魅力は高いがリスクも高い大手総合商社の投資判断

ZDNet Japan 2017年12月07日(木)11時10分配信

今日のポイント

  • 投資魅力は高いがリスクも高い大手総合商社株
  • 商社株が割安に据え置かれる理由
  • ビジネスモデルの改善とリスク管理の高度化を進めた総合商社
  • 事業拡大に貪欲な総合商社
  •  これら4点について、楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。

     原油、銅をはじめとする資源価格の反発が続き、世界中に原油、天然ガス、石炭、鉄鉱石、銅などの資源権益を有する大手総合商社に追い風となっている。今回は商社株の投資判断について解説する。

    投資魅力は高いがリスクも高い大手総合商社株

     最初に結論を述べる。

    • 大手総合商社株は株価収益率(PER)、株価純資産倍率(PBR)などの株価指標から割安で配当利回りは高く、長期投資の魅力は高いと判断
    • 大手総合商社は資源価格や世界景気の影響を受ける「世界景気敏感株」。資源価格、世界景気の変動に伴って株価はこれからも乱高下が予想される
    • 分散投資の一環で商社株へ投資する価値はあるが、商社株ばかりたくさん保有すべきではない
    • 投資魅力が一番高いのは三菱商事<8058>、続いて伊藤忠<8001>三井物産<8031>の投資価値が高いと判断。住友商事<8053>丸紅<8002>はその次に投資価値が高いと判断

    五大商社の株価バリュエーション:2017年12月6日

    商社株が割安に据え置かれる理由

     株価が割安ということは、投資家に人気がないということである。なぜ大手総合商社は投資家に人気がないのかを考えてみよう。

    資源事業の比率が高いことが業績を不安定にする

     大手総合商社の利益に占める資源事業の比率の高さが、商社株の人気が低い原因の1つだ。最近、資源価格が全般に上がってきていて業績への追い風となっている。ただし、技術革新によって資源の供給が世界的に拡大した影響で、原油、石炭、天然ガスなどのエネルギー資源は構造的に供給過剰となっている。

     世界景気拡大の追い風で現在の資源価格は上昇基調だが、このまま上がり続けるとは考えられない。世界景気がダウントレンドに入ると、資源価格も再び下落するリスクがある。そうした不安が残るため、資源ビジネスで高い利益を上げていても、商社株は株式市場で高くは評価されなくなっている。

    世界景気や世界中の地政学リスクの影響を受けやすい

     総合商社が新興国で積極的にビジネス展開していることは、世界景気が好調な今、業績への追い風となっている。ところが、世界の景気変動の影響を受けやすいことが、株価評価が高まらない要因ともなっている。

     世界景気は良くなったり悪くなったり循環するものだ。世界景気変動の影響を受けやすい商社株や自動車株は、足元の業績が好調でも株式市場での評価は高くなりにくくなっている。ITサービスや消費関連株のように景気変動の影響を受けにくいディフェンシブ株の方が、株価バリュエーションで高く評価されるようになっている。

     ところで最近、世界中にきな臭い話が増えていることも気掛かりである。世界中でビジネスを展開する総合商社はさまざまなカントリーリスクを負っていて、地政学リスクにさらされていることも不安視されている。

    ビジネスモデルの改善とリスク管理の高度化を進めた総合商社

     現在の総合商社は投資家のイメージとかなり異なった姿になってきている。資源価格が暴落する過程で資源事業の利益は大きく減少した。2015年3月期と2016年3月期には高値で投資した資源権益に巨額の減損損失が発生した。

     最近、資源価格が反発しているとはいっても、過去のピークと比べるとかなり低い水準にとどまっている。それで総合商社が低収益体質に変わったかというと、そんなことはない。

     資源事業に利益構成が偏っていることに危機感を持ち、総合商社各社は時間をかけて非資源事業を伸ばしてきた。その成果で非資源事業の利益が拡大し、高水準の利益を維持している。

     食品や海外独立電力事業、消費関連ビジネスなど、世界景気変動の影響を受けにくい事業を意識して増やしてきたので利益構成が改善している。資源価格が上昇すると、また資源のウエイトが増えるが、商社が非資源事業とバランスを取りながら拡大を目指す方針は変わらない。

     カントリーリスクの取り方もかなり巧妙になってきた。幅広い種類のリスクを取っているが、特定のリスクを過度に取り過ぎないようなリスク管理をしている。

     三井物産<8031>は1970年ごろからIJPC(イラン・ジャパン石油化学事業)に巨額を投資した。ところが1979年のイラン革命、それに続くイラン・イラク戦争の戦禍でIJPCは破たんし、三井物産<8031>は財務面で大きなダメージを受けた。このような失敗から学び、投資リスクを分散して失敗したときの撤退ルールも厳格にしている。

    事業拡大に貪欲な総合商社

     総合商社の戦略は資源もなく少子化が進む日本がどう生きていくべきか、まさにその道筋を示していると考えている。政府が成長戦略としてやっていくべきことは、商社がほとんど手を付けている。

     商社は資源のない日本が生きていくのに不可欠な「日の丸資源会社」となっている。それに加え、新興国での社会インフラ整備事業にも注力している。発電所、鉄道、上下水道などの建設と運営を幅広く手かげている。

     総合商社はIT、バイオ、新エネルギー、ロケットなど今すぐ花開かなくても、将来いつか大きな成長の種になりそうなものには片っ端から手を出している。その貪欲さこそが今の日本に欠けている成長力の獲得につながると考えている。

     大手5社が展開している事業やリスクの取り方は異なるが、いずれも新興国の成長を取り込みつつ巧みにリスク管理している。それが投資対象として評価できるポイントだ。

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      最終更新: 2017年12月07日(木)11時10分

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