ロボットホームが挑む不動産業界の透明化--IoTが賃貸住宅経営を変える

CNET Japan 2017年11月14日(火)16時08分配信

 賃貸住宅経営がIoT機器の登場により、大きく変わろうとしている。電話やメールが主だった大家、管理会社、入居者のやり取りがチャット化され、部屋には外出先からでも操作できるLED照明やカメラを完備。セキュリティセンサやスマートキーによる防犯性能も整える。

 従来の賃貸住宅とは明らかな差別化が図られ、オーナー、管理会社、入居者のすべてにメリットを与えられる。IoT機器開発を行う「ロボットホーム」を立ち上げ、誰でも手軽にIoTの賃貸住宅を提供できる「賃貸住宅キット」をすでに2000台以上提供している、ロボットホーム取締役兼インベスターズクラウド<1435>CTO松園勝喜氏に、IoT機器がもたらす賃貸経営の変化と、新たに挑む“家賃の見える化”について聞いた。

オーナー、管理会社、入居者すべてにメリットがある賃貸住宅キットとは

――賃貸住宅キットの内容について教えてください。

 賃貸住宅キットは、タブレット型ゲートウェイの「CENTRAL CONTROLLER」、窓の開閉を検知する「WINDOW SECURITY」、機器を遠隔操作できるリモコン「NATURE SENSOR REMOTE CONTROLLER」、4つの方法で解錠できる「SMART LOCK」、遠隔操作でライト<1926>の調光調色ができる「SMART LIGHT」、外出先からも受話応答が可能な「DOOR PHONE」のIoTデバイス群です。いずれもロボットホーム内で企画、開発、設計し、システム作りまでを手がけています。

 通常のスマートハウス機器というと、スマートロックや防犯センサといったガジェットを思い浮かべる方が多いと思いますが、賃貸住宅キットでは、そうした機器を用意しつつ、タブレットを使って管理会社やオーナーと簡単にやりとりできる環境を整えていることが特徴です。

 従来、入居者と管理会社、オーナーのやりとりは電話や紙ベースのものが中心でしたが、賃貸住宅キットではチャットがベースになります。入居者は「窓の開け閉めがスムーズじゃない」などちょっとした不具合を感じていても、管理会社に連絡することがおっくうで、我慢してしまうケースが多いんですね。

 チャットであれば24時間問い合わせ受付ができますし、対応もスムーズ。同様に管理会社側も家賃の入金状況などがチャットで管理できますから、入居者、管理会社、オーナーのすべての人にメリットを感じてもらえるシステムだと思います。

――チャットを採用する理由は時間を問わず連絡がとれるところですか。

 それももちろんですが、ログとして残せる部分が大きいですね。電話や紙といったアナログベースのものだと、入居者がどんなことで困っているか、オーナーが知りたいのはどんなことかといった、普段のやり取りが残せていませんでした。それをログとして保存することで、機械学習させ、AI化も進めています。

 例えば、鍵をなくしてしまって家に入れないというのは、賃貸住宅でよくあるトラブルの1つですが、賃貸住宅キットを導入していれば、スマートフォンのアプリから「鍵をなくした」とチャットで問いかけることで、スマートロックの暗証番号が返答され、自宅に入ることができます。こうした今までにない入居体験を提供できるのが賃貸住宅キットのメリットです。

LPWAと環境センサで実現する“家賃の見える化”

――すべての機器を自社で開発されているとのことですが。

 現在複数の機器をWi-FiとBluetoothで接続しています。ひと言にワイヤレス通信といっても電波干渉があったり、1台つなぐと別の1台が切れてしまったりと、すべてをつなげて使うのは簡単ではなく、その解決のために自社開発しています。

 賃貸住宅キットは、複数の機器が同時に動いて初めてメリットがあるので、すべてをゲートウェイにつなげるまでに4カ月くらいかかりました。

 今は、バッテリの消耗について研究開発を進めていて、人間が発生する力を利用して発電する仕組みを考えています。例えばドアの開閉が動力<1432>になって、スマートロックを動かすなど、電池と人間による動力<1432>のハイブリッドで動かせるようにしていきたいと考えています。

