フードデリバリー、市場拡大と生き残りのカギは--混戦模様の香港に学ぶ

CNET Japan 2017年08月13日(日)08時00分配信

 海外では人気サービスとして定着しつつある、オンラインのフードデリバリーサービス。日本でも少しずつ普及が進む中、2016年9月に日本上陸した「Uber Eats」や、2017年7月にサービスをスタートした「LINE<3938> デリマ」など、飲食店のデリバリー業務を代行する話題のサービスが続々と登場している。

 しかし、日本でのフードデリバリー市場の拡大を阻んでいるのは、便利なコンビニエンスストアが全国どこにでもあるという点にある。そして、大量の注文をスピーディにこなさなければならないことへの懸念や、人員確保の観点から、抵抗感を抱える飲食店が少なくないようだ。

 そこで今回は、そんな日本市場に蔓延する閉塞感の打開につながるかもしれない、老舗店や話題のお店を取り込みながら発展を続ける、香港のデリバリーサービスの最新事情を取り上げたい。

香港の出前アプリは三強時代に突入

 香港では、イギリス発「Deliveroo」、ドイツ発「Foodpanda」、アメリカ発「Uber Eats」のという3つのデリバリー大手のシェアが5割近くを占めると言われている。国際市場調査を手掛けるユーロモニターによれば、香港の2016年のフードデリバリーマーケットは、5500万USドル(約60億円)規模程度とみられる。香港人が開発した地元発の出前アプリ「Orderfood」がマーケットに新規参入し注目を集めるなど、混戦模様が展開されている。

 飲食店は、ますます競合が激しくなっていく中、売上の増加や潜在客の掘り起こしなどの観点から導入を推進。最低賃金や店舗賃料の上昇などコストが上がる中、自社で配達専用の人材を雇用・管理する必要がなく、しかも効率よく配達することができる点で、デリバリーのアウトソーシング<2427>はウェルカムという状況のようだ。

 利用者側からすれば、どのサービスもアプリを使って気軽に利用できることが魅力的だ。中華料理や洋食の出前はもちろん、世界各国から人が集まる香港ならではのインターナショナルなラインアップとなっている。日本文化の人気が高いこともあり、寿司などの和食も多数デリバリーに対応している。

 それぞれのレストランのサムネイルには、今オーダーすると何分で配達されるかが示され、デリバリー状況を可視化できる。オーダーから決済まですべてがオンライン上で完結し、配達員に渡す小銭がなく慌てる必要もない。

 最近では、季節に応じて祭祀料理も登場し、中秋節に必須の「月餅(Moon Cake)」をはじめ、何でも出前が可能な時代へと変化している。また、端午節に開催されるドラゴンボートカーニバルの季節には、“○○ビーチの中央付近の応援席パラソルの下に” と自分たちの居場所を教えさえすれば、その場所に届けてくれるというサービスまで登場。海水浴場で腰を下ろして、ピザやポテト、ビールを楽しむのはもちろん、ボートの上に届いた料理を乗せて出航するチームまで現れた。

日本とは異なる、香港ならではの出前事情

 宅配文化が香港で発展している理由には、国土が狭く、アパート中心の密集した居住環境にある。中国投資家の旺盛な需要から高騰を続ける家賃に対応するため、夫婦共働きは当たり前。そして住み込みのヘルパーを雇うことも多く、若者は特に極小キッチンで自炊するという習慣を持たないようだ。一般の家庭でも朝昼夜すべて外食というケースは珍しくない。

 香港人の“食への熱意”には感嘆させられることが多いが、ランチにお弁当を持参するとしても、住み込みのヘルパーが作ったものという場合がほとんどだ。

 また「外賣(Take Away)」文化も盛んで、これまでは事前に飲食店で入手したメニューをもとに電話注文し、配達は店の従業員が行っていた。飲食店が雇用するスタッフが徒歩で何軒もビルを回り、わが家に到着した頃には麺は伸びきっていることもしばしば。現金での決済も面倒だった。出前アプリの出現により、時間の制約なく、食べたいものを食べることが可能になり、より出前文化が成熟していくこととなった。

激しくなるサービス競争、評判が高いレストランの取り込みへ

 オンラインデリバリーサービスが拡大していく中、顧客を獲得していくための激しいサービス競争も生まれ始めた。各社は、評判が高い老舗レストランを呼び水にして自社サービスの価値を高め、個人経営などの小規模レストランや話題の新店の加盟を促す戦略を取り始めている。

 「Deliveroo」では、ガチョウのローストやピータンで有名な広東料理の「鏞記」や、ワンタン麺の有名店「池記雲呑麺家」、粥や麺の老舗「黄枝記」と独占提携パートナーを締結した。一方「Foodpanda」は、広東料理の名店「鴻星海鮮酒家」やモダンチャイニーズの有名店「大官廳」、米線(ライスヌードル)の「香港仔南記粉麵」と独占契約を結んでいる。後発の「Uber Eats」も、これらに続く動きを見せている。各アプリがどのように差別化を図れるかが、勝敗の行方を左右しそうだ。

 デリバリー市場が成熟していない現在の日本は、競合が少なく大きなチャンスでもある。これからの時代、スマホやアプリを活用して、今まで考えもしなかったような方法で事業を伸ばしていける可能性がある。これまで出前を提供していなかったレストランや、近所のみに限定して出前をしていた飲食店にとっては新たな収入源となり、レストラン側にもメリットが見込まれる。香港では実際に、20~30%の伸びを見せている店舗もあるようだ。

 中食産業進出を模索している企業は、これまでの認識をいったんリセットして、オンラインフードデリバリーの可能性も検討してみる余地はある。日本のフードサービス業界にとって、新たな成長の光になるかもしれない。

(編集協力:岡徳之)

CNET Japan
もっと見る もっと見る

【あわせて読む】

    最終更新: 2017年08月13日(日)08時00分

    【関連ニュース】

    【コメント】

    • ※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

    【あなたにおススメ】