CIOが知るべきエンジニア採用の秘訣

ZDNet Japan 2017年11月13日(月)08時21分配信

 ビズリーチで取締役を務める多田洋祐です。われわれは、HRテック(HR×Technology)のベンチャーとして、これまで7100社以上に対して採用を支援してきました。

 即戦力人材の獲得競争が激化している今、採用のプロフェッショナル「プロ・リクルーター」の存在が注目を集めています。事業戦略に基づいて採用計画を立案し、自社で採用したい人材を企業が自ら探し出して声をかけ、能動的に採用活動を行う「プロ・リクルーター」。海外だけではなく、日本でもこの動きは加速しています。優秀な人材の獲得が難しいエンジニア採用では特にプロ・リクルーターが必要です。

 そこで今回は、「プロ・リクルーター」がどのようにエンジニア採用に取り組んでいるかについて、CIO(最高情報責任者)的な視座から、具体的な役割と育成方法を紹介します。

採用のプロフェッショナル「プロ・リクルーター」の4つの役割

 プロ・リクルーターの役割は多岐にわたります。その役割・業務をまとめてみました(企業規模や採用人数などにより、いくつかの役割・業務を兼任することもあります)。

 ここからは、各役割について紹介します。

1)マネジメント・戦略立案

 採用責任者は経営戦略・事業戦略に基づいた採用戦略を決定します。そのために、まずは徹底的に経営戦略・事業戦略を理解し、その上で、事業成長に寄与するのはどんな人材か、またそうした人材を獲得するにはどのような戦略を採るかなどを検討します。

2)配置・分析

人材定義・配置:

 人材定義・配置はHRBP(HRビジネスパートナー)が行います(HRBPについては、第2回を参照)。事業部長などの経営幹部や現場リーダーなどにヒアリングし、綿密なすり合わせをした上で、どの部署にどのような人材を何人配置するのかを決め、同時に、人材要件を定義します。

データ分析:

 HRアナリストが候補者の選考結果を可視化し、効果測定・分析を行います。その結果をもとに、選考通過者と不採用者の特徴を明確にし、採用活動を改善します。確実に採用目標を達成するためには、このPDCAが重要です(HRテックツールの活用については、第3回を参照)。

3)採用マーケティング・ブランディング

 採用マーケティングは、採用ターゲットを消費者と同様に考え、認知から入社までの体験を提供していく手法です。ここ数年、技術力があることを積極的にPRし、テックブランディングを行っている企業と行っていない企業が二極化していますが、ブランディングを行っている企業はエンジニア採用において、非常に有利になっています。

採用労働市場理解:

 採用マーケティングを実行するためには、自社のポジショニング、競合の取り組み、採用したいポジションの潜在層が在籍する企業や職種の採用相場、新興企業の動向などを理解し、勝ち抜くために何をすべきか、考える必要があります。

採用プロモーション:

 エンジニアによる技術ブログの開設、社外の方も参加できるエンジニア勉強会の開催、その他にプロダクトに利用する技術力をアピールしたり、在籍する著名なエンジニアを外部メディアも使いながらPRしたりと、その方法はさまざまです。

 エンジニア勉強会は、面談や面接のために来社した候補者から見える場所で開催すると、候補者にその雰囲気が直接伝わり、効果的です。ちなみに弊社では、エンジニアやデザイナーが頻繁にイベントを開催しており、集客はエンジニアをつなぐIT勉強会支援プラットフォーム「connpass」で行っています。「connpass」内に弊社が運営するグループ「D-Cube」があり、グループのメンバー数は4900人以上、「connpass」グループメンバー数ランキングで3位(2017年10月時点)で、さまざまなエンジニア、デザイナーとの接点が広がっています。

 ここまで徹底して実施しなくても、まずは自主的に勉強したいエンジニアに対して、会場提供や集客、運営などの面で会社としてサポートするといいでしょう。また、勉強会を運営するエンジニアを、会社として適切に評価することで、彼らのモチベーションを維持、向上することもできます。

 テックブランディングを強化している企業の中には、技術力があるエンジニアを採用するためにコミッターなど著名なエンジニアを採用するケースもあります。例えば、株式会社SpeeeがRuby開発者のまつもとゆきひろ氏を技術顧問として、元クックパッド<2193>技術部長の井原正博氏を開発部顧問として採用。株式会社一休が複数企業の技術顧問を務めてきた伊藤直也氏を執行役員CTO(最高技術責任者)として採用したことなどが業界内で話題になりました。

 ただし、採用して終わりではなく、著名なエンジニアにはその企業で働き続けるメリットを提供し続けることが重要です。優秀なエンジニアは引く手あまたであるため、その企業に在籍する意味を見出せなくなると転職してしまう可能性が高くなります。自分がやりたい研究開発ができる、高給であるなど人によって重要視する項目は異なりますが、CTOなどが随時ケアをして、Win-Winの関係を構築し続ける必要があります。

社員満足度向上:

 企業の従業員が投稿する口コミサイトの登場、リファーラル採用の強化などに対応するためにも、従業員満足度を上げ、退社の際も円満に退社できるような内的マーケティングが重要です。

4)リクルーティング

スカウト、タレントプール構築:

 優秀なエンジニアを採用するためには自ら候補者を探し、アプローチする必要があります。人材要件を定義した後は、採用媒体や人材データベース、リファーラル採用など、活用すべきツールや社内外のパートナー、対象となる人材が多そうな業界などを検討します。その上で、候補者を探しスカウトします。同時に、タレントプールを構築します。タレントは「才能」、プールは「蓄える」を意味しており、タレントプールとは、自社の採用候補となりうる優秀な人材を蓄えるためのデータベースを表します。