 現在でも、機器によっては常時接続をしないなど、十分に電池消費は押さえていますが、さらに抑えられる仕組みを考えていく必要があります。

 スマートハウス対応機器は、昨今各社から発売されていますが、賃貸住宅キットの強みは、IoT機器を不動産セクターの企業が作ったことだと思っています。不動産をわかっているからこそ、どう活用すればいいのかがわかる。その強みを十分にいかしながら、IoT機器の開発や改良に取り組んでいきます。

――各機器の接続性の良さや、電池消費などが他社のスマートハウスとの違いになりますか。

 それらも差別化の1つですが、圧倒的な差別化としての取り組みは、IoT機器向け無線通信技術であるLPWA(Low Power Wide Area)を利用した環境センサによるデータ収集です。実証実験の段階ですが、宅配ボックスの中にLPWAと環境センサを搭載し、温度、湿度、照度、振動などを計測し、現在データを収集しています。

 これらのデータをロボットホームでは、家賃の推定に利用していこうと考えています。現在でも「家賃推定エンジン」を提供していていますが、その精度をさらに上げるためにLPWAを活用します。

 アパートの家賃は、立地と面積の2つによって決定されるケースがほとんどでしたが、今回の実証実験では、周囲の騒音や振動、PM2.5の数値など、住まいを取り巻く環境が数値でわかるようになります。例えば国道から近いといっても、振動の強弱や音の大小によって、住み心地はかなり変わります。そうしたことを加味することで、家賃の適正価格を出していこうという試みです。

 この環境データに周辺の病院や学校などの施設情報、さらに災害情報などのオープンデータを組み合わせることで、今までにはできなかった家賃の理由付けができるようになります。

 賃貸住宅キットを導入すると、今後オーナーはどんな属性の人が住んでいるのか、どんな人が入居の可能性が高いのか、内見にはどんな人が来ているのかというデータまで見られるようになります。

 今までは、空室の期間が長くなってしまったので家賃を下げていたオーナーの方も多かったと思いますが、その値下げは本当に必要かどうかを見極められるようになります。

――更新時期がきたから、家賃を上げる、下げるといった形ではなくなりますか。

 時期的な要因ではなくて証拠があった上で家賃を決めることが可能になります。インベスターズクラウド<1435>が扱っているのは投資物件になりますから、きちんとした根拠を元に算定した方が安心感もあります。

 不動産は人間の知見が頼る部分が多くて、知見が多い人ほど有利という状況になってしまいがちです。その部分をITに置き換えることで、不動産業界を変えていきたいと思っています。

 不動産関連会社が抱えるデータと居住者における情報の非対称性、業務の効率化、ユーザーに対する付加価値情報の提供。この3つはITによって大きく変わることができる分野だと思っていますので、ここにメスを入れていきたいですね。

開発で重視しているのはスピード感とデザイン

――不動産業界をITで変えていくためには、エンジニアの力があってこそだと思いますが。

 当社グループでは現在68名のエンジニアがいますが、同時に力を入れているのはデザイン部門です。デザインを中心に機能を創造しているのが、他社と大きく違うところだと思います。社内には不動産セクターの人間もいますし、エンジニアもいますが、全員がデザインドリブンを意識しています。

 ただ、それ以上に意識しているのはスピード感で、朝決めたことが夕方には違う方向性になっていることもよくあります。1週間ですべてが変わることもありますから、進めながら、柔軟に変えていくことで、スピード感のある開発を目指しています。

 「常に完璧を求めない」とは社内でもよくいっていて、そのため、コミュニケーションはかなり取っている方だと思います。情報の伝達はチャットも使いますが、それは文字として残すためで、あくまでも直接話すことが基本です。

――今後の取り組みについて教えてください。

 LPWAを使った環境データセンサの取得は、今後の常識になると思っていて、ベースとして押さえていきます。それ以上に考えているのは賃貸住宅キットのラインアップを増やすこと。すでに開発中のものもありますし、2018年には新たな機器を紹介できると思います。オーナーがメリットになる機能は、すでに取り込めていると思うので、入居者のメリットになるようなものをどんどん増やしていきたいと思います。

 同時にずっと追求しているのは業務効率化です。先述しましたが、人間の知見に頼っていると品質の統一が難しいですよね。それをサポートするのがAIやIoTだと思うので、それらを活用した業務のサポートツールを作っていきたいと思います。

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    最終更新: 2017年11月14日(火)16時08分

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