セクハラ問題もなんのその--サンフランシスコで100人の女性起業家が結集

ZDNet Japan 2017年08月11日(金)11時55分配信

 Dell Technologiesは7月中旬、米サンフランシスコで女性起業家支援を目的とした年次イベント「Dell Women’s Entrepreneurship Network(DWEN)」を開催した。今年で8回目となるイベントには、日本から参加した3人を含め、世界20カ国から約100人の女性起業家が集まった。

 折しもシリコンバレーのベンチャーキャピタルによる女性起業家へのセクハラ問題が露呈しており、そのお膝元で開催されたイベントはこれまで以上の盛り上がりとなった。

VCの3%しか女性起業家に流れていない

 今年参加した100人は、防衛・航空、建築などこれまで男性が独占してきたような産業を含む21の業界で起業した女性たち。合計の売上高は1億6000万ドルに上る。同イベントを8年前に立ち上げたKaren Quintos氏は、「女性起業家はイノベーション、雇用創出、経済成長のエンジンだ」と賞賛した。ベンチャー企業の雇用創出は全体の70%に及ぶが、この比率は一部途上国では90%に達しているという。

 雇用創出はDellが2015年、国連に賛同してサポートを表明した持続可能な開発目標(SDGs)のGoal 8(目標8:すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する)にも掲げられている。

 Dellは国連、それに政治家に向けた取り組みを積極的に進めており、米国では女性起業家支援を強化するポリシーに政治家や企業の最高経営責任者(CEO)からの署名を取り付けた。Trump大統領、娘のIvanka Trump氏も支持しているという。

 7月に入り、世界銀行が女性の起業家支援として10億ドルを投じるプログラム「Women Entrepreneurs Finance Initiative」を発表するなど、機運は少しずつだが高まっている。

 それでもまだまだ公平ではない。「全ての起業家が公平に競争できる――重要なことだが、まだ実現していない」とQuintos氏。VCが女性起業家に投資する金額は全体のわずか3%。それに加えて、6月にはセクハラ問題も浮上した。

 今年のDWENのテーマは「リアルな解決策」。3日間のイベントでは、デジタルトランスフォーメーション、元英国政府で保健大臣を務めたNicola Blackwood氏が英国のEU離脱を説明するなど国際政治・経済動向をテーマにしたセッションなどがゼネラルセッションに選ばれた。これに加え、ファイナンスと資金調達、規制、マーケティング、技術の4つのテーマ別トラックが設けられた。


DWENには世界20カ国から100人の女性起業家が集まった。3日間に渡り、様々なテーマでセッションが開かれた。

日本女性は頑張りすぎる?

 オープニングのゼネラルセッションに登場したのはNely Galan氏、”セルフメード(self made)”をテーマに女性たちを励ました。

 Galan氏はキューバの貧しい移民で女性は結婚という価値観を持つ両親に育てられた。成績優秀、奨学金で進学したが、ある日学校の体制に疑問をもち雑誌「Seventeen」に送った記事がきっかけで、学生ながらゲストエディターとして起用された。その後もFOXのリアリティシリーズ「The Swan」を手がけるなど、エンターテインメント業界で活躍した。

 Galan氏は自分の挑戦体験を笑い話のようにシェアしながら、「白馬の王子はいない」「失敗と恐れを味方につけよう」「痛みこそ自分の本物のブランドにつながる道だ」「まずは自分を愛し、自分を選ぼう」「靴を買うなら家を買え」などとアドバイスした。例えば、会場から”プレゼンで緊張する”という意見が出ると、「演劇のスキルは役に立つ。誰かの声になりきって堂々と話すことができると思う」とGalan氏。

 「これからの時代は、ラテン、アジア、アフリカなどの女性が購買、ビジネスで大きな役割を握っている」とGalan氏、新しい市場のけん引役として女性たちに自分の人生を設計する態度の大切さをアピールした。

 イベントに参加したフリーランスマッチングサービスWaris(ワリス)の共同創業者兼代表取締役、田中美和氏は、「自分を選ぶという言葉が印象的だった。私を含めて日本の女性は控えめ。自分自身がプロフェッショナルであるために、まずは自分をケアしようというアドバイスがよかった」と語る。

 Warisに登録する女性の7割が子供を持つ母だが、自分より子供、家庭を優先させる傾向が強いという。「全部自分がやらなきゃ、完璧にやらなきゃと無理している」と田中氏、今回の学びを自分、そして登録する女性たちにも反映させることができれば、と願う。

 参加者の一人、Fiona Blades氏は、マーケティング、広告業界での知識を生かして、マーケティングのインパクトを測定するMESH Experienceをロンドンで創業、ニューヨーク、ブラジル、シンガポールにも拡大した。Delta Airlines、LGなど約30社を顧客にもち、11年目を迎えた今年、オーストラリアでもサービス開始するなどさらなる拡大を図っている。

 野心的な女性起業家たちの中にあって、日本からの参加者はどちらかというと控え目だ。先述の田中氏のほか、遅延型アレルギー検査の先駆者的存在アンブロシアを10年前に創業した志賀惠子氏、「いいお医者さんネット」などデジタルを駆使して医師と患者を支援するキュアグレースを創業した武臣ゆみ氏が参加したが、共に大きな会社を作ろうと思って起業したわけではない。

