APIが作り出す2030年に向けた企業間取引の未来像

ZDNet Japan 2017年11月14日(火)08時17分配信

 第3回では、「現在(2005~2017年)」の企業間取引のテクノロジ(SOA)や被害金額が大きい事件、API(Application Programming Interface)の誕生について解説した。最終となる今回は、近未来(2020~2030年)における企業間取引(主にAPI)について予想してみたい。

 図13では、「法人の企業間取引」において従来のスター型が「APIモデル」に変わることを示している。このAPIモデルとは何であろうか。

 従来は、WEB-EDI、流通BMSなど、各産業や事業単位で「管理企業」「契約企業」を決め、標準のインターフェースと規約、料金を決めていた。一部はBPOとして外部にアウトソースし、SWIFTのように専門事業者のルールに従う業界もあった。これらの「決め事」は、「事業者」から見て当り前であり、疑う余地もない。逆に言えば、その接続に加入する際は、システムの改修が必須になることも心得ていた。ただ、その改修費用や維持費が高いと思った担当者は多かったはずである。

 これからのトランザクションの近未来(2020~2030年)では、この「決め事」を使う、使わないにかかわらず、APIというインターフェースが標準搭載されたソフトウェア<3733>を選択せざるを得なくなる。各企業がAPIを使わず、料金を払わなければ、(各企業は)低価格のシステムが維持できる。

 一方、各企業(ここでは各企業がほぼクラウド事業者ではないが、イメージとして類似している)がAPIを使い、標準的なインターフェースを選択した結果、「法人の企業間取引」が始まる。

 これまで「法人の企業間取引」とは、「製造=製造、金融=金融、通信(キャリア)=通信(キャリア)」という中でトランザクションが発生していて何の問題もなかった。今後は、この事業者の垣根がなくなり、「製造=金融=通信(キャリア)」というトランザクションが近未来にかけてできるだろう。この事業者の垣根がなくなった法人は、ほぼ「クラウド事業者」と同じイメージになる。「クラウド事業者」は、自身でAPIを提供するが、利用もする。「管理企業」「契約企業」という定義はなく、システムにおいて「公平/平等でFee(手数料)を使った分だけ請求し、支払いもする」イメージである。

 例えば、筆者が海外から57万円程度を送金する際、SWIFTネットワーク経由で三井住友銀行の口座に円建てで入金した際の手数料は4000円(円為替取扱手数料2500円、被仕向送金手数料1500円、2016年2月現在)かかる。さらにセキュリティ面では、マイナンバーを提示する必要がある。手数料を抑えるために筆者は、ビットコインを使うべきだったかもしれないが、今後のAPI化で手数料が安価になることを望む。そんなイメージだ。それでは、API化で手数料などは安価になるのだろうか。

 図14では、近未来の金融機関のシステム構成を示している。従来の「スター型」などではなく、「メッシュ型」に集約される。この前提条件として、これまで都市銀行であれば、各行自前で預為を維持し、差別化をしてきた。また、地方銀行や信用金庫は、自前のシステムを「共同センター」として、NTTデータ<9613>日立製作所<6501>NEC<6701>富士通<6702>日本ユニシス<8056>などに委託していた(データの中は、ほぼ自前時代と同じ)。また、システム基盤やソフトウェア<3733>は、「共同センター」側の仮想化環境で銀行単位に区画分けされた「限りなくオンプレミスに近いクラウド」を利用している。この運用や委託は安定している。

 しかし近未来では、これら「オンプレミス」や「共同センター」がさらに集約される。この集約で必要なテクノロジがこれまでクラウドで培われてきた「金融APIである。そもそも、銀行や証券、生保/損保は異なる処理で、異なるシステムである。しかし利用者側(ファンド、投資家側)から見ると、残高を個別に分別(別残)管理し、運用をすることはインストラクションや決済の数が多くなり(第2回参照)、無駄な処理(Fee)である。

 これまで説明した「企業間取引」(トランザクション)を悪くは言わないが、上記のような「金融API」構想ができ始めると、「内部処理(付け替え)、相殺」などに変わる。つまり、ネットワークを介して処理をした第1~3回までの時代ではなくなり、単純な1つのシステムの中での処理に変わる。この「金融API」構想は、「処理速度が速くなる」「セキュリティが強化される」というイノベーションではないが、明らかにFee(手数料)が下がる。昨今のFinTechやブロックチェーン/AI(人工知能)など、「接続するから必要」と思う必要はなく、「標準搭載されているが、料金を払えば使えるテクノロジ」と読み替える必要がある。