 中でも、短期間で効果が出やすいのがダイレクト・リクルーティングサービスのデータベースに登録しているエンジニアをスカウトすることです。各企業の担当者はエンジニアが登録している人材データベースをさまざまな条件で検索し、スカウトメールを送ります。

 人材データベースに登録している会員の職務経歴書にはたいてい、使用できる言語、経歴、マネジメント経験などが記載されており、その職歴を見れば、採用したい人材かどうかをイメージできます。ただし、職務経歴書に在籍企業名と在籍年数しか書いていないエンジニアは非常に多いです。

 詳しい職歴が書かれていない場合はスカウトを送らない企業が多いようですが、実はこのような人材こそブルーオーシャンである可能性が高いのです。このような人材には企業からあまり声がかかっていないため、競合が少なく、一部企業では内定承諾率が高くなる傾向も見られます。

 自社に関係するマーケット環境を理解できていれば、在籍企業名と在籍年数を見るだけで、その候補者はどの言語にどれくらい習熟していて、年収はどれくらいなのかを推測できます。最初は推測が難しくても、スカウトを続け、スカウトした人の情報をマーケット図として可視化していくと推測の精度が高まっていきます。

動機づけ・入社促進:

 候補者の見極めと並行してその候補者に合った従業員や経営幹部に会わせるなどして動機づけを行い、入社まで導きます。エンジニア採用では、技術面接はエンジニアのみ、未来を語る場合はエンジニアにプロ・リクルーターが同席してフォロー、最終面接は経営幹部、などのように役割分担することで補完関係を築きます。

 その際、まずはその候補者が入社を判断するにあたって重視するポイントや懸念を抱いた点などを的確に理解します。同時に、他にどの企業の選考を受けそうかを予測し、マーケットにおける自社の強みを伝えます。これによって、内定承諾率は変わってきます。

 例えば、以下のように自社の強みを伝えます。

  • 大企業が競合の場合は、小さな組織であれば裁量が大きいことをアピール
  • グローバル企業であれば、グローバルなビジネスに携われることをアピール
  • 社会課題を解決することに重きを置く企業であれば、社会的インパクトの大きな仕事ができることをアピール
  • B2Cサービスを展開する企業が競合の場合は、B2B事業であれば、複雑性の高いものを使いやすくすることの醍醐味をアピール

 同時に、内定および内定承諾率を高めるためには、面接官の育成も重要です。面接官への事前の情報共有や面接終了後の振り返りをきちんと行い、PDCAを回すことで、精度を高めていきます。

プロ・リクルーターの育成

 プロ・リクルーターは役割が多岐にわたり、専門性も非常に高い仕事です。最後に、プロ・リクルーターにはどんなスキルが求められているかについて考えてみたいと思います。プロ・リクルーターの先進国である米国の人事専門媒体「ERE」では、「8 Skills Recruiters Should Have」で、プロ・リクルーターが持つべき能力を8つにまとめています。

  • 高い営業スキル
  • 関係構築スキル
  • 獲得意識
  • 高い視座
  • サポート姿勢
  • 傾聴
  • (求職者に対する)問題解決
  • 親しみやすさ
  •  【参考】「8 Skills Recruiters Should Have」ERE

     これによってプロ・リクルーターには基本的な行動特性として、営業のスキル、関係構築スキルが必要なことがわかります。採用のどのプロセスで強みを発揮していくかによっては、これらの能力に加えて、組織的・戦略的な思考も必要となります。またHRテクノロジが進化するなかでは、データの分析能力や、さまざまなテクノロジを活用する能力も重要です。

     エンジニア採用に特化したプロ・リクルーターの育成については、大きく2つの方法が考えられます。

     1)エンジニア出身者をプロ・リクルーターとして育成

     エンジニア出身の場合、自社の技術の魅力を細部まで理解し、候補者であるエンジニアと同じ目線で話すことができます。ただし、プロ・リクルーターの役割においては、戦略策定から要件定義、面接、入社促進まで社内外でのコミュニケーションが多いため、コミュニケーション能力が必須です。また、プロ・リクルーターは採用人数の目標数にコミットする必要があるため、成果志向であり、フットワーク軽く人に会いに行く行動力も重要です。

     2)優秀な営業経験者や人事経験者をプロ・リクルーターとして育成

     優秀な営業経験者や人事経験者は、コミュニケーション能力が高く、成果志向である人が多いため、成果は出しやすいものの、細かい技術についてまでは話せないため、面談や面接の際は社内のエンジニアに同席してもらうなど、補完が必要です。

     このように、プロ・リクルーターは、非常に高いスキルが必要とされる採用のプロフェッショナルであり、人材獲得競争が激化するなか、今後ますます必要とされていくと考えられるのです。

    多田 洋祐/株式会社ビズリーチ 取締役

     中央大学卒業。エグゼクティブ層に特化した人材紹介会社を立ち上げてトップヘッドハンターとして活躍する。2012年、人事部長として株式会社ビズリーチ入社。現在はキャリア事業のトップとして、ビズリーチ事業とキャリアトレック事業全体を統括し、「ダイレクト・リクルーティング」の本格的な普及に努める。即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」、20代のためのレコメンド型転職サイト「careertrek」、戦略人事クラウド「HRMOS」などを展開。

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      最終更新: 2017年11月13日(月)08時21分

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