成長事業の柱に育てるKDDIのIoTビジネス戦略

ZDNet Japan 2017年11月15日(水)16時13分配信

 KDDI<9433>がIoTビジネスを法人事業の柱に育てる強化に乗り出した。その一環から、2017年2月にクラウドインテグレータのアイレットを、同年8月にIoT通信プラットフォームを展開するソラコムを子会社化する。IoTに簡単に取り組めるテンプレートやIoTソリューションの品ぞろえもする。IoTビジネスを企画するビジネスIoT推進本部の原田圭悟ビジネスIoT企画部長は、IoTビジネスの数値目標を明かさなかったものの、1000億円をはるかに上回る規模を目指す作戦を考えている。

強みはセンサからクラウド、データ分析までをワンストップ提供すること

 「IoTは、指数関数的に伸びると言われているが、そんなスタートになっている」と、原田部長はIoTビジネスの立ち上がりに手ごたえを感じている。それを物語るのが、2015年にスタートした電力会社のスマートメーター向け通信モジュールだ。30分ごとに電力使用の検診データを送信するもので、電力会社9社が採用する。月10万以上、年間100万超の需要に拡大し、IoTビジネスの主力商品になっている。

 もう1つ主力商品がある。2016年に開発が始まったトヨタ<7203>向けグローバル通信プラットフォームだ。2019年から本格化するだろう“つながるクルマ”を実現する車載通信機とクラウド間の高品質で安定した通信を、グローバルに提供するもの。トヨタ<7203>以外への広がりも期待されている。

 KDDI<9433>は、これらIoT活用に必要な低消費電力の無線通信技術LPWAやSIMカードなどの回線サービスやセンサなどのデバイス、クラウドサービスを提供する。中でも、センサの種類は2000にもなる。例えば、工場の生産設備の故障をいち早く見つけ出す振動検知センサは、1週間から1カ月前に故障を予知し、早めの部品交換を可能にする。地滑りを15分前に検知するセンサーもある。

 IoTビジネスにおけるKDDI<9433>の強みは、これらセンサからクラウド、データ分析までをワンストップで提供できること。クラウドとセンサを組み合わせたレディメイド型ソリューションや、空室や節水を管理するトイレIoTなどといった特化型ソリューションも用意する。「こんなことをやりたい」というユーザーには、アジャイル開発で試作、改善していく方法で応える。

 「SI<3826>企業はどこもやっていないサービス」と原田部長が自慢するのは、センサからのデータとKDDI<9433>の所有データを掛け合わせたデータ分析によって、新しいビジネスの創出につなげるサービス。レベニューシェアのビジネスモデルにも取り組むなど、こうしたIoT関連のプレスリリースを毎週するほど力を入れているという。

15年以上の経験と実績によるIoT活用提案

 IoTビジネスにおける2つめの強みは、15年以上の経験と実績だ。最初に手がけたのは、2001年のセコム<9735>の位置情報提供サービス向け通信モジュールだ。2002年には、トヨタ自動車<7203>のカーナビにも搭載されて、テレマティクスサービスへと進化している。2007年には、いすゞ自動車<7202>に収集したデータを駆使し、環境負荷低減や安全運用などをサポートするシステムを提供する。

 2015年には、ミサワホーム<1722>と地震による建物の被災度を測定する「家のIoT」を共同開発した。建物の損害箇所を見つけたり、建物のある地盤の強度を測定したりするもの。この強度データは、例えば地方自治体に「ここの地盤を弱いので、対策をしたらどうか」などといった提案にも使える。

 これらソリューションなどは、IoTビジネスを成長事業の柱の1つにする施策でもある。目下のところ、スマートメーター向け通信モジュールやグローバル通信プラットフォーム、IoTセキュリティが収益につながり、「それなりの数字になっている」(原田部長)。田中孝司社長も期待をかけているという。

 だが、PoC(概念実証)にとどまっているIoT活用例が少なくない。「あるSI<3826>企業は約300のPoCを手がけたが、1つも本格導入に至らなかった」と、原田部長は相談を受けたことを明かす。ワンストップ提供に加えて、ユーザーのビジネスに深く入り込んだビジネスモデル変革の提案ができないことと、理由を分析する。

 そこで、KDDI<9433>は課題を解決するIoT関連のソリューション商品を用意するとともに、必要なSEを確保してきた。スマホのアプリ開発やシステム開発、クラウド活用などを手がけたSEは「かなりいる」(原田部長)。ビジネスモデル変革に応えられる人員もそろえる。具体的な人数を公表しないが、新卒と中途の採用を活発に行っているし、アイレットなどのパートナーの獲得にも力を入れているという。

 IoT活用は一部の先進企業から、より多くの企業へと広がっていくのは間違いないこと。KDDI<9433>は拡大するニーズに応えるために、トイレIoTのようなパッケージ商品の品ぞろえを拡充する。生産設備の故障を予知したり、取り付けたセンサから商品の販売状況を調べたりするなどのソリューションもそろえる。さらに、渋滞などの道路情報をはじめとする街全体を制御するスマートシティのような社会インフラへと、新しいIoTビジネスの創出に挑戦する計画を練る。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。
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    最終更新: 2017年11月15日(水)16時13分

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