 大手企業に勤務していても女性が長期的に勤めても地位が上がらない、居づらいなどの環境から、自分の会社を持つに至ったという共通背景を持つ。DWENに初参加した武臣氏は、参加者たちの「会社を大きくしよう、儲けよう」という直接的な表現に驚きながらも、「創業10年目にして、もっと儲けよう、経営をしようと決意しました」と語った。

セクハラ問題を超えて

 表向きのテーマとは別に、女性起業家に対するセクハラ問題が随所で話題となった。「学生たちから、セクハラはあるのか?と聞かれる」とステージに立ったDell Technologiesで社内起業家を務めるElizabeth Gore氏は残念がる。

 起業家になるための具体的な関心よりもセクハラを懸念する少女たちの動きに警笛を鳴らしながらも、会場に向かって「男女平等を超えて、もっと儲けよう。役員や議会でもっと女性が席を取っていい。成功した女性起業家として、胸を張ろう」と呼び掛けた。

 自費出版を支援するデジタル出版プラットフォーム「Blurb」など、複数の企業を創業したEileen Gittins氏は、シリコンバレーのシリアル起業家。不平等を身にしみて感じている。

 ドットコムバブル崩壊後に職を失ったGittins氏、「出版業界は恐ろしく遅れている」とクレジットカードの借り入れでスタートしたBlurbを、年7500万ドルを売り上げるグローバルに成長させた。CEOの座を譲った後、あるイベントで少女たちにどうやったら起業できるのか、リーダーになれるのかという質問を受けたことをきっかけに、若い女性がすぐに起業できる”スターターキット”「Bossygrl」を思いついた。

 「2015年、米国ではベンチャー投資の93%が男性に注がれていると分かった時、これまでのビジネスキャリアの全てを結集させてできることがあると思った。Bossygrlはものの15分でストアを立ち上げることができ、”今すぐ”に起業できる」と語る。さらには、売り上げの5%を女性支援団体や活動に寄付することで、「パイプラインどころか、津波を作ることができる」と語る。Bossygrlを通じてビジネスを始めた女性たちにも、売り上げの一部をそのような活動に寄付するよう呼びかけているという。「2017年の企業は、全て社会的責任を負うべきだ」とGittins氏。

 DellのQuintos氏によると、ベンチャーキャピタルに占める女性の比率は低いものの、女性が女性起業家に投資する動きがここ数年で大きくなっているという。

東京は50都市中39位

 女性の起業は日本でも増えているが、取り巻く環境は厳しい。DellがDWEN会期中に発表した女性起業家の環境調査・ランキング「Dell Women Entrepreneur Cities(WE Cities)Index」で、東京は50都市中39位。

 トップのニューヨーク、2位のベイエリアと米国が続き、3位はロンドンと、欧米の都市が上位にランクイン。アジアの都市は全体的に低く、トップ10にランクインしたアジアの都市は8位のシンガポールのみ。そして東京は、ソウル(30位)、北京(38位)と近隣国の後塵を拝した。2016年の25都市中17位からあまり改善していないように見える(前回は25都市、今回は50都市でインデックスを作成している)。

 インデックスは、Operating(運営)とEnabling(実現)の2つの環境に大別し、市場、人材、資本、文化、技術の5つの項目についてさらに細かなデータをもとに作成した。女性起業家がビジネス展開するにあたって十分な市場規模か、創業そしてビジネスをスケールできる女性が育っており、必要な教育を受けた女性がいるか、女性が資金調達しやすいか、企業の幹部や議会に女性が占める比率など活躍しやすい文化があるか、インターネット環境をはじめとした技術へのアクセスはどうか、などを測定している。

 女性起業家という点で日本に対する国際評価が高くないことは、インデックス以外でも感じられた。イベントに出席していたある幹部は、「日本の優秀な女性社員が自ら管理職は女性向けではないと辞退していると聞く。韓国は変化してきたが、日本の問題は根強いように感じる」と匿名ベースで語った。

 アジア全体について、Dell EMCでシニアバイスプレジデントとしてオーストラリアとニュージーランドの営業を統括するAngela Fox氏は、「アジア全体で、取り組むことはたくさんある。家族、どのような教育を受けたかで子供時代に土台ができるが、それを変えることは難しい」と述べる。それでもDell社内でも高いポジションに挑戦しようという女性が増えており、彼女たちをロールモデルに次の世代が上のポジションを目指すという良い循環も生まれているという。

 Dell日本法人は育児休暇の復職率100%を誇るなど女性が長く勤務しているが、これについてDell EMCでプレジデント兼アジア太平洋ジャパン担当エグザクティブバイスプレジデントを務めるAmit Midha氏は、「女性が辞める理由を尋ねると、子供の世話ができないから。それなら、環境を整えればよい。フレックス制、在宅などを導入し、活用を奨励した」と秘訣を語る。「仕事をすることは人生を豊かにすること。家族と両立できる。(キャリアを)犠牲にすることはない」と日本の女性にエールを送った。

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    最終更新: 2017年08月11日(金)11時55分

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