 次に、金融以外の製造業ではどうであろうか。自動車分野を例にとると、分かりやすい。

 現在は、Connectedカーの企画と自動車内部のOSやソフトウェア<3733>の基盤作りの時代である。図15の近未来の自動車(Connectedカーシステム構成)の全体構成について、現時点で自動車会社間や関連事業体間での話合いは、まだ少ないと想定される。まずはトヨタ<7203>や日産、ホンダ<7267>など各社が個別にConnectedカーシステムの構成を描き、システムの試作が急がれる。しかし各社の実装が一段落し、トータルコストが算出できるようになれば、利用者にシステムの構築/運用費用を上乗せするのではなく、できる限り集約を繰り返した「自動車API」が次の標準となるであろう。このような業界内でのシステムのあり方を中心にした話し合いが必要となり、この話し合いは、利便性や処理速度の改善も望ましいが、「セキュリティ=安全、無事故」をいくらの投資で維持するか、採算で見ていく方が望ましい。

 近未来のConnectedカーは、通信キャリアと密接になる(車1台が1台のスマートフォンである)。個人用スマートフォンの料金を滞納すれば、通信会社のサービスが使えない。しかしConnectedカーの場合は、車検と同じように、前払い方式になるだろう。そのため、「月初は毎回車のエンジンがかからないね」「あ、先月は携帯料金未納だった」という会話にはならないと思われる。このあたりは、「レクサスG-Linkの通信料金(インターネット通信料金)を車検時に2年分前払い」と同じコンセプトである。

 また、セキュリティ面の近未来では、「コンシューマーライゼーションのリスクベース」が始まると考えられる。コンシューマー向けのバイオメトリクスなどの認証が先行し、その本人かどうか、2回目の認証に本人のクセを使う。下の図16では、iPhoneなどの画面をタッチする強さ、速さをセンサやジャイロで学習する。これと同じように、車のアクセルとブレーキ<7238>、ウインカーの癖を学習する本人確認方式が登場するであろう。

 さらに、「コンシューマーライゼーションのリスクベース」では、総合得点として、リスク値がある一定以上に達すると強制終了させる。例えば、アクセル・ペダルの踏み方が荒い、ブレーキ<7238>が遅いリスクの場合、アナウンスで「3分以内に車を強制停止するため、速やかに路肩に寄せなさい」などのリスクベースが普及するかもしれない。家電のIoTを応用し、「昨日見ていたドラマの登場人物を全てクリックしなさい」など、タイムリーで、本人が希望した認証を利用するなど、近未来のコンシューマー向けの認証の登場が期待される。

 近未来は、「金融API」や「自動車API」など業界システムの「共同利用=集約化」がエコシステムを作り上げるきっかけとなる。最初から採算やコストを前面に出したくはないが、筆者が講師をしているIoTのビジネス・モデルは、まさに採算である。「採算は取れないが、IoTとして利便性が良く、きっと利用者も多いはず。当社のAIでの宣伝にもなる」という広報やマーケッターのロジックは、IoTを10年レンジのシステムとして考えた場合に使えない。このような問答やロジックでシステムの「仕分け」に走らず、本連載でこれまでに述べた以下の図17のフローで検討していただきたい。

 システムエンジニアはロジックからシステムを作るが、ロジック自体はIT部門が作ったシナリオであり、その時の要求や評価を端的に表現している。一方、テクノロジは「生まれる」よりも「ニーズから最終的に残った技術」、あるいは「時代のニーズを素直に受け入れ自分を適合させる(adaptiveテクノロジ)」とした方がしっくり来る。イノベーションは、その時代やその時期を正確にアナリシス(分析)することから始まる。「勢い=広告=セミナー」はまずは置いておいて、この60年間で何が起き、今後何が出るといいのかを広く見通すことが大切である。

著者:石橋正彦(いしばし まさひこ)
サイバー研究所(Cyber lab)アナリスト 日本ユニバック(現日本ユニシス)、VERITAS Software(現Veritas Technologies)、BearingPoint(現PwC)、Gartner、大宣システムサービスを経て現職。都市銀行を中心に、SWIFTネットワーク、カストディー、人事システムの開発や災害対策を経て、セキュリティ監査人、IoT講師、アナリストを専門とする。
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    最終更新: 2017年11月14日(火)08時17分

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