今後の運営方針に込めたNICT新理事長の決意

ZDNet Japan 2017年09月15日(金)11時30分配信

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、国立研究開発法人情報通信研究機構の徳田英幸 理事長と、米Adobe SystemsのShantanu Narayen CEOの発言を紹介する。

「世界最先端の情報通信技術を実現し、実空間とサイバー空間の融合を加速したい」
(国立研究開発法人情報通信研究機構 徳田英幸 理事長)

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が先頃、今年4月1日に同機構の理事長に就任した徳田英幸氏の記者会見を初めて開いた。冒頭の発言はその会見で、徳田氏がNICTの使命について語ったものである。

 NICTは総務省所管の国立研究開発法人で、情報通信分野の研究開発を行っている。職員数は約1000人で、そのうち研究者は約520人。その約9割が「PhD」を取得している。

 徳田氏によると、NICTが現在、重点研究開発分野として取り組んでいるのは次の5つである。1つ目は「センシング基盤分野」で、ゲリラ豪雨などの早期捕捉につながるリモートセンシング技術、電波伝搬などに影響を与える宇宙環境を計測・予測する宇宙環境計測技術などが対象だ。

 2つ目は「統合ICT基盤分野」で、IoT(Internet of Things)を実現する革新的ネットワーク技術、人・モノ・データ・知識などあらゆるものをつなぐワイヤレスネットワーク技術、世界最高水準の光ファイバ網実現に向けた大容量マルチコア光交換技術など。3つ目は「データ利活用基盤分野」で、人工知能(AI)技術を利用した多言語音声翻訳技術、社会における問題とそれに関連する情報を発見する社会知解析技術、脳情報通信技術などが対象だ。

 4つ目は「サイバーセキュリティ分野」で、次世代のサイバー攻撃分析技術、IoTデバイスにも実装可能な軽量暗号・認識技術など。5つ目は「フロンティア<8964>研究分野」で、盗聴・解読の危険性がない量子光ネットワーク技術、酸化ガリウムを利用するデバイスや深紫外光を発生させるデバイスの開発技術などが対象となっている。

 徳田氏は「この5つの研究開発分野を柱として、世界最先端の情報通信技術を実現し、私たちが居る実空間とネット上のサイバー空間の融合を加速していきたい。これによって、社会問題の解決のみならず、健康、医療、交通、物流、公共サービスといった幅広い分野で、社会システムの効率化および最適化に貢献していきたい」と語った。

 そこで、同氏はNICTの今後の運営方針として、「Collaboration」「Open Mind & Open Innovation」「Challenger's Spirit」の3つを掲げ、それらの頭文字を取って「COC」を推進していく決意を表明した。同氏がCOCに込めた思いは下図に示されている通りである。とりわけOpen Mind & Open Innovationは、「Open Innovationを支えるためのOpen Mindが非常に大事」と強調していたのが印象的だった。

 NICTは日本の情報通信分野の研究開発力を映し出すだけに、徳田新理事長の手腕が大いに注目されるところである。

「デジタルエクスペリエンスがビジネスの大きな差別化要因になってきている」 (米Adobe Systems Shantanu Narayen CEO)

 アドビシステムズが先頃、企業のデジタルマーケティングを支援するクラウドサービス「Adobe Experience Cloud」の事業強化について記者説明会を開いた。冒頭の発言は、その会見や顧客向けイベントなどに向けて来日した米国本社の会長兼社長で、最高経営責任者(CEO)を務めるShantanu Narayen氏が、デジタルエクスペリエンスの重要性について語ったものである。

 Adobe Experience Cloudの事業強化については、コンサルティングサービスを提供する「デジタルストラテジーグループ」を創設するとともに、新たな人材育成サービス「アドビデジタルマスターズワークショップ」を開始すると発表。その内容については発表資料をご覧いただくとして、ここではNarayen氏の冒頭の発言に注目したい。

 まず、デジタルエクスペリエンスとは、デジタル技術を生かして顧客に感動を与えるような体験(エクスペリエンス)を提供することである。Adobeは現在、クリエイティブなデザインやコンテンツ制作に向けた「Adobe Creative Cloud」、ドキュメント業務を効率化する「Adobe Document Cloud」、そしてAdobe Experience Cloudの3つのクラウドサービスを提供しているが、デジタルエクスペリエンスはこれらに共通するAdobeの強力なアドバンテージである。(図参照)

 とりわけ、エクスペリエンスの言葉をそのまま使ったAdobe Experience Cloudは、デジタルマーケティングに加えてアナリティクスやさまざまな業務との連携を可能にした、Adobeならではの「エンタープライズクラウドサービス」と見て取ることができる。

 Narayen氏は会見で、「デジタルトランスフォーメーションに取り組む企業には、ぜひともデジタルエクスペリエンスの重要性を認識していただきたい。そのために必要なスキルを持つ人材を育成していただきたい。それがビジネスの大きな差別化要因になっていく」と強調した。デジタルエクスペリエンスの重要性もさることながら、Adobeの主張は「デジタルトランスフォーメーションは顧客視点で取り組むべき」とも捉えることができる。当たり前のことではあるが、つい軽視しがちな捉え方ではないだろうか。

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    最終更新: 2017年09月15日(金)11時30分

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