうした需要を下支えしている」と述べた。

 さらに「100ドル以上のヘッドホン市場が成長しており、ワイヤレスが必須になっている。Bluetooth対応が主流になっている」などとし、ワイヤレス対応でノイズキャンセルリング機能を搭載した「MDR-1000X」をフラッグシップに他社との差別化を図る考えを示した。

プロ、民生の境目はあいまいに、カメラ開発は使用シーンから"逆算”して考える

 さらにデジタルカメラは、イメージセンサを生産している「熊本テック」が熊本地震により被災。2016年度上期に、デジタルカメラの生産において大きな制約を受けたことに触れながらも、「熊本テックの社員が一丸となって取り組み、イメージセンサの生産量は短期間に回復し、デジタルカメラは年末商戦には出遅れることがなかった。

 市場全体としては、右肩下がりの状況にあるが、レンズ交換式カメラは右肩上がりで成長しており、レンズも増加している。従来は、エントリーモデルが主流の市場であったが、現在は、カメラが好きな人を対象にしたビジネスになっており、さらに、プロフェッショナル向けにも販売が増加している。ハリウッドでも活用されはじめており、プロ用と民生用の製品に境目がなくなってきた。ソニー<6758>は、ここに商機を見いだしたいと考えている。カメラのトレンド変化は、ソニー<6758>のカメラビジネス拡大につながっている。解像度、感度、動画撮影などの強みを生かした提案を進めたい」とした。

 さらに「コミュニティへの取り組みが今後は重要になる。購入後のユーザーに対し、デジタルカメラ『α』をいかに楽しく使ってもらうかといったサポート強化や、プロフェッショナル向けのサポートも重要である。商品開発部門と連動して、販売およびマーケティング手法を検討したり、イベントを企画するといったことも考えたい」と述べた。

 「ユーザーが使っている現場にエンジニアが出向き、直接、使っている様子をみたり、声を聞いたりといった活動をしている。先日も、ボストンの撮影現場にエンジニアが出向き、そこで、実際の仕事で使っている人が不満に思っていることを聞いた。ボタンの位置1つをとっても、エンドユーザーから要望が出てくる。従来のモノづくりは、不特定多数の人に対して、ソニー<6758>が提案をする手法であったが、カメラに対するトレンドが変化したことで、顧客が使っているシーンから逆算をして商品開発をすることがこれからは大切になってくる。顧客視点でモノづくりをしていくことが必要である」と語った。

 奥田氏は、2016年の年末商戦の取り組み成果についても振り返り、「北米市場においては、ホームエンタテインメント商品では、テレビ、サウンドバー、ヘッドホン、デジタルカメラ4つの製品に注力した」と前置きし、「1500ドル以上の4Kテレビで26%のシェアを獲得し、75型以上では46%のシェアを獲得した。高価格帯でシェアを獲得している。また、レンズ交換式カメラでは14%のシェアを獲得。フルフレームカメラでは20%を獲得しており、キヤノン<7751>ニコン<7731>に続く、3番目のブランドとして認知されてきている。また、サウンドバーでは、400ドル以上の市場において15%のシェアを獲得し、100ドル以上のヘッドホンでは、8%のシェアを獲得した。この市場に関しては、これからビジネスを伸ばす余地がある」と総括した。

 過去3年の赤字の止血を完了し、いよいよ北米市場においても成長戦略に踏み出すソニー<6758>。2017年以降は、北米市場における「ソニーファン」づくりを推進しながら、市場での存在感を高める考えだ。

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    最終更新: 2017年01月07日(土)12時04分

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