LINE砂金氏、チャットボットは「カスタマーサポートの定石になる」--CNET Japan Conference 2016

CNET Japan 2017年01月11日(水)09時00分配信

 朝日インタラクティブは2016年12月21日、チャットボットビジネスやコミュニケーションの可能性を探るイベント「CNET Japan Conference 2016 -チャットボットで加速するビジネスとコミュニケーション-」を開催した。ここでは、LINE<3938> ビジネスプラットフォーム事業室 戦略企画担当ディレクターである砂金信一郎氏が語った、チャットボットが生み出す消費者の体験価値についてお伝えする。

チャットボットに必要なキャラクター性

 元日本マイクロソフトのエバンジェリストとして知られる砂金氏。現在はLINE<3938>でビジネスプラットフォームを展開しているが、同社に転職してから「女子高生AI(人工知能)りんな」の素晴らしさに改めて気付いたという。Microsoftの各技術を元に開発した"りんな"を稼働させるプラットフォームとしてLINE<3938>を選択した理由は、「(チャットボットを稼働させる上で重要なのは)アルゴリズムではなく対話ログデータ。LINE<3938>は協力的なユーザーがいる」(砂金氏)からだと説明した。

 すでに、りんなはLINE<3938>などを通じて450万人超の"お友達"がいる。積極的な広告促進などをせずに、ここまで盛り上がった理由は、りんなが会話を楽しもうとするKPI(重要業績評価指標)を持たせているからだ。AIが人間らしく振る舞うのではなく、会話自体を盛り上げるラップ機能や俳句機能などを盛り込むことで、利用者はりんなを相手に自然と会話を楽しんでしまう。他方で、砂金氏は2016年時点で汎用的なAIチャットボットの実現は難しいと語る。りんなは対話型エンジンを利用して、"正しい会話"ではなく"楽しい会話"に努めていたため、450万人という結果につながったのだろう。

 チャットボットのビジネス展開においては、「対話型エンジンとサービスでは完結せず、運用における苦労と工夫が必要」と砂金氏は説明する。りんなは、多くのゲーミフィケーション的な趣向を凝らした機能を実装することで、利用者を飽きさせないことに成功しているが、システムを実装して利用者へサービス提供するだけではビジネスとして成功しない。そこには、チャットボットで顧客の問題を解決する、自社のブランド構築を図る、といった目的が必要だという。

 たとえばローソン<2651>は、公式LINE<3938>アカウント「ローソンクルー あきこちゃん」でりんなのAPIを利用し、新製品情報を発信したり、個別クーポンを配信したりして顧客の来店を促している。先の例に照らし合わせれば、ローソン<2651>は"間接的な広告展開と収集力向上"を実現しているが、チャットボットを展開する上で重要なのは「キャラクター」だ。

 りんなは、リア充ではなく腐女子系女子高生というキャラクターを、あきこちゃんはローソン<2651>の店舗で働くアルバイトスタッフという設定を付加させることで、「キャラクター性を持たせると(人は)会話しやすくなる」と砂金氏。他社からキャラクターの版権購入やタレントを立てるといった戦略をとりつつ、「ファンを獲得するための(具体的な)提案」が必要だと語る。

カスタマーサポートとチャットボットの相性とは

 現在LINE<3938>は、日本人口の53%におよぶ6800万人超の利用者と、71%のDAU(デイリーアクティブユーザー)を誇る。さらに男女15歳から69歳までの世代別アンケート調査によれば、すべての年代で9割が毎月LINE<3938>を利用しているという。砂金氏は、「エンジニアならSlack(開発者に人気のチームコミュニケーションツール)が1番と考えるが、自分が使っているものがベストというのは誤った認識」と語り、すでにLINE<3938>はコミュニケーション基盤として認知されていることを聴講者にアピールした。

 企業におけるLINE<3938>という基盤への注目度も高まっており、すでにいくつかの導入事例があるという。たとえば、ヤマト<1967>運輸は配達状況の確認や再配達の日時変更といった顧客対応をLINE<3938>経由で可能にしている。「(再配達の連絡を)電話やメールでは返さない人がいるため、(荷物が営業所に溜まって)困っている。だが、LINE<3938>で連絡すると返事が返ってくる傾向が高い」(砂金氏)ため、同社は連絡業務や荷物管理といった業務改善とコスト削減を実現したという。さらに「利用者が便利になる」ことも重要だと砂金氏は強調した。

 2つめの事例はナビタイムジャパン。チャットボットを利用した乗り換え検索サービスをLINE<3938>上で展開している。Microsoft Cognitive ServicesのLUIS(Language Understanding Intelligence Service)を用いたボットアカウントが、乗り換えに必要な経路や時刻表、運行情報などを教えてくれるというもの。ただし、砂金氏は「ネイティブアプリで調べる前に、チャットボットが話しかけるプロアクティブなサービスなら素晴らしい。我々も解答にたどり着いていないが、行動履歴や個人的特性を取得すれば、よりユーザーフレンドリーな対話インターフェースに進化するという仮説がある」と語り、今後の改善を目指すとした。

 3つめの事例は、LINE<3938>自身が導入した電子決済サービス「LINE<3938> Pay」のカスタマーサポート。同社は電話でのサポートをテキストチャットに切り替えることで、回答による顧客満足度を、当初の67%から89%まで改善したという。「(チャットボットによる)ブランド構築は何をもって成功と見なすか指標が難しい。だが、テキストチャットで問い合わせ、チャットボットや人間が回答する分野は、効果が分かりやすい」(砂金氏)と説明しつつ、学習データやFAQを増加し、満足度を高めたことを明かした。

 さらに、2017年春ごろから展開を始める法人向けカスタマーサポートサービス「LINE<3938> Customer Connect」を紹介。顧客からの問い合わせに対して、LINE<3938>上での対応を可能にしつつ、カスタマーセンターによる有人対応と、事前に用意したFAQを元に、チャットボットによる自動応答を相互に切り替える。顧客が満足しなかった質問を蓄積し、機械学習などを通じてFAQを更新するといった継続的な向上も図られている。

 すでに数社が段階的な試験運用を開始しており、アスクル<2678>が運営するECサイト「LOHACO」では、チャットボットの「マナミさん」が稼働中。「日本人はチャットボットに何を話しかけるべきか迷うため、よくある質問をリッチメニューにプリセットし、会話のきっかけを生み出す」(砂金氏)という。夢の街創造委員会<2484>の「出前館 on LINE<3938>」や、AIR DOの「AIRDO ONLINE Service」といった事例を紹介つつ、今後このようなカスタマーサポート業務をチャットボットが担うことは「定石になる」と砂金氏は予想した。

 LINE<3938>は「ビジネスツービジネスやビジネスツーカスタマー、ブランド構築など、互いの距離を縮めることをビジョンに掲げている」(砂金氏)として、今後もチャットボットを通じたビジネス展開を加速させると話を締めた。

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    最終更新: 2017年01月11日(水)09時00分